○秋山公述人 全国労働組合総連合、全労連議長の秋山であります。
本日は、二〇二五年度政府予算に関わって発言の機会をいただき、ありがとうございます。
初めに、提案されている予算案は、八兆円を超える軍事費により、社会保障や教育など国民の命と暮らしに関わる予算の伸びが抑えられ、物価上昇分に届かないことから、生活やなりわいが圧迫されています。困窮する国民の命と暮らしを守るため、予算案を抜本的に組み替えるよう求めます。
その上で、全労連では二五国民春闘の取組を進めているところですが、現場の声も踏まえ、労働者、労働組合の立場から、大きく五点にわたり意見を述べさせていただきます。
第一に申し上げたいことは、労働者、国民の所得を引き上げることが必要だということです。
大多数の国民は、労働者として働いています。その労働者の賃金の状況ですが、厚生労働省の統計によると、昨年の実質賃金はマイナス〇・二%と、三年連続でのマイナスでした。昨年の春闘で三十年ぶりとも言われる賃金引上げがあったにもかかわらず、実質賃金がマイナスとなったのは異常な事態ではないでしょうか。
とりわけ、ケア労働者の職場は深刻です。昨年末、医療、介護、福祉の分野で働く労働者の一時金が減らされる事業所が相次ぎました。お手元に資料を入れておりますが、一枚目の日本医労連の資料をつけておきましたので、御覧ください。
労働者の実質賃金を引き上げるためにも、公定価格の引上げが必要であります。労働組合のある職場では賃金引上げなどの交渉などが行われていますが、組織されていない労働者の賃金引上げはなかなか進んでいないと思っています。
こうした労働組合に組織されない労働者も含め、全ての労働者の賃金を引き上げられるのは、最低賃金の引上げです。だからこそ、多数の労働者の賃金引上げにつなげられるよう、大幅な引上げが必要だと思っています。
この最低賃金については、石破首相が、二〇二〇年代のうちに加重平均で時給千五百円まで引き上げることを表明されました。引上げへの決意表明は歓迎していますが、資料を御覧ください、二ページのところにありますが、この間、全国四万人余りが参加し、二十五歳単身労働者の生活に必要な額、時給換算で調査をしました。結果は、全国どこでも時給千五百円では生活できないというのが実態であります。また、私どもの調査では、地域による顕著な差異は認められません。都道府県境を越える通勤も多くの地域でなされています。また、インターネットの発達により、全国どこでも仕事ができる状況も生まれています。
三枚目の資料に入れましたが、資料のように、格差を、都道府県ごとに差異を設ける必要性がどれだけあるというのでしょうか。地方創生の観点からも、地方、地域から働き手が流出し、東京など大都市への人口一極集中、地方経済の衰退に拍車をかける最低賃金の地域間格差をなくし、全国一律制に法改正するよう強く求めます。要望いたします。
しかしながら、中小零細企業にとっては死活問題にもつながる重大な問題でもあります。特に、昨年、全国最低額となった秋田県を始め、東北地方や九州地方の各県は最低賃金が九百円台であり、千円にも届いていないのが現実であります。こうした県において、五〇%を超えるような最低賃金の引上げを直ちに行うことは、企業努力だけでは難しいことは理解できます。
全労連は、二〇二二年に、最低賃金引上げに向け、中小企業に対する支援策の拡充を提言しました。その柱は、助成制度の拡充、公正取引の実現、地域循環型経済の実現です。大幅な最低賃金の引上げを実現するためには、中小企業の皆さんに対し、引上げ時における当座資金の給付や、大きな負担となっている社会保険料の減免などが必要です。
資料の四枚目に入れておきましたが、中小企業家同友会の方も要望されています。社会保険料の使用者負担減免若しくは企業規模に応じた保険料率の設定など、政府として中小企業の負担軽減を図るよう求めたいところです。
第二に申し上げたいのは、労働時間の短縮についてです。
日本の労働者の労働時間については、政府統計として、賃金構造統計調査と労働力調査の二種類があります。そのうち労働力調査は、労働者本人による労働時間が申告されていることから、実態に近い数字であると言われております。ここでは労働力調査の数字を基にお話ししたいと思います。
資料五ページを御覧ください。日本における年間の総労働時間は、二〇二三年で千九百二十九時間となっています。アメリカやヨーロッパよりも長いのが分かります。労働時間は年々減少しているようですが、国際的に見ると、労働時間はまだまだ長いと思います。現に、過労死や過労自殺は減少していません。労働時間だけが原因ではないと思いますが、大きな要因ではないでしょうか。
労働時間の短縮は、ジェンダー平等の観点からも重要です。
男性の家事労働時間は世界的にも短くなっています。労働力調査から、専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移を示したグラフが厚生労働省で作られていますが、二〇〇〇年代から専業主婦世帯数は減少をし続ける一方で、共働き世帯数は伸び続けています。年齢別に詳しく見ると、若い世代ほど高くなっています。
