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大塚直 ·早稲田大学法学学術院教授

衆議院環境委員会(2024-04-26)での発言

第213回国会 ·第第10号号 ·5,064字
○大塚参考人 早稲田大学の大塚でございます。  環境法を四十年間にわたって専攻して、研究してまいりました。環境政策学会の理事長なども務めさせていただいております。  本日は、地球温暖化対策の推進に関する法律の改正案と地域共生型再エネの導入促進ということでお話しさせていただきたいと思います。  今回提案されているこの改正案のポイントは、先ほど来御議論があります二国間クレジット制度の着実な実施の確保を図るための体制強化、それから、二つ目に、地域共生型再エネの導入促進に向けた地域脱炭素化促進事業制度の拡充、三つ目に、日常生活における排出削減に向けた政府、事業者、国民による更なる取組の促進などの三点でございます。  本日、私は、この二つ目の点についてお話をしていきたいと思います。  地域共生型再エネの導入促進に向けた地域脱炭素化促進事業制度の拡充でございます。この点につきましては、気候変動対策の推進が進められているとともに、他方で再エネ導入に関するトラブルがあるという問題状況が、まず指摘しておかなければいけない点でございます。  二〇五〇年のカーボンニュートラル及び二〇三〇年度に、温室効果ガスを二〇一三年度比で四六%削減するということを目指すことが政府から表明され、二〇五〇年のカーボンニュートラルにつきましては、この温対法の基本理念として挿入されています。第六次エネルギー基本計画では、二〇三〇年度の電源構成は、再エネについては三六%から三八%、更に高みを目指すという目標とされています。自治体においても、グリーントランスフォーメーションの推進が期待されているところでございます。  もっとも、このような気候変動対策の推進とは別に、再エネの導入拡大に伴い、地域によっては様々な環境トラブルが生じております。その背景としては、再エネ特措法の制定のときに認定要件を簡素化していたこと、再エネ導入が地方公共団体が関与しない形で行われたことにあると考えています。  また、再エネ導入による地域へのメリットが見えにくいという指摘もなされておりまして、これらの課題は、地方公共団体による再エネに対する抑制的な条例の策定の増加にも影響しております。  そして、このような状況におきまして、令和三年に温対法が改正され、地方公共団体実行計画制度が拡充され、地域脱炭素化促進事業制度が創設されまして、令和四年の四月から施行されているところでございます。  また、令和四年には、再エネの事業規律強化に関して関係省庁が検討会を立ち上げておりまして、私も含めた有識者、自治体、業界団体などが委員となりまして、提言案を取りまとめています。この提言に基づきまして、昨年の再エネ特措法の改正などが行われています。  もっとも、温対法の地方公共団体実行計画制度との関連では、今年の三月の末時点で、市町村の促進区域の設定は僅か二十六件でございまして、事業計画認定は一件のみでございます。令和三年の温対法改正でせっかく設けられた制度が十分に活用されているとは言えないという状況でございます。  こうした中、この制度にはどういう課題があるかということが問題となりまして、この点につきまして、環境省で検討会が開催され、私が座長を務めさせていただきました、昨年八月にその取りまとめが公表されております。  次に、二の、温対法の地域脱炭素化促進事業制度の現状のところに移っていきたいと思います。  令和三年の温対法の改正により、促進区域を含めた、地域脱炭素化促進事業の促進に関する事項を定めることが、市町村の努力義務となりました。これは、市町村が、地域の再エネ資源、それから再エネに関するステークホルダーをよく知っているということからすると、望ましいことでございます。もっとも、先ほど申しましたように、市町村の促進区域の設定はこれまでのところ二十六件にすぎません。  一方、宮城県、熊本県などでは、促進区域へ事業を誘導したり、ゾーニングマップの作成、合意形成を進めるなどの動きが見られております。図の一を御参照ください。  地域脱炭素化促進事業ではございませんが、再エネ事業の実施に伴う地域の経済、社会の持続的な発展に資する取組といたしましては、石狩市とか宮津市などの例がございます。図の二と図の三を御参照いただければと思います。  先ほども申しましたように、二〇五〇年カーボンニュートラルに向けて地域における再エネの導入の必要性は高まっておりますが、他方で、特に初期の無秩序な再エネの導入に伴う環境トラブルなどに対処し、更なる再エネの導入のために地域における合意形成を進めるためには、再エネの地域共生型の在り方が極めて重要になってまいります。  地域共生型の再エネは、各地の地方公共団体の諸問題を、その導入によって、新しい産業、雇用の創出、地域内の経済循環を通じて解決していこうとするものでございます。地域共生型の再エネは、再エネ導入という環境政策によって地方創生を果たしていこうとするものでございまして、第五次環境基本計画の地域循環共生圏という考え方と大いに関連しているものでございます。  しかし、このような発想を実現するためには、様々な施策が必要となります。  第一は、市町村を中心とするゾーニングによる再エネ導入の適地の発見でございます。この点は令和三年の温対法改正に伴う促進区域制度に反映されています。地域共生型の再エネの導入は支援し、迷惑施設と捉えられる再エネについては厳しく対応するという区分が極めて重要でございまして、図の四を御参照いただけるとありがたいと思います。これは、環境省の方からのペーパーで、資料として審議会で使ったものでございます。  この点に関しましては、本来は、広域ゾーニングが必要でございますけれども、それに向かって段階的に取組を進める前提で、まずは合意形成のしやすい、特定の地区、街区の地域共生型の再エネの導入を後押しするために、例えば、スマートコミュニティーとか工業団地などで促進区域として設定していくということも考えられます。  