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解説 8分で読める 2026-06-25

経済安保の重要物資11分類と認定企業の見方

半導体や蓄電池の供給が止まると、産業も生活も立ち行かない。こうした「絶対に途切れさせられないモノ」を国が物資として指定し、国内での安定供給を後押しする枠組みが経済安全保障推進法だ。指定された物資は11分類ある。どの企業がその供給網を担うと国に認められたのか。SEISAKU DB はその認定を構造化している。読み解き方を書く。

特定重要物資11分類とは

経済安全保障推進法は、供給が滞ると国民の生存や経済に重大な影響が出る物資を「特定重要物資」として政令で指定する。指定されているのは次の11分類だ。

  • 抗菌性物質製剤(抗菌薬)
  • 肥料
  • 永久磁石
  • 工作機械及び産業用ロボット
  • 航空機の部品(エンジン・機体)
  • 半導体
  • 蓄電池
  • クラウドプログラム
  • 可燃性天然ガス
  • 重要鉱物
  • 先端電子部品

顔ぶれを見ると、エネルギー、先端製造、医薬、デジタル基盤と、産業の根っこにあたる領域が並ぶ。海外依存度が高く、有事に供給が細るリスクがある物資が選ばれている。

認定供給確保計画という仕組み

指定するだけでは供給は安定しない。そこで、企業が「この物資を国内で安定供給するための計画」を作って国に申請し、認定を受ける仕組みがある。これが認定供給確保計画だ。認定されると、設備投資や研究開発に対する支援の対象になる。

つまり認定企業の一覧は、「国がこの物資の供給網の担い手として認めた企業」のリストにあたる。どの分野に、どの企業群が、国の後押しを受けて供給網を作ろうとしているか。経済安保の実務がどこで動いているかを示す一次情報になる。

SEISAKU DB が構造化した認定の全体像

SEISAKU DB は、経済産業省などが公表する認定供給確保計画を構造化している。2026年6月時点で 114件の認定を取り込んだ。11分類のうち認定が公表されているのは9分類で、件数の多い順は次のとおりだ。

物資認定件数
蓄電池37件
半導体27件
航空機の部品17件
クラウドプログラム11件
重要鉱物6件
工作機械及び産業用ロボット6件
永久磁石5件
先端電子部品4件
可燃性天然ガス1件

(認定供給確保計画ベース、2026年6月時点・計114件)

蓄電池と半導体で全体の半数を超える。EV と電動化を支える蓄電池、デジタル基盤の要である半導体に、認定が集中していることが数字から見て取れる。

認定企業の顔ぶれ

認定を受けているのは大手だけではない。1分類の中に、最終製品メーカーから素材・部材を担う中堅まで、サプライチェーンの各段が並ぶのが特徴だ。上場企業の例を物資別にいくつか挙げる(証券コードを併記)。

  • 蓄電池: トヨタ自動車(7203)、関連子会社のパナソニックエナジー など。完成車メーカーと電池専業が混在する
  • 半導体: ルネサスエレクトロニクス(6723)、ローム(6963)、SUMCO(3436) など。デバイスからウェハ・材料まで広い
  • 航空機の部品: IHI(7013)、神戸製鋼所(5406) など。エンジン・素材を担う重工・素材勢が中心
  • クラウドプログラム: さくらインターネット(3778)、KDDI(9433)、ソフトバンク(9434)、GMOインターネットグループ(9449) など。国産クラウド基盤の担い手が並ぶ

非上場企業や中小企業も多数含まれるため、一覧の全体像は SEISAKU DB の認定データで確認してほしい。重要なのは、「国がこの物資の供給網の担い手として認めた企業」を、推測ではなく公表ベースで特定できる点だ。

GPIF 保有との物資別クロスマッピング

認定企業のリストは、それ単体でも価値があるが、別のデータと突き合わせるとさらに読める。SEISAKU DB は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の保有銘柄と経済安保の認定企業を、物資別にクロスマッピングしている。

GPIF は世界最大級の年金基金で、保有銘柄は18,470件(評価額約¥244兆)を取り込んでいる。このうち経済安保の認定企業にあたる保有分を物資別に集計すると、認定企業の GPIF 保有評価額は合計約¥8.42兆になる。内訳は蓄電池¥3.4兆、半導体¥1.6兆、重要鉱物¥0.9兆、工作機械¥0.8兆、永久磁石¥0.6兆、クラウド¥0.6兆、先端電子部品¥0.5兆、航空機の部品¥0.06兆だ。

これは「国が供給網の担い手として認めた企業に、国民の年金がどれだけ投じられているか」を物資別に可視化したものになる。経済安保と公的年金という、別々に語られがちな2つの政策を、企業エンティティで縦串にすると見える数字だ。

誰がこの見方を使うのか

投資家は、経済安保認定を「国の支援が入る供給網の担い手」というシグナルとして、関連銘柄の選別に使う。供給網を担う企業のIR担当は、自社の認定ステータスや同業の認定状況を投資家説明の文脈に組み込める。政策コンサルやシンクタンクは、物資別の認定集中度から、国の経済安保政策がどこに重みを置いているかを読む。

いずれも、印象ではなく公表データに基づいて「どの企業が、どの物資で、国に認められているか」を語れることが土台になる。AI に質問するときも、この認定データを裏付けとして引けるかどうかが信頼性を左右する。

注意点

本記事の認定件数・企業は、公表されている認定供給確保計画に基づく2026年6月時点の集計である。認定は随時追加・更新されるため、最新の状況は SEISAKU DB のデータで確認してほしい。GPIF の物資別評価額は、認定企業を法人単位で名寄せしたうえで保有分を集計したもので、保有データの時点に依存する。物資の指定や認定は制度上の枠組みであり、個別銘柄の投資判断を示すものではない。

関連する読みもの

経済安保のような政策テーマで「議論の量」と「予算の量」がどうズレるかは「議論×予算ギャップの読み方」で扱った。国の支出を一次情報で追う出発点である行政事業レビューは「行政事業レビューとは何か」にまとめている。

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