○参考人(矢島洋子君) 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島と申します。
本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。私は、仕事と育児、介護の両立支援の課題の中でも、本日は、時間に限りがありますことから、育児期の柔軟な働き方とその運用に絞って意見を述べさせていただきます。
一ページめくっていただきまして、私のプロフィールですけれども、私は、三菱UFJリサーチ&コンサルティングという民間のシンクタンクで研究員として仕事をしてまいりました。一九九〇年から介護関連の調査を行い、二〇〇〇年頃からは子育てと仕事の両立に関する調査研究を行ってまいりました。そして、二〇〇八年頃から短時間勤務制度の導入、運用、この辺りに注力して研究してまいったわけです。近年は、ダイバーシティー経営に関する調査研究と民間企業へのコンサルティングなども行っております。
現在、厚生労働省労働政策審議会雇用環境・均等分科会の委員も務めさせていただいておりますので、こちらの審議会の議論も踏まえて今日はお話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
二枚めくっていただきまして、四ページですね、育児期の柔軟な働き方とその運用ということで論点を書かせていただいております。
まず、課題一として、柔軟な働き方を更に拡充していく必要性についてです。
こちら、二つの視点がございまして、一つ目は、子育て期の就労者の多様なニーズへの対応という、言うまでもなく、更に多様なニーズに対応していく必要性ということがあります。
ただ、この改正を検討する際に留意すべき点として、幾つか問題があると思っております。
一つは、現在の支援制度の利用率の男女差、特に短時間勤務利用が女性に偏っている状況。それから二つ目には、大企業では独自に制度を拡充しており、大企業と中小企業の差が開いているという状況があるということです。それから、先ほど池田さんからのお話にもありましたけれども、働きやすさだけを配慮していくと働きがいやキャリア形成の視点が落ちてしまう、そのことによっていわゆるマミートラックにはまるというような問題が起きてしまうということです。
ただし、短時間勤務に対するニーズも根強くあるということも十分考慮する必要があると私は考えております。それは、日本に限らず、欧米先進国に目を転じますと、育児期には男性も含めてかなり労働時間が分散している、短時間で働いている人も多くいるということです。日本や韓国では男性が長時間労働にかなり集中して、そこに固定化されているということが課題ですので、男性も女性も育児期に様々な労働時間で働ける、このことも重要ではないかと考えております。
また、子供の健康とか生活の視点から、厚生労働省では健康づくりのための睡眠指針の改訂というのを令和五年に出しておりますけれども、三歳―五歳、十から十三時間、小学生で九から十二時間という指針が出ています。こうしたことに子育て家庭が対応するためにも、一定程度短時間勤務というニーズは残るのではないかというふうに考えております。
それから二つ目に、多様な業務、職場特性への対応です。
どうしても柔軟な働き方を導入するというと労働者のためということが優先されがちですけれども、実は職場の側にも柔軟な働き方を取り入れるメリットがあるということが重要ではないかと考えております。ただ、その際、今現状ですと、短時間勤務、子育て中の社員は短時間勤務が当たり前という形で、短時間勤務に余りにも集中していることは職場のマネジメントを少し困難にしている面があるということです。
それから、短時間勤務、同じ短時間勤務でも、企業によっては法定の六時間以外に七時間、七時間半と様々な時間帯を設定できるように制度を工夫しています。あるいは短日勤務というものを設定しています。こうしたより柔軟な制度設計をすることが、職場の中で様々な時間を組み合わせて職場運営をしていく上で重要ではないかと。このことを自主的にやっている企業もありますけれども、まだ認識していない企業もありますので、こうした活用ができるということも周知していくことが重要ではないかと考えております。
そして、やはり企業も労働者も、仕事に適した柔軟な働き方を選んで使っていくという発想がまだまだ不足しているので、この辺りを周知することも重要ではないかと考えております。
次のページは、皆様御承知のとおり、今般の改定で検討されております柔軟な働き方の拡充ということで、特に三歳から就学前までにフルタイムでの柔軟な働き方の選択肢を増やすということが重要なわけですけれども、審議会でも既に、この三歳から就学前のところで短時間勤務が使えていた人たちがこの改定で使えなくなるということがないようにということが何度か議論されておりますので、この辺りの留意が必要ではないかと考えております。
次のページからは、私どもの会社が独自に調査しておりますデータで、ライフイベントに即した女性の働き方の理想と現実という図を付けております。
