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神保政史 ·日本労働組合総連合会事務局長

衆議院予算委員会公聴会(2026-03-10)での発言

第221回国会 ·第第1号号 ·6,249字
○神保公述人 ただいま御指名いただきました連合の神保でございます。  本日は、このような場で意見を述べる機会をいただきましたことに感謝申し上げます。  私ども連合は、働くことを軸とする安心社会の実現を目指していろいろな取組をしているところでございます。本日は、働く者、生活者の立場から意見を申し上げたい、このように思います。  まず初めにでございますけれども、ただいま二〇二六春季生活闘争の真っただ中でございます。連合は、人への投資を起点に経済の好循環を力強く回すことを目指す、未来づくり春闘と称してこれらを推進しているところでございます。今年の春闘は、日本の実質賃金を一%の上昇軌道に乗せ、賃金が持続的に上昇するという賃上げノルム、これを確立させるべく正念場、このように位置づけているところでございます。  お配りしております資料の三ページを御覧ください。  これは、これまでの賃上げ状況の推移をグラフ化したものでございます。全体では二年連続で五%台の賃上げが実現したものの、中小組合、中小企業ですけれども、その賃上げ率が四%台にとどまっております。物価高を背景に、生活向上を実感している人が少ないのではないか、このように捉えているところでございます。  このような中、今年の要求の集計を三月五日に公表させていただきました。その集計結果では、中小組合の要求水準が全体を上回っている、こういうようなことになっております。この勢いをしっかりと回答につなげて、日本全体に賃上げの裾野を広げていく必要があるんだろう、このように考えているところでございます。  資料四ページを御覧になってください。  これは、中小企業庁が価格転嫁の状況を調査した結果でございます。賃上げの裾野を広げていくためには、労働者の約七割が働く中小企業における適切な価格転嫁、そして適正取引の徹底が必要となってまいりますが、価格転嫁率はいまだに五割強にとどまっているのが実態でございます。全く価格転嫁できなかったという企業も約一七%ほど存在をしております。  本年一月施行の中小受託取引適正化法、いわゆる取適法及び労務費転嫁指針、この周知徹底などにより、公共調達部門も含めた価格転嫁を円滑化し、サプライチェーン全体での付加価値の適正配分により、人的投資、設備投資、研究開発投資を行うことで更なる付加価値を創出していく、こういうような好循環を実現していかなくてはならないと考えております。  政府は、十二月、私たちの要請を踏まえ、荷主や運送事業者などに向けて「燃料価格下落時におけるトラック運送業の適正取引の徹底について」、この要請文を発出されたことを承知しております。要請文は運輸業界の賃上げの大きな後押しになっている、このように感じております。この場をかりて御礼を申し上げたいと思います。  また、ほかの産業でも、医療、介護、保育などの分野では、働く労働者も含めていろいろ課題もございますので、引き続き、賃上げ実現に向けた環境整備をお願いするものでございます。  また、毎年の春闘では、賃上げのみならず、長時間労働の是正を始めとする働き方の改革、改善、あるいは、育児、介護や治療、これらと仕事の両立推進支援、多様性が尊重され、誰もが働きやすい職場の実現などにも取り組んでおります。これらについても、法改正などの環境整備をお願いいたします。  次に、公平、連帯、納得の税制改正の実現について、二点ほど申し上げさせていただきます。  一点目は、給付つき税額控除についてでございます。  政府は、国民会議を立ち上げ、給付つき税額控除の仕組みの実現に向けた検討を開始した、このように承知しております。  連合は、消費税の逆進性対策、税による再分配機能の強化を求めてきております。その中で、給付つき税額控除は、就労支援にも資するものとして、仕組みの構築を求めてきたところでございます。有識者の中には、制度設計次第で時間をかけずに構築が可能、このような意見もございます。国民会議においては、そうした有識者の意見も踏まえながら、給付つき税額控除の仕組みの早期構築に向けた検討をお願いいたします。  なお、給付つき税額控除の仕組み構築までのつなぎとして、二年間に限り飲食料品を消費税の対象から外すという案があることは承知しておりますが、期間を限定した消費税減税は、現場が混乱するだけではなくて、減税期間終了後に消費税率を元に戻す際の物価が上昇する懸念であったり、あるいは、飲食料品を消費税の対象から外すことは高所得者ほど恩恵が大きいとの指摘もございます。  給付つき税額控除の仕組み構築までのつなぎとしては、消費税減税よりも、真に支援を必要とする層への給付の方がふさわしいのではないか、こう考えております。国民会議での慎重な検討を求めるところでございます。  