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清水秀行 ·日本労働組合総連合会事務局長

衆議院予算委員会公聴会(2025-02-25)での発言

第217回国会 ·第第1号号 ·6,547字
○清水公述人 ただいま御指名をいただきました連合の清水でございます。  本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝を申し上げます。  連合は、働くことを軸とする安心社会を目指しており、本日は、働く者、生活者の立場から意見を申し述べます。  それでは、初めに現下の経済、社会の課題認識について申し述べます。  我が国の経済は、高い水準の賃上げと物価上昇を背景に、デフレからの完全脱却が視野に入ってきましたが、少子高齢化、格差の拡大と貧困の固定化などの構造課題に適切に対処しなければ再びデフレ状態に戻りかねません。ようやく回り始めた経済の好循環を確かなものとしていくには、所得再分配機能の強化と社会保障と税の一体改革による重層的なセーフティーネットの構築など、誰もが安心、安全を実感できる社会の実現とともに、雇用の安定と公正な労働条件の確保の下、適正取引の推進など賃上げを継続できる環境整備と、DX、GXなどへの積極的な投資が必要であります。  なお、これらの政策への十分な予算措置は必要ですが、一方で、歳出額は拡大をし続けています。持続可能な社会を次世代に引き継ぐためにも、中長期的な財政運営の監視、評価を行う独立財政機関を設置し、財政規律の強化と歳出構造の不断の見直しに着手する必要があることを冒頭申し述べておきたいと思います。  さて、連合は、二〇二五春季生活闘争において、動き始めた賃金、経済、物価を安定した巡航軌道に乗せ、新たなステージを定着させていくことを目指していますが、最大の課題は、雇用労働者の七割が働く中小企業と、四割を占めるパート、有期、契約などで働く仲間の賃上げであります。  資料の三ページを御覧ください。  二〇二四闘争では三十三年ぶりの五%台となる高水準の賃上げを実現しましたが、中小組合は四%台にとどまり、その差は連合結成以来最大となりました。加えて、物価の高止まりが家計を圧迫しており、一年前と比べてゆとりがなくなってきたとの回答が五割を超えています。  次に、資料の四ページを御覧ください。  中小組合の賃上げの実現は、適正取引と適切な価格転嫁が鍵となります。二〇二三年十一月に政府が労務費の転嫁指針を示したことは大きな前進ですが、その実効性には課題があります。  左の円グラフでは、全く転嫁できずとの回答がいまだに二割を超えております。コスト全般の転嫁率については四九・七%にとどまっております。右のグラフのとおり、価格転嫁ができている割合が高いほど、受注側となる中小企業の賃上げ率も高い傾向が見られます。  なお、適切な価格転嫁は民間だけではなく公共分野でも課題ですので、政府には、官公需の発注者である地方自治体への労務費の転嫁指針の周知徹底と財源確保、医療、介護や公共交通機関など公共サービス分野への浸透を求めたいと思います。  また、適正な価格転嫁と取引の適正化を進めるためには、下請法の改正も重要であります。今次国会において、企業取引研究会のまとめに沿って必要な法改正が行われることを求めたいと思います。  次に、雇用形態間の賃金格差の是正も重要であります。  連合の加盟組合では、組合員であるか否かにかかわらず、同じ職場で働く仲間の賃金が働きの価値に見合った賃金となるよう、要求、交渉をしております。政府には、労働組合のない職場においても同一労働同一賃金が実現されるよう、企業への指導を強化するとともに、法定最低賃金の大幅な引上げが実現できる環境整備を期待をするところでございます。  次に、税制改正関連法案について述べます。  山積する構造課題を解決しつつ安定的な税収基盤を確保するには、税体系全般の抜本的な見直しが必要であり、修正案を三点申し述べます。  一点目は、所得税の課税最低限の引上げです。  所得税の課税最低限の引上げは、連合も今年度の税制改正要望として要請してまいりましたので、確実な引上げを求めたいと思います。具体的な引上げ額については、自民、公明、国民の三党協議を見守りたいと思いますが、所得制限を設ける案は賛成できません。物価上昇の影響は低所得者ほど強く受けるものの、基礎控除が憲法二十五条に基づく生存権の担保であることを踏まえれば、所得額で控除額に差を設けるべきではありません。二千四百万円以上は減額する現行法も見直しが必要と考えます。さらに、複雑な制度設計は、税に対する国民の信頼を損なわせる懸念があり、納税者の立場に立った簡素で分かりやすい制度とすることを求めたいと思います。  二点目は、低所得者の負担軽減策です。資料の五ページを御覧ください。  継続した物価上昇は、低所得者ほどその影響を強く受けています。連合は、給付金ではなく、マイナンバー制度を活用した正確な所得の捕捉を通じて、給付つき税額控除の仕組みを構築すべきと考えております。特に、所得税の非課税世帯には、食料品などの生活の基礎的消費にかかる消費税の負担分を給付する消費税還付制度、通称税バック制度と呼んでおりますが、それを導入して負担軽減につなげるべきと考えています。  三点目は、ガソリン価格の高騰対策であります。