こちら、二〇〇八年頃から何度も当社で調査をしておりまして、今お示ししているデータは二〇二二年のものです。左側の理想を見ていただきますと、結婚していない場合から子供が生まれて子供が三歳未満、そしてだんだん子供が大きくなっていくに従って働き方の理想が変わっていく様子が分かります。やはり、子供が三歳未満、小さなときは短時間勤務のニーズが圧倒的に多いのですが、子供が大きくなっていくに従ってフルタイムでいいという人も増えてくるので、こういったニーズに合わせて制度が利用できるようになるということが必要かと思います。
一方で、二〇〇八年頃から何度もこの調査をやっていく中で、現実が理想にだんだん近づいてきていると、女性の場合ですね。つまり、女性は子育て期に柔軟な働き方ができてきていると。そのことによって、理想の方の働きたくないというM字の溝ですね、子供が三歳のところのM字カーブの溝がだんだん浅くなってきているんですね。ですので、現実が理想に近づいていくに従って、子供が小さいときには働きたくないという女性が減っていくという、このことも重要なポイントかと思っています。
次のページ見ていただきますと、一方、男性のデータというのも取っております。男性も十年ぐらい前から何度か取っているんですけれども、御覧いただくように、男性もライフイベントに合わせて働き方を変えたい、残業もあるフルタイムの仕事は子供が生まれたらもう希望する人はかなり少ないんだということが分かります。こちらの男性の希望も、十年前から比べますとかなり、短時間勤務ですとか、フルタイムだが残業のない仕事で柔軟性のある仕事、こういったものに対するニーズが拡大しています。今後はこうした男性の柔軟な働き方のニーズにも応えていくことが必要だと考えております。
次のページ、八ページに参りまして、今度はその柔軟な働き方の運用の工夫をしていく必要があるという視点です。
多様で長期化する制度の有効な活用方法の周知と、それを有効に、まあ何が有効な活用かということを労使共に認識していくために、キャリアという視点を強く持っていくことが重要なので、キャリア支援の強化ということが重要ではないかと考えております。
子育て家庭の多様なニーズへの対応と多様な業務、職場特性への対応ということをさきに示しましたけれども、この両者の視点から、柔軟な働き方の選択肢を増やし、組み合わせて活用する、そのことが双方にプラスになるんだという視点で活用していくことが重要です。
日本の企業の場合、どうしても柔軟な働き方の選択肢や対象者はできるだけ絞りたいんだと、その方が効率的に職場運営ができるんだという発想がまだまだ根強いです。一方、英国でワーク・ライフ・バランスを進めている中では、働き方や対象が多様である方が職場運営が進みやすいと。一つの、例えば子育て中の女性で十時から四時ぐらいだけ働きたいみたいな人だけがいると、朝と夕方の職場の人手は不足してしまうわけですよね。もっと、フレックスタイムで朝にずらす人、夕方にずらす人、あるいは高齢で短時間勤務を使う人、そういった人たちのニーズが多様になってきて、それぞれの違ったニーズを組み合わせた方が職場の仕事のニーズを満たせるんではないかと、イギリスはこういった発想で早くから柔軟な働き方の対象やメニューを広げてきたという経緯がございます。こういった視点も重要ではないかと考えております。
それから、制約社員、特に短時間勤務制度利用者等のマネジメントや評価について工夫していくことが必要です。
業務配分、評価、キャリア形成支援、こういったものを企業が支援していくためのマネジメントを導入するということが重要なテーマで、厚生労働省ではもう十年以上前からマニュアル等のツールを作成しておりますが、残念なことに、ほとんど普及していない、知られていないということがあります。ですので、こういったことを普及していくということが大事です。
十二ページを御覧いただきますと、済みません、少し飛びますけど、十二ページを御覧いただきますと、この時間制約社員の働き方の質を高める業務配分ということで、時間制約社員には質を落とさずに働き、仕事量を勘案するような仕事配分を行うこと、そして職場全体に働き方改革を行い、就業時間内で収まる業務の見直しを行うといった考え方が、これ、こちら厚生労働省のマニュアルにも示されているところですけれども、書かさせていただいております。
そして、次のページには、目標設定のポイントとして、フルタイムの人に対して、六時間勤務の人であれば、目標の量を勘案して、そしてその設定した目標を一〇〇として評価を行うことの必要性、こういったものを示させていただいております。
済みません、また八ページに戻っていただきまして、こういったこと、行うことは男女の賃金格差の縮小にも非常に有効な手だてになるというお話をさせていただきます。
こういったことは、十四ページ、済みません、また飛びますけど、十四ページに飛んでいただきまして、データを示させていただいております。
