○古庄玄知君 自民党の古庄です。
大臣がいらっしゃらないということで、基本的に民事局長の方にお伺いしたいと思います。
今回の民法の改正に関しましては、いろいろ改正点は多岐にわたると思うんですけれども、一番争点になっているのが離婚後共同親権を導入することの是非ということだろうというふうに思っております。
私、離婚当事者が合意する場合、これまで共同親権にしてはならないということは行き過ぎではないかなと考えておりますが、各委員の方々から御指摘がありました、合意がない場合に裁判所が共同親権というふうに認める場合もあるという点の法務省の御説明ですけれども、ちょっと私、この点についても何点か問題性があるんではないかというふうに考えておりますので、ちょっとその点について、今回の法案の条文と照らしながら、まず自分の意見を言わせてもらいたいんですが。
まず、今回の法案、子供の利益という極めて抽象的かつ曖昧な概念を多用しています。私が数えただけで、今回改正法案、十四回、子供の利益という言葉が出てくるんですね。子供の利益というのは非常に耳触りのいい美しい言葉。だけど、じゃ、一体何が子供の利益なのか、そこにはやっぱり判断する人間のその価値観、主観というもの、これが大きく介在してくるんではなかろうかというふうに思います。
判決を書くのが裁判官でしょうから、裁判官からしてみると、一定の事実認定をして、かくかくしかじかでこれが子供の利益なんだよというふうに言えば判決は書きやすいと思うんですけれども、果たしてそれが子供の利益と言えるかどうか。その意味では、川合委員が何度も指摘していましたように、子供の利益って一体何なのと、ある程度の客観的な目安というか基準というか、これがないと非常に分かりにくいと思います。
これが例えば刑法の条文であれば、例えば子供の利益を侵した者は懲役十年に処すみたいな判決になれば、明らかに罪刑法定主義違反で憲法違反の条文ということになろうかと思います。今回は民事なのでそこまでは厳しく言わなくてもいいかも分かりませんけれども、ある一定のその価値基準というか基準を示してもらわないと判断者が判断に困るんではなかろうかということで、こういう曖昧な条文を、文言を条文の中で多用するということは、条文の作り方としていかがなものかなというのが第一点。
第二点が、この離婚後単独親権、七十七年間変わってこなかったと、それが今回、七十七年目にしてこれを変えようとしているわけですから、これは大きな転換になるわけですね。であるのであれば、それ相応の具体的な根拠がなければならないんじゃないかと、立法事実といいますかね。今までの大臣の御答弁や局長の答弁を聞いていても、余りそこに具体性が認められないと。こういう例もあるからと言うんだけど、それが一体何件ぐらいあって、どれくらいあるのか分からない。
そういうふうなことで、立法事実としてはいいんだろうかと。確かに、共同親権、二人から生まれた子供なので、一人なんで、二人で育てるというのはこれは理想だと思いますけれども、現実にはそうはいかないのが常なので、だから、これを変えるんであれば、きちんとした具体的な立法事実、それ相応の根拠が必要だろうというふうに思います。これが二点目。
三点目。裁判所にげたを預け過ぎじゃないかなというふうに思います。分からぬときは裁判所に決めてもらえというのがこの法案の骨子みたいですけれども、それほど裁判所が信用に値する存在だと私は思っておりません。とともに、裁判所というのは、国民から見たら非常に遠い存在で、近寄り難い存在だと思います。あたかも富士山と同じように、遠くから見ればきれいだけれども、近くに行くまで遠いし、登るのは高い、もう途中でみんな富士山に登るのをやめてしまいます。それと同じ存在が裁判所じゃないかなというふうに私は思っております。
