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川合孝典 ·国民民主党・新緑風会

参議院本会議(2024-05-17)での発言

第213回国会 ·第第19号号 ·3,472字
○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。  会派を代表し、賛成の立場から幾つか指摘をさせていただきます。  日本人と外国人の国際結婚が急増したことにより、国際離婚も増加しています。一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく、子供を自分の国へ連れ出す子供の連れ去りが国際問題になっています。  欧米諸国で、たとえ実の親であっても、他方の親の同意を得ずに子供の居どころを移動させることは子を誘拐する行為として重大な犯罪とされており、実際に、配偶者に無断で子を連れて日本に帰国した親が誘拐又は拉致したとして逮捕状が出される事例が多発しています。日本は、二〇一四年四月にハーグ条約を批准したため、この締約国として、年々増加する日本人による子供の連れ去り等への対応を求められています。本法案は、こうした国際情勢をも踏まえて提出されています。  今回の民法改正に対して、深刻な家庭内暴力を恐れる一人親からは、法改正後の家庭裁判所の判断を含む具体的な運用をめぐって不安の声が上がっています。法改正により家庭内暴力や児童虐待が深刻化するような事態は決して生じさせないよう、細心の注意を払った運用が求められていることは言うまでもありません。  今回の民法改正では、離婚の有無にかかわらず、子の利益のため、互いの人格を尊重し協力しなければならないとの父母の責務が明記されました。しかし、父母による子の養育を互いの人格を尊重し協力して適切に進めるためには、一方当事者に過度の負担が生じないよう配慮しつつ、離婚前後の子の養育に関する講座の受講や共同養育計画の作成を促進するための事業に対する支援、ADRの利便性向上に向けた措置などを講じる必要があります。関係省庁や地方自治体とも連携の上、速やかに必要な施策を検討、実施することを政府には強く求めます。  近年、子供の引渡しを求めて家庭裁判所に調停や審判を申し立てる事例が増えています。この十年間で父親の申立てが七割増えて、父親の申立て件数が母親を上回る状況が続いています。その背景には、父親が外で仕事をして、母親が家事、育児を行うという旧来の家族の在り方が変化し、夫婦共稼ぎで父親も育児を担うようになったことで、子供と父親との関係性が変化したことにあると指摘されています。  旧来の家族観が大きく変化する中、改正民法が定める子の利益を守るための父母の責務を理解して、離婚しても父母が子のために協力し合うことが当たり前となる環境を整えるための取組が求められています。  私が法案審議を通じて一貫して訴え続けてきたのが、子供の最善の利益の確保です。様々な事情があるとはいえ、両親の事情による離婚の結果、子供が不利益を被る状況だけは絶対に避けなければなりません。  二〇二二年度の母子世帯の一人親家庭の子供の貧困率は、OECD加盟三十六か国中三十五位の四八・三%、実に二人に一人が貧困状況に置かれています。また、厚生労働省が二〇二二年十二月に公表した調査データによると、一人親世帯の平均就労年収は父子家庭で四百二十万、母子家庭では二百四十三万円となっており、一人親の母子家庭が厳しい経済状況に置かれていることが分かります。さらに、離婚後、養育費を受け取っていない一人親世帯は全体の五六・九%となっており、一人親の母子家庭の子供の貧困率が高くなる要因となっています。その結果、子供の大学進学率や、習い事、クラブ活動などへの参加率で、教育格差や体験格差が拡大しています。現実に、両親の離婚が子供の将来に深刻な影響を及ぼしているということを我々は重く認識する必要があります。  今回、離婚時に養育費の取決めをしていなくても、子の最低限の生活に必要な養育費額の請求が可能となる仕組みが導入されます。また、これまで裁判所に差押えの申立てを行う際に必要とされた調停の書面や公正証書がなくても、私文書でも差押えの申立てが可能となったことにより、特に一人親の母子家庭の子供の貧困率の改善に寄与することが期待されます。  