資料の六ページを御覧ください。  補助金の縮小、廃止により、ガソリン価格は百八十円台で高止まりし、地方の暮らしや中小企業の経営に大きな打撃を与えています。五十年余にわたって課税をしている当分の間税率は、自民、公明、国民の三党合意において廃止するとされましたが、具体的な実施時期は明確になっていません。  まずは、立憲民主党が当初予算案に対する修正案で示したガソリン、軽油価格の引下げの実施を求めたいと思います。その上で、ガソリン価格を引き下げる恒久的な措置について、三党合意に基づき、早急に結論を得ることを求めたいと思います。なお、その際、税制全体の見直しの中で、地方財政に影響を及ぼさない代替財源の確保も必要であると考えます。  次に、災害からの復興再生と防災・減災対策の充実について述べます。  能登半島を始め、災害からの復旧復興を進める上で重要なのは、被災者が安心して地域に戻り、暮らせる町づくりの推進であり、何より大事なのは、生活や就労の基盤となる住宅の確保であります。空き家の積極活用はもちろんのこと、公営住宅やセーフティーネット住宅の整備により、住宅確保の要配慮者である被災者への住居確保を求めたいと思います。  また、災害のたびに女性や子供に係る課題が繰り返し指摘をされております。特に、災害時に女性や子供が暴力などの被害に遭うリスクが高まることへの対策として、避難所における安全確保、防災体制や生活環境を整備するための財政支援を求めたいと思います。加えて、政府が第五次男女共同参画基本計画などで示したとおり、防災担当女性職員の増員を始め、地方公共団体が災害対応において男女共同参画の取組が進められるように、国としての支援を求めたいと思います。  次に、社会保障制度について三点申し上げます。  一点目は、年金の制度改革についてであります。  資料の八ページを御覧ください。昨年末の年金部会の取りまとめでは、被用者保険の適用拡大について、企業規模要件の撤廃で意見が一致していたにもかかわらず、撤廃時期を後ろ倒しにする方向であると聞いていますが、個人事業主に関わる業種要件を含め、二〇三〇年までの撤廃を求めたいと思います。  また、マクロ経済スライドの調整期間の一致については、国民年金の拠出期間の延長を断念したこと、給付水準が低下する厚生年金の受給者への影響といった課題があり、議論が不十分な中での調整期間の一致は行うべきではないと考えます。  なお、第三号被保険者制度は、年金部会の議論の整理に第三号被保険者制度をめぐる論点についての国民的な議論の場が必要とされており、議論の場の早期の設置を求めたいと思います。  二点目は、医療法の改正についてであります。  切れ目のない医療提供体制の確保に向けて、医師の偏在を是正することは重要ですが、医師不足の地域の医師への手当の増額財源を保険者からの拠出で賄うとしています。保険給付との関連性に乏しい施策の財源に保険料を充てることは問題であり、修正を求めたいと思います。  三点目は、医療、介護、保育など社会保障サービスを担う人材の処遇改善についてであります。  資料の九ページを御覧ください。厚生労働省の二〇二四年の賃上げの実態調査では、賃上げの改定額、率共に医療・福祉が最も低い結果となっています。令和六年度の補正予算による人材の確保策を着実に進めるとともに、立憲民主党、国民民主党などが上程した処遇改善の法案や立憲民主党の当初予算案に対する修正案などを踏まえ、医療、介護、保育などの分野が魅力ある職場となるよう、更なる処遇の改善策を求めたいと思います。  次に、雇用、労働条件について二点申し述べます。  一点目は、今国会に提出予定の労働安全衛生法等の改正案についてでございます。  個人事業主に対する安全対策や労働者数五十人未満の事業所に対するストレスチェックの義務化など、労働者や曖昧な雇用で働く就業者の保護に資する内容であるとともに、個人事業主に対する労働安全対策が法制化されることで、ILO第百五十五号条約の批准上の課題が解決されることになります。こうした観点も含め、改正法案の早期の成立を求めたいと思います。  なお、対策の実効性を担保するために、中小企業などへの支援の充実が不可欠であり、労働基準監督署や地方労働局の体制の整備はもとより、産業保健総合支援センターなど関係機関の体制の強化を求めたいと思います。  二点目は、今国会に提出予定の譲渡担保契約と所有権担保契約に関する民法の改正についてです。  動産や債権を担保として活用する譲渡担保権等に関するルールの明確化に加え、担保権の実行の際に事業継続が阻害されることがないよう、裁判所による担保権の実行禁止命令等の規定を設けることなど、担保権者に一定の制約を課する内容が盛り込まれたことは、労働者保護に資するものと考えております。  また、幅広い担保設定がされ得る集合動産や集合債権に対し、担保権者の回収額の一定割合を破産財団に組み入れる義務が課されたことは、労働債権を含めた一般債権の保護の観点から意義があり、制度の実効性を高めるためにも、新たな供託制度による保全対策の強化などに関し、丁寧な審議を求めたいと思います。  加えて、労働債権は労働者や家族の生活を支える極めて重要なものであり、担保譲渡権に限らず、担保権、質権等、全体に優先される先取特権の創設など、倒産時における労働者保護の強化に向けた検討が必要である点を申し添えたいと思います。  