○田中健君 国民民主党・無所属クラブの田中健です。
ただいま議題となりました所得税法等改正案について、会派を代表して、石破総理に質問をさせていただきます。(拍手)
まず、年収百三万円の壁について伺います。
予算委員会の質疑の中で、税金を国民の皆様にお返しできる状況ではないとの総理の発言がありました。本当にそうでしょうか。昨年から今年にかけて、法人税は一二・九%増、所得税は三〇・一%増、消費税は四・六%増と、所得が一番伸びており、所得税は昨年の定額減税を割り引いても一五・二%の伸びです。いずれもGDPの伸び二・七%より大きく、歳出は三兆円増えているのに対し、税収は八・八兆円増えています。
私たちは、インフレが続く中、税金を取り過ぎている、国民の手元にお金を戻していく、つまり、手取りを増やすことが大事であると言い続けてきました。今はその状況にないとのことですが、それでは、返すことができる状況とは具体的にどのような状況を指すのでしょうか。その状況を政府は今つくろうとしているのでしょうか。総理に伺います。
総理は、一月二十八日、政府として百五十万円程度への引上げについて検討している事実はないと言い、一方で、一月三十一日には、百二十三万円からびた一文たりとも動かないぞというかたくなな姿勢を取るものでもないと言ったり、足下が定まらない印象を受けます。
引上げは必要であるが、財源がないから仕方なく百二十三万円と言っているのでしょうか。そうではなくて、そもそも、これ以上の引上げは必要ないと思っているのでしょうか。私には、総理は後者としか思えません。総理の見解を伺います。
国民民主党は、年収百三万円の壁は生存権の問題であるとし、生存権を保障する他の制度、具体的には生活保護の給付水準との整合性も考えるべきとの考えも提示をさせていただきました。また、公明党の斉藤代表からは、百五十万円ぐらいまでなら根拠があるとし、生鮮食品の伸びを念頭に置いた発言もありました。
私たちは、三十年ぶりのインフレにどこまで対応が可能かという議論を真剣に続けています。皆がそれぞれの立場で少しでも百七十八万円に近づける案を摸索している中、総理は、納税者に寄り添う気持ちがあるのでしょうか。いつまでに結論を出すのでしょうか。総理のリーダーシップを求めたいと思います。見解を伺います。
ガソリン税についても伺います。
昨年十二月十九日、本年一月十六日の二回にかけて、ガソリン補助金が段階的に縮小されています。ガソリン価格の高騰は家計に深刻な影響を与えており、月の給油費用は、一世帯当たり平均して二千円から三千円程度増加、特に、通勤や送迎などで車の使用頻度が高い世帯では月五千円以上の負担増となっているとの声もあります。また、物流コストの上昇により、食品や日用品の価格上昇にもつながり、間接的な家計負担も増加をしています。
運送業界では、大型トラックの燃料費は月約二万円の追加負担となっています。価格転嫁が難しい中小企業では、利益率の低下や赤字転落のリスクが高まり、一部の企業では配送料金の値上げや配送ルートの見直しなどの対応まで迫られています。
そんな中でありますが、既に、令和七年度税制改正大綱には、ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止方針が明記をされています。今やるべきことは、ガソリン減税を来年度から速やかに実施することです。先送りする課題ではありません。令和八年に向けての目標ではなく、今必要な政策なんです。
地方の声、物流業界の声が総理には届いていませんか。ガソリン価格を下げて、物価高に苦しむ家計を、物流を支えていこうではありませんか。三党の議論の推移ではなく、総理の考え、総理の決意を伺います。
定額減税について伺います。
二〇二四年分の確定申告が二月の十七日から始まりますが、定額減税に係る特別税額控除が実施される申告であり、様々な課題が指摘をされています。
定額減税は、所得税、住民税を一人当たり計四万円差し引くのが基本ですが、収入や家族状況によって実施時期が変わります。さらに、納税額が少なく減税し切れない人に調整給付を行うなど、極めて仕組みが複雑です。
