○大塚参考人 早稲田大学法学学術院教授の大塚直と申します。
環境影響評価法、アセス法改正と関連する事項について申し上げます。
お手元のパワーポイントと論稿のレジュメを御参照いただければと思います。パワーポイントの後ろの方に論稿がございます。
論稿一ページの「はじめに」に書きましたように、環境アセスメントは、1から4のプロセスを経ることによって合理的な意思決定をするためのツールとして位置づけられます。
今日、ネットゼロ、ネイチャーポジティブの実現が目指される中で、再エネの導入と地域の自然環境の保全の両立を図りつつ、地域の合意形成を進めるために、アセス手続が果たすべき役割は極めて重大でございます。
アセス法は大規模改正から十数年を経ておりまして、その間に問題が山積しております。中央環境審議会でも検討が行われまして、そこに記載した答申が出されました。私もこれに参加しております。本改正案も、この答申と関連していると思われます。
アセス法改正案のポイントについてまず申し上げます。二つの点がございます。
第一が、建て替え事業でございます。論稿二ページの(2)(b)のところを御参照いただければと思います。
建て替え事業については、二点で絞っています。
1として、同種の工作物、つまり新設工作物の規模が既存の工作物と同程度であること、2新設工作物と既存工作物の設置場所が同一又は近接していること、この二点です。規模と位置の要件です。
1に関しましては、同種の工作物について、既存と新設の工作物の規模に関する数値の比が政令で定める数値の範囲内であることに限られています。この数値の比というのは、規模、つまり出力の数値の比となります。
審議会では、規模よりも環境影響の程度で判断する趣旨の意見もありました。しかし、これによる場合には、判定自体が重い手続になり過ぎてしまいまして、建て替え事業について手続の簡素化を進めるという趣旨が実現しないというふうに考えられましたので、規模を基準としたものと思われます。
建て替え基準の配慮書につきましては、当該事業に係る環境の保全のための配慮の内容が記載されます。これは、既存事業の環境影響評価を踏まえ、新設する工作物についての環境配慮の内容を明らかにする趣旨です。
風力発電について見れば、例えばバードストライク、騒音などの問題点があれば、それをリプレース後の事業で改善することです。
改正案の建て替え事業は、規模と位置の要件を満たしているところから、既存工作物に関する環境調査、モニタリングの結果を新設工作物のアセスメントに活用できる可能性が高いと考えられたものと思われます。
もっとも、規模と位置の要件を満たしていても、例外的に、リプレースのときに新規の土地の改変が大規模に実施される場合もございます。このような場合には、建て替えであっても、既存工作物の環境影響を踏まえた配慮にとどまらず、新設工作物によって重大な生態系影響などが生じないように、環境保全のための配慮を行う必要が生じます。
このような建て替え配慮書の作成に当たっての留意点につきましては、今後、アセス法に基づく基本的事項と主務省令で定められる予定でございます。
なお、この場合の環境保全のための配慮に関する判断主体は事業者でございますけれども、その内容が環境保全の観点から十分でないという場合には、環境大臣を含め国が意見を述べることができます。
こうして、リプレースに関する法改正案の効果といたしましては、再エネについて見れば、促進と抑制の両面が定められていると言えます。手続の簡素化に関しましては再エネ促進に資すると言えますが、環境保全のための配慮の内容の記載も求められることになります。
次に、二つ目の縦覧期間後の環境アセス図書の公開に移ります。
論稿五ページの(2)(b)のところを御参照いただければと思います。
改正案五十二条柱書き第二文の事業者の同意を要するとした点は、著作権との関係で入れられた規定です。私としては、公益の観点から、著作権法に適用除外規定を入れて、同意を必要としない扱いをすることが望ましいと考えていますけれども、これは今後の課題と言えると思われます。
五十二条の「政令で定める期間」というのは、現在の環境省のアセス図書の保管期間は三十年でございまして、これが参考になるものと思われます。
五十二条の「インターネットの利用その他の方法により」のその他の方法には、紙媒体への印刷やその複写も含まれます。
なお、インターネットで公開するに当たっては、公衆送信権に関する同意を事業者から得る必要がございます。また、図書の印刷、ダウンロードを可能にする場合には、複製権に関する同意を事業者から得る必要があると考えられます。
次に、今申しました二点以外の環境影響評価制度の課題に移ります。
一つ目は、前回改正の二〇一一年改正の効果についてでございます。
配慮書、報告書手続は共に有効性を確認されました。この二〇一一年改正で入った二つの手続は共に有効性が確認されましたが、報告書手続については、発電所アセスに関しまして、電気事業法に、報告書に対して環境大臣が意見を述べる機会を設けられていない点に制度上の問題点があると思われます。この点の現行制度の理由としては、電気事業法で、環境影響評価書に記載されたとおりの工事を行うことが工事計画の認可等の条件とされているからだと説明されています。
