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今井翔太 ·株式会社GenesisAI代表取締役社長

参議院経済産業委員会(2025-04-17)での発言

第217回国会 ·第第4号号 ·6,543字
○参考人(今井翔太君) ジェネシスAIの今井です。  本日、私の方からは、まさに半導体を使わせていただいている立場のAI研究者の立場から、AI研究と半導体の関係についてお話しさせていただきます。よろしくお願いします。  二ページ御覧ください。まず簡単に自己紹介させていただきます。  私は、二〇二四年まで東京大学松尾研究室、松尾豊先生の下でAIの研究をしておりまして、そこで博士号を取得しました。そして、去年、自分の会社のジェネシスAIを創業しまして、現在、そちらの方のCEO、社長をしております。そして、今年から、今年の春からは国内国立大学の客員教授を拝命すると内定しております。そして、研究分野としましては、まさにAI、昨今は生成AIは非常に有名ですけれども、こちらの研究を行っております。そして、右下にございますのが私の著書になっておりまして、「生成AIで世界はこう変わる」というタイトルの本ですが、こちらは東大で一番売れた本、ベストセラーとなっております。  ということで、本題入っていきたいと思います。三ページ御覧ください。  本日、一応事業者のトップとして来ておりますけれども、完全に研究者としての、なぜそもそもAI研究に半導体が必要かというお話をさせていただきます。  まず、今のAIの進化に関するキーワード、これを押さえておけば現在のAIがなぜ半導体必要なのか分かるといった、そういうものをお話しさせていただきたいと思いますけれども、このキーワードはスケーリングです。スケーリングというものは規模を拡大するということを意味しますけれども、まさにこの規模を拡大するということが現在AI研究の一番重要な事項となっております。  AI研究のスケーリングとは、まさに巨大なAIですね、現在のAI、ニューラルネットワークというものを使っておりますけれども、人間の脳に相当するものです。人間の脳をコンピューター上で再現したこのAIというものを大規模に学習する、まさにこれ一つ目のスケーリングです。これが重要です。  もう一つ、これは最近出てきた研究の話でありますけれども、AIに考えさせる時間を長くする、こちらの方もまさに規模を拡大するということでスケーリング、非常に重要な内容となっております。  四ページ御覧ください。  こちらから少し研究のお話なので、ちょっと余り見慣れないような研究的な図が出てきますけれども、簡単にお話しさせていただきます。  スケーリング則というものがあります。二〇二〇年に出てきた人工知能の学習に関する説でして、まさにこのスケーリング則というものが現在の人工知能進化の根本になっております。そして、このスケーリング則があるから半導体が非常に必要とされているという状況です。  そして、このスケーリング則、何を意味するのかといいますと、AIの、特に昨今の生成AIの学習において重要な三つの要素、学習に使うデータ、そして計算量、そしてAI自体の大きさ。我々研究者は、パラメーター数とかニューラルネットワーク結び付きの多さを表す数でその大きさを表していますけれども、この三つの要素を増やしていくと人工知能の性能というのは無限に向上していくと。これがスケーリング則という説です。  そして、AI研究というものは、歴史的には、AI研究者というものは非常に難しい理論を組み立てたりとか、あるいは理論同士を組み合わせたりといった、いわゆるスマートな方法で発展してきました。ただ、現在の人工知能の発展というのは、先ほど申し上げたスケーリング則によって支えられているということで、つまり、先ほど言った三つの要素にどれだけお金を払えるかという問題になっております。実は難しい理論とかアルゴリズムは必要でないかもしれない、そういう説が主流になっています。  そしてもう一つ、これは昨年の後半に有名になった説ですけれども、推論時スケーリングという名前の付いたもう一つのスケーリング則があります。こちらは、AIに考えさせる時間を増やせば増やすほど性能が無限に上昇していくという説になります。  要点まとめると、現在のAIの性能というのは、それほど難しい、錬金術とかSFとかみたいな理論を必要としなくても、先ほど言った三つの要素に投資をして成長していけば物すごく性能上がると、そういうものがスケーリング則にて裏付けられているという状況になります。  五ページ御覧ください。  そして、スケーリング、先ほど言ったスケーリングにおいて、学習データ、計算量、AIの大きさ、このうち二つ、学習データとAIの大きさに関しては、我々研究者がある程度任意に大きくすることができます。ただ、最後の一つ、計算量、学習に使う計算量、要するにスーパーコンピューターということをどれだけ動かすかと。この点につきましては、まさにラピダスなどで生産される、これから生産されるであろうGPUと呼ばれている半導体の処理装置が必要になります。そして、現在のAI開発競争というのは、この半導体の保有数に左右されるという状況になっております。  