所得税の納税額が三万円に満たず、年末までに三万円を払い戻せない対象者は三千二百万人にも上り、自治体は、前年の課税実績を基に臨時給付金を支給するとしています。端数は一万円単位で切り上げるとしており、結果的に通常の三万円よりも多くもらえる人もいることになります。
また、令和五年の所得が低く、令和六年の所得が高い場合には、令和五年の所得の金額に基づき調整給付を受けて、令和六年分の確定申告において定額減税に係る特別税額控除が実施されるため、定額減税の二重取りが発生します。この場合も、調整給付が結果的に過払いになったとしても、払い過ぎた分を返してもらうことは想定されていません。
どれだけの臨時給付金が支払われると政府は想定しているのでしょうか。また、定額減税の二重取りについても、問題であるという認識はないのでしょうか。そもそも、国民に税金をお返しする状況にはないと言っていながら、一方で所得税の納税が正しく行われない制度をつくり、公平性の観点にも問題を生むような状況をつくった責任は政府にあると考えますが、総理の見解を伺います。
早期給付の実現のため、令和六年分推計所得税額を用いて定額減税調整給付金の額を算定したことに伴い、令和六年分の所得税額及び定額減税の実績額等の確定をした後に、本来給付すべき所要額と定額減税調整給付金額に差額が発生する方が一定数生じることになります。その差額を、対象者に対して、令和七年度以降に定額減税不足額給付金として支給する予定となっていますが、自治体からは、国が事務処理基準日や実施時期等について具体的に示さない限り、住民にも説明ができないでいる状況が続いていると聞いています。
いつ頃に詳細が示されるのでしょうか。スケジュールをお示しください。自治体の大きな事務負担をどう考えているのか、その対応はあるのか、総理の見解も併せて伺います。
様々な課題が指摘される中、見切り発車した一度きりの定額減税制度は、企業に多大な事務負担、人件費負担を負わせ、その後、市区町村に今全てしわ寄せが行っている状況です。政権の人気取りを狙った愚策と言わざるを得ません。費用対効果を検証し、妥当性と政府の責任をしっかりと示すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
デジタル小作人について伺います。
日本の貿易・サービス収支は、双子の赤字を背負っています。一つは、言わずと知れた原油の輸入です。もう一つが、デジタル貿易赤字です。
直近の国際収支速報によると、経常収支は過去最大となる二十九兆円超の黒字となっています。しかし、貿易・サービス収支は六兆五千億の赤字、特にクラウドサービスなど通信、コンピューター、情報サービスの収支は二兆五千億円の赤字であり、ここ十年で三倍超に達しました。インバウンドで稼いでも、デジタル貿易赤字が打ち消す構図となってしまっています。企業や個人がクラウドやネット広告などのサービスを海外のIT大手に依存する構図、いわゆるデジタル小作人化はますます進展しています。この流れは、とどまるどころか、政府の試算によると、二〇三〇年にはデジタル貿易赤字額が十兆円に達し、昨年の原油輸入額に肩を並べる規模になる見通しです。
世界を見渡せば、インドや中国など、独自のIT企業を養成し、大きなデジタル黒字を稼いでいる国がある一方で、日本は世界の中で貿易赤字が多い国となってしまっています。この状況を打開する鍵は、改めて人と技術に投資をすることにほかなりません。日本独自のデジタル技術の開発とデジタルサービスに半導体並みの投資をしていく、国がその先頭に立って旗を振っていく必要があるのではないでしょうか。デジタル研究開発分野での政府投資の拡大や人材育成を担う大学への投資、IT技術への大幅減税などが必要と考えます。
こうした急激に進むデジタル小作人化と拡大するデジタル貿易赤字の現状と、国内のデジタル技術基盤の強化をどう認識され、対策を考えているのか、伺います。
また一方で、先進国に鉱物資源や食料を供給してきた発展途上国は、デジタル分野を含めて独自の成長を進めようとしています。岐路に立つのは先進国です。日本を始めとした先進国は、人口が増え、中間層も拡大する新興国を、消費地や人材供給源として自らの成長につなげてきました。グローバルサウスとして力をつけている彼らとうまくつき合えるかが、次の経済成長を左右します。
