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宮島清 ·日本社会事業大学専門職大学院客員教授

参議院内閣委員会(2024-06-13)での発言

第213回国会 ·第第21号号 ·5,543字
○参考人(宮島清君) 宮島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  今日、レジュメを用意させていただきました。少し枚数が多いものですけれども、最初の二枚を使いまして、この最初のお話をさせていただきます。  子供を性的被害から守る、この国になかった新たな仕組みをつくる、その法律の制定という極めて重要な審議の場に私のような者を加えていただいたことをとても恐れています。しかし、このような機会を与えられた者として、できるだけ誠実に一生懸命お話をさせていただきたい、また質問についてお答えしたいというふうに考えています。  自己紹介が長くなるのは意味がないかもしれませんが、どういう人間かということをお話し申し上げないと何が答えられるかということが明確になりませんので、またそこにも少し意味がありますので、自己紹介をさせていただきます。  私は、二十四年間、埼玉県の福祉職職員として、児童相談所の児童福祉司、あるいは一時保護所のケアワーカー、知的障害児の児童指導員も行いました。その後、十七年間、同じような職にある方々のスキルアップのための専門職大学院で十七年間教員をいたしました。学生は四十代、五十代が多くて、実務に就きながら学ぶというところです。  そこで、現場にそういう形で触れてまいりましたが、定年前に二年間、もう一度現場をやってみたいということで、市役所の会計年度任用職員で家庭児童相談員というのをこの三月まで務めました。現場に触れていたつもりでしたけれども、基礎自治体に初めて勤めてみて、そこで働いてみて、また新たに気付いたこと、たくさんあるというふうに思います。また、私は子育て支援課というところにおりましたけれども、隣の課は保育課ですし、左隣は教育委員会でしたので、そこの人々の動きというようなものも見て、いろいろと感じさせられることがありました。  今年度は、しかし、大事な仕事なんですが、辞めまして、教員であったときにも続けていた現場の事例検討会とか職員研修の仕事をさせていただいています。昨日も宮城県に出向きまして、午前午後四こまの研修を担当いたしました。講義は一時間だけ、その後、模擬事例による演習、そして午後は実事例を検討し、最後はみんなで懇談をすると。児童相談所と里親支援機関の職員の皆さんとのときでした。元々、今日は児童養護施設の事例検討会だったんですが、このような機会が与えられたということをお話ししたところ、行ってくれと、そして現場のことを伝えてくれというふうに言ってもらったものですから、これは逃げられないなということで今日来ております。来週も、教育委員会の教育センターの事例検討会や、あるいは、児童養護施設で今年度採用した職員の個別面談を六人の方に年間三回、一人一時間ずつやってくれという、第二回目に出向きます。  そこで、長々申し上げたのは、今回の法案の中でも予防措置として研修ということが位置付けられておりますけれども、極めて重要だと思います。しかし、研修は、講義を聞いただけでは全然使い物にならないというふうに考えています。まずは基礎学習、その資格とその仕事になる前のきちんとした学びをしてベースをつくると。そして、現場に出てきてから、主にこういった特別のニーズ、その必要に応答するための講義を受ける。でも、講義を聞いただけでは駄目なので、それを演習という形で自分で考えて適用できるようにする。しかも、自分で取り組んできた内容をもう一度俎上に出して、これでよかったのか、適切だったのか、そういうことを省察する。そういうことなしに実際の対応力というのは上がるものではないというふうに考えています。  ましてや、これから、この子供が性被害を受けている、あるいは受けている疑いがあるといったときには子供からの聞き取りが大事だということはもう法案の中にもあるわけですけれども、それですけれども、この聞き取りというのは実に難しいことだ、判断するということは実に難しいことだ、そのことを後ほど、もう一度少し述べさせていただきたいというふうに思います。  私の専門は今申し上げたようなところではありますが、特にその中心としては児童虐待に取り組んでまいりました。  