○神崎参考人 御質問ありがとうございます。
まず、理論的な問題として、おっしゃっている御指摘の点につきましては、理論的に二個問題があると思っております。
まず、別段の意思表示以前に、共用部分の瑕疵に関する損害賠償請求権が共用部分の共有持分権と同様の性質を持つのに、そもそも区分所有関係から離脱した旧区分所有者に帰属を認めること自体が、区分所有法十五条一項の随伴性や十五条二項の分離処分の禁止に反するという前提で、分属しているということ自体が間違っているんじゃないかという、その一点目。
そして、その行使方法において、別段の意思表示というのは、管理者が一元行使すべきものを、別段の意思表示によって個別行使を認める法律になりますので、自己の持分の請求権を別途に個別行使することを認めるのは、共用部分の分割請求を認めるに等しいので、区分所有法の大原則に反する。
そういう意味では、理論的には、その二つの大きな問題があります。
そして、実態的に見た場合には、これは完全な補修を阻害するという問題があります。このような分属を認めて、別段の意思表示を認めると、共用部分の欠陥の一〇〇%補修が実現できなくなるわけですね。
例えば、訴訟手続上で考えてみると、紛争解決を阻害するわけです。実際の欠陥マンションの訴訟プロセスで考えても、極めて不都合な事態を招きます。別段の意思表示は訴訟提起後でも可能とされているので、恐らくなら、和解を阻害するであろうと考えられます。
訴訟上の和解協議は、瑕疵修補による和解提案が業者側からなされることもあって、マンションのような大規模建物の場合、修補による和解の方が現実的なケースもあり得るんですけれども、旧区分所有者は瑕疵補修では何ら得るところがないために、業者が瑕疵を認めて瑕疵修補を申し出た途端に別段の意思表示をして、金銭賠償を要求する可能性が高い。瑕疵を認めているんだったら、修補せずに私にお金をよこしなさいよと、別段の意思表示をそのタイミングでしてくるということになろうかと思うんですね。せっかくの補修和解が頓挫する結果を招く。
あるいは、管理組合は、和解するために、具体的な和解内容を議案として管理組合総会に諮り、決議を経る必要があるんですけれども、和解協議の最中に旧区分所有者から一人でも別段の意思表示がされれば、そのたびごとに総会決議を取り直さなければいけないということになって、和解の機会を奪うでしょう。
そして、訴訟提起後に別段の意思表示がなされるのは、このような解決が近づいたときである可能性が高く、旧区分所有者が自ら訴訟追行するリスクやコストを取らずに、漁夫の利を得ようとして紛争解決を阻害すると思われます。
このように、団体訴訟である欠陥マンション訴訟において個別行使を可能とするような仕組みを組み込むこと自体が間違っていると思います。
また、今申し上げたのは訴訟のプロセスですけれども、訴訟が終わった後、現に賠償金が得られた後に、よこせと言うことができるわけですね。別段の意思表示もしないまま、そのまま訴訟を終わって、賠償金が得られることになったときに、自分の持分をよこせと言えるということは、非常に不都合が生じますよね。補修ができなくなっちゃいます。
もし和解の補修工事が完了していたら、現区分所有者全員に対して、旧区分所有者から不当利得返還請求ができてしまうということも考えられるわけです。そうした場合に、例えば修繕積立金を差し押さえて、自分の分をよこせと言われてしまうと、せっかく補修できているのに、今後の改善計画が成り立たなくなってしまいます。
このようなことを許すということが、そもそもたてつけとしておかしいんじゃないかと思っております。
以上です。
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