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鳥井一平 ·特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク共同代表理事

参議院法務委員会(2024-05-30)での発言

第213回国会 ·第第15号号 ·8,105字
○参考人(鳥井一平君) 移住連の共同代表理事の鳥井です。特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク、略称、移住連といいます。  本日は、このような場で発言をさせていただくことに、冒頭、まず感謝申し上げます。  実は私は、国会の法務委員会の参考人として意見陳述をさせていただくのは五回目となります。二〇〇九年の入管法改正、二〇一四年、二〇一六年技能実習法、二〇一八年、そして今回となります。ただ、これまでの四回は衆議院でした。ようやくお呼びいただいたというのが実感です。  さて、私たちの移住連は、一九八〇年代からこの日本の労働市場の高まりによって急増した移住労働者とその家族、いわゆるニューカマーの人々に対する差別、人権侵害や労働問題を取り組んできた全国各地のNGOや労働団体によって一九九七年につくられた全国ネットワークです。二〇一五年にNPO法人として再スタートしています。現在、全国で百十の団体と、研究者、弁護士、地域の活動家など、七百人強の個人が会員となっています。  また、私自身は、個人加盟の労働組合、全統一労働組合の特別中央執行委員でもあり、バブル経済下のニューカマーの外国人労働者との関わり以来、三十五年近くになります。そして同時に、外国人技能実習生権利ネットワークの運営委員をスタート当初から務めており、技能実習生、当時は研修生も含めて、一九九八年頃から具体的な支援の取組を始めています。また、人身売買禁止全国ネットワーク、JNATIPといいますが、の共同代表として、政府の人身取引対策に関する関係省庁連絡会議との情報提供、意見交換も行わせていただいております。国交省の委託を受けて、建設就労者のヒアリング調査のアドバイスのための同行活動もさせていただいたこともあります。  私自身の活動については、後日配付させていただけると思いますけれども、NHK作成の動画なども御参照いただければ幸いです。  また、本法案のスタートとも言える当時の古川法務大臣の大臣勉強会にお呼びいただき、実態を直言させていただきました。  さて、限られた時間ですので、どの程度実態と思いを伝えられるのか不安ですが、課題ごとに話させていただきます。  まず、育成就労制度についてです。  外国人技能実習制度の廃止と言わず発展的解消としているところに、本法案の根本的矛盾が象徴されていると言わざるを得ません。  技能実習制度では、いかなる問題が起きていたのでしょうか。配付させていただいています事例集を御参照ください。今日まで、日々、支援団体に、息つく暇もなく相談が寄せられています。しかも、それでもこれらは氷山の一角と言えるでしょう。  時給三百円に象徴される低賃金、不当解雇、強制帰国、セクハラ、人権侵害、賃金未払、長時間労働、労働災害、暴力、パワハラ、むき出しの強制労働、タコ部屋、劣悪な住環境、殺傷事件、妊娠、出産問題、そして群がり食い物にするブローカー、保証金など前借金制度など、枚挙にいとまがありません。女工哀史と表現する識者もおられました。  私自身、一九九八年から今日まで、ずっと相談支援活動に直接関わってきました。技能実習生だけでなく、多くの社長さんたちや農家、船主など、技能実習生らを受け入れている使用者の方たちとも様々話し合ってきました。  さて、この外国人技能実習制度の問題を端的に言うと、まず第一に、開発途上国の技術移転を名目として外国人労働者受入れを偽装したことです。こんな傲慢な態度はありません。専ら日本国内の事情による労働者受入れを開発途上国のためとかたったことには強い反省が求められます。開発途上国に対しても非礼な施策です。  第二に、偽装した名目によって奴隷労働構造をつくり出したことです。失踪防止として、制度当初は、公然とパスポートを取り上げ、保証金制度までつくって技能実習生、実習生をがんじがらめにしたことです。今日現在まで、保証金、前借り金制度は、手を変え品を変え、変わっていません。また、労働者に辞める権利、つまり転籍を認めるようにとの私たちの要請に、国会答弁でも、辞める権利を認めず、ありもしない効率的な技術移転のためと偽装に偽装を塗り固め、強弁してきました。結果、国連など国際社会からも、奴隷労働、人身売買と厳しく批判され続けてきたわけです。  そして、三つ目には、以上のことから、利権構造をつくり出してきたことです。監理費や教材費、出国手数料など、様々な名目で技能実習生から直接に、あるいは小零細企業、農家など、実習実施者から費用徴収をする。