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佐藤暁 ·アドバイザリー・ボード会員/原子力コンサルタント

衆議院原子力問題調査特別委員会(2024-05-31)での発言

第213回国会 ·第第3号号 ·2,705字
○佐藤参考人 原子力コンサルタントの佐藤暁でございます。  今日は、規制行政についてだけでなくて、原子力政策に関する少し大きな話をさせていただきたいと思っております。  次のスライドです。  目下、日本には十二基の加圧水型原子炉が稼働しておりまして、二十一基がまだ保留の状態にあります。しかし、それら保留状態の原子炉に対する全ての審査の終了や再稼働を待つ間にも、規制活動として着手すべきことはたくさんあります。今日は、これらをここの二つのカテゴリーに分けてお話しさせていただきます。  次のスライドをお願いします。  安全は、もちろん最優先です。新規制基準が適用され、各原子力発電所の耐震性が向上し、津波対策や竜巻対策も行われるようになったのは、安全性を高める意味で有効です。また、万一の原子炉事故に備えて、その抑止と緩和のための対策も追加されています。それらも安全対策としては有効なはずです。  はずと申しましたのは、そのような安全対策の中身には、多くのマニュアルに沿った人的な対応が含まれていますことから、そのような有効性が発電所の職員の緊張感と技量に依存しており、それらを持続させていくための安全文化と訓練があってこそだということです。これらの点は、原子力規制委員会のスタッフにも強く認識していただいて、審査業務、検査業務に反映していただく必要があります。  また、国外では、日本では着手していない安全対策としての新技術も開発と導入が進められております。その一つとしまして、福島事故のときには日本の全国民を震撼させた水素爆発を起こした事象、それに寄与した材料を改良した新しい燃料被覆材の開発もあります。  核テロの脅威は、新たに出現した新種の脅威というわけではありません。  次のスライドをお願いします。  しかし、ほかの脅威に対する安全対策が充実してきているのに比べて、核テロの脅威への対策に関しては、依然とその有効性に満足できない問題が幾つかあるように感じられ、諸外国、特にアメリカにおける運用のレベルからは著しく劣っているのが現状です。  次のスライドをお願いします。  それらを具体的に列挙しますと、このような項目となります。引き続き検討していかなければならない項目がたくさんまだ残っていると受け止められます。  次のスライドをお願いします。  ここから先は、二つ目のカテゴリーとしまして、つまり、原子力発電の経済性向上のために必要なアクションについてです。  経済性を優先するということは、安全性を犠牲にすることとの一般的な印象もありますので、注意が必要ではありますが、両立は可能です。  日本の電力事業者の経営者は、欧米と比べて甘やかされてきた環境にあると言えないことはありません。そのためなのか、原子力による発電単価の引下げに対する努力が日本においては著しく緩慢でした。下請企業に対する発注額の査定が厳しいとの声も関係者からは漏れてきますけれども、電力事業者がより努力をすべきことは、そのような瑣末なことではなくて、原子力発電所の安全性を維持しながら、もっと設備を有効的に、効率的に使って、発電量と売上げを伸ばし、発電単価を下げることです。  この努力の日米差は、既に福島事故以前にも歴然としていました。このまま放置され続けるべきではありません。これは、まずは電力事業者が意欲的に取り組むべき課題ではありますけれども、規制者としても、必要な規制インフラの整備などを用意するべきです。  次のスライドをお願いします。  電力事業者が具体的に取り組むべき課題は明白です。既にどれも欧米などで成功の実績があります。  今見ていただいているスライドの灰色の面積を、稼働中の十二基と今まだ保留の状態が続いている二十一基が、設備利用率六五・六%で、この根拠については後で御説明いたします、四十年間運転を続けた際の発電量を示すものとした場合、発電量は七千二百七十テラワットアワーとなります。今の全国平均の家庭用電気料金がキロワットアワー当たり三十一円ということですので、これで換算いたしますと、このグレーの部分が二百二十六兆円という売上げに相当いたします。  もし設備利用率をアメリカ並みに九〇%に引き上げる、そうしますと、この絵の緑の部分が増えます。発電容量に対しても、アメリカ並みに、パワーアップレートといいますけれども、出力を元々の、設計の定格よりも上げて、一五%引き上げたというふうにしますと、青の部分になるわけなんですが、さらに、その状態で発電施設の寿命を六十年あるいは八十年と延長した場合には、今度はオレンジ色の部分が増えてくるということになります。このオレンジ色の部分だけで、先ほどの一キロワットアワー当たり三十一円というもので換算いたしますと、六十年に延長した場合で百七十八兆円、八十年にすれば三百五十六兆円というふうになります。  繰り返しますけれども、これは新しい未来の技術を期待してではありません。今アメリカが実践していることを、日本の電力事業者の関係者、規制関係者、それぞれの役割部分を学んで実行することによって達成できることです。是非ともこのようなことに対しての挑戦を政治の力で進めていただきたいと願います。  また、このような活動は決して強引に進められるべきではありませんので、合意の形成のために十分議論に時間をかけて決定されなければなりません。  次のスライドをお願いします。  原子力発電所を建設するために、一基当たり数千億円ものお金がかかりました。そして、今、再稼働のためにもそれに匹敵するほどの巨額が投じられています。原子力関係者は、その巨額の投資を国民に還元する責任があります。再稼働で満足して、このスライドの黒の線をたどって進んでいけばいいということなのか、米国が進んでいる上の赤い線に近づける努力をするべきなのか、これは議論の余地はありません。  今の甘やかされた経営環境から目を覚まして、新たな目標をロードマップに掲げて、目指すべきだと考えます。  次のスライドをお願いします。  これを御覧ください。このように、日本の原子力は、決して国際的に名誉ある地位にいるわけではありません。より安全にの次は、より経済的にを目標にして努力するべきです。電力事業者と規制者の双方がそれぞれの役割を果たして、次の十年間で達成を期待したいと思います。  私の意見陳述は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

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