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石川久仁子 ·大阪人間科学大学人間科学部准教授

参議院厚生労働委員会(2024-04-11)での発言

第213回国会 ·第第6号号 ·5,995字
○参考人(石川久仁子君) 大阪人間科学大学の石川と申します。  この度は、このような貴重な機会をいただき、大変感謝しております。  私は大阪で社会福祉士養成の仕事をしております。地域福祉を専門としておりますが、地域福祉の議論、実践の中に、今まで住まいというふうな要素が少なかったというふうに思っております。そのような中、この度の生活困窮者自立支援法改正において居住支援の強化が目指されているということを大変うれしく思いますし、また、目指す姿として示されている中に、相談支援体制の強化、そして見守り支援の強化、サポート付き住宅、住居確保給付金の拡充などというキーワードがありますが、これらは民間居住支援団体が訴え続けてきたことでありますので、このようなものが反映されているということは非常に居住支援が拡充していくのに非常にプラスになっているというふうに思いますが、しかし、やはり質、量とも足らないのではないかというふうに思っております。  私は地域福祉を研究する過程の中でいろいろな居住支援に関わる活動を行ってきました。私の意見の陳述のベースになる活動につきましては補足資料の一の方を見ていただきたいんですが、三つの活動をしております。まず、日本居住福祉学会における活動。そして、住宅セーフティーネット法以前より各地で居住支援の実践をつくり上げてきた団体同士のネットワーク組織である居住支援全国ネットワーク、このネットワークでは特に、後ほど申し上げますが、当事者から見た居住支援という調査活動を特に担当をしてまいりました。また、私の地元である大阪では、居住支援法人の指定を受けた社会福祉法人間の勉強会を行ってきました。このような三つの活動を背景に、ベースとして、主に居住支援に関する意見を申し上げたいというふうに思います。  まず、一点目です。居住支援の在り方を考えるに当たっては、居住困窮者の視点から考えることが重要だというふうに考えます。  居住支援の量、質がこれから拡大、量をどう増やしていくのかというふうなことが今まで考えられてきましたが、やはりもう質をどうしていくのかということがとても大切だと思います。それにおいては、質を何で測るかということでありますが、やはりこれは居住困窮を体験した当事者の視点からチェックするというふうなことが大変重要かというふうに思います。  住まいの確保は大切ではありますが、確保すればそれでいいというふうなことではありません。居住支援全国ネットワークが二〇二二年に実施した当事者調査において、居住困窮を経験したことのある百三十四人の利用者に対し、生活満足度、まあ生活満足度ということで質を測ろうとしたんですが、それに何が影響しているのかを分析しました。  私は地域福祉の関係者ですので、見守り活動とか社会参加とか、そういったものが生活満足度にプラスになっているんじゃないかというふうに分析したんですが、なかなかそこは優位ではなくて、はっきりと影響しているのは物件の満足度だったわけですね。  フリーアンサーを少し紹介したいと思います。  自分が部屋を探そうと思ったときに、理解のある業者さんと言われて会った業者から、制約を受けている人に貸せる部屋はここしかないみたいなことを言われた。アパートの部屋が老朽化して崩壊、そしてそこから転落、入院した。ほかのヒアリング調査を行ったときも、アパートのベランダが落ちたというふうなことであったり、風呂釜が二つある、それは、故障したので入れてもらったんですけど、それが元の物が撤去されないというふうな、このような状態。いずれも、非常に熱心な居住支援団体の支援を受けていての物件がこのような状況にとどまっているというふうなことなんですね。それが現状なんです。  居住支援においては、先ほど菊池参考人のお話の中にもあったと思いますが、一番肝腎なのは、私は本人の居住力、自ら住まいを整え、維持し、そして他者とつながりながら共に地域で暮らしていくことを高めるということが最も肝要だと思います。  見守り支援、トラブル相談、契約サポート、いろいろな仕組みが検討されていますが、それは何のためにするのか。本人の居住力を高めるということのためにそれを行うということが肝腎だと思います。そして、本人の力が高まるためには、その前提に、自分らしい生活の尊重がされる、何よりもやはり住まいを自分で選択できるというふうな、優良な住まいを、納得できる住まいを選択することが生活の質に非常に直接影響しているというふうなことです。  今回、単身高齢者の居住問題が大きく取り上げられていますが、障害を持つ方に関しても非常に問題があると思います。