二点目でございますけれども、燃料課税の当分の間税率廃止についてでございます。  昨年十一月二十八日施行の改正法によって、半世紀以上も維持されてきた燃料課税の当分の間税率廃止が実現をいたしました。しかし、年度内に税制改正関連法が成立に至らない場合は軽油引取税の当分の間税率廃止が先送りになるなど、国民生活への影響が懸念されるところでございます。仮に年度内成立に至らない場合には、国民生活に影響が生じないような対応を求めるところでございます。  次に、二〇二六年度予算案についてでございます。  予算案は、燃料課税の当分の間税率廃止により地方の財政運営に支障を生じさせないための財政措置や、医療従事者の処遇改善のための診療報酬引上げなど、必要な歳出が盛り込まれていると承知をしているところでございます。  一方、過去最大の税収を見込むにもかかわらず二十九・六兆円もの新規国債発行を予定するなど、政府が予算策定時に掲げた歳出構造の平時化に配慮した予算編成となっているのか、こういうような懸念がございます。  また、十二月に二〇二五年度補正予算を編成したばかりであることや、会計検査院から執行内容を十分考慮せず積み増されていた基金があるなどとの指摘をされたことを踏まえ、二〇二六年度予算案は、二〇二五年度補正予算と一体として考え、基金の積み増しを始めその内容を精査し、修正を行う必要があるものと考えておるところでございます。  同時に、利払い費の膨張が政策経費を圧迫しつつあることを踏まえ、財政運営を中長期的な視点から評価、監視する独立財政機関を設置し、財政規律の強化と歳出構造の見直し、これに取り組む必要があるのではないかと考えておるところでございます。  予算の参考資料である平成八年の経済見通しと経済財政運営の基本的態度、ここについても意見を申し上げたいと思います。  昨年度の閣議了解され公開されている資料において、実質賃金は、昨年度実績がプラス、今年度もプラス見込みと記載されていると承知をしているところでございます。これは、賃金を実質化する際の消費者物価指数として毎月勤労統計調査が用いている持家の帰属家賃を除く総合ではなくて、上昇が緩やかな総合を用いたことが大きな要因だと思っております。しかし、昨年度も今年度も実質賃金プラスというのは、私たち働く者、生活者の実感とは全く異なりますし、そもそも、政府経済見通し本文の記載とも異なると考えております。  予算審議の前提となる重要な資料と考えておりますので、国民生活実態と合う指標を用いていただくよう、お願いを申し上げるところでございます。  次に、医療、介護、保育など、社会保障サービスを担う人材の処遇改善について申し上げます。  資料五ページの左のグラフを御覧になってください。  厚生労働省の二〇二五年の賃上げ実態調査では、賃上げの改定額、率共に、医療、福祉、ここが最も低い結果となっております。さらに、二〇二四年と比較しても下がっている状況にございます。二〇二五年度補正予算による処遇改善策を着実に進めるとともに、今年度予算においては、医療、介護、保育などの分野が魅力ある職場となるよう、他産業との賃金格差の解消を目指し、更なる処遇改善を求めるものでございます。  次に、雇用の安定と公正労働条件の確保について、三点ほど申し上げます。  一点目は、働き方改革の見直しについてでございます。  労政審において見直し議論が続けられている中、政府は、裁量労働制の見直しを含めた労働時間規制の緩和検討を掲げました。  働き方改革の出発点である二〇一七年の労使合意、それを基にした働き方改革関連法の目的は、過労死、過労自死ゼロの実現、多様な人材が活躍できる社会の構築だったはずです。この間、長時間労働の是正は一定程度進展したものの、残念ながら、法施行後六年が経過しても、過労死などを含む、過重労働などによる脳・心臓疾患や精神障害を理由とした労災請求件数は過去最多を記録しているところでございます。働き方改革の実現にはほど遠い状況にあるのが実態と考えております。  このように、いまだに長時間労働や過労死などがなくなっていないことを踏まえれば、働き方改革に逆行する緩和ではなくて、時間外労働の上限規制の強化を含め、労働時間規制の実効性を高めていくことが喫緊の課題である、このように認識しているところでございます。  また、総理の施政方針演説や、一部の経済団体から拡充の声が上がっている裁量労働制についてでございますが、厚生労働省の調査でも長時間労働につながりがちな実態が明らかになるなどの課題があることから、安易に拡充や要件緩和を行えば長時間労働を助長しかねないと考えております。二〇二四年改正を踏まえた本人の同意、撤回手続、モニタリングの強化など、適正運用の徹底こそが必要であって、対象業務の拡充や要件緩和を行うべきではないということを申し上げておきます。  二点目でございますけれども、ワークルール教育の推進についてでございます。  近年、働き方改革が多様化してきている中、労働条件が事前に明示されない、あるいは、就労実態と異なる事案や、テレワーク等の柔軟な働き方をめぐる問題などの労使間でのトラブルが生じている、こんなようなことが言われております。