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沖野眞已 ·東京大学大学院法学政治学研究科教授

衆議院国土交通委員会(2025-05-09)での発言

第217回国会 ·第第13号号 ·5,351字
○沖野参考人 ありがとうございます。沖野でございます。どうかよろしくお願いいたします。  私も齊藤委員と同様に、法制審議会区分所有法制部会の委員を務めておりました。  同部会は、諮問百二十四号によりまして、区分所有建物の管理の円滑化、建て替えの実施等の区分所有建物の再生の円滑化、また、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の再生の円滑化の観点からの、区分所有法制の見直しが要請されたものでございます。令和四年十月より、約一年三か月ですが、合計十七回にわたる審議を経て要綱案が策定されまして、改正法案の、これらに関連する法律の部分については、この要綱案を踏まえたものというふうに承知をしております。  そこで、本日は、このような経験を踏まえまして、本法律案の五つの法律の改正のうち、専ら区分所有法及び被災区分所有法の改正についてお話をさせていただきます。  以下では、多数の項目がございますことから、四つの項目に絞ってお話をさせていただきます。  第一は、集会決議の要件、第二は、所有者不明や管理不全への対応、第三は、建て替えの円滑化のための措置、第四は、区分所有権の譲渡の場合の共用部分についての損害賠償債権等の行使の円滑化でございます。  早速、第一でございますけれども、第一は、集会決議の要件の合理化であります。  区分所有建物の管理、再生の円滑化を図るために、区分所有者による団体的な意思決定の仕組みである集会の決議につきまして、建て替え決議を含む全ての決議を対象として、裁判所の関与の下、所在等不明の区分所有者を決議の母数から除外する仕組みが創設されております。  また、区分所有権の処分を伴う決議以外の決議を対象といたしまして、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みが創設されております。  これらは、現在、様々な問題がある中で、所在等が不明である区分所有者や関心のない区分所有者の存在を前にして、そのために、まさに望まれる決議ができないという状態に対応するものでございます。  このような問題というのは、実は、民法上の共有関係につきましても、いわゆる所有者不明土地問題の一環として問題がございました。これにつきましては、令和三年に民法の改正が先行してなされておりまして、民法上の共有関係につき、所在等不明共有者や賛否が不明の共有者を除外して共有物の管理などをすることができるという仕組みが導入をされております。区分所有法のこの改正というのは、この民法の改正を基礎としたものであります。  一方、除外されてしまう人への配慮ということでございますけれども、所在等不明の区分所有者の母数からの除外につきましては、裁判所の関与を必要とすることで、その利益への配慮を実現しています。  出席者多数決の仕組みにつきましては、対象となる決議を限定しているほか、その対象となる決議のうち、普通決議以外の決議につきましては、集会の定足数を設けております。これがないと、ごく少数の人の出席で、その多数決で可決ができることになってしまうということがあり、それが問題であるということから、このような定足数の規律を入れているということでございます。決議の正当性に配慮するものというふうに言えます。  第二は、所有者不明や管理不全への対応です。  改正法案では、所有者不明の専有部分、管理不全の専有部分や共用部分について、裁判所が選任した管理人にその管理を行わせる新たな財産管理制度を創設しています。この財産管理制度は、これもまた、令和三年の民法改正におきまして創設されました所有不明建物管理制度、管理不全建物管理制度に倣うものであります。所有者が不明であるとか管理不全である、そういう専有部分等の適切な管理に資する制度と考えられます。  第三が、建て替えの円滑化のための措置です。  齊藤委員からも御指摘あったところでございますけれども、まず、改正法案では、区分所有建物の建て替え決議につきまして、建て替え決議の多数決要件を、一定の客観的事由の存在を要件として、五分の四以上から四分の三以上に引き下げ、さらに、被災した建物については三分の二以上に引き下げることとしています。一定の客観的事由とは、具体的には、耐震性の不足、火災に対する安全性の不足、外壁等の剥離により周辺に危害を生ずるおそれ、給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ、バリアフリー基準への不適合のいずれかの事由でありまして、それが認められる場合に建て替え決議の多数決要件が引き下げられます。  建物が客観的に危険な状態にあるなど、建て替えを円滑に行う必要が高い場合に限って決議の要件を引き下げるもので、建て替えに反対する区分所有者の権利に配慮して、円滑、機動的な決議への要請との間で、調整を図る規律となっていると評価されます。  次に、改正法案では、建て替え決議後の建て替えの円滑化の観点から、賃貸借について、その終了請求の規律を設けています。  建て替え決議があった場合には、建て替えに反対するなどして建て替えに参加しない区分所有権者であっても、区分所有権を失うことになります。賃借権というのは、その区分所有権の上に乗っているというわけでございますけれども、そこで、それとの権衡を考慮して、賃借権について、一定の補償の下で終了させるとするものでございます。補償金の支払いによって、通常生ずる損失というのが補償されるということのほか、補償金の支払いと賃借人の明渡しとを同時履行、その提供があるまで明渡しというのが求められないという形になっておりますので、それによって補償金の確保に配慮し、賃借人の保護にも配慮した規律となっております。  次に、共用部分等に関する請求権の行使の円滑化についてお話ししたいと思います。  本改正案は、区分所有者等の有する共用部分等について生じた損害賠償金等の請求権の行使の円滑化を図るという観点から、管理者は、当該請求権を有する区分所有者又は旧区分所有者を代理し、訴訟追行をすることができるものといたしまして、区分所有権が譲渡された、損害賠償債権が行使されないままに譲渡されたという場合でも、当該請求権について、管理者による代理行使、さらには訴訟追行が可能であるということを明確にしています。  