○河西委員 中道改革連合・無所属の河西宏一です。
会派を代表し、国民投票法をめぐる、いわゆるCM規制及びネットの適正利用等について意見を申し述べます。
我が会派はこれまで、本審査会において、国民投票法のいわゆる三項目の法改正については、各会派の合意が形成され、かつ、放送CMやネットCMに係る議論を積み残すことなく一定の結論を得る旨が何らかの手段で担保されるのであれば、是非前に進めたいと申し上げてまいりました。
本日は、この立場をより具体化し、会派としての考え方をお示しをいたします。
まず、現在直面している問題の所在でございます。
現行の国民投票法百五条は、投票期日前十四日間の放送CMを禁止するにとどまります。しかも、その対象はいわゆる勧誘CMであり、意見表明CMは、民放連が放送しないことを会員各社に推奨しているものの、法規制の対象外とされております。
他方、ネット、SNS上の有料広告、組織的な拡散、ディープフェイク、さらには外国からの干渉については、何ら直接の規定は存在いたしません。
改めて確認するまでもなく、平成十九年の制定当時、テレビ広告費の三分の一以下にすぎなかったネット広告費は、令和元年にはテレビを上回り、令和三年には、マスコミ四媒体、新聞、雑誌、ラジオ、テレビの合計をも上回るに至っております。
さらに、昨今、ネット情報が主権者の投票行動に大きな影響を与える点については日本社会の共通認識になっているところ、放送だけを縛りネットは野放しという現行の枠組みについては、もはや立法当時の前提を大きく外れつつあるのが現実であり、その是非について、従前の議論にとらわれることなく、改めて冷静に熟議を尽くすべきであると考えます。
ここで、具体的な議論に入る前に、表現の自由に関する憲法学説上の視座を整理をいたします。資料一を御覧ください。
表現の自由は、二つの自由から構成をされます。一つは、情報の出し手の自由。これは言論活動による人格形成という個人的な価値を有します。もう一つは、情報の受け手の自由。これは知る権利を含み、国民が虚偽等に惑わされることなく適切に情報を知り、選挙等の政治的意思決定に関与する、いわば自己統治としての社会的な価値を包含します。ちなみに、芦部信喜先生は御著作「憲法」において、知る権利を参政権的な役割を演ずると捉え、その理由を、個人は様々な事実や意見を知ることによって初めて政治に有効に参加することができるからであると考察しておられます。
したがって、選挙における偽情報等は、表現の自由のうちの受け手の自由、つまり知る権利や民主的政治過程への有効な参加を阻害する危険性を有し、今日多くの民主主義国家において重大な問題となっているわけであります。
表現の自由といえば、とかく出し手の自由のみが取り上げられがちですが、このように受け手の自由も含む包括的な視座から国民投票に係る規制の在り方を考えなければなりません。すなわち、出し手の自由からは、どこまでが憲法改正に関する発言なのかといった明確性や発信内容の公平性、あるいは過度広範性の回避、ないしは必要最小限度の規制といった観点で、規制を抑制せよとの要請がなされます。他方、受け手の自由からは、知る権利を保障するための適正な情報環境が求められ、偽情報や扇情的発信による分断、民主的プロセスの社会的価値の毀損といった観点から、規制を強化せよとの逆の要請がなされます。
私は、この視座に立って、このベクトルの異なる二つの要請を適切に調整する設計原理こそがCM規制及びネットの適正利用等の核心であろうと考えます。
次に、これを踏まえ、我が会派の基本的立場を申し上げます。
第一に、表現の自由の核心である一般国民の無償の意見表明には原則として立ち入るべきではないと考えます。現行の国民投票法は、表現の自由を最大限尊重するとの理念の下に成り立っております。我が会派は、その立法の趣旨を重く受け止め、また、賛否いずれかの意見を堂々と表明することは国民主権の最も根源的な発露であることから、意見表明に係る規制には踏み込むべきではないと考えます。
第二に、一方で、情報環境をゆがめる手段には一定の規制が必要であると考えます。すなわち、有料広告、有償かつ組織的な拡散、成り済まし等の欺瞞的な発信、そして外国干渉、これらの手段に対しては放送とネットを通貫する法的フレームを設けるべきでございます。
要するに、内容は問わない、しかし手段は問う、これが我が会派の考え方の根幹でございます。
具体的な方向性を四点、簡潔に申し上げます。
第一に、投票期日前の一定期間については、放送CMの規制に関する現行の百五条の枠組みを維持した上で、少なくとも、有料ネット広告のうち広告費の規模が一定以上の場合には、その主体に、支出上限、広告主の表示、広告ライブラリーへの登録、収支報告を求めることを検討すべきと考えます。
第二に、全期間を通じて、有償、組織的な拡散の透明化、そして成り済まし、ボット、ディープフェイク等の欺瞞的手段への対応を図るべきでございます。
第三に、外国主体、匿名資金による国民投票運動への関与を遮断すること。
第四に、広報協議会の機能を十分に強化するとともに、プラットフォーム事業者に対し透明性確保のための責務を求めることが必要であります。
これら四点の具体的手法については、先ほど新藤筆頭からもございましたけれども、まず、EUのデジタルサービス法をモデルとして、現在選挙運動に関する各党協議会で議論が進む公選法及び情報流通プラットフォーム対処法の改正とも整合的な国民投票法の在り方を設計すること、加えまして、EUの政治広告透明化規則をモデルとして、政治広告のスポンサー等の身元情報、広告費の総額や、その出所がいかなる国によるのか、またターゲティング実施の有無等を明らかにすることを法的に義務づける透明性の公示を検討すべきであると考えます。
最後に、改めて申し上げます。
憲法改正の是非が最終的にどう判断されるにせよ、その結論を国民全体が受け止めるためには、手続の正当性こそが結果の正統性を支えるという、この一点が決定的に重要でございます。
公正な手続と有権者が落ち着いて熟慮できる情報環境を整えることは我々立法府の責務でございます。令和三年改正法附則第四条が定めたCM規制、資金規制、ネット等の適正利用に関する検討期限は既に大きく超過をしております。三項目改正の合意形成とネット規制の議論を継続して一定の結論を得ることを同時に担保する、我が会派はその実現に向けて各会派の皆様の真摯な御議論を期待申し上げ、私の発言といたします。
ありがとうございました。
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API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=河西宏一
MCP: search_diet_speeches(speaker="河西宏一")