また、リベートやバックマージン、接待などが横行する構造です。しかも、合法ブローカーが介在しているのですから、巧妙な手口によって問題を複雑化させています。  この制度下でも労働者を受け入れている多くの社長、農家などの使用者たちと交渉も行ってきました。低賃金やセクハラ、暴力、労災などで交渉するわけですが、驚いたことに、この制度下の社長さんたちに暴力団の類いの人はほとんどいないのです。皆さん普通の方、もっと言えば、地域の子供会や自治会、町会の面倒を見るような、いい人たちなのです。その社長さんたちがびっくりするような人権侵害、労働基準破壊を行っているわけです。つまり、制度が人を変えてしまう、恐ろしい制度となってきているわけです。  では、育成就労制度はどうなのでしょうか。本国会で何度か、技能実習制度の良かったところを生かす旨の政府答弁がありました。しかし、それは大きな見誤りです。  日本で働き、帰国して活躍している労働者は確かに多くいます。しかしそれは、外国人技能実習制度固有の成果ではありません。開発途上国の技術移転を目的意識して行われた結果ではありません。出稼ぎ労働の結果、価値としての成果です。一九八〇年代から一九九〇年代半ばの非正規滞在三十万人の時代にも、多くの労働者が日本で働いた成果を出身国に持ち帰っています。日本で働き学んだことを出身国、地域で生かしています。また、在留資格を得て、この日本社会で、労働者として、経営者として、職人として活躍し、そして家族をつくり、子弟たちがスポーツ選手として活躍する姿もあります。これが出稼ぎ労働の社会的価値、出稼ぎ労働の歴史的価値です。  技能実習制度の良かったところなどと評価するのは大きな間違いであり、ミスリードです。事実を直視するべきです。  利権構造ができてしまったゆえに廃止できなかった外国人技能実習制度の三十年を真摯に反省することが、新たな受入れ制度の始まりでなければなりません。また、制度の構造的問題で被害に遭った技能実習生たちに謝罪することはもちろんですが、労働力補填としてだまし、時に加害者にさせてしまった社長や農家、船主などの使用者にも謝罪するべきだとさえ思います。  ところが、育成就労制度では、依然として転籍制限を設け、労働者の基本的権利の辞める権利、選ぶ権利を制限しています。これでは、またもや使用者は見誤りに陥ります。また、政府の責任を曖昧にします。さきに述べた効率的な技術移転との欺瞞が、効率的な育成と言葉を換えたにすぎません。偽装を続けるのでしょうか。地方から都市部への流出などと一部から声があるとも言われます。しかし、そのことをもって労働者の基本的権利を制限することは民主主義を放棄することにもなります。また、転籍制限は、地域政策や産業政策に対する中央政府の怠慢も導きかねません。  カニ漁の船主会元会長のお話をしましょう。二〇二〇年のコロナ禍の中で、この船主の方から、どうしても話がしたい、高齢なのでコロナで東京に行けないので来てほしいと言われ、会いに行きました。この方は、技能実習生には感謝している、彼らが来なかったらカニ漁は二十年前に終わっていた、でも、今またこのままではカニ漁が終わってしまう、当時五十歳代、六十歳代だった船主たちが七十、八十となってしまった、担い手が欲しい、技能実習では駄目だ、余計な監理費も無駄だ、労働者に直接払ってやりたい、船主が外国人でもいいと思っている。  また、同じ頃、農業法人の代表者の方からも来てほしいと要請があり、伺いました。外国から来た労働者を三年間全面的に支援して、三年後には農業で自立していけるようにしていきたい、もちろん自立後も共同してやっていく、近くのある村の村長さんは、外国人でもいい、あと十人移住してきてほしいと言っている、技能実習では見合っていないと。  これが人々の声でしょう。  二〇二一年一月から半年間、宮崎日日新聞と信濃毎日新聞が、それぞれ県内を記者が丁寧に取材した提言を出しています。どこに行くかも分からず、どんな仕事かも分からず、辞めることができない、そんなことで労働者を縛り付けてきた技能実習制度の轍を地方対策と称してまたもや踏むというのでしょうか。  それでは、受入れはどのようにするのかということでしょう。  まず第一に、外国人労働者受入れ制度は、国家的一大事業であるとの決断と実行、政治的リーダーシップが必要です。出入国管理、在留管理だけの問題ではないのです。法務省、入管法だけで決めてはいけません。私は古川法務大臣に直言しました、法務省だけで無理しないでくださいと。つまり、政府全体で取り組むべき施策、法制度が求められているのです。しかも、待ったなしの逼迫した状況です。費用が掛かるので民間活用などというのは、政治判断の大きな誤りと言わざるを得ません。  債務労働のない、国を越えた労働者の移動には、ハローワークの機能強化と機能拡大が不可欠です。国としての国際窓口を創設し、送り出し国はもちろん、関係国への理解と協力を求めていくことでしょう。