ODAのような、先進国が対外援助という施しを発展途上国に分け与えるというような時代は終わりました。先端技術をめぐる協力、協業が必要とされています。グローバルサウスとの新たな関係強化をどのように考えているのか、総理に伺います。
暗号資産について伺います。
金融庁が、先日、暗号資産を有価証券に並ぶ金融商品として位置づける方向で検討に入ったことが報道されました。日本暗号資産等取引業協会によると、仮想通貨の開設口座は、二四年十二月時点で千百八十一万件にも上ります。投資家を保護するだけでなく、適切に関連ビジネスを活性化していく上でも、実情に合った法整備が不可欠だと判断したことは高く評価をしたいと思います。
トランプ米大統領は、一月の二十三日、暗号資産の利用を推進する大統領令に署名をし、仮想通貨を含むデジタル資産が米国のイノベーションや経済発展に重要な役割を持つと規定し、経済の各分野で、デジタル資産やブロックチェーン技術の責任ある発展と利用を支援すると記しました。
日本も、より早期に、ダイナミックに動くときです。国民民主党が訴えてきた二〇%の分離課税導入、レバレッジ倍率の引上げ、暗号資産ETF導入の早期実現が重要と考えますが、総理の見解を伺います。
賃上げ税制について伺います。
賃上げを促す国の税制優遇制度をめぐり、会計検査院は、一月十五日、社員の教育訓練費を増やした企業に対する法人税の税額控除の仕組みが適切でないおそれがあるとして、制度の検証や見直しを求めたと発表がありました。検査院が一八年から二一年度に制度を利用した延べ一万二千八百六十一法人のうち同九千九百七十法人を調べたところ、二百九十三億円が控除されており、会計検査院の試算額と比べ百五十七億円大きくなって、仕組みが適切でないおそれがあるとの指摘です。
国は、この制度を通じ、企業の賃上げやリスキリングなどへの意欲を引き出し、経済を好転させようと力を注いできました。しかし、制度が賃上げにもたらす効果は着目されず、二二年には衆参の委員会が制度の検証、公表を求める決議をしたものの、訓練費に関する検証は行われてきませんでした。
優遇措置の拡充、延長は昨年四月に施行されたばかりですが、検証もされずにここまで来たのは問題ではないですか。会計検査院の指摘に対しての所感と併せて総理に伺います。
制度が適切に運用されるように検証を行い、制度の在り方を見直すべきです。私たちは、効果の薄い政策は見直し、社会保険の事業者負担の軽減に回すべきではないかと考えますが、総理の見解を伺います。
法人税について伺います。
二〇一五年度以降、成長志向の法人税改革が進められ、企業による投資、賃上げの促進や国際社会での立地競争力の強化を目的に、課税ベースを拡大し法人税率を引き下げる改革が行われました。その中で、現在、政府税制調査会の税制のEBPMに関する専門会議において、法人税改革の振り返りが進められています。
その中の議論では、二〇一〇年代に法人税率を二三・二%まで引き下げ、この間、経済界には、法人税改革の趣旨を踏まえ、国内投資の拡大や賃上げを求めてきたが、企業部門では収益が拡大したにもかかわらず、現預金等が積み上がり続けた、海外の先行研究を見ても、法人税率が設備投資や賃金に与える影響は限定的であるとの分析や、我が国の法人税改革が国内投資の増加には効果的でなかったとの分析が示されているとあります。企業収益が拡大した状況でも国内投資が進まなかったことを踏まえ、法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと断じています。アベノミクスにおける法人税税率引下げに対して否定的な見方を示しています。
アベノミクスへの決別とも読むことができますが、総理も同じ認識でよろしいでしょうか。法人税率引下げの競争の総括、また、今後の法人税の在り方の転換についてどのようなお考えをお持ちか、見解を伺い、以上、国民民主党としての代表質問といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
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