しかし、風力発電所におけるバードストライクなどの影響は不確実性が高く、構造の確認では環境保全措置を確保できない可能性がございます。認可等との関係だけでは工事着手後の環境影響を厳密に規律することは難しい場合がございまして、国が報告書を取得して意見を述べる制度上の仕組みをつくることが必要であると考えられます。
なお、全般的に、アセス法手続において、供用段階を含めて事後調査をすることを明確にしていくことも重要です。
次に、陸上風力発電所アセス特有の問題に移りたいと思います。
第七次エネルギー基本計画では、二〇四〇年の電源構成に占める再エネの割合は四から五割、風力は四%から八%に引き上げることが示されています。また、陸上風力についても、第六次エネルギー基本計画で、二〇三〇年度の目標として十七・九ギガワットという高い導入目標を掲げています。しかし、陸上風力の環境影響の懸念も重要な課題になっております。
アセス手続は、適正な環境に配慮した地域共生型の陸上風力を最大限導入するために重要な役割を持っています。
風力アセスに特有の課題として、二点を挙げておきます。
第一は、地球温暖化対策推進法における地方公共団体実行計画の中での市町村等による促進区域の設定との関係です。適切な立地環境への誘導によって風力の導入を促進するために、ゾーニングに関するほかの制度とアセス法のアセス制度との連携を強化することが課題とされています。
第二に、第二種事業の規模要件を引き下げ、スクリーニング手続を用いて簡易アセス類似の判断をすることが考えられます。先ほど、島田参考人が最後に言われたことと関係しています。
二〇二一年に、風力発電導入の迅速化の要請の下に風力アセスの第一種事業の規模要件が引き上げられました。風力発電所がアセス法の対象とされた二〇一二年以降の施行状況を見ますと、風力アセスは全体の法アセスの九割を占め、また、法律と条例のアセスの割合を見ると、風力アセスはほとんどが法アセスになっていました。このように、ほかの対象事業における規模要件と比較して、風力の法アセスの対象がやや広過ぎたという認識から引上げを行ったものと言えます。
風力の法アセスの規模要件についての検討の結果、規模要件を一万キロワットから五万キロワットにしたほか、風力に関しては規模だけでなく立地が重視されるべきことが明らかになりました。風力発電について立地が重要になるのは、事業そのものの特殊性として、風車自体が環境影響の要因となっているからです。バードストライクや騒音のことを考えるとお分かりになりますように、事業の規模、出力の大小だけでなく、風車を設置する場所の環境によって環境影響の程度が大きく左右されるわけです。
風力アセスの対象に関する規模要件引上げの結果、一から三・七五万キロワットの風力発電所のアセスについて、法律でも条例でも対処しないケースが一部発生しました。風力に関しては規模だけでなく立地が重視されるべきだということを踏まえつつ、これに対して対処するためには、第二種事業の規模要件を引き下げ、スクリーニング判定の手続を通じて簡易アセスを実施することが考えられます。
そして、この点については、従来の考え方を修正して、立地に着目し、明確かつ適切にスクリーニングするための新基準を整備すること、事業特性を踏まえつつ、この新基準に基づいて簡易アセスをする手法を検討することが必要になります。
環境アセスメント法には、そのほかにも様々な課題が残されています。特に、戦略的環境アセスメント、SEAについて一言申し上げておきたいと思います。
再エネのような事業について、立地選定をして適地に誘導するためには、地域空間計画を作ってSEAを行っていくことが必須です。これは、陸上風力についても洋上風力についても同様です。
我が国にも、部分的にSEAを実施する、あるいは、しようとするものがあります。さきに触れました、地球温暖化対策推進法に基づき市町村が促進区域を設定する手続がその一つです。もう一つは、現在国会で審議中の再エネ海域利用促進法改正案における、洋上風力発電事業の区域指定に当たって環境省が海洋環境調査を実施する制度です。
もっとも、包括的な地域空間計画、海洋空間計画や、それに伴うSEAは、我が国では導入されていません。欧米ではかねてSEAが導入されていますが、風力発電の迅速な導入、環境リスクの低減、事業の予測可能性の確保、これらを効率的、効果的に行うためには、空間計画とSEAが必須であると思われます。
SEAがなく、事業アセスメント、EIAのみで対応するときには、当該地域環境全体のあるべき利用の仕方についての検討がなく、各部分においてパッチワーク的に対応しているだけであり、到底合理的な対応をしているとは言えないと思われます。
地域空間計画、SEA、EIAの関係については、九ページの図を御参照いただければと思います。パワーポイントの九ページでございます。SEA制度化が急務であると考えております。
以上で私の報告を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
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