○安野参考人 本日は、このような機会をいただき、誠にありがとうございます。一般財団法人GovTech東京でアドバイザーを務めております安野貴博と申します。
今回のAI法案に対する意見を述べさせていただきます。
初めに、私の経歴、バックグラウンドを簡単に紹介いたします。
今回の法案に関し、私は三つの意味で当事者でございます。第一に、ソフトウェアエンジニアとしてAIを活用したアプリケーションの開発に携わっております。第二に、起業家としてAIスタートアップを複数立ち上げてきた経験から、事業者視点でのAI活用やビジネス観点での課題を実感しております。第三に、商業作家としてSF小説を執筆しており、著作権者という立場で、生成AIなどの技術がクリエーターの創作活動に与える影響についても関心を持っております。
これらの観点を踏まえ、本法案を日本におけるAI技術の研究開発と活用の推進を図るための重要な一歩と考え、その目的に賛同しつつ、よりよい運用のための提言をさせていただければと思います。
まず、今回のAI法案について、私の受け止めを三つ共有させていただきます。
まず第一に、現在、私たちは社会変革を促すAI技術の推進とリスク対応の両立を求められており、本法案もその両立を前提に考えられたものだと認識しております。
昨今のAI技術の進化は著しく、AI技術は社会構造の大きな変化をもたらす可能性があります。適切に活用することで、行政サービスの高度化、産業競争力の強化、医療、介護、教育分野などにおける革新など、国民生活に対して幅広い恩恵が見込まれます。その一方で、著作権の侵害、ディープフェイクによる名誉毀損や偽情報の流布など、様々なリスクも指摘されているとおり、リスク対応も課題であると考えます。この両者は、決してどちらかだけを解決するというものではなく、イノベーションとリスク対応を両立させる姿勢が必要だと考えております。
二つ目に、海外事例を適切に踏まえることの必要性です。
EUは、AIアクトの策定を進めるなど、規制面、罰則面を強化しておりますが、これに関しては、研究開発やコンプライアンスにおける負担増が、特にスタートアップや中小企業に対して過剰なコスト要因になっており、イノベーションを阻害しているという声も聞かれます。
一方で、米国は、官民が連携しつつ、基本的には産業界の自主性を重視するような動きがありますが、これに関しては、社会的リスクへの対応は後手に回っており、利用者の懸念に十分応えられていないという声もございます。
こうした海外の例を踏まえつつ、日本としては中間的なアプローチを取って、事業者にとっても利用者にとってもAI技術を活用しやすいような制度設計を目指しているということは注目すべき点だと考えております。
三つ目に、機動力の向上、変化に対応可能な体制づくりが重要だと考えております。
AIは、七か月ごとに仕事の能力が倍になっていくというようなトレンドが観測されております。ある意味、指数関数的に変化していく。そんな中で、本法案は、AI戦略本部を総理直下に設けることで、変化の激しいAI分野に対して素早く施策を講じられる体制を整えておると認識しております。また、研究開発の促進とリスク軽減を両立させる仕組みとして、機動的な行政調査やガイドラインを活用しようとする柔軟な考え方を持っており、日本におけるAI推進を適切に進められるものと考えております。
次に、今回のAI法案で適切に規定されていると考えられる四つのポイントに触れたいと思います。
一点目が、重要性の認識が明文化されていることでございます。
AI技術は、産業、経済のみならず、安全保障上も非常に重要な要素です。本法案においては、AIの利活用が国民生活や国家安全保障に大きな影響を与える可能性を見据えて、各当事者の積極的な取組を促進しようとしております。
二点目に、研究開発を目的とした、関係者を萎縮させない推進方針でございます。
罰則を伴うような規制強化ではなく、基本理念や国の責務、指針に焦点を当てる推進法の側面が強いことは、AI関連のプロジェクトを各事業者が萎縮なく進める上で、イノベーションを促進するような土台になり得ると思っております。特に、AIを扱うスタートアップなどは、新しい技術領域やその応用に挑戦する際に、過度に厳しい規制やコスト負担の懸念があると、参入自体を断念しかねません。本法案は、そうしたリスクを回避するような柔軟性があると考えております。
三点目に、リスク低減に向けた著作権保護と透明性確保への配慮です。
AIが生成したコンテンツについては、著作権法上の取扱いが複雑化しつつあります。本法案でも、著作権侵害への対処やコンテンツの透明性確保が重要視されており、作家やクリエーターにとっても一歩前進と捉えられます。AIをめぐる著作権、知財関連の課題に正面から向き合い、検討を深める土台が本法案によって整えられることは、創作者としては非常に心強く感じております。
四つ目に、検討の機動力を上げる体制についてです。
本法案で設置されるAI戦略本部は、全閣僚で構成され、総理が本部長を務める司令塔組織になっています。AI戦略においては、高いレベルのリーダーシップと省庁間の連携が不可欠であり、機動力の高い体制で、迅速かつ総合的な判断を下せるようにしていることは、本法案の大きな特徴だと考えております。
次に、本法案の運用段階で懸念される点について、四点述べさせていただきます。いずれも、今後の施行、運用の中で注意深く対応する必要があると考えております。
一つ目に、AI法案以外の既存の法令、制度での対応スピードへの懸念です。
今回のAI法案は基本法の性格が強いものと承知しており、個別案件や新しい技術リスクに対処する際には、関連する業法や規制の迅速な改正が必要となると認識しております。また、フェイクニュースやデータの不正利用など、現行法でも違法性が認められるような問題であっても、AI技術特有のスピード感に対応し切れない可能性があると考えております。
二つ目に、AI技術全般に対する安易な規制論が出てくることへの懸念です。