背景には、働くことに関する知識不足の問題も大きい、このように考えております。労働基準法を始めとする法規制の整備に加え、労使双方がワークルールを理解することが重要であろう、このように考えております。  政府においては、企業や働く者に対し、様々な機会におけるワークルール教育の充実や支援をお願いするとともに、今こそワークルール教育推進法の策定が必要だ、このように考えております。  三点目でございますけれども、あらゆるハラスメントの防止についてでございます。  昨年の通常国会で成立した改正労働施策総合推進法などにより、本年十月から、カスタマーハラスメント対策、求職者などに対するセクシュアルハラスメント対策が雇用管理上の措置義務となります。  政府には、ハラスメント禁止の積極的な啓発活動とともに、関係省庁と連携した各業界の取組の推進、中小企業の支援などにより、法の実効性確保を求めます。  あわせて、ハラスメント根絶に向けて一定の法整備が設立されたことから、ILO第百九十号条約、これは仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約でございますけれども、この批准に向けた検討も求めるところでございます。  次に、教育についてでございます。  教員が子供と向き合う時間を確保し、きめ細かな教育を行うには、教職員の配置増と処遇改善、部活動の地域展開、外部人材の活用を含めた負担軽減など、改正給特法を踏まえた取組を行い、学校の働き方改革を進める必要がある、このように考えております。  現在、中学校三十五人学級の実現などを盛り込んだ義務標準法の改正法案が衆議院に提出されていることを承知しております。学校現場が混乱したり、子供たちが困ったりすることがないよう、年度内の成立を強く求めるところでございます。  また、学校の働き方改革の進捗状況把握も不可欠です。政府は、教育委員会を通じて時間外在校等時間を把握するとしていますが、この調査は、家に持ち帰った業務の時間が含まれていないなどの問題が指摘されております。実態をより正確に把握できる教員勤務実態調査を速やかに行い、給特法を更に見直す必要がないか、検討をお願いするところでございます。  次に、第六次男女共同参画基本計画についてでございます。  第五次計画で掲げられた数値目標の多くが達成できていない状況にあります。指導的地位に占める女性の割合が三〇%程度の早期達成に向けて、取組の加速をお願いいたします。  なお、昨年十二月に男女共同参画会議において、連合を始め複数の委員から反対の声があったことから議長一任となっていた、第六次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方、これが三月六日に原案どおり答申をされたところでございます。  私ども連合としては、旧姓使用法制化に反対の立場には変わりございません。  日本は、夫婦同氏を強制されている唯一の国であり、国連の女性差別撤廃委員会から繰り返し勧告を受けているところでございます。金融機関では戸籍姓での手続が求められたり、若年男性からは、同姓強要が婚姻の妨げになるという声も聞こえてくるところでございます。連合が実施している世論調査でも、そういった点が明らかになっているところでございます。こういったことから仕事や生活の面で影響を及ぼしており、旧姓使用の拡大では問題の解決には至らない点もあり、人権尊重という要請にも応えるものではございません。  連合が求める選択的夫婦別氏制度は、夫婦が結婚する際に、同じ姓にするか、自分の姓を名のり続けるかを選べるものであり、夫婦同氏を否定するものではございません。選択的夫婦別氏制度を直ちに導入すべき、このように考えます。  最後に、防災についてでございます。  先般の災害対策基本法などの改正を踏まえた対応が各自治体でなされようとするには政府の支援が不可欠だろう、このように考えています。特に、自治体などが公表する物資の備蓄は広域災害にも対応できるものとなるよう、また、被災者援護協力団体の登録制度は、適切な団体が登録され、人権意識に基づいた被災者援護を行う団体が育成されるよう、支援をお願いするところでございます。  今年中に設置が計画されている防災庁については、事前防災の強化を図り、発災時には被災者の人権が守られた形で復旧復興が進められるよう、司令塔機能を担い得る万全の体制で設置していただきたいと存じます。また、防災庁の設置後には、国、都道府県、市町村、事業者、NPOなどが効果的かつ効率的に協働できるよう、災害対策基本法や災害援助法で定められている役割分担の再検討を行っていただくことも併せてお願いいたします。  以上申し述べて、意見陳述とさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。(拍手)

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