国際的労働者移動における先進国としての日本の役割評価にもつながります。  国内においては、労働基準法三条に明記されているように、全ての労働者に区別なく、差別なく労働法の全面適用を行うことです。それこそが労働者の活力を引き出していきます。当然のことですが、日本語教育の義務化と国の費用負担は欠かせません。  この四十年近いニューカマー労働者の実像、活力、成果を直視することが政治的リーダーシップに求められています。  次に、永住取消し問題です。お手元の資料も御参照ください。  今回の改定法案には、技能実習と特定技能に係る項目以外に永住許可制度の適正化が盛り込まれています。有識者会議の議論でも、その最終報告書にも全く言及されなかったにもかかわらず、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において、政府の対応で、育成就労を通じて、制度を通じて永住につながる特定技能制度による外国人の受入れ数が増加することが予想されることから、永住許可制度の適正化を行うことが明記され、改定法案に永住許可要件の明確化と永住許可取消しが追加されました。  永住者が入管法上の義務を怠ったり故意に公租公課の支払をしなかったりした場合、あるいは一定の罪を犯し拘禁刑に処せられた場合、たとえ執行猶予が付いたとしても在留資格を取り消すというものです。例えば、引っ越しをして十四日以内に住居地変更を届けなかった場合も取り消されてしまいます。うっかり在留カードを忘れて外出してしまった場合も取り消されてしまいます。病気や事故で働けなくなり税金などが払えなくなった場合も取り消されてしまいます。景気変動などにより急に仕事を失って税金が払えない場合も取り消されてしまいます。リーマン・ショックのときも、コロナ禍において、コロナ禍においても、外国人が真っ先に解雇されたことを思い出してください。  入管庁は軽微な違反は取り消さないと答弁していますが、軽微の基準は何でしょうか。誰が軽微だと判断するのでしょうか。全て入管庁の裁量です。また、生活に困窮して公租公課を払えない場合は故意と扱わないと答弁していますが、その線引きが難しいことも既に指摘されており、結局これも入管庁の裁量です。  そもそも、なぜ永住許可取消しが今回の改定法案に入り込んだのでしょうか。  二〇二〇年十二月の出入国在留政策懇談会の報告書では、永住許可の取消しに対しては、委員からの懸念も示されたので、外国人やその関係者等、各方面から幅広く意見を聞くとともに、諸外国の永住許可制度の例も参考にするなどして、丁寧な議論を行っていく必要があるとされました。  その後、関係閣僚会議による外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の二〇二二年度改訂版で初めて永住者に係る施策が追加され、永住者の在り方について、その許可要件及び許可後の事情変更に対する対応策等について、諸外国の制度及び許可後の状況調査を参考としつつ、見直しについて必要な検討を行っていくと明記されました。同日決定された外国人との共生社会の実現に向けたロードマップでは、二〇二四年度中に検討、結論、二〇二六年度までに必要かつ可能な範囲で実施とあります。  諸外国調査の進捗については、私たち移住連は何度か入管庁に問合せしていますが、改定法案が閣議決定された後の二〇二四年四月の時点でも調査中との回答でした。つまり、関係閣僚会議自らが決定した総合的対応策における手続やロードマップの工程を無視し、諸外国の制度の調査も、当事者や関係者のヒアリングもせずに強行しようとしています。なぜでしょうか。住居地の変更届が遅れたり税金を支払わなかったなどの軽微な理由で永住資格を取り消すような国など聞いたことがありません。  衆議院法務委員会における入管庁の説明では自治体からの声があったと言いますが、その数は、全国千七百四十一自治体のうち僅か七つです。永住者の未納についても、一部の永住者の状況を紹介したのみで、正確なサンプル調査の結果ではありません。つまり、立法事実はないのです。  入管法上の義務違反に罰則規定があるので、永住者にのみ在留資格取消しというペナルティーを新たに加える合理的理由はありません。税金や社会保険料の滞納や退去強制事由に該当しない軽微な法令違反に対しては、日本人の場合と同様に、法律に従って、督促や差押え、行政罰や刑罰といったペナルティーを科せばよいだけのことです。外国籍者である永住者にのみ在留資格取消しという過大なペナルティーを科すとしたら、これは明らかに公的な外国籍者に対する差別です。国が先頭に立って差別をすることがあってはなりません。現に、この法案が提出されたことで、外国籍者に対する偏見やヘイトスピーチが増えています。  私たち移住連では、今回の永住許可取消しに対する声を集めました。切実な声が紹介していますので、是非御確認ください。  