不動産会社の忌避感、いろんな調査がありますが、私の関わっている居住支援法人が大阪で行った調査によると、高齢者の忌避感よりも圧倒的に障害者、特に精神障害を持つ方への忌避感が強いです。ですので、このような状況をどうするかというところでグループホームに期待が集まるわけではありますが、その質も課題になっております。  私が大阪で開いている、呼びかけて開催させていただいている居住支援の法人の勉強会の中の基幹相談支援センターのある方の発言を少し紹介します。  住まいで一番大きな課題は、家を見付けることよりも、いわゆる貧困ビジネスに関わっているヘルパー事業所が入り込んでいるマンションなどで、本人は世話になっていると思っているかもしれないけれど、実質的にはお金を取られているし外出制限もされているような相談が何件もあると、この問題についてどうしたらいいのか一番悩んでいますと。権利擁護という面では、僕はキャッチした人がどれだけ踏み込んでいくのかということが大切だと思います。何でこのマンション、生活保護ワーカーが訪問してこれをよしとしているのか、基幹に言うなり虐待通報するなり、問題意識をどれだけ広められるか、人権意識をどういうふうに高めていくのかということが重要だと。皆、制度上はうまくやっていますというふうな発言がありました。つまり、居住支援の現状の中にアドボカシー、権利擁護の機能が欠落しているのではないか、非常に弱いのではないか。少し補足しますと、熱心な生活保護ワーカーの方もいらっしゃることもこの後に発言しておりますので、ちょっと付け加えたいと思います。  また、住まいの選択に当たっては、民間賃貸住宅だけではなく、シェルターだったり多様な施設入所というような選択肢もあります。これらの質も非常に重要だと思います。  先ほど紹介しました居住支援全国ネットワークが二〇二二年に行った調査によると、実は、その回答者の中で、かなり福祉施設であったりシェルターを利用経験がある方が結構多かったんですけれども、しかし、特にシェルターを経由して、でもその後もう一度居住困窮状態に戻ってしまったという人も多いんですね。ということは、福祉施設とかシェルターの運用、内容について課題もやはりあるのではないか。  ですので、居住支援においては、このようなシェルターであったり既存の福祉施設の役割、もう少し、例えばもっと活用できるのではないかと、その機能の向上についても併せて考える必要があるというふうに思います。  そして、二番目の意見が、居住保障の増強が必要というふうなことであります。やはり行政による公的責任を明確にする必要があると思います。  また、大阪での勉強会のある職員の発言を紹介したいと思います。  セーフティーネット住宅が始まっていますが、実際にはそんなに広がっていない、上質な住まいを提供するというところは余り広がらず、空き家を安普請で改修して生活保護受給者向けに住まい提供するという風景が全国に広がっているだけというふうな発言がありました。  住居確保給付金の拡大そのものは大変望ましい方向であると思いますが、やはり私も非常に限定的であると、やっぱり必要なのは普遍的な家賃補助制度であるというふうに思います。コロナ禍の居住支援において、居住支援全国ネットワークが加盟団体に対して調査を行わせていただきましたが、その中でも改めて住居確保給付金の特例措置が非常に効果的だった。  ですので、居住支援というのは、入居支援、そして連帯保証問題の解決、居住生活、その後の生活支援だけではなくて、やはりそもそも家を失わないように、居住を、今の住んでいる家を継続するための支援もとても重要であり、これに対して住居確保給付金、やはりお金の給付、やはり給付もすごくパワフルであるというふうなことで、改めて検討いただきたいというふうに思います。  そして、市町村の役割も大きいと思います。資料の項目でいうと、三、市町村におけるプラットフォーム、市町村居住支援協議会の役割というふうなところであります。  まず、住宅セーフティーネット法改正において、この度、市町村居住支援協議会を九割まで拡大させようというような方向が出ているのは大変望ましいことだと思いますが、大阪でも幾つかの自治体が居住支援協議会を立ち上げました。しかし、しかしですね、この事務局が民間団体に委託しているパターンが増えています。しかし、民間団体に委託しても、やはりこの取組というのは公的な取組でありますので、地方自治体のやはりプレゼンスというか存在感、その責任、役割というのははっきりしていただきたいんですね。  事業委託を受けている民間団体が不動産屋さんに回っても、えっ、何で民間団体がそれをしているのというふうなことで、公的な取組というふうになかなか理解していただきにくいというふうな、これ発展途上だというふうに思うんですけれども、そのような問題が起こっております。  