共働きの場合、夫婦が協力して家事に当たることも当然であります。今放映されているNHKの連続テレビ小説、朝、私も見ているんですが、「おむすび」でも、男女共に家事をしている風景が普通であります。子供が生まれると、夫婦の一層の協力が必要です。核家族化の進行もあり、親に頼ることも容易ではありません。
こうしたことからも、労働時間を少しでも短縮し、育児や家事など家庭生活に使える時間を増やすことが必要だと考えます。
資料七ページに入れましたけれども、女性の方が一日当たりの仕事時間が短く、家事関連が男性の四倍にもなっていることが分かります。労働時間の短縮は、ジェンダー平等を進める上で必要条件です。
なお、先般まとめられた労働基準関係法制研究会の報告書は、労働現場の実態を反映していません。労働時間の規制を緩和するのではなく、労働時間の規制を強化すべきです。
労働時間の問題では、教員の働き方についても一言申し上げたいと思います。
教員の労働時間が長いことは御承知のことと思いますが、全教、全日本教職員組合が行った教職員勤務実態調査二〇二二によると、教諭の平均時間外勤務は月九十六時間十分となっています。過労死ラインである月八十時間を超える働き方をしている教諭は五六・四%にも上ります。
このような働き方をする教員の皆さんは、子供たちによい教育をしたいとの一心で働いているのだと思います。しかし、これでは長時間労働に歯止めがかかりません。家族との時間などないに等しいものです。
こうした状況を変えるには、教員の定数を増やすことが必要です。授業準備なども勤務時間内にできるように、授業の持ち時間数を減らすことが必要です。現場には多数の常勤講師と非常勤講師が働いています。教員の定数を増やし、常勤講師と非常勤講師を安定した雇用に転換するなど、政府には時間管理の徹底とともに行うよう求めたいと思います。
次に、ジェンダー平等実現に向けた政策についてであります。
御承知のとおり、日本はジェンダー平等で諸外国から大きな後れを取っています。特に経済分野と政治の分野での遅れが目立ちます。
資料八ページを御覧ください。諸外国の女性役員割合を比較したグラフで、内閣府の男女共同参画局が作成したものです。日本は一五・五%と、ヨーロッパ諸国やアメリカよりもはるかに低くなっています。
労働組合の役員においても女性の役員を登用することができておらず、悩んでおりますが、全労連の加盟組織で、地方組織のトップに九名が、単産で三名が女性となりました。徐々にではありますが、役員への登用が進んでいます。こうした変化も、全労連が行ったジェンダー平等宣言が影響していると思います。加盟組織でも宣言が進められています。
昨年末にこの地方組織のトップとなった女性の方々と座談会をしたのですが、皆さん共通していたことの一つは、これは私もそうだったんですが、議長、トップになるとは思っていなかったということでした。それよりも強い思いだったのが、自分が一歩を踏み出さないとという決意でありました。
悩みや苦労が絶えないことも述べられました。特に子育て世代の方からは、活動への参加の困難さが語られています。先ほども申し上げましたが、労働組合活動だけではありません。社会的な活動に参加する時間を確保するためにも、労働時間の短縮が必要です。
同時に、取り組む必要性を強く感じているのが、ハラスメントのない職場づくりであります。
職場の地位によるハラスメントだけでなく、男女間におけるハラスメントをなくさなければなりません。全労連は、あらゆるハラスメントと女性や性的マイノリティー差別の根絶を目指すキャンペーンを取り組んでいます。お手元の資料に国会請願署名というのを入れさせていただきました。この取組をしております。キャンペーンの目標は、ILO百九十号条約の批准であります。委員の皆様におかれましては、是非、請願署名への賛同をお願いしたいと思っております。
また、職場で混乱することがあるのが、通称としての旧姓使用の問題であります。混乱をなくすためにも、夫婦の話合いによって別姓を選択できる選択的夫婦別姓制度の導入を今国会で実現させるよう求めます。
ジェンダー平等の観点から、ILO百九十号条約の批准と選択的夫婦別姓制度の実現を要望しましたが、進めていただきたいこととして、僭越ではありますが、政治の分野に関しても一言申し上げさせていただきます。
これも皆さん御承知のことですからお分かりのことと思いますが、国会議員に占める女性の割合が極めて低い状態となっています。資料十ページに入れましたが、確認してください。
女性比率を高めるためにも、クオータ制の導入を検討すべきではないでしょうか。選挙制度とも関わる問題ではありますが、女性の割合を高めるという観点を忘れることなく検討いただき、政策決定に女性の声がより一層反映されるよう要望させていただきます。
四つ目に申し上げたいのは、社会保障に関する点です。
