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西川邦夫 ·日本大学法学部教授

参議院農林水産委員会(2026-06-23)での発言

第221回国会 ·第第12号号 ·4,954字
○参考人(西川邦夫君) 日本大学法学部の西川と申します。  本日は、参議院農林水産委員会でこのような発言をさせていただく場をいただきまして、誠にありがとうございます。  私の方からは、専門家の立場というふうなことで、食糧法改正案に対する意見を十五分程度述べさせていただきたいと思います。お手元にあります資料に沿って発言をさせていただきます。  まず、一枚めくっていただきまして、食糧法改正案を評価する視角というふうなことで、二点ほど私の見方というふうなことで申し上げさせていただきたいと思います。  一点目に、二〇二六年特別国会に提出されました本改正案は、食糧法の抜本的な改正案になっているというふうなこと、そして二つ目に、食糧法の改正は、二〇二四年の食料・農業・農村基本法の改正から続く農政改革の一環として捉えるべきであることということでございます。もちろん、直近の令和の米騒動がこの後押しをしたということはあるかとは思いますが、より長期的なスパンに立って本改正案を評価する必要があるのではないかというふうに考えております。  次のページをめくっていただきまして、先生方も御承知のとおりかと存じますが、食糧法の改正案、三本の柱というふうなことになっております。  一つ目が、生産調整の規定が削除されるというふうなことでございます。これまで需要の減少を前提としてきた生産調整政策が法律からなくなるというふうなことでございます。  それから二つ目に、民間備蓄が創設されるということ、こちらは政府備蓄の補完として設けられるというふうに認識しております。  そして三つ目に、流通実態の把握が強化されるというふうなことでございまして、例えば、届出事業者を加工、中食、外食まで拡大するとともに、定期報告を義務化しているところでございます。  以上二つの点につきましては、流通過程の透明化と及び機能強化によって需給調整の円滑化を図る措置であるというふうに認識をしているところでございます。  次のページ見ていただきますと、食糧法の一九九四年の制定から二回の改正につきまして整理をしてございます。  一九九四年の食糧法の制定におきましては、まず生産調整が法定化されたということ、そして流通の方に目を向けますと、小売段階を中心として流通規制が大幅に緩和されたと、米の取扱業者は許可制から登録制へと移行したということでございます。  次の抜本的な改正ということで、二〇〇三年、米政策改革を受けた改正でございます。こちらでは、生産調整の詳細が規定されますとともに、流通面におきましては計画流通制度が廃止され、取扱業者は登録制から届出制へと移行しております。この時点で流通規制はほぼ自由化されたというふうに認識をしております。  そして、今回、二〇二六年、こちらは食料・農業・農村基本法の改正を受けたものでございますが、生産調整の規定が一九九四年以降続いていたものが削除されるとともに、流通実態の把握が強化される措置がとられたというふうに認識をしているところでございます。  次のページ見ていただきますと、今回の改正案によって生産調整をめぐる規定がどのように変化したかということを示しております。現行第二条から第七条、さらに第九条まで生産調整の規定、関連規定が設けられてございますけれども、それが今回の改正案におきましては全て削除されるということ、そして、その代わりに第一条と第五条におきまして需要に応じた生産についての規定が挿入されるというふうなことになってございます。  次のページを見ていただきたいんですけれども、このように、改正食糧法、非常に抜本的な改正がされているわけでございますが、こちらの改正は、それ単独で捉えるだけではなくて、二〇二七年度以降に予定されております水田政策の見直しとセットで考える必要があるというふうに考えているところでございます。  こちらの水田政策の見直しでございますが、これはあくまで私の知る限りではございますが、初めて政府の文書に現れたのは二〇二三年十二月、食料・農業・農村基本法の改正の議論がされておりましたときに、食料安定供給・農林水産業基盤強化本部の文書において以下のように表記されたというふうに認識をしています。読みますと、各産地の意向を踏まえ、水田におけるブロックローテーションや畑地化の取組を集中的に推進する(九年度まで)、その後に、将来にわたって安定運営できる水田政策の確立、基本計画見直しのタイミングで議論というふうに書かれているところでございます。  以上のように、水田政策の見直しにおきましても、基本的には基本法改正の議論を継続する形で行われているというふうなことになっております。  こちらの水田政策につきましては、まだ詳細が固まっているわけではございませんが、これまで発表されております政府文書等を読みますと、田と畑を分けずに品目別に交付金が支払われるということで、その文字をそのまま読みますと、主食用米の作付けに左右されずに、各品目の生産性上昇を支援するものであるというふうに考えられるわけでございます。そのために数量払いを導入するということでございます。  また、業務用米への支援も行うというふうなことで、米に対する政策支援の領域というものが、これまでの非主食用米だけではなくて、我々が食べるお米にまで支援の対象が拡大するというふうに認識しているところでございます。  以上、条文の改正等、制度改正等について申し上げてまいりましたが、以上の状況を、今回の二〇二六年の食糧法改正がどういった環境にあるのかというふうなことをもう少し掘り下げて見ていきたいと思います。  これは、米政策を全体のパッケージとして捉えたときに今回の改正がどのように位置付くかというふうなことでございますが、まず二〇一八年に生産数量目標が再度配分が廃止されたというふうなことになっております。