もうちょっと具体的に言いますと、まず、問題があった場合、一般の人はどうするかというと、まず、自分一人では分からないので、誰かに弁護士知らぬですかねというふうに聞きます。余り弁護士と親しい人というのはそんなにおりません。だけど、運よくどこかの法律事務所にたどり着いたと、実はこうこうこういう案件があるんだけど、何とかなりませんかというときに、その相談者の方が聞くのは、まず第一、私は勝てますかというのを聞きます。次に、時間がどのくらい掛かりますかと。その時間、どのくらい掛かりますかと聞いたときに、いや、多分二年ですかね、三年ですかねという答えをしたら、そんなに掛かるんですかと。今度、じゃ、お金はどのくらい掛かるんですかと聞かれて、いや、このくらいですかねと言ったら、ええっ、そんなに掛かるの、私、月収十万ちょっとのパートしかやっていないんだけど、そんなに払えないわよと言って、もう法律事務所に来なくなる。そういう人がかなり、大半いるんですね。だから、裁判所までたどり着く人というのは極めて少ない。なるべく裁判所に行かなくてもいいような解決がいいのではないかと。
そういうことを様々考えますと、総合的に考えると、今回の法案は、メリットとデメリットを比較したときに、メリットよりもデメリットの方が多いんじゃなかろうかと。そういうデメリットが多い法案を作って果たしていいんだろうかというのが、私自身、素朴な感情であります。
それで、余り抽象的な話ばかりして分かりにくいと思うので、何十件か何百件か分かりませんけど、やった事件の中で私が記憶に残っている案件をちょっと紹介させてください。現実はこういう感じなんです。
資料一、Aさんの場合。これ、二〇〇二年に結婚しました。二〇〇三年に長女出産、二年後に次女を出産。二〇〇五年頃、夫婦仲が悪化したので、夫の用意した離婚届に署名し、家を飛び出しました。子供を置いたまま自分一人で飛び出して、そのうち帰ってくるというつもりだったみたいですね。ところが、その離婚届には親権者の欄に父親ということが書かれていましたと。飛び出したときは、もう名前だけ書いて早く離婚したいということで、名前だけ書いて飛び出しましたと、内容をよく見ていなかったと。家を出ている間に、夫は仕事がありますので、和歌山の実家から夫の母親が来て子供二人を連れて、あんた大変でしょうから私が連れて帰るわと言って和歌山に子供二人を連れて帰ったということです。
その後、母親の方が、母親というかその妻の方が面会交流の申立てをして認められました。しかし、夫は会わせてくれません。その後、夫は和歌山に戻りました。そこで、妻の方が親権者変更の申立てをしましたけれども、離婚届で父が親権者になることを認めているじゃないかという裁判所の理由で負けました。
その後、申立人は宮崎に、申立人ってこの女性の方ですね、宮崎に帰ったので、宮崎の法テラスに依頼しました。若い女性弁護士が担当しました。間接強制という、履行しなければお金払えという制度があるんですけど、それがあるんだけれども、その女性弁護士は、相手が会わせてくれないならもうこれ以上は無理よというふうに言われて、それで会うことを諦めました。
その後、別れた夫は再婚し、新しい妻との間に子供ができました。再婚相手に二人の子供に対する愛情は感じられませんでした。そこで、次女が小学生の頃、お母さんに会いたいというふうに連絡があったんですけれども、会えませんでした。
二〇一六年に親権者変更の調停を起こそうとしたんですけれども、そのとき元旦那さんの方は東京に住んでいたみたいですが、子供さんが東京にいたいと言うので調停を取り下げました。もう子供さんもかなり今大きくなっているので、インスタグラムかなんかで子供さんを捜して、現在は連絡が取れていると。だけど再婚はしていないと。そういう状況です。
この人に連絡を取って、その後どうなったのというふうに私聞いたら、今、国会の方で離婚後の親権の問題が論じられているんだけど、どう思うのと聞きました。そうしたら、この人は、離婚後共同親権になれば子供と自由に会えるので共同親権がいいと言っているんですね。面会交流を強制できるとは知らなかった。養育料は払ったことがない、取決めもしていない。子供の親権がないし、会えないのに払う必要はないのではなかろうか、相手の方から請求もされていないと。国会で離婚後共同親権が争いとなっていることは聞いたことがあると。共同親権になれば、子供に自由に会えるし、養育費も払わなければならないと思っていたと、こういうふうに私に答えたんですね。これに対する評価はまた後で言わせてもらいます。
