○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
国民民主党は、急速なデジタル化の進展に伴って、憲法が定める人権保障を取り巻く環境が急激に変化する中、デジタル時代の人権保障の在り方を根本的に見直す必要があるものと考えております。
AIの普及は、既に個人の思想や良心の形成過程に影響を及ぼしており、自律した個人という憲法の前提に既に大きな影響が生じています。
このような現状から、個人の尊厳を守り続けるためには、時代に即した人権保障の在り方はいかにあるべきかを規定する必要があるものと考えております。
プラットフォーム提供者によるマイクロターゲティングやフィルターバブルの影響が選挙や国民投票の局面で現れることにより、主権者である国民の自律的な政治的意思の表明によって支えられている民主主義の根幹を揺るがすおそれが生じています。
こうした基本認識に基づき、国民民主党は、国民投票法や公職選挙法等にその公正性を確保するために規律を設けることを憲法上明確化することの可否について速やかに検討する必要があるものと考えており、以下、検討項目についての意見を申し述べます。
まず、個人の尊重の仮想空間への拡張適用について。
憲法十三条前段に定める個人の尊重を、従来の現実空間に限らず、立法時には想定されていなかった仮想空間への適用を明記する必要性について検討する必要があります。個人の尊重を人権保障の中核的価値とする日本国憲法の基本原理が仮想空間にも及ぶことを明記することによって、憲法十四条以下に定める具体的な人権規定として機能していく上での基本理念とすることが考えられる、このように考えております。
次に、情報自己決定権の明示について。
いわゆる情報自己決定権は、憲法十三条後段の解釈によって導き出されるとの見解が有力でありますが、急速なデジタル化の進展により、自律した個人の尊厳が脅かされるような現状に鑑みれば、解釈に委ねるのではなく、実定憲法の中に具体的な権利として明記することが適当と考えられます。
主観的権利の一つとして情報自己決定権を明文化することにより、そこから派生する権利としてのデータポータビリティー権なども憲法上の権利としてより強く保障されることとなり、その結果、個人情報保護法などの個別法における自己情報に関する個人の自律的な関与が実効化されるようになっていくことが期待されます。
また、GDPR、ヨーロッパ連合一般データ保護規則二十二条を参考に、プロファイリングのような自動的な処理のみによって自己に関する重要な決定が行われない権利を定めることも考えられるほか、情報法制に関する先進各国では既に標準となっている独立したデータ保護機関の設置も重要な検討事項になるものと考えております。
次に、デジタル時代における思想、良心の形成過程の自由、自律性の保障についてです。
プロファイリングに基づく個人の意思形成過程への働きかけによって、個人の内心過程や認知傾向に過度な干渉が及ぶおそれがあることを多くの識者が指摘しています。その結果、形成された思想、良心が、現行憲法十九条、思想、良心の自由に定める本人の自律的な選択、決定によるものと言えるのかということが問題となります。
そこで、内心の思想、良心の形成プロセス自体の自由がゆがめられることがないようにすることについても憲法に明記し、保障することが検討されるべきではないかと考えます。
次に、プラットフォーム提供者の責務についてであります。
多様な言論空間の確保をするという観点から、デジタル時代においては、フィルターバブルによる個別化によって自らと異なる多様な見解に触れる機会が脅かされていることから、プラットフォーム提供者には、サイバー空間において自律的かつ多様な言論を通じた熟議が可能となるよう必要な措置を講ずる責任を課すことが考えられます。
無論、私人であるプラットフォーム提供者に対して憲法上の責務を課すことは従来の憲法観からは異質の構成となりますが、プラットフォーム提供者がもはや国家に匹敵する社会的権力を行使している実態に鑑みれば、この新たな権力者に対して、プラットフォーム提供者自身の表現や編集の自由などにも十分配慮しつつ、一定の責務を課すことは検討すべきと考えております。
次に、公正かつ自由な競争秩序の確保についてであります。
プラットフォーム提供者は、経済的な活動の分野でも、その圧倒的優位性により国民経済の健全な発展を阻害しかねないほどの存在にまでなっている現状に鑑み、公正かつ自由な競争秩序を確保する観点から、プラットフォーム提供者自身の経済活動の自由などにも配慮しつつ、透明性、公正性を向上させるための一定の責務を課すことも検討すべきと考えております。
あわせて、多様な言論空間の確保や公正かつ自由な競争秩序を確保する上での国の責務や国会関与の必要性についても今後検討する必要があることを指摘しておきます。
以上、今後の憲法審査会での審査を進める上での論点を申し述べて、国民民主党・新緑風会の意見表明とします。
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