二〇二三年現在、およそ三百四十一万人の在留外国人のうち永住者は約九十万人で、全体の四分の一強を占め、在留資格別では最も多くなっています。在留資格「永住者」は、一定年数日本で暮らし、安定的な生活を送っているなどの厳しい要件を満たすことで付与される在留資格であり、後天的な国籍取得率が極めて低い日本において、旧植民地出身者とその子孫に与えられる在留の資格、特別永住者を例外とすれば、日本で暮らす外国籍住民にとって最も安定した法的地位です。永住許可取消しは、永住者のみでなく、在留資格「永住者」の配偶者等を持つ配偶者や、今後永住許可を申請しようとする全ての外国籍住民の地位を著しく不安定にします。  全く事実検証もなく、適正化という言葉が独り歩きし、たちまちにヘイトスピーチがあふれました。結果として、ヘイト扇動とも言えるのではないでしょうか。なぜこのような永住資格取消し制度を、育成就労制度創設を口実として、どさくさ紛れに加える必要があるのでしょうか。  育成就労制度の創設によって永住につながる外国人が増えるといいますが、育成就労制度で入国した外国人が永住許可要件を満たすためには、原則、計十三年を経る必要があります。育成就労制度が創設されても、直ちに永住者が増えるわけでありません。加えて、二〇一〇年代辺りから永住許可審査がいわゆる厳格化しており、永住許可率が低下傾向にあります。二〇〇六年は八六・五%ですが、二〇二〇年は五一・七%です。居住要件を満たしたからといって、容易に永住許可が得られるわけではないのです。  しかしながら、二〇二四年一月二十九日に開催された自由民主党外国人労働者等特別委員会で入管庁が配付した資料を見ると、永住者が増えることが問題であるかのような記述があります。しかし、安定的に日本で暮らす永住者が増えることは、受入れ国である日本にとって好ましいことではないでしょうか。政府はいまだ、移民政策でないと繰り返しています。しかし、在留期間に制限のない外国人、すなわち一般永住者と特別永住者は、在留外国人の三四・一%を占めています。移民につながりのある日本人も増えています。日本は既に移民社会なのです。前提事実のない管理強化優先の永住資格取消しではなく、現実を直視した上で、より良い社会をつくっていくにはどうしたらよいかを、この社会に暮らす全ての人とともに考えていく必要があるのではないでしょうか。  私たちは、次に、最後に、私たちは、常時携帯義務のある在留カードとマイナンバーカードの一体化にも反対です。これもまたどさくさ紛れであり、マイナンバーカード運用の問題が顕在化する中で、外国籍者は拒否しにくい状況であり、実質強制的にマイナンバーカードを取得させようとすることは公平性を欠くものです。  最後に申し上げます。  今回の改定法案は、共生社会の実現を掲げる関係閣僚会議において対応が決定されたものでしょう。しかし、残念ながら、今回の改定法案は共生社会に逆行するものです。真の共生社会の実現に向けて、労使対等を阻む技能実習制度も育成就労制度も、永住許可取消しも、マイナンバーカードと在留カードの一体化にも断固反対します。  ただ、私の反対やノーは決して否定的な言葉ではなく、私たちが進む次の社会をイメージしています。違いを尊重する社会、国籍や出身地、外貌や性的指向など、様々な違いが差別されることなく尊重される社会です。そのことが民主主義社会を、民主主義を深化させていく一つの道です。SDGs、ビジネスと人権の行動計画、グローバルコンパクトなど、人々が求める道筋を今や多くの人が語ります。国会議員もそのことを否定する人は少ないでしょう。今国会において岸田総理も、誰一人取り残さないと言明しています。この誰一人には、国籍や人種の違いも関係ありません。人権に国境は存在しません。移民がいる事実に真摯に向き合うことが政治に求められています。  本法案審議の過程でも、もっと受け入れたいので、反対する人に対して適正化を言うことが必要だという答弁がありました。しかし、心配しないでください。今、多くの人々が求めていることは、違いを尊重し合う共生社会なのです。移民がいるのに移民政策を取らないと強弁することが、移民、外国籍の人々と直接向き合う現場の窓口で働く職員に誤解と混乱をもたらしているのです。入管の職員だって自治体の職員だって、共生社会を求めているのです。  政治的リーダーシップを発揮して、この日本社会が国境に関わりなく移動する人々で成立している事実を発信し、そのことに真摯に向き合うことを呼びかけ、政策していくことです。国会議員の皆さんにはそれができます。真摯に事実をチェックする議論に期待します。人々が求める社会、違いを尊重する共生社会、誰一人取り残されることのない社会を実現できるのは国会議員の皆さんです。  御清聴、感謝します。

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