次に、教育について三点申し述べます。  一点目は、給特法の改正についてです。  五十年ぶりに教員の処遇が改善される点を評価し、成立を求めますが、教員の長時間労働の是正に向けた対策は不十分です。労働基準法の第三十七条の適用や労働安全衛生の観点から、在校等時間の位置づけを明確化し、安全配慮義務を課した上で、人事委員会が労働基準監督機関としての職権を行使できる体制を講ずるなど、教員の長時間労働の是正と、教員の福祉と健康の確保に向けた丁寧な審議を求めたいと思います。  二点目は、大学等の修学支援についてであります。  今国会に提出された法案は、多子世帯を対象に高等教育の入学金や授業料を減免するとしていますが、全ての子供の教育機会を保障するためには、かかる費用の全面無償化が必要であり、その過程として、まずは中間層を含めた全ての世帯を減免対象とするよう、修正を求めたいと思います。  三点目は、学校給食の無償化についてであります。  立憲民主党、国民民主党などが上程した学校給食無償化法案は、連合が求める政策でもあり、成立を求めたいと思います。  次に、カーボンニュートラルの実現に向けた対応について申し述べます。  二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、GX二〇四〇ビジョン、第七次エネルギー基本計画、次期地球温暖化対策の計画が閣議決定されましたが、我が国の産業競争力の強化、グリーンで良質な雇用の創出、地域経済の維持向上の観点からも、あらゆる手段を総動員した取組を進めなければなりません。今国会に提出予定のGX推進法及び資源法の改正法案は、日本の脱炭素実現と競争力の強化に資するものであり、成立を求めたいと思います。  一方で、産業転換に伴う経済、社会、雇用への影響に対しては、公正な移行を実現しなければなりません。政府には、国、地域、産業の各レベルで労働組合を含む関係の当事者が加わる社会対話の場を設置し、課題の深掘りや複数のシナリオによる政策立案プロセスを織り込んだロードマップ作成と十分な予算措置を求めたいと思います。  次に、持続可能で包摂的な社会の実現について三点申し述べます。  一点目は、あらゆるハラスメントの防止についてであります。  今国会提出予定の労働施策総合推進等の改正法案では、ハラスメントを行ってはならないことについて、社会における規範意識の醸成に国が取り組むことが規定されるとともに、カスタマーハラスメントの対策、就職等のセクシュアルハラスメントの対策を雇用管理上の措置義務とするなど、妥当であり、法の成立と実効性の向上を求めたいと思います。特に、実効性の向上に向けては、国によるハラスメント禁止の積極的な啓発活動とともに、消費者庁、警察庁、業所管省庁などと連携した各業界の取組の推進、中小企業の支援などの取組が重要であります。  あわせて、仕事の世界におけるハラスメント根絶に向けて一定の法整備がなされることから、政府にはILO第百九十号条約の批准のための具体的な検討も求めておきたいと思います。  二点目は、選択的夫婦別氏制度の導入についてであります。  一九九六年に法制審議会が法案要綱を答申してから三十年がたとうとしていますが、この間、一向に進捗がありません。自分の氏を名のり続けられるかどうかということは、個人の尊厳や人権に関わる大変重要な問題です。昨年十月には、国連女性差別撤廃委員会より、制度の導入を求める四度目の勧告がありました。旧姓の通称使用の拡大に向けた動きがあることは承知していますが、国際社会で通用しないことはもとより、人権尊重という要請に正面から応えるものではありません。選択的夫婦別氏制度を直ちに導入すべきであります。  三点目は、国連女性差別撤廃委員会への日本政府の拠出停止についてであります。  同委員会は、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の履行の確保のための委員会であり、日本からは委員が選出されています。ジェンダーギャップ指数が低位にとどまり続ける日本にとって、根深い固定的性別役割分担の意識や女性差別的な慣行、慣習など、女性に対する差別の撤廃は喫緊の課題であります。  委員会への拠出停止は、国際社会に対して日本が女性差別撤廃及び人権の尊重に対して後ろ向きであるという姿勢を示すことになります。人権を尊重する国際社会の一員として、政府は国連への通告を直ちに撤回するとともに、条約締結国としての役割と責務を果たすべきと考えます。  あわせて、差別禁止のスタンダードであるILO第百十一号条約についての早期批准をすべきであります。ILO加盟百八十七か国中、百七十五か国が既に批准している中、日本が未批准であることは大きな問題と考えます。日本が差別を許さない国であることを国内外に示す意味でも、条約の早期の批准を強く求めます。  以上を申し上げ、私の意見陳述とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)

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REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=清水秀行
MCP: search_diet_speeches(speaker="清水秀行")