○浅野委員 国民民主党の浅野哲です。
憲法規定と社会実態との乖離という本日のテーマの下、私は、本日、デジタル時代における人権保障と憲法九条に係る課題認識について意見を述べさせていただきます。
まず、人権分野におけるデジタル時代の人権保障についてです。
現代では、スマートフォンの位置情報やSNS投稿、購買履歴など、個人に関する情報が日常的に収集、分析され、AIの判断や広告配信に用いられています。こうした情報環境の変化は、これまで私たちが当然と考えてきた自己決定や人格的尊厳の前提を根底から揺るがし得るものです。
ところが、現行憲法はこうした事態を十分に想定をしておりません。第十三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。」と規定し、第二十一条は通信の秘密を保障していますが、いずれも、データの自動収集やAIによる判断といった新たな課題には正面から対応していません。まさに規範と現実との間にギャップが生じている状態だと言えます。
例えば、米国では、過去、アマゾン社の採用AIが女性差別的な出力を行っていたことが問題となりました。履歴書から過去の応募者傾向を学習したAIが男性的な表現を優遇するようなアルゴリズムになっていたということです。
誰がどのような基準でどのような判断をしたのか不明なまま、結果だけが個人の人生を左右してしまう、こうしたブラックボックス化の問題は既に日本社会にも入り込みつつあります。
私たち国民民主党は、こうした現実を踏まえ、自己情報をコントロールする権利を新たな人権として重視をしています。これは、個人が自分に関する情報の収集、利用、保存、削除の在り方を主体的にコントロールできる権利であり、従来のプライバシー権の枠を超えた保障が必要です。
この課題には、もちろん個人情報保護法などの個別法制による対応も重要です。しかし、人格的自律や民主主義の基盤に関わる原理的な権利規定については、憲法という最高法規に理念として明記することが不可欠です。これは、下位法に対する指針となり、技術が進化しても人間の尊厳が揺るがない社会規範形成の羅針盤となっていくでしょう。
さらに、今日では、国家権力だけでなく、巨大IT企業のような民間主体によっても自由が制限される時代に入りました。だからこそ、国家と民間の双方に向けて、高度情報化社会における人権の基準を憲法レベルで定立することが必要だと考えます。
憲法も時代とともに進化するべきだと考えています。テクノロジーが人権を空洞化させつつある今だからこそ、憲法の規範力を取り戻す作業を私たちは始めなければなりません。その第一歩として、デジタル時代の新しい人権の憲法への明記を議論することを強く呼びかけたいと思います。
次に、憲法九条と現実社会との乖離について意見を述べます。
日本国憲法第九条は、戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を明記しています。一方で、現実には自衛隊が存在し、防衛費は年五兆円を超え、各種装備の高度化や南西諸島への部隊展開も進んでいます。こうした現状と九条の条文との間に乖離がある可能性は度々指摘されてきており、国民にとって憲法の意味と現実との整合性が分かりづらくなっているのが実情です。
政府は、戦力は保持できないが、必要最小限度の自衛力は保持できると解釈していますが、こうした不断の解釈変更に依存する姿勢は、憲法の規範力を毀損する要因となっています。とりわけ、二〇一五年の安全保障関連法制によって、従来違憲とされてきた集団的自衛権の一部が容認され、憲法と政府解釈の一貫性に対する国民の理解は一層困難性を増しています。
私たち国民民主党は、平和主義を堅持した上で、自衛隊の存在を憲法上正当化する規定を設け、その行使範囲も明文化することで、憲法と現実とのねじれを正面から解決すべきと考えています。同時に、文民統制の強化、国会の事前承認を含む政治による統制の仕組みを憲法上明示すべきと考えます。これは、国家の安全保障に対する統治構造の信頼性を高め、ひいては、全ての国民に保障されるべき平和的生存権の基盤を確かなものとするためです。
安全保障環境の変化も直視しなければなりません。例えば、中国は二〇二一年に海警法を施行し、尖閣諸島周辺での武器使用を正当化する根拠を国内法で整備しました。北朝鮮は弾道ミサイルを頻繁に発射し続け、米国では、トランプ政権が日本に対し、在日米軍駐留費の大幅増額を求める姿勢を示しています。これらの動向は、平和を当然の前提とする従来型の安全保障観に再検討が迫られていることを示しているのではないでしょうか。
私たちは、憲法九条の理念と現代における安全保障の現実とを二項対立的に捉えるのではなく、両立すべき価値として捉え直すべきと考えます。国民の生命と財産、平和な暮らしを守り抜くという政府や立法府の責任を果たすためにも、憲法の規範力を回復するための努力を私たち自身の手で切り開いていくべきことを申し上げて、私からの発言を終わります。
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MCP: search_diet_speeches(speaker="浅野哲")