こちら、令和四年の賃金構造基本統計調査から、育児期の短時間勤務者とフルタイム勤務者の処遇差というのを算出しております。一番右側のところで、短時間労働者と一般労働者、正社員、大学卒に絞っておりますけれども、こちらの労働時間の比率が、全産業では三十から三十五歳のところで労働時間比率は七一%、それに対して時間当たり給与比率は一一四・四%、短時間の人の方が若干いいという状況です。ただし、賞与は四一・四%にまで落ち込むということが分かります。さらに、金融業になりますと三六%まで落ち込んでいます。
こちら、理想を申し上げれば、この労働時間比率の七〇%に近いところまで賞与比があっていいんではないかと。これは、評価だけではなくて、適切な業務の与え方、こういったことも含めて取り組むとここが改善してくるのではないか、そうなると、男女の賃金差異の縮小、こういったところにもダイレクトにつながってくると考えております。
また八ページにお戻りいただきまして、もう一つの視点として、周囲の同僚の方々のフォローというのが十分に行われていない問題があります。
制度の理解を醸成することと、職場全体の働き方改革を進め、そして制度利用者のフォローに対して報いる評価、そして組織目標についても、短時間の人のいる組織目標を少し勘案すると。実際にこういったことに取り組み始めた企業も最近は出てきております。こういったことによって周囲の同僚の負荷を下げていく、こういった工夫が今後期待されるところです。
次のページの、済みません、一ページ飛ばしまして、十ページには、次世代育成支援に向けた職場環境の整備。今回併せて改定が検討されております次世代法において、行動計画に盛り込むことが望ましい事項の中に、育児休業取得者や短時間勤務制度利用者、その周囲の労働者に対するマネジメントや評価に関することと書かれております。この視点が私は非常に重要ではないかと考えております。
最後に、一番最後の十五ページ、こちら御覧いただきますと、今後人材の多様化が更に進んでいく中で、これまで時間制約のない男性社員を主体としていた職場から様々な時間制約を持つ社員が多い組織へと変わっていきます。
私が民間の企業で研修やコンサルティングさせていただいていると、経営者の方や人事担当の方の中には、またいつかこの時間制約のない男性社員だけの組織に戻せるんじゃないかと、そういう期待を持っていらっしゃる方、まだまだ多くいらっしゃいます。
仕事や組織に常にフルコミットできる人材だけで組織を運営できる時代は二度と戻ってこないという考え方で、様々なニーズを持った柔軟な働き方をする社員、こうした人たちが本当に活躍できる組織をつくるということが今後非常に重要で、そのために、短時間勤務に限らず様々な柔軟な働き方が選択できること、そして、それらの働き方をうまく組み合わせてキャリア形成という視点も持って企業が運営していくこと、こういったことが今後非常に重要ではないかと考えております。
以上です。
矢島洋子 の他の発言
2024-05-21 · 参議院厚生労働委員会
○参考人(矢島洋子君) ありがとうございます。
おっしゃるとおり、私も十年ぐらい前からこの短時間勤務の運用、これを広めることが非常に重要だと考えて、細々と企業向けの研修など、あ…
2024-05-21 · 参議院厚生労働委員会
○参考人(矢島洋子君) 御質問ありがとうございます。
おっしゃるとおり、職場にとっても重要だということ、先ほど申し上げましたけれども、現在のところなぜ短時間勤務の人が職場にとっ…
2024-05-21 · 参議院厚生労働委員会
○参考人(矢島洋子君) 御質問ありがとうございます。
私は、やはりこの幾つかの選択肢の中からまず二つを選ぶときに、労働者のニーズとそれから業務や職場の特性に合ったメニューを選ぶ…
2024-05-21 · 参議院厚生労働委員会
○参考人(矢島洋子君) ありがとうございます。
やはり、中小企業の場合ですと、御担当の方がいろいろな兼務を持っていらっしゃって、なかなか時間が割けないということで、国でもそうい…
2024-05-21 · 参議院厚生労働委員会
○参考人(矢島洋子君) ありがとうございます。
御指摘はごもっともだと思います。そして、その賃金が低い中で海外からの労働者に頼ろうみたいなこともありますけれども、実際に周辺のア…
2024-05-21 · 参議院厚生労働委員会
○参考人(矢島洋子君) ありがとうございます。
やはり、たかが情報周知みたいな感じがするんですけれども、本当にこの問題が私も仕事と介護の両立の支援していて重要だと思っていて、二…
2024-05-21 · 参議院厚生労働委員会
○参考人(矢島洋子君) ありがとうございます。
先ほども申しましたように、今後、柔軟な働き方の選択肢が広がると同時に、利用期間も長くなっていくことが予想されます。
その中で…
2024-05-21 · 参議院厚生労働委員会
○参考人(矢島洋子君) ありがとうございます。
私、これまで池田参考人と川内参考人おっしゃられたように、家族の役割と専門職の役割は違うということがやはり非常に重要だと思っており…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=矢島洋子
MCP: search_diet_speeches(speaker="矢島洋子")