今度、その次のBさん。これ、二〇〇〇年に妻が、子供、女の子、二歳を連れて佐賀の実家に戻りました。Bさん、子供に会わせてくれと言って妻の実家へ行きました。子供をだっこするや否や車に乗り込み、自分の実家に帰ってきましたと。以後、妻や妻側の人間を全く寄せ付けておりません。
その後、妻が子供引渡しの仮処分を申請しました。裁判所はそれを認めました。しかしBさんは渡しません。今度、裁判所が、執行官が何度も説得に行くんですが、Bさんは追い返して会おうとしません。妻が間接強制の申立て、要するに引き渡さなければ一日三万払えという申立てをして、それが裁判所で認められました。しかしBさんは引渡しをしていません。
その後、妻が離婚、親権を求めて調停の申立てをしましたけれども、これは不調に終わりました。
その後、本裁判を妻の方が起こしました。裁判所の一審は妻の訴えを認めました。Bさんが高等裁判所に控訴しました。そうしたら、二審、高等裁判所は、もう紛争は発生してから四年たっていると、だからもうBさんの方を勝たせると。その理由は、もう子供の生活環境がBさんの下ででき上がっているからだと、今更環境を変えて女性の方に子供を移動させることはできないというのが高等裁判所の理由でした。妻は上告しましたけれども、最高裁は上告棄却しました。
その時点で間接強制金は三千万円以上になっていました。そのときのBさん、あんな女に絶対に子供をやらぬ、何ぼ金を取られても構わぬ、逮捕されても構わぬというのがそのときのBさんの私に対する気持ちの吐露というか、こういう状況でした。
こういうのが現実の、その離婚とか夫婦別れの、夫婦別れというか、離婚とか夫婦が別れるときのその現実なんですね。だから、そういう現実を見てきていると、離婚した後、夫婦が仲よく子供に関して親権を行使しましょうと、あるいは、裁判所が見て、この夫婦は仲よく共同親権行使できるから、本人たちは嫌だと言っているけれども、裁判所が何とか共同親権を認めさせようというのは、かなり難しいんじゃないかなというふうに思います。
それと、先ほどの具体例のA、Bの二つ例を挙げましたけれども、この中には離婚するときの様々な問題点というか、これが分かるんですね。まず、離婚するときは冷静な状態じゃないと。それから、お互い憎しみ合っていると。それから、もう離婚用紙に名前さえ書けば離婚できると思い、親権のことまでそんなに考えていないという人もかなりいるんですね。それから、難しいことは弁護士頼まぬと分からぬという人もかなりいます。で、弁護士費用は高いんじゃないかということを言われます。
そこで、資料三。これ弁護士費用。そこに、弁護士の費用は、最初に着手金といって事件を受けるときいただくお金と、成功報酬といって一定の成果をもたらした場合にいただくお金の二種類があるんですが、着手金といって、例えば任意交渉が受任して二十二万。それから、話ができなかったので離婚の調停を申し立てて十一万。それから、調停が成立しなかったので一審、二審、三審と三回裁判やりましたという場合、それで結果的に勝ちましたという場合、それでいくと、離婚訴訟を三審で終了した場合、百二十四万。それから、任意交渉だけで終了した場合でも六十九万。
これ、大体、うちの田舎の方は相場的な金額なんですけど、こういうふうなお金が掛かる。そこでもう諦めるという方がかなりたくさん、多いのではないかなというふうに思っておりますので、何かトラブルがあれば裁判所に来ればいいじゃないのという発想は間違っているんじゃないかなと。なかなか裁判所はたどり着けないところであるというふうに私は認識しております。その意味で、今回の法律が、裁判所が判断する、裁判所が判断するというのは果たしてどうなのかなというふうに思っております。
まあ今までは私の個人的な意見ですけれども、じゃ、竹内さんにちょっと質問させてください。
今回、法律改正をしようとしているわけですけれども、これは子供の利益に資するから実施すると、そういうふうな理解で我々はよろしいんですかね。
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