そして、次、四の方に移りたいと思います。つまり、この居住支援を広めていくためには、やはり関係者への研修及び地域住民の啓発というふうなことが非常に重要だというふうに思います。  二〇一七年の住宅セーフティーネット法改正以後、居住支援に関する研修の機会はかなり増えたというふうに体感しております。私も幾つか講師をさせていただいていますが、それでもまだまだ居住困窮に関する知識や居住支援の現状であったりということが福祉関係者、住宅関係者双方に決定的にやはり不足しているというふうに思います。  そもそも居住支援の範疇というのは非常に幅広く、また制度が改変するスピード、そして実践のある意味で望ましいモデルのようなものがどんどん生まれますので、非常にこの変化が速いんですね。ですので、渦中の、それらを参考にしようにも、渦中の実践者たちも全体像が難しい状況というふうなことがあります。  ですので、今回の改正も、この後審議されるでしょう住宅セーフティーネット法の改正におきましても、このようなことが変わりましたと、こういうふうな新しい仕組みがありますよというふうなことは望ましいことではあるんですけれども、地方レベルに下りたときに、その制度が淡々と説明されるだけではなかなか伝わらないんですよね。ですので、それぞれの地域ごとのやはり居住困窮の実態とか支援の現状というふうなものを把握した上で、そこに参加している人々が納得して理解していく、それを広めていこうというふうな、そのような研修の在り方というのが非常に重要かと思います。  そして、その場においてやはり改めて重要なのは、居住困窮を体験した当事者の声を生かす、御本人さんの体験から学ぶというふうなことが大切だと思います。支援者ベースではなくて、当事者ベースの研修が必要ではないか。  何度も紹介しておりますが、居住支援全国ネットワークの行った調査においても、全国、この法改正について何か意見がありますかというと、皆さん結構いろいろ意見を持っていらっしゃるんですよね。自分のように部屋探しに苦労する人はたくさんいるので、物件を団体が所有していただいて、もっと障害を持つ人が地域で住みやすくしてくれるとうれしいと、理解ある大家さん、不動産屋さんが増えるようにセミナーなどを開催してほしいというふうに、皆さん大きな意見を持っています。そして、彼ら自身が実はこの制度を改変して動かしていく力を本人さんが持っているというふうなことを認識すべきだというふうに思います。  そして最後に、終わりにというところでありますが、私は、改めまして、居住支援というのは町づくりでもあるというふうに思います。  そもそも生活困窮者自立支援法においても町づくりというふうな要素は非常に重要であるというふうに位置付けられてはいますが、しかし、個人への支援に比べてやはり町づくりというふうな取組は非常に弱いというふうに思います。この居住支援に関しましても、ここに関わる当事者の方々同士やそれに関わろうとする住民の人たちの組織化であったり活動の支援、そして、繰り返しますけど、そのためには、核にある困窮の現状の把握と学習、そしていろんな団体の連携、そして居住福祉資源というか、地域に資源を開発していくというような居住に関わるコミュニティーワークが必要だというふうに思います。  また、実は地域の中にそのようないろんな資源、つまり、居住困窮を体験した当事者同士が共に過ごしたり住民の方々と関わるような場が、つくっていかないといけないんですけど、既に存在もしていたりもします。そういった機能のある共同空間を掘り起こしていく、まあコモンとも言えると思いますけど、掘り起こしていく活動をどんどん広めていく必要があると思います。  そして、最後の最後になるんですが、福祉関係者が居住支援を促進するためには、やはり物件がないと始まらない。福祉関係者は思いもあってネットワークもあるんですけれども、でもやっぱり物件が、住まいにしても居場所にしても、場所がないと始まらないところがありまして、これらを獲得したり、また獲得しても、借りることができても、例えば公営住宅を活用させてもらえることになっても、これを維持するようななかなかそのための資金もまた必要だったりするというふうなところがあって、なかなかパワーが足らないところがあります。こういった、もちろん制度も変わっていく、居住保障制度がしっかりと構築されていくことも必要なんですが、民間の人たちの取組が発展するようなことを支えるような仕組みも検討いただければというふうに思います。  以上で私の意見を終了させていただきます。  御清聴ありがとうございました。

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