第二に、再エネは地域にとっての資源でございまして、再エネの導入は災害時における非常用電源の活用など、地域にとって様々なメリットがございます。しかし、それが、地域の経済循環の発展とか地方創生に資するということを明らかにしていくことが必要でございまして、この点がまだ必ずしも十分に行われてこなかったということが問題であると思っています。この点に関しまして、環境省が進める脱炭素先行地域、あと地域脱炭素化促進事業制度は、地域主導の再エネ導入を促進する枠組みとして極めて意義があると考えております。  第三は、地域脱炭素化促進事業制度実現のための人材の育成を始めとする様々な支援の必要でございます。  今申しました第二点、第三点を実現するために、地域脱炭素化促進事業制度、それから促進区域の設定に関しましては、市町村の負担軽減策、市町村へのインセンティブの強化、市町村にとってのメリットの確認、国、都道府県、市町村、事業者などの役割分担、連携強化、事業者へのインセンティブ強化、系統整備との連携、他の関連する制度との連携などが必要になってくると考えられまして、これは検討会の方で取りまとめたものと関連しております。  次に、温対法の改正案と地域共生型再エネの導入促進のところに移っていきたいと思います。  法律案における改正点は、次の二点でございます。  第一は、現状では市町村のみが定めている促進区域等について、都道府県と市町村が連携して広域の促進区域設定を可能にするために、地方公共団体実行計画において、都道府県と市町村が共同して地域脱炭素化促進事業に関する事項を定められるということにする点でございます。これは、新しい二十一条の六項が関連しています。  これは、市町村では促進区域を設定しようとしても、人材とか財源が足りないということが多いですし、再エネが複数の市町村にまたがる場合には設定が困難になるということがございますので、このような改正は是非必要であると考えています。  また、都道府県におかれましても、自らの地方公共団体実行計画において再エネの利用促進に関する目標を設定して取組を進めるということが必要でございまして、そのためには、積極的に市町村の促進区域設定を後押しすることが必要であると考えられます。  また、地域脱炭素化促進事業に関する事項を都道府県及び市町村が共同策定した場合におきまして、複数の市町村の区域にわたる地域脱炭素化促進事業計画の認定などを都道府県が行うこととするという、新しい二十二条の五というのが重要でございます。隣接する市町村との境界における事業計画が申請されることも多いわけでございます。  例えば尾根などで、風力とかも含めて発電所を、事業計画を申請するときに、隣接市町村との境界における事業計画という申請がございますが、事業者が一つの事業であるということから、認定事業等の一本化が必要とされるということで、このような提案がなされているということでございます。  第二に、現行の温対法は、地域脱炭素化促進事業計画の実施の円滑化を図るために、認定地域脱炭素化促進事業につきましては、関係許認可等の手続のワンストップ化を行っています。このワンストップ化の特例につきましては、今回、対象となる法令に、宅地造成及び特定盛土等規制法を追加するということが提案されています、新しい二十二条の二、二十二の十がこれに関係しています。  これは、関係許認可等の行政手続の一本化、窓口の一本化によって、事業者の行政手続の効率化を図るものでございます、いわゆる規制緩和ではないということも指摘しておきたいと思います。  このうち、第一点につきましては、先ほど私が座長を務めさせていただいている検討会の取りまとめの三つ目のものを踏まえたものと言えると思います。  ほかにも、政府におかれましては、以下の措置を取ることが予定されています。  一つは、地域脱炭素化促進事業への経済的インセンティブを強化するということでございます。具体的には、認定地域脱炭素化促進事業に係る太陽光発電設備につきまして固定資産税を軽減するということが予定されています。また、再エネのフィージビリティースタディーに関して財政支援をするということも予定されています。この点は、検討会の取りまとめの二つ目のものに対応するものでございます。  第二に、金融面からの地域脱炭素化支援を行うということも予定されています。具体的には、地方公共団体実行計画に基づく地域脱炭素化の取組につきまして、脱炭素化支援機構、さらに地域金融機関などを通じて、資金供給面から支援するということでございます。地域金融機関は、この脱炭素化を推進するために非常に重要な役割を果たしていただくものでございます。また、脱炭素アドバイザーの資格制度によって認定された民間資格などを活用した人材育成を行うということも予定されています。こちらも検討会の取りまとめに対応するものでございます。  以上、自治体のグリーントランスフォーメーションにつきまして、地域脱炭素化促進事業制度、それから再エネを中心としてお話をしてまいりました。再エネに関しましては、我が国全体として再認識すべき点を二つ申し上げておきたいと思います。  第一は、二〇五〇年カーボンニュートラルを達成するためには、再エネのシェアを大幅に高めることが必須であるということでございます。  第二は、再エネは地域に便益をもたらすものでありまして、もたらさない状況があるとすれば、それは改善しなければならないということでございます。再エネは、地域にメリットを与える点で、いわゆる迷惑施設でないものとすべきでありまして、そのように捉えられない方向に改善していかなければなりません。地域脱炭素化促進事業を最大限活用したゾーニングの徹底などによって、どの地域に再エネを導入し得るかを見極めていくということが極めて重要であると考えております。  私のお話はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

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