○内閣総理大臣(岸田文雄君) 紙智子議員の御質問にお答えいたします。
基本法制定時の議員修正に関する国会の意思についての認識についてお尋ねがありました。
現行の食料・農業・農村基本法の制定時は、衆議院において、共産党を除く各会派の共同提出で、国民に対する食料の安定供給については国内の農業生産の増大を図ることを基本として行われなければならないこと、そして、食料自給率の目標はその向上を図ることを旨として定めること、政府は基本計画を定めたときは遅滞なく国会に報告することを内容とした修正案が提出され、可決されたものと承知をしております。
こうした国会での修正内容については、政府としてこれまで対応を進めてきたところであり、今回の改正案においても基本的には規定を維持しているところであります。
食料自給率についてお尋ねがありました。
食料自給率については、米の消費の減少等による低下が想定より大きく、輸入に依存する小麦、大豆の国内生産拡大等による上昇を上回ってきたところ、これが目標未達の主因と分析をしています。
また、これまで幾多の農産物貿易交渉を重ねる中にあって、我が国の農業生産に重大な支障を招くことがないよう、必要な関税等の措置を確保してきたところです。実際、この二十年間の自給率の低下はFTA等による影響は大きくなく、また、国の政策としても自給率の向上に取り組んできたところであり、アメリカの圧力と政府の経済財政政策が自給率低下を招いたとの御指摘は当たらないと考えております。
食料自給率と国内の農業生産の増大についてお尋ねがありました。
食料自給率については、改正案では、基本計画の記載事項として、食料自給率の向上が図られるよう、農業者等の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める旨明記しており、格下げしているものではありません。また、現行の基本法において、国内の農業生産の増大を図ることを基本とする方針を明示しているところ、今回の改正に当たってもこの方針に変わりはありません。
その上で、食料安全保障をめぐって輸入リスクの増大も課題となる中、安定的な輸入と備蓄の確保を適切に行うことが重要であることから改正案にこの点を盛り込んだところであり、国内の農業生産の増大を後押ししつつ、輸入と備蓄を適切に組み合わせながら食料安全保障の確保を図ってまいります。
担い手の減少と農地の維持についてお尋ねがありました。
これまで、現行基本法に基づき、食料の安定供給において中心的な役割を果たす担い手について、経営規模が大規模か中小規模か、家族経営か法人経営かにかかわらず、その経営の安定、発展を後押ししてきたところです。
この二十年で農地面積は転用などにより約一割減少したものの、法人経営体の増加、生産性の向上などを背景に農業総産出額は九兆円前後を保ってきており、これまでの政策が破綻しているとは考えておりません。
農業所得についてお尋ねがありました。
将来にわたって食料の安定供給を確保するためには、収益性を確保し、農業が持続的に発展していくことが重要です。このため、改正基本法に基づき、生産性の向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら、農業所得の向上を図ってまいります。
なお、御指摘の農家の収入の統計については、例えば稲作経営の年間収入は、自家消費を目的としたり、農外収入を主と、失礼、農外収入を主としたりしている小規模農家を含めた平均値であり、農業で生計を立てていく水田作経営体の所得に着目していく必要があると考えております。
ミニマムアクセス米についてお尋ねがありました。
ミニマムアクセス米については、我が国の国産米の保護措置を含む全体のパッケージであるガット・ウルグアイ・ラウンド合意を受けて、ミニマムアクセス米が国産米の需給に悪影響を与えないよう国家貿易で管理をしているところであります。これに伴う財政負担は売買差損や管理経費の増により増加していますが、財政負担をできる限り削減するために、新たな仕向け先の開拓や管理経費等の削減に努めつつ、この枠組みを維持してまいります。
他方、農業者の所得向上に向けては、改正基本法に基づき、生産性向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら、しっかりと取り組んでまいります。
直接支払についてお尋ねがありました。
農業者への直接支払については、現在、農地等の保全管理のための多面的機能支払、中山間地域の農業生産条件の不利を補正するための中山間地域等直接支払など、我が国農業の課題と政策目的に応じた直接支払制度を講じているところです。
新しい基本法の下、直接支払制度と併せて、生産性向上や付加価値向上の後押し、また合理的な価格形成の推進、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講ずることにより、農業者の所得の向上を図ってまいります。
担い手政策についてお尋ねがありました。
我が国農業の持続的発展に向け、新規就農者の確保や経営継承の実現は極めて重要な課題であり、現場の実態を踏まえながら、その推進を図ってきたところです。
具体的には、新規就農施策について、支援対象者が就農後の早い段階で所得を得られるよう、令和四年度から新たに機械導入等の初期投資への支援や就農後の技術サポートを含む総合的な支援施策を追加するなど、施策の改善等を行ってまいりました。
引き続き、現場の実態をよく踏まえながら、効果的な施策の展開に努めてまいります。
そして、一人一人の食料安全保障の確保等についてお尋ねがありました。
十分な食料を入手できない方々が足下で増えている現状に対応することは重要な課題であると認識をしております。このため、改正案において、新たに食料の円滑な入手の確保を位置付けたところであり、フードバンクや子供食堂等への未利用食品の提供体制づくりの支援、全国的な政府備蓄米の無償供与等の取組を進めてまいります。
また、非正規雇用労働者の雇用の安定や処遇改善に向けてリスキリングや正規化支援を進めるとともに、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金の遵守の徹底、これらの施策に取り組んでまいります。(拍手)
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