○浅野委員 国民民主党の浅野哲です。
本日の審査対象は、参議院の緊急集会の射程についてであります。
私は、参議院の緊急集会について、開催できる期間、権限や案件の範囲、開催要件の三点について意見を申し述べます。
まず、参議院の緊急集会は、憲法五十四条の一項と二項において、内閣が衆議院を解散してから特別国会を召集するまでの間に国に緊急の必要が生じた場合であり、かつ、内閣からの求めに応じて開催されることが定められています。
そもそも、憲法五十三条の規定に基づけば、衆参両院の議員が存在する状況においては、内閣は、参議院の緊急集会ではなく、臨時会を召集しなければなりません。
したがって、参議院の緊急集会を開催できる期間についての実体的要件は衆議院が解散されている状態であることと解することができ、その上で、憲法五十四条は解散の日から四十日以内に総選挙を行うことを求めていますから、参議院の緊急集会が開催できる期間は、内閣が衆議院を解散した日から四十日以内とすることが妥当だと考えています。
一方で、大規模災害や武力衝突などが発生した場合など、総選挙の実施が一定期間見通せない場合については、緊急集会を開催できる期間を解散後七十日以内とする限定説と、期間は縛られないとする無限定説がございます。
これについて、私たちは限定説を支持する立場に立っております。
令和五年五月十八日の当審査会におきまして、我が党の玉木雄一郎委員からの質問に応じた長谷部参考人は、フランスの法学者モーリス・オーリウやイングランドのバッコーク判決などを引用しながら、無限定説の立場で、緊急事態の法理の正当性を説かれました。
しかし、私たちは、緊急事態を理由にして準則の解釈を開いてしまうことは、立憲主義の観点から、できる限り避けるべきと考えます。
さらに、憲法制定当時、参議院の緊急集会の開催が想定される期間についての答弁記録も残っております。
昭和二十一年九月二十日の貴族院帝国憲法改正案特別委員会におきまして、当時大臣だった金森徳次郎は、つまり総選挙を行いますまでには三十日ないし四十日が要りましょう、また、その後始末をして召集いたしますために三十日くらい要るとすれば、およそ七十日、国会のないことを予想しなければなりませんと発言しています。
少なくとも憲法制定当時から、参議院の緊急集会が開催され得る期間は、衆議院を解散してから特別国会が召集されるまでの七十日間程度は想定されていたと言えます。逆に、これを超えるような期間にわたって衆議院が不在となることは現行憲法の条文上明確でなく、改めて、選挙困難事態を規定する必要性があると考えています。
次に、権限や案件の範囲について意見を述べます。
憲法五十四条三項は、参議院の緊急集会により取られた措置の臨時性、暫定性を明らかにしています。衆議院の同意がもし得られなければその措置は失効するものであることを考えれば、その措置が臨時的、暫定的なものであっては意味を成さないようなものは、緊急集会で取られる措置の対象とすべきではありません。例えば、憲法改正発議や内閣不信任決議、内閣総理大臣の指名、本予算の議決、また他国との条約締結などは、緊急集会で取り扱う案件としては適切ではなく、二院制の下で行われるべきと考えています。
最後に、緊急集会の開催要件についてであります。
憲法五十四条では、先ほど来申し上げておりますが、衆議院が解散され、かつ、国に緊急の必要があるときと、緊急集会の開催要件を限定しています。
一方、任期満了日の前後で大規模災害や武力攻撃など不測の事態が起こることも意識して、任期満了の直前であっても、衆議院を解散し、緊急集会を開催できる状況にしておくことなどの方策がこれまで取られてきた、考えられてきたと認識しています。また、任期満了前に大規模災害等の選挙困難事態が発生した場合は、五十四条を類推適用し緊急集会を開催することは可能とする意見も多数存在します。
ただし、こうした理屈の下では、時の総理大臣による解散権の行使が必要以上に容易になったり、類推適用とはいえ、憲法に明記されている内容と異なる理由での緊急集会を容認し続けることになります。
本来は、衆議院の解散と任期満了という任期の終了原因に違いがあるとはいえ、現に衆議院議員が存在しない状況、あるいは国会に召集されるべき議員が現存しないという点においては、何ら違いは認められないと考えます。新たな議員が選出されない原因が政権の意思に基づくものではなく大規模災害や武力攻撃などの不測の事態である場合には緊急集会を開催できることを、条文上も明確にしておくべきと考えます。
なお、公職選挙法三十一条では、衆議院任期満了日と国会閉会日が近接している場合に、任期満了後の総選挙実施も許容されています。制度上、衆議院議員が不在となる場合が生み出され得る状況は、立法的な手当ての余地があると考えます。
最高法規である憲法と公職選挙法、そして参議院の緊急集会を定めた国会法の関係性について検討の余地があることに付言し、私の発言を終わります。
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