そして、今年、二〇二六年に改正食糧法によって生産調整の規定が削除されるかもしれないということ、そして来年、二七年に水田政策が見直されるというふうなことでございます。  政府による配分、それから法的な担保、そして財政措置の三点を見直すことで、水田政策は、これまで需要の減少に応じて生産を減らしてきた、生産調整をしてきた政策から、生産性の向上を目指す体系へと再編される、改革されるというふうに認識をしているところでございます。  一方で、流通の方を見ますと、二〇二五年に食料システム法が制定されたと、こちらで流通過程の適正化というふうなことが目指されております。さらに、今回の改正、食糧法の改正案におきましては、民間備蓄制度が創設され、二〇二八年より実施されるというふうになっております。  以上のことから、需給調整におきましては、これまでの生産段階、生産調整中心のものから収穫後の事後的な流通調整へと比重がやや移っていくというふうに認識しております。以上のことは、これまで需給調整というのが主に生産段階における措置によって行われてきたものが、流通業者の方々にもそういった需給調整の社会的な責任を共有することが求められているというふうに認識しているところでございます。  続きまして、二〇〇三年の法改正との比較をしていきたいと思います。  実は、様々な識者の中には、二〇〇三年の法改正も生産調整措置の廃止を目指したものであったというふうな、そのような意見がございます。ただ、そのときは二〇〇七年に再度生産調整が強化されるというふうなこともあったわけでございますが、その二〇〇三年と今回二〇二六年の違いということで、まず一点目に、食料・農業・農村基本法の改正により、食料安全保障の確保が農政における最上位の目的になったというふうな点が挙げられます。基本法の第一条の目的規定に食料安全保障の確保が明記されてございます。  それから二点目に、生産基盤の脆弱化が二〇二六年は二〇〇三年よりもより進んでおります。生産を抑制する措置を緩和する必要があるということでございます。  そして三点目、WTOドーハ・ラウンドが停滞をしているということでございます。二〇〇三年はドーハ・ラウンドの交渉がかなり佳境に入っていた時期でございまして、なかなか生産刺激的な政策を取りにくかったわけでございますが、二〇二六年は、これは幸か不幸か分かりませんが、ドーハ・ラウンドが停滞しているということもあって、実際にやはり政策の幅が広がったんだろうというふうに考えているところでございます。  そして最後、四点目に、デフレ経済からインフレ経済に転換したというふうなことで、価格転嫁に対する消費者の理解が以前に比べたらやはり得やすくなったのであろうというふうに考えている、こういったところが、今回の改正法が二〇〇三年とは環境が異なる点であるというふうに認識しているところでございます。  以上を踏まえまして、食糧法改正案につきまして私の方から四点ほどコメントをさせていただきたいというふうに考えてございます。  まず一点目に、今回の食糧法の改正案の内容につきましては、まず、令和の米騒動を受けた短期的な対応といたしましても、また日本の米産業の生産性向上を目指しました長期的な対応といたしましても、おおむね妥当と言えるのではないかというふうに考えているところでございます。  そして二点目、今回の食糧法改正案には民間備蓄が新たに設けられることになっております。民間備蓄の発動につきましては、農林水産大臣がそちらの発動を決定するというふうになっているかと存じますが、一方で、じゃ、いつ発動するかというふうな点につきましては、やはり現場の流通業者との緊密な情報の交換というものは欠かせないというふうに思っております。ですので、現在も既に行われているところではございますが、政府と流通業者との間で日常的に密接な意思疎通が今後も図られていく必要があるというふうに認識しているところでございます。  そして、三点目でございます。  先ほども申しましたように、今回の改正案におきましては、需要に応じた生産が新たに法律に明記をされたことでございます。こちらを、需要に応じた生産が何を意味しているのかというふうなことを、議論を深めていく必要があると思っております。  生産調整というのは、かなり具体的な政策措置として規定されていたわけでございますけれども、需要に応じた生産は、どちらかというとまだ理念の表明にとどまっているところでございます。これをどういうふうに具体的な政策にしていくのか、またどういうふうにその理念を肉付けしていくのかという点を、是非国会でも議論を深めていっていただければというふうに考えているところでございます。  そして、最後でございます。  また、今回の食糧法の改正案には、政府の責務といたしまして、新たな需要の開拓というものが求められて、需要の開拓が記載されてございます。こちらを、新たな需要の開拓を具体的にどのように構想するのかという点も非常に重要な点になってくるかとございます。  需要の開拓は、原則として、この自由主義経済の中では民間の役割でございます。それをあえてこの法律案に政府の責務として明記するのであるなら、それは、政府には、民間にはできないことを是非、需要の開拓の手法としてやっていただきたいと考えております。  例えばの例で挙げますと、例えば国際的な貿易交渉、これはやはり民間ベースではなかなか難しいところでございます。また、知的財産権の保護の仕組みを整備するという点も、これもなかなか民間レベルではできないところでございます。今後、日本の米産業が海外の需要に対応していく中で、そういった点に是非力を注いでいっていただければというふうに考えているところでございます。  私からの意見は以上でございます。どうもありがとうございました。

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2026-06-23 · 参議院農林水産委員会
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