また、近年、調停の申立てが増加している親子交流にも変化が期待されます。  親子交流は子供の成長にとって重要とされているものの、実際には親子交流が実施されていない事例は数多くあります。今後、子に対する父母の責務規定に基づき、子の意思を尊重した面会交流の場を設定できれば、子の利益に資することが期待できます。  今後、法務省には、養育費の受給や親子交流が適切に実施されるよう、国内における実情調査を継続的に行うほか、諸外国における運用状況に関する調査研究を踏まえて、適切な養育費水準及び日本における親子交流の在り方、監護の分掌の実施に伴う養育費負担の在り方等について検討を行い、必要な措置を講じることを求めます。  今後大きく運用が変更される可能性のある親子交流については、その推進を図る上での国の体制が明らかに貧弱です。法務省ホームページによると、親子交流を支援する団体は全国で僅か五十七団体にすぎず、公的補助も乏しいことから、活動の多くをボランティアが支えています。民間任せにするのではなく、国が予算を付けて実績のある団体に業務委託するなど、適切な親子交流を推進する上での体制整備が必要であることを指摘します。  裁判所の体制整備が急務であることも、審議を通じて明らかになっています。  法改正によって、家庭裁判所の業務負担は増大することが見通されます。DV、虐待事案への対応を含む多様な問題に対する判断が求められることに伴い、裁判官、家事調停官、家庭裁判所調査官等、裁判所職員の増員及び専門性の向上が必要となるほか、裁判所内の調停室や児童室等の設備の整備、申立てや会議のIT化による裁判手続の利便性の向上、子供が安心して意見陳述を行うことができる環境の整備など、法施行までの間に取り組むべき課題は山積しています。  また、裁判所は慢性的な裁判官不足の状況に置かれています。判事になるまで十年間任官する必要のある判事補は減少の一途をたどっており、現在、約二割の欠員となっています。裁判官不足のため、地方裁判所の二百三支部のうち四十四支部には裁判官が常駐していません。裁判官の常駐していない支部では、月に数回、担当裁判官がやってきて、たまった案件をまとめて処理することになるため、落ち着いた審理ができないことから、訴訟当事者からの不満の原因にもなっています。  共同親権をめぐる裁判所の裁定に対して不安の声が上がっている中、適正な裁判を行う上で、裁判官及び裁判所職員の人員体制の整備が急務であることを指摘します。  家事裁判の裁定の実効性を高めるための施策について提案をします。  現行法下では必ずしも裁判所の裁定が遵守されていない事案が散見されることから、その実効性を高めるための措置が必要です。  一般的に、国民と国家との関係を規律付ける公法と私的活動を規定する私法ではその基本原理が異なることから、私法である民法の違反に対して、公法である刑法等の制裁規定はなじまないものとされています。  しかし、一昨年、子供の最善の権利を守ることを目的としたこども基本法が成立しました。既に労働基準法や独占禁止法のように、公益上の理由で市民相互の関係を規律付ける、いわゆる社会法と言われる公法と私法の中間的な性格を有する法律には、刑法上の制裁規定が設けられています。  私は、こども基本法を公益性の高い社会法と位置付けることにより、フランスなどと同様に、裁判所が裁定した養育費や親子交流といった子供の権利を侵害する行為に対して公法上の制裁規定を適用することについて検討の余地があると考えており、そのことを指摘します。  最後に、現行離婚制度の本質的な課題について指摘します。  我が国の離婚制度の最大の欠陥は、離婚判決と財産分与や養育、監護の問題が制度上別建てになっていることです。これは、社会的、経済的弱者を保護する見地からは見過ごせない問題です。  今回の民法改正は、子供の最善の利益を守ることに主眼を置いて、離婚後親権の在り方を議論してきました。離婚判決が共同生活の解消を目的としている以上、財産分与や養育費、監護の取決めを判決の前提とするような制度を検討することが必要であるということを指摘し、私の討論を終わります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)

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