御存じのように、児童虐待への対応は平成の二年頃からこの国の政策課題として表に出てきた、正式に取り組まれたと思います。そのために、平成二年から児童相談所の公式統計が取られるようになりました。  悲しい事件が続きまして、二〇〇〇年に、従来の児童福祉法だけでは対応し切れないということで、議員立法で児童虐待の防止をする法律ができました。これは画期的なことで、児童虐待の定義も明記されました。そのことによって現場でも対応がずっと前に進み、実際に保護者と会うときも、判断するときも、そこに指針といいますか、ちゃんとスケールができたということで、大変な前進でした。  しかしです。しかし、その後の歩みは必ずしも順調ではなかった。この法案が通ることは起点だと思います。スタートだと思います。ですから確実に進んでいかなければならないと思いますが、児童虐待対応で足踏みしてしまった可能性がある、そのことをちゃんと踏まえた上で、その後の、この法案が成立した後の仕組みを成長させていかなければならない、そのように考えております。そのために、どのような形で足踏みをしてしまったのかということを申し上げたいというふうに思います。  また、もう一つは、ここに行って現場の声を届けてほしいと言われておりますので、まさに現場がこういう状態だということの御報告もさせていただきたいと思います。  以上の論点でお話をさせていただきたいというふうに思います。  次のページをお開きください。  この一つ目のこと、この法律案の成立は入口に立つことだと考える、このことは、今、内田先生のお話の中でもありましたし、先生方の一昨日の議論でもありました。また、こども家庭庁の答弁にもありましたので繰り返しする必要はないと思いますが、子供たちが被害に受けないということはとても大事だけれども、しかし同時にもう一つの配慮すべきことがあると。  子供たちに未来を私たち約束しなければならない、子供たちは幸せな未来を生きなければならない。そのときに大事なのは、当然、今回のテーマである性被害を受けないということがございますけれども、同時に、疑いだけで罰しられるとか疑いだけで排除される、そのような社会ができてしまったら、それは子供にとって必ずしも幸せを実現するものではないと。  踏み込んだ対応と同時に慎重さも重要であり、慎重さと大胆さといいますか、踏み込みのちゃんとしたもの、これをどう両立するかということが大事だと。また、そのためには、今回の照会、回答ということに光が当たりやすいですけれども、防止するという総合的な取組が重要であるというふうに思います。  繰り返しになりますけれども、このことは私からも是非とも申し上げたいというふうに思いました。  下の段を御覧いただきたいというふうに思います。  先ほど、児童虐待防止法ができたけれども、その後足踏みをしてしまったのではないかということを申し上げました。私、十七年ぶりに教員から現場に出てみて感じたことですけれども、本当に職員の方、関係者の方は一生懸命やっています。非常に時間も足りないし、人も足りない。そのために何が起こっているかです。本当に頑張っているんですけれども、正直なところ、パターン化した対応がどうも起きてしまっていると。  通告が二十万件を超えます。たくさんの通告が来ます。これを確実に行わなければならない。そしてまた、様々な規定があり、それに沿った実務をしなければならない。本当は、目の前の子供にそれが、目の前の御家族にそれが適用できるかということを考え、ちゅうちょなくやる部分は当然必要なんですが、ちゅうちょもし、悩みもし、そして自分の頭で考えて、今何をすべきかということを考えずに対応すると、やはり本物にはなりません。急いで出かけていって、現場に行って、そして当事者に会って、保護者の方にこれは虐待ですよと言って注意喚起をして、それで解決するものではないと。実際にその子供と家族がどのような暮らしをし、どのような人生をたどってきたのか、その上で今何が起こっているのか。そのことなしに助言も注意も、それはむなしいものになりかねません。しかし、現場はそのような形になっているというふうに言わざるを得ません。  二〇〇〇年を過ぎて、児童相談所だけでは対応し切れないということで、市町村の対応が重要だということが言われるようになりました。そのために、そのときの改正では、市町村を通告の先とし、子供と家族に関する第一義的な相談窓口対応をするんだというふうになりました。