真ん中に表が、アメリカの研究機関と日本の研究機関のこのGPUの保有数まとめた表がありますけれども、現在の最先端のGPUというのは一個大体日本円にして五百万円ぐらいします。そして、ちょっと順番前後しますけれども、日本の研究機関というのは、これを大体数千個から、もしかしたら現在公開されていない情報だと一万個とか持っている機関があるかもしれません。一個五百万ですから、これでも十分多い数です。  ただ、今アメリカの研究機関というのは、このGPUを何十万個と持っています。メタ社は六十万個、イーロン・マスクが経営するxAIは十万個から恐らく現在それ以上持っていると推定されますけれども、この半導体の保有数において、そもそもAI研究においてアメリカと日本というのは勝負になっていない、僕の師匠の松尾豊先生の言葉を借りると、戦闘機相手に竹やりで挑んでいると、そういう状況です。  そして、少しここから本質的なお話になりますけれども、我々研究者、人工知能の研究者は機械上で知能というものをつくっています。人間の知能というものを機械で再現しようとしているわけですけれども、人間の知能、非常に神秘的なものとして考えていらっしゃる方結構多いんですけれども、研究的な視点からすると、知能の本質というのは計算です。計算による情報処理こそが知能の本質だと現在は考えられています。  そして、現在、研究によって明らかになっている知見を踏まえると、人間レベルの知能を実現する、あるいは人間を超えた知能を実現するには膨大な計算力が必要です。つまり、先ほどから話題に出ている半導体による計算力が必要です。一応、計算というのは物質に非依存です。人間の脳でも計算できますし、半導体でももちろん計算できる。そして、昨今非常に注目されている量子コンピューターというものももちろん計算、AIの計算とかできますけれども、現時点では量子コンピューターなどの計算は汎用性に欠けます。ですので、少なくとも当分はAIの計算に適した装置というのは半導体のままだろうと、そういう状況です。  そして、このページの最後になりますけれども、この人工知能の開発、知能の実現において要求される計算量というのは極めて膨大です。そして、現時点では、研究者の視点から見ると、世界にはこの計算力というものは全く足りておりません。つまり、半導体が全く足りていないという状況です。  六ページ御覧ください。  ここまで、AIには計算力が必要だと、そしてその計算力によるスケーリングが必要だというお話をしてきました。  では、そのスケーリングによって現在のAI、特に生成AIが何をできるようになったのかというところですけれども、これはいろんなところで報道されているので御存じの方も結構いらっしゃるかと思いますけれども、もう三十近い言語を使用可能、医師国家試験合格、司法試験合格、そして一千万文字、日経新聞にして大体朝刊五十個ぐらいですけれども、これを瞬時に全て読むことができる、そしていろんな学問分野で博士号取得者レベルの能力を持っているというのが言語の生成AI。そして、動画像、音声だと、数秒ぐらいの音声データで、もうその人の声を全て人工知能で再現可能だと。そして、もう現実世界と見分けの付かない動画を生成可能。そして、そのほか、昨今は単なる生成ではなくてもっと複雑な作業をするAIエージェントというものが技術の主流になっていますけれども、このようなものになると、もう人間が指示をしたら自動的にソフトウェア設計を行うとか、あと自動研究を行うなどといったこともできます。  そして、これから詳しくお話ししますけれども、AIによって科学的発見をするだとか、あるいはもうロボットを制御すると、こういうこともできます。そして、今挙げた人工知能のこのすごい性能というのはまさにここ数年で急にできてきたというもので、これは先ほど説明したスケーリング、膨大な半導体を使用して学習して実現されている、そういう成果ということになります。  七ページ御覧ください。  そして、生成AIでスケーリングが重要だといっても、所詮今できているのはただしゃべるだけのAIではないかと、そんなものをこれ以上大きくしてどうなるんだと、そういう意見もございます。  ただ、この先ほどから言ってきたスケーリング則というものは、いろんなAIで確認されております。まず、左側、これは科学的発見ができるAIのスケーリングになりますけれども、一旦これ図の内容は無視していただいて構いません。これは何を示しているのかというと、人工知能が科学的発見をするときの間違える確率がどれだけ減っていくか、それが計算量、つまりGPUに任せた計算、学習によってどれだけ間違える量が減っていくかというのを表した図です。  そして、これは生物DNAのモデリング、設計みたいなものですけれども、そのほかにも、昨今、創薬の支援ができるたんぱく質の立体構造予測、あるいは半導体そのものの設計の最適化、無機結晶素材の発見、気象予測などもAIによってできるようになっています。そして、このスケーリングが進むと、将来的には指定難病の治療薬の発見などにもAIが応用できるかと思います。  