これは、現行法下におきまして、区分所有法の解釈として、区分所有権の譲渡があったとき、管理人は、譲渡をした旧区分所有者、区分所有権者を代理することはできず、かつ、全員を代理するのでなければ管理者による訴訟追行はできないとした東京地裁の判決があったために、これが制度趣旨を没却するとして問題点が指摘されていた、そういう状況に対応したものでございます。  この規律に関しましては、法制審議会区分所有法制部会におきましても様々な議論がなされ、かなりの時間等を議論に割いて、最終的にはこのような結論となったわけでございます。幾つか、その考え方について御紹介をさせていただきたいと思います。  まず、前提となる法律関係を確認いたしますと、例えば、分譲業者からマンションの一室を購入したところ、共用部分にいわゆる瑕疵があった、外壁のタイルが剥がれてくるとか、そういったことがあったという場合には、これは、元々の分譲業者と買主である区分所有権者との間の売買契約に基づいて、契約不適合による損害賠償債権が発生します。もちろん、民法上の規定の要件を満たすということが前提でありますけれども。これは元々の分譲のときの売買契約に基づくものですので、契約の当事者である最初の区分所有権者がそのような権利を持つ、損害賠償債権を持っているということでございます。  では、その区分所有権者が自分の専有部分というものを譲渡したらどうなるかということですが、専有部分に共用部分の持分もついていくわけですけれども、損害賠償債権が果たして同じように譲渡されていくのかというと、あくまで、その区分所有権の譲渡契約ですので、それとは異なる別の契約に基づく損害賠償債権がどうなるかというのは、結局、譲渡契約でどのような合意がされたかによって決まることになります。譲渡契約において債権も譲渡するというふうに当事者が合意して決めていれば、もちろんそれは譲渡されるわけであります。しかし、そうではない、当事者は譲渡しないと決めていれば、それは元の債権者が持ったままということになるわけであります。  したがいまして、特に譲渡契約において損害賠償債権が譲渡されていなかったとすれば、旧区分所有権者が損害賠償債権を持っているということになり、そして、元からいる区分所有権者も、そのような損害賠償権を、それぞれの契約に基づいて持っているということになるわけです。このような旧区分所有権者が持っている損害賠償債権も管理者が代理行使できるようにしよう、一元的な管理を実現しようというのが、今回の提案であります。  ただ、代理という制度は、本人が代理人をコントロールできるということによって、その適正化を図る仕組みです。現在の区分所有権者であれば、まさに区分所有法における団体的な規律によって管理者に対するコントロールを及ぼすことができるわけですけれども、もはや旧区分所有権者になっている者は、そのような制度を利用することができません。  適切な管理者に対するコントロールを及ぼすことができないにもかかわらず、この人に代理行使させなければいけないということになってしまいますので、その正当化をどう図れるのかという問題があり、その正当化を基礎づけるのが別段の意思表示であります。それは書面や電磁的記録などで明確にしてもらうという形になっておりまして、この別段の意思表示があることが、ここの正当化を支えるという考え方になっておるわけでございます。  多くの場合には、自分で行使するということも意味がない、例えば証明などもしていかなければいけないときに、まとめて行使してもらった方がいいということであれば、そのような意思表示はしないということが一般的でしょうし、あるいは、自分はもう関係から離脱するんだということであれば、そもそもの譲渡契約において債権も譲渡するということも考えられるわけであります。  今のような考え方に改正法案は立っているわけでございますけれども、部会におきましては様々な考え方が出されておりました。一つは、共用部分等に生じた損害賠償金の請求権については、区分所有権を譲渡したときには、当然に旧区分所有者から現区分所有者に承継がされるという規律を設けるべきではないかという御議論も非常に有力にあったところでございます。これは、かなり長い時間をかけて検討がされましたけれども、最終的には、部会としては採用しないということになりました。  なぜかということなんですが、一つは、先ほどは、誰に行使させるかということでさえも、それをコントロールできない人に強制していいのかという問題に対して、別段の意思表示が支えているわけですが、これは、債権の帰属自体も強制的に移してしまうということですので、一番意味があるのは、区分所有権の譲渡のときに、債権は譲渡しないと当事者が合意したとしても、それはもう強制してしまうというところにこそ一番のポイントがあるんですけれども、その正当化をいかに図れるのかという、いわば理屈の問題ということになります。  もう一つは、実質的に、実際上どうなのかということにつきまして、例えば、建築時や分譲契約時から瑕疵があって契約不適合を負っているというときに、そのまま知らずに譲渡をしたという場合には、あるいはうまく当てはまるのかもしれないんですが、そういう場合ばかりとは限りません。既に瑕疵が明らかになって、場合によっては、もう修補もしてしまおう、管理費を払って修理をしてしまおうという場合もあります。待っていればいいというのがあるかもしれませんが、転勤しなければいけないとか、売らなければいけないということがありますので、そういうときにでも強制的にこの債権を承継させるということが果たして適切なのかということであります。  それに対しまして、様々な場面があることを考えると、このような規律を設けるのは、実際も含めて適切ではなかろうと。では、どういうことで対応するのかというと、規約での定め、あるいは譲渡契約において一つのモデル契約を作るとか、そういうような形での対応ということが考えられるわけでございます。  このような形で法律の規定としているからには、一場面だけを対象にして考えることはできないというのが部会の考え方だということでございまして、本改正案の規律というのは、東京地裁の判断を克服して、管理者による一元的な行使を可能にして円滑を図るということで意義のあるものと考えております。  超過して申し訳ございませんでした。ありがとうございました。(拍手)

沖野眞已 の他の発言

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2025-05-09 · 衆議院国土交通委員会
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