しかし、その後どうなったかというと、逆戻りをして、もう一度児童相談所に一極集中するような形に対応がなっています。  そのために、どうしても悪い人に対して注意喚起をするという対応が前面に出て、そして、この子供と家族の暮らし、何が起こっているか、どういうふうな人生や経過をたどってきたかということを確かめて、そしてその子供と家族に必要なニーズに応じた総合的な対応がされていないということが起こっているということを考えざるを得ません。  コロナ対策でも、とにかくたくさんの人が発症の疑いがあって、病院と治療を受けたい、でも病院が崩壊するというようなことが恐れられました。やはり子供と家庭のところもそういう状態だというふうに言えると思います。そのために、なるべく短く、そして注意喚起をして終わる、そのようなことが起こっています。同じようなことがこの法案による現場の対応として進んでしまったら、それこそ本当に必要な対応が遅れてしまうのではないかということをやはり危惧をしております。  抽象的なことだけを申し上げてはいけませんので、あと少しですので、次のページのこと、二点申し上げたいと思います。  私が先生方にお伝えしたいことは、子供の性被害を、子供が性被害を開示するということはとても難しいことであるということを申し上げたいと思います。  この性被害とか性虐待についてだけの論文、私にはありませんので、それを提示することはできなかったんですが、たまたま昨年度末にまとめた、児童虐待への対応と課題について、教材を作り、その演習を書くというものがあって、この後に載せさせていただいたんですが、これは、教育とか保育の方の虐待ではありませんけれども、親御さんから受けた性虐ですけれども、その場ですぐに開示できるということはないですね。むしろ、あとは、子供が自分から語る、それを聞きやすいといっても、二歳、三歳の子、あるいは五歳の子、六歳の子、そういった子供たちが語れるかどうかといったらば、これはかなり難しいことだと思います。  現場で気付くということは、言語化されたメッセージを聞くことではなくて、非言語のメッセージを聞く、あるいはこの子の表情を聞く、今までと違う様子を聞く、そういったもの、あるいは性感染症が、家族の事例なんかですと、小さい子なのにもかかわらず、異常所見はないんだけれども性感染症にかかっている、そういったことの細々としたことも含めて、ふだんの子供の様子も含めてちゃんと観察した上で発見するということが大事だと思います。  また、その判断はやはり、疑いの段階で、実際は行っていないにもかかわらずこの人が加害者だということになって排除されたならば、それも本当に重大だということは、内田先生が言ってくださったとおりだと思います。聞き取り等によって判断するということですけれども、聞き取りで子供が言ったからということで子供に責任を負わせるかのような対応ではなくて、様々な知見を集めて判断をすると。そしてまた、専門家のアドバイスも聞ける、スーパービジョンを受けられる、そのような形で対処するというような仕組みが必要ではないかというふうに思います。  あと、では最後ですけれども、そのページの下のところを御覧いただきたいと思います。子供たちの支援、教育、保育、社会福祉の体制について申し上げたいと思います。  どうしてもこういう課題を抱えている方から退場してほしいということが話題の中心になりますけれども、私はここで逆の立場から、現場に適性のある優れた人材が集まるようにしてほしいというふうに訴えたいと思います。  教育、保育、社会福祉の実践現場に就職したい、そこで働きたいという方が本当に少なくなっています。教員の募集倍率に対する応募が少ないと、これは社会福祉でも保育でも同様です。ですから、その方に丁寧にお話を伺って、そして、ああ、この方は倫理観とか人間観とか、様々な関係の取り方も含めてとてもいい方であると、子供との関わる仕事としてふさわしい方だ、そういった方を選抜してやはり採用し、そして先ほど申し上げたように、座学だけではなくて様々な形で学んでトレーニングをして、そしていい仕事をすると、そして定着してその場で働けるようにする。そういったことをなしに、子供たちを性加害からこういう、このような現場でおいて守ることはできないというふうに考えます。  先生に是非その辺りを具体的に応援をしていただければと思います。よろしくお願いいたします。

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