そして、右側、こちら生成AIとは少し異なる、先ほど申し上げた複雑な作業ができるAIエージェントというものになりますけれども、こちらは割と最近まではそこまで複雑な作業できるというわけではありませんでした。人間が数分程度でできる作業をAIがようやくできるかという感じでしたけれども、こちら、つい最近ですね、ここ一か月ぐらいで出てきた研究によって、七か月でAIが達成できる作業時間二倍になっていると、そういう試算が出ています。  そして、この傾向が続くと、二〇二八年から三一年ぐらいには、人間が一か月でようやくできるような作業を完全に全てAIができるだろうというふうに言われております。こうなると、恐らく社内の事務の大半が自動化できると思いますし、ノーベル賞級の研究も一部はできるかと思います。また、安全保障、そのような分野においても非常に大きなあるいは脅威となる作業ができるかと思います。  八ページ御覧ください。  一月に中国企業が、型落ちの半導体で高性能の生成AI、ディープシークを開発したということで、エヌビディアの株価などが下がるいわゆるディープ・ショックというものが起きました。そして、これは僕も、私自身も非常にメディアとかに出て発言させていただいた内容ですけれども、現在のAI開発にディープシークというものができたのであれば大量の半導体要らないのではないか、そういう議論がありました。そして、これは部分的には正しいです。  これ、ディープシーク・ショックの後に実は最先端の生成AIいろいろ出てきていまして、オープンAI社が出したGPT4・5、そして、つい一週間前にメタ社が出したラマ4というものがあります。こちらは、少なくとも大きさ、AI自体の大きさでいうと過去最大のものです。過去最大のもので、先ほどから私が申し上げたようなスケーリング則に従えば問答無用で性能高いはずだと。ただ、これはそうなってはいません。研究者の観点からすると、そこまで性能高いわけではなかったと。  このことも踏まえると、確かに、実は言語を生成するAIに関して言うと、恐らくこのスケーリングのゴールというものは見えてきていまして、半導体というものをそこまで必要としないんではないかというお話は一応成立します。  ただ、下の方を御覧いただきたいんですけれども、AIという分野は非常に広大です。AIの未解決問題、曲がりなりにも人間の知能を再現しようとしているわけですから、いろんな分野が存在しまして、そちらの方は未解決です。先ほど言った科学的発見できるAIもそうですし、ロボット操作、識別をするAI、自動運転とかも入ってきますし、あるいは仮想的な物理空間を生成するようなAIもそうだと思いますけれども、こういう問題に関してはまだまだ全然学習が足りていません。スケーリングが足りていない、半導体が足りていないという状況です。  九ページ御覧ください。  人工知能研究者の究極目標は、汎用人工知能、略してAGIと言われているものを実現することです。これは、人間ができる全ての知的作業を同等かそれ以上に実行できるAIということで、恐らくこれが実現されれば人間の活動は全て代替できることから、科学、経済、政治、あるいは安全保障などの分野で大きな革命が起こることが予想されます。  そして、これは今まではSF的な出来事でした。人工知能研究者が議論をしても、我々が生きている間に実現できるのかという、そういうお話でした。ただ、チャットGPTが出てきて以降は、これは現実的な話となっております。  これは、日本の一研究者である私の意見などを参照するまでもなく、去年ノーベル賞を受賞したジェフリー・ヒントン教授、あるいは二〇一八年にチューリング賞を受賞したほかの二名の人工知能最先端の研究者も数年から十年以内に汎用人工知能が出てくるだろうと言っています。そして、それは恐らく、今のAIというものをスケーリング、つまり半導体などの計算資源を用いて大規模な学習することで実現するだろうということをオープンAIの共同創業者、元主任研究者のイリヤ・サツキバーも言っております。  十ページ御覧ください。こちら、まとめになります。  AIというのは人類最後の発明とも言われています。そして、究極目標は人間がやっていることを全てできるAIだと。歴史上、基本的には科学、政治、経済、安全保障なども人間が行ってきたわけですけれども、AIのこの目標達成されれば、恐らく相当程度のものをAIが代替するだろうと考えられます。  つまり、この近い将来にAIという技術を握った国がこのような分野で強大な力を得る、裏を返すと、これを握れなかった場合はこれらの分野で挽回不能な後れを取るということは、研究者視点でもそこまで飛躍した議論ではありません。  そして、そのAIの実現というのは、ここまでの研究の蓄積を踏まえると膨大な計算力に懸かっている。そして、この計算力の基となるのは半導体です。ただ、現在、半導体は世界的に不足しています。そして、サプライチェーンは非常に脆弱、台湾TSMCなどに依存している状況です。日本はこれをコントロールできる立場にありません。  今後の人類の歴史を左右する技術の基盤となる半導体に関して、日本の大きな挑戦、懸ける価値があるのではないかと思います。  私からの話、以上になります。

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