十九世紀のイギリスでは、自動車の利点というものを著しく損なうような規制であった赤旗法というものがございました。これに象徴されるように、新しい技術がもたらす変化への過度な不安が先行すると、過剰な規制によって産業や社会の成長が阻害される事態に陥るおそれがあります。特に、AI分野は国際競争が激しく、強い規制をしくと、国内事業者のコストが増大し、海外事業者との競争において不利な環境をつくってしまう懸念がございます。
三つ目に、遵法意識の高い事業者ほどコスト負担が大きくなってしまうという懸念です。
ルールを守らない、あるいは抜け道を探す事業者が海外拠点などから参入してくると、公正な競争というのがゆがめられるリスクがあります。そうした不公平感をなくすためにも、行政上の調査権限や公表措置などのソフトな制裁を適切に活用しながら実効性を高めていくという運用が重要だと考えております。
四つ目に、変化の激しいAI領域において、専門家や現場の声がタイムリーに反映されないという懸念です。
今日のAI分野は、数日置きに画期的なモデルであるとか応用事例が登場してきております。それが社会に大きな影響を与えていく中で、現場でのAI活用に取り組む企業や研究者、クリエーターなど著作権者、一般の利用者など、多様なステークホルダーの声を法律やガイドラインの運用に素早く取り込む、それができるということが重要だと思っています。
最後に、私から、今後の取組として、具体的に三点提案させていただきます。
まず一点目が、専門家の活用とステークホルダーの声を継続的に集約する仕組みでございます。
AI技術の進展に対応して必要な政策決定や緊急時の迅速な対応を行うには、AI分野に精通したような専門家というものが必要です。AI戦略本部長である総理の直下には、是非とも専門知識を持って、国民とも関係省庁とも丁寧にコミュニケーションが取れるようなAI担当大臣を任命されることを提言いたします。本法案成立後も、多様なステークホルダーの声を継続的に集約し、必要に応じて対処を行うことが重要です。
二点目に、特区制度やサンドボックス制度を活用した人材育成、教育の場の充実ということでございます。
AIの実証実験や先進的な取組を推進するための特区制度やサンドボックス制度を利用して、人材育成や教育プログラムを更に拡充することを提案いたします。AIリテラシーの底上げというのは国民全体の課題であり、AI法案で示された基本理念を実装する上でも、人材の確保というのは最も重要な鍵と言えると思います。
三点目に、コンプライアンス支援と国際連携というところでございます。
AI事業者やクリエーターが遵守すべきルールやガイドラインを明快に提示すると同時に、それを実践するための支援策も不可欠だと考えております。また、日本独自のルールだけではなく、海外の最新事例、規制動向と連携しながら、国際的な競争力や整合性を維持し続ける取組も欠かせないと考えております。
総じて、AI法案は、我が国が将来にわたってAIの恩恵を享受し、国際社会での競争力を高めるための重要な出発点であると考えます。
以上で私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
安野貴博 の他の発言
2026-05-20 · 両院国家基本政策委員会合同審査会
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本日、総理にはAIについて御質問したいと思います。
先日も、高性能なAI、クロード・ミュトスに関して総理も直接指示された…
2026-04-01 · 参議院デジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会
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まさに今おっしゃられたようなオプトアウト型の登録の取組というのは非常に意義があるものだと思いますので、是非進めていただければと思って…
2026-04-01 · 参議院デジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会
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2026-04-01 · 参議院デジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会
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2026-04-01 · 参議院デジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会
○安野貴博君 御答弁いただき、ありがとうございます。
特定公的給付でなくても公金受取口座の情報を利用できるというところでございました。
一方で、個別の給付の主体がそのやり方…
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今の御答弁いただいた中で、一定の情報は開示をしていくというところについては認識できて大変よかったなと思っておりますが、一方で、そういった公…
2026-03-26 · 参議院総務委員会
○安野貴博君 チームみらいの安野貴博です。
質問の機会をいただき、ありがとうございます。
まず初めに、地域未来基金費について伺います。
今年度の地方財政計画において、強…
2026-03-26 · 参議院総務委員会
○安野貴博君 お答えいただき、ありがとうございます。
データに基づく議論をしながらということが非常に重要であるというところは認識一致しておると思っておりまして、これやはり、廃止…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=安野貴博
MCP: search_diet_speeches(speaker="安野貴博")