○羽田次郎君 立憲民主・社民の羽田次郎です。
会派を代表し、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論いたします。
国の最も大切な役割は国民の命や暮らしを守ること、その中にあって農業は国の基であると岸田総理はおっしゃっています。国の基である農業が今、危機的な状況に置かれています。
立憲民主党は、昨年七月から農林水産キャラバンを組織し、参議院では田名部議員と徳永議員が中心となり、全国各地の農業現場を訪問し、御意見を伺い、地域と一緒に新しい農林水産政策をつくる取組を行ってきました。キャラバンでは、息子に後を継いでくれと言えない、今いる農家が引退したら二、三年で村は崩壊してしまう、生産コストが上がってしまい、やっていけないといった悲痛な声をたくさん頂戴いたしました。
私たちは、この二十年間の農政は失敗だったとの思いがあります。安倍政権下で農業の成長産業化の美名の下で新自由主義的な政策が推し進められた結果、食料自給率目標は一度も達成されず、農業者が減り、農地も減少し、農業、農村の弱体化が一層進行してしまいました。近年は食料自給力までもが大きく低下し、芋を中心とした作付けに転換しても、早晩、必要なカロリーが得られなくなるところまで追い込まれています。
だからこそ、必要な施策の充実を図るためには与党も野党もなく、足らざるところを補い、より良いものとするため、真摯に議論を重ね、まず、衆議院では法案修正を提起いたしました。しかしながら、政府・与党は、全ての項目に対応済みや対応不可との回答を突き付けてきたのです。政府案は絶対というような対応ですが、だったらなぜ現場から悲痛な声ばかりが聞こえてくるのでしょうか。政府・与党にはそうした声が聞こえないのでしょうか。
しかし、参議院ではそうしたことは脇に置き、真摯な議論を進めてまいりました。そのさなか、坂本大臣から、生産基盤は弱体化したとは思っていないという耳を疑うようなとんでも発言が飛び出しました。これまでの政府文書や国会答弁と真逆の発言です。そもそも生産基盤の弱体化が進んでいることが法案提出の前提であることは共通認識であったはずです。
発言は後に撤回されましたが、本音であった疑念が拭えません。坂本大臣は、一年半を掛けて現場の声を私たちなりに聞いてきた、人口減少に伴い農業者及び農村人口が減少する中で、農業生産の維持発展をいかにして図るのか、農村地域のコミュニティーをどう守っていくのかということだと述べられています。問題は人口減少と結論付け、これまでの農政に対する反省がみじんも見られません。基本理念や基本的施策の書きぶりが曖昧で不十分だと感じるのは、こうした認識の違いがあるからかもしれません。
参議院では、食料安全保障の定義に食料の安全性と十分な量が明記されていない点、食料の価格形成について適正な価格ではなく合理的な価格としている点、フードバンク等への支援、人権に配慮した原材料の調達等、重要な政策課題について明記されていない点など、多岐にわたる問題点が指摘されました。
改正案にはほかにも多くの課題がありますが、参議院で重点的に議論された点に絞り、具体的に反対理由を述べます。
第一に、水田の畑地化を書き込もうとしているところです。
水田は、農地として優れた生産装置です。連作障害がなく何年でも収穫できて、多くの人口を養うことができます。アジア・モンスーン気候に適しており、日本では古来、水田が食料の確保と国土の保全を担ってきました。
しかし、改正案は、基本理念に食料安全保障の確保を掲げながら、現行の汎用化に加え、水田の畑地化を定めようとしています。基本法に畑地化を明記するということは、自給可能な米の生産を総合的かつ計画的に削減していくということです。食料安全保障に逆行することは言うまでもありません。
誤解を避けるために申し上げますが、私たちは畑地化そのものに反対している、問題視しているわけではありません。地域の合意により進められる畑地化を否定はしません。基本法に書き込むことで、将来に対して責任が持てなくなるのではないかと心配しているのです。
第二に、農福連携を農村振興施策として位置付けていることです。
現行基本法は、女性の参画の促進、高齢農業者の活動の促進を農業の持続的な発展に関する施策として定めています。つまり、女性や高齢者は農業者としての位置付けです。
言うまでもなく、障害者は、障害者でない者と等しく、社会の構成員としてあらゆる分野の活動に参加する機会が確保されなければなりません。農福連携を規定する以上、女性や高齢者と同様に、障害者も農業者としての位置付けがなされてしかるべきです。
この点、我が党の横沢理事が、農福連携は農村振興策の中に規定されて、なぜ女性や高齢者と異なる場所に規定されたのかと問うたところ、政府は、農村の振興を図るため新しい人材を呼び込むという観点から農福連携を規定しているという答弁でした。農村地域における農福連携であっても、農業者として参加することが大前提となります。このような当然な指摘に対し、新しいビジネス創設ということで地域政策としての取組として規定することが適当であるとか、障害者の福祉の増進を図っていくという地域政策としての側面が強いであるとか、政府答弁は理屈の通らないものばかりです。もはや人権感覚がずれているとしか言いようがありません。
第三に、農村の振興に関する基本理念に地域の資源を活用した産業の振興について明記していない点です。
農業人口の減少は農業では食べていけないことが主な要因である以上、所得確保のための何らかの手段が必要です。農業だけで再生産可能な所得を得られない場合、地域資源を活用した所得も合わせて持続可能な所得の確保も考慮すべきです。これこそ基本理念に書き込むべきです。
この点についての質疑に対しても、基本理念には農業を下支えする農村の役割として限定的に規定したとか、理念と施策を合わせて農村振興に関する考え方が規定されているといったように、所得確保策すら政府・与党は明記に反対いたしました。
これらの内容を含め、参議院では国民民主党・新緑風会と共同で修正案を提出しましたが、政府・与党から全て拒否されました。現場のためにより良い基本法に仕上げるという考えが皆無で、農政を政治利用したとしか思えない。そんな政府案には反対せざるを得ません。
目下、再生可能な所得を確保することが喫緊の課題となっています。しかし、あらゆる資材が高騰する中、立場の弱い生産者に負担が偏り、今の価格水準では再生産がかないません。仮にコストを転嫁ができたとしても、物価上昇に賃金上昇が追い付かない現状では、消費が減るか輸入品に代替されてしまうか、そのどちらかです。
政府は価格形成について法制化も視野に検討を進めているとしていますが、その結果、再生産可能な価格が実現するかは不明ですし、喫緊の課題に対する答えにもなっていません。だからこそ、農地を維持する面積に応じて交付金を交付する制度を創設すべきであると主張しているのです。この農地維持交付金に対しても大臣から否定的な御答弁がありました。
この国の食料、農業、農村を守るため、私たちは愚直に政策を訴えていく、今の政府に日本の農政を任せられない、このことを申し上げ、討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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