厚生労働省は、社会保障について、国民の安心や生活の安定を支えるセーフティーネットと位置づけ、社会保障、社会福祉、公的扶助、保健医療、公衆衛生から成り、子供から子育て世代、お年寄りまで、全ての人々の生活を生涯にわたって支えるものと説明しています。そのため、社会保障制度は多岐にわたり、国のみならず都道府県や市町村など、様々な主体がそれぞれに役割を担い、連携しながら実施していると説明しています。
多くの公務員が、国民の生活を支えるため、奮闘しています。しかし、公務員だけが奮闘しているわけではありません。その典型が介護保険制度だと思っています。訪問介護事業所を始め介護関係を担っているのは、民間企業です。
昨今の物価上昇や人員確保の難しさから、昨年は介護関係事業所の倒産、廃業が過去最高となりました。資料十一ページに入れさせていただきましたが、東京商工リサーチの資料を御確認ください。
加えて、以前から介護現場は老老介護と言われてきました。また、制度導入後に新卒者が多く入職しましたが、子育てしながら働くことは難しいと、介護から離れていく人々が大勢いました。私もそういった声を直接的に伺ってきました。
最大の問題は、介護職の労働条件が低いことであります。全労連は、介護現場の労働者を対象に一言アンケートを行いました。昨年のアンケートに書かれていた一言と、ケア労働者の賃金に関する資料も入れておきました。
事業所の倒産も増加していることから、介護労働者の処遇改善も容易ではありません。特に訪問介護事業所は厳しい状況に置かれています。昨年の基本報酬引下げが大きな影響を与えています。介護現場は崩壊していると言っても過言ではありません。直ちに臨時の医療、介護報酬改定を行うよう求めます。
また、二〇二五年度の年金支給額について、一・九%引き上げられますが、物価上昇率に追いついておらず、お米や灯油を含めた光熱費の高騰もあり、生活は悪化する一方です。
障害者に対する支援を行う施設でも、厳しい状況が続いています。障害者が働くことができる職場は限られており、働いても収入は低く、社会的な支援がなければ生きていくことができません。
生活の圧迫は、何よりも社会的弱者に強く作用します。社会保障への公費負担を増やし、社会的弱者に対する支援を強めるよう求めます。
その点で、医療保険における高額療養費制度の見直しは、少なくとも凍結若しくは中止を明言していただきたいと思います。
さらに、DX化が進められていますが、社会的弱者ほど使いにくいものはありません。その点で最大の問題と思っていることは、保険証の廃止です。保険証の廃止を撤回するよう強く求めます。
最後に、公務、公共サービスの拡充について申し上げます。
政府は、内閣府の防災担当について、二〇二五年度予算で予算、定員を倍増することとしています。昨年元旦の能登半島地震、それに追い打ちをかけた九月の豪雨災害を始め、全国各地で自然災害が相次いでいます。今年も、福島県会津地方を始め、全国各地で豪雪による災害が発生しています。
まずは、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
そして、二〇二五年度予算において、被災された人々の生活が一日も早く復旧復興できるよう、国としての対応を強化していただきたいと思います。
しかし、防災担当だけで復旧復興ができるわけではありません。ほぼ全ての省庁が関係します。災害からの復旧復興は、それだけ大きな事業です。
三十年前の一月十七日、私は西宮市に居住しており、激しい揺れに見舞われました。また、二〇一八年の台風二十一号では、関空に船がぶつかったときですが、尼崎にあった自宅が被害を受けました。私は単身赴任をしておりましたので、台風のすごさを直接経験はしませんでしたが、家族は大変怖い思いをしました。
地震など避けようがない自然災害は、いつ発生するのか分かりません。備えも必要ですが、発生した後、被災者が一日も早く元の生活に戻れるよう支援することが必要です。そのためにも、被災者生活再建支援法による支援金の増額が必要です。
また、八潮市での大規模な事故に見られるように、老朽化したインフラの整備も重要な課題となっています。しかし、現場第一線で担当する職員が複数であることがまれな状況となっています。
資料の最後に入れましたが、非正規の公務員が増える一方で、正規は減少しています。正規職員の責任も重くなる一方です。非正規公務員の雇い止めをなくし、安定した雇用をつくることを含め、公務員を抜本的に増やす政策に転換することが必要です。
最後に、国連やILOなど国際的な組織において、日本政府が果たすべき役割は大きなものがあります。平和憲法を有する国として、核兵器廃絶など、平和を主導する国であってほしいと思います。
以上、多くの要望を申し上げましたが、こうした要望の実現には、根本的に予算の使い道を転換することが必要です。そのためにも、防衛費の予算を削減し、憲法を生かして、労働者や国民の命、暮らしを守る二〇二五年度予算を策定していただくよう要望します。
以上申し上げ、私からの発言を終わらせていただきます。
本日は、貴重な機会を設けていただき、ありがとうございました。(拍手)
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