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近藤駿介 ·アドバイザリー・ボード会員/東海大学国際原子力研究所所長

衆議院原子力問題調査特別委員会(2025-06-03)での発言

第217回国会 ·第第4号号 ·3,305字
○近藤参考人 近藤です。  本日は、原子力安全規制と第七次エネルギー基本計画に関して、関係機関が国会事故調の、我が国原子力界は透明性と公開性、そして世界に学び、自らを顧みる姿勢に欠けていた、そのことが大事故を招いた原因という指摘をどう踏まえているかについて点検するべく、幾つか申し上げます。  二〇〇〇年代の初め、原子力委員会は、当時、核燃料サイクル論争が霞が関をにぎわしていたことを受けて、核燃料サイクルの選択肢は、経済性のみならず、循環型社会の追求、エネルギー安定供給、将来における不確実性への対応能力の確保等の視点から総合的に評価するべきものとし、そうした評価を実際に行い、その結果を踏まえて、我が国における原子力発電の推進に当たっては、核燃料資源を合理的に達成できる限り有効に利用するべく、安全性、不拡散性、環境適合性を確保するとともに、経済性にも留意しつつ、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本方針とするとしました。今次エネルギー基本計画に示されている原子力政策は、この基本方針を踏まえていると認識します。  また、この大綱では、この基本方針の後に、長期的には技術の動向、国際情勢等に不確実要素が多々あるので、国、研究開発機関、事業所等は、状況の変化に応じた政策選択に関する柔軟性を確保するために、使用済燃料の直接処分技術等に関する調査研究を進めることが期待されるとしました。  先日、当委員会における辰巳議員の質問に対して、私、政策大綱の作成時には路線選択について柔軟性の確保も念頭に置かれていたと申し上げたのは、この記載の存在のゆえです。  なお、先日同僚会員から指摘されましたように、最終処分法は、再処理によって発生するガラス固化体を地層処分するためのNUMOの業務を定めていますが、その五十六条においては、NUMOは経産大臣の認可を得て、核燃料物質を容器に封入したものについて最終処分と同一の処分を行うことを受託できるとしていますので、使用済燃料を最終処分する御提案があれば、受け入れることが可能です。よって、直接処分の採否は、この法律が決めているのではなく、行政の政策判断によると解するべきと考えます。  これらのことからしまして、私としては、今回のエネルギー基本計画制定過程において、政府は、国民の皆様に対して、エネルギーをめぐる内外の変化を踏まえても、この基本計画を今後の我が国の原子力施策とすることが合理的であると考えるがどうかと問いかけ、寄せられる疑問に丁寧にお答えするべきではなかったかと考えます。本計画の中に、政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実という一節があって、そこにこういうことが大切とされているのを見まして、隗より始めよという感想を持った次第でございます。  第二に、原子力安全規制行政に関して、原子力基本法の第二条が安全の確保を旨としとあるところ、二〇一二年の改定で、前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえて云々とされました。当時、基本法なのに確立された国際的な基準を踏まえてという規定は曖昧でおかしいと思ったのですが、一昨年の改定では、さらに、その第二項として、事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って云々という条項が追加されました。これは事業法の色彩が強い規定でありまして、教科書的に言えば、憲法と個別法の間をつなぐ基本法という常識に照らしますと、強い違和感を覚えるものです。  国際社会では、米国の原子力規制委員会の原子炉安全規制の基本哲学は、アディクエート・プロテクション・オブ・パブリック・ヘルス・アンド・セーフティー、公衆の健康と安全を適切に保護すること、つまり、リスクをゼロにすることではなくて、合理的に達成可能な範囲での高い安全性を義務づけると法定されていますし、英国のオフィス・フォー・ニュークリア・レギュレーションは、比例原則、すなわち、リスクが高ければ対策は厳しく、リスクが低ければ対策はそれに応じて軽くてよいという原理の下、合理的に達成可能な限りのリスク低減、ALARPを原理として規制活動を行うとしています。  大学の法学の授業で、我が国の憲法では第十三条がこの比例原則を述べていて、行政裁量を羈束していると習った記憶がございますが、このことを踏まえれば、この第二条第一項は、前項の安全の確保については、憲法十三条を踏まえ、合理的に達成可能な限り高い安全性を確保することであるとするのが基本法にふさわしい姿と考える次第です。  こうした国際社会の標準的な安全規制哲学のエッセンスが原子力基本法に明定されなかったゆえか、原子力規制委員会は、新しい規制基準の制定過程においては、防護の厚さが足りなかったことが福島事故の原因との批判に応えるべく、より多重化された深層防護を整備することをひたすら大事にしたようです。この深層防護の哲学には防護の厚さを決める論理は内在しませんので、通常、比例原則やALARPの要請を受けて活用することが国際的に確立された考え方なんですが、そのような観点からの議論はなされなかったようでございます。  その結果、特に、こうした総合判断が重要になる意図的航空機衝突等の外的脅威対策において、英国、カナダあるいは隣の韓国等で採用されている影響緩和と国家防衛機能の連携を重視する考えは採用されず、分散配置されたモバイル設備での柔軟対応というのは、私からすると全体的合理性の観点から意義を有すると考えるのですが、これは、暫定措置としてのみ受け入れるとして、特定重大事故等対処施設を安全機能の冗長性と物的隔離を確保して整備せよと、こうしたテロ行為は元々、国際通念では、国家防衛機能により確率的に見て十分起こり難い設計基準外事象とされるべきものであるにもかかわらず、設計基準事象と同等の設備整備を義務化する、国際的にも特異な要求が制定されました。  このことは、とにかく設備を強化するので社会の皆さん安心してくださいという当局の姿勢が見られ、当時の社会情勢としては安心が何より大事であったことから当然だと反論されることを承知しつつ、専門家としては、世界に学ぶという点でこれはいかがかと問題提起せざるを得ません。  ところで、この数年、世界の原子力安全関係者の間では、気候変動や情報技術の悪用、そして軍事衝突に係るリスクに関心が高まり、こうしたリスクをいかに管理するべきかの議論が行われ、合理的に達成可能な限りリスクの低減を図る観点から、必要な対策に関して、共同しての取組も含めて意見交換がなされています。  このエネルギー基本計画においても、こうしたリスク要因の存在に言及はされています。計画ですから言及だけでいいのかなと思いつつも、私としては、そのような意見交換があることを踏まえて、意見交換の場で我が国は対策かくあるべしとの考えを発言していくべしと、一歩踏み込んでもよかったのかなと思っております。  最後に、計画は、革新軽水炉について、事業者は、更なる安全性向上を目的としてこれに組み込まれる新たな安全メカニズム等と新規制基準の関係性の整理に向けて、規制当局と積極的な意見交換等を行うべしとしています。こうした対話は各国の規制機関において既に行われてきており、これら機関から、年報等において、こうした対話は有意義であったと紹介されています。  私としましては、我が国におけるこの対話で大切なのは、今述べた規制哲学をどう体現するかの説明と評価に関する意見交換と思うところ、関係者が共有するべき安全哲学が明確にされていないゆえに、ハウ・セーフ・イズ・セーフ・イナフ、つまり、社会と共有を目指すリスク水準に関する徹底した議論のない対話に終始することを恐れ、そうならないことを強く希望するものであります。  私からは以上です。  ありがとうございました。(拍手)

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