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大橋宏子 ·福井女子中学生殺人事件被害者の実の姉

参議院法務委員会(2026-07-14)での発言

第221回国会 ·第第20号号 ·2,840字
○参考人(大橋宏子君) こんにちは。私は、大橋宏子といいます。福井女子中学生殺人事件の被害者、高橋智子の姉です。  私には軽度の知的障害があります。小さい頃に階段から転落し、その後遺症もあり、うまく考えをまとめてしゃべることが苦手です。でも、妹の事件で犯人とされて、刑務所で服役した前川彰司さんが実は無実だったことが分かってから、心の中にいろいろな気持ちが湧いてきました。事件のこと、妹のこと、両親のこと、警察や検察のこと、前川さんのこと、たくさんあってちゃんと話せるか心配ですが、心の中にある思いをどうしても国会議員や多くの人たちに伝えたいと思い、ここに来ました。  妹の智子は、今から四十年前に十五歳で命を奪われました。私は当時十八歳でした。今は五十八歳になります。事件よりも前に父と母は離婚しており、妹は母と暮らしていました。私は父に引き取られましたが、父が酒に酔って私に暴力を振るうことがあり、私は父の家と母の家を行ったり来たりしていましたが、事件のときは父のところで暮らしていました。当時、妹は余り話をしなくなっていましたが、小さい子供だった頃はよく一緒に遊びました。  先週、子供の頃に二人で一緒に遊んだ場所に行く機会があり、妹のことを懐かしく思い出しました。妹の中学の卒業アルバムを見ました。妹が卓球部で活躍したことも思い出しました。妹は、頭が良く、しっかりしており、私と違って母親からも頼りにされていたほどです。友達もたくさんいました。私には知的障害があり、学校ではからかわれたり、いじめられたりしたので、余り友達もいませんでした。でも、妹は私のことをばかにしたりはせず、お姉ちゃんと慕ってくれていました。  先ほども申し上げたとおり、妹が殺されたとき、私と父は別のところに住んでいましたが、母親は、仕事から帰宅して、誰よりも先に娘のむごたらしい姿を見てしまったのです。そのショックはとても言葉にはできないものだと思います。  事件の後、父も私も警察から事情聴取を受けました。特に父は、智子に生命保険を掛けていたので、犯人と疑われて厳しい取調べを受けていたようです。私は、事件の日は智子と一緒に家にいたと警察にちゃんと言ってほしいと父から頼まれたことを覚えています。  事件から一年ほどたって前川さんが逮捕されたというニュースを見ました。そのときはやっと犯人が捕まったと思いました。でも、福井の裁判所では無実でした。父は、犯人なのに無罪になるなんて許せぬと言い、物すごく怒っていました。それまで勤めていた会社では、夕方五時きっかりに仕事が終わっていたのですが、無罪のニュースの後、父はその会社を辞めて夜勤のあるタクシー運転手に転職しました。夜、家で事件のニュースを見るのが耐えられなかったのではないかと私は思っていました。父親は、その後、肝硬変で亡くなりました。お酒の飲み過ぎが原因です。  前川さんは、その後、金沢の裁判所で有罪になりました。無罪だったのが有罪となったというニュースを見て、何でこんなことになっているのかと母に尋ねました。すると、母は、事件の話はもうしないで、思い出したくないからと叫んで、それ以上何も教えてくれませんでした。きっと母は、妹が殺されてひどい状態になっていたのを直接見てしまったから、事件のことを思い出したくないのだと思いました。  私も、無罪になったり有罪になったり、再審開始が出たり取り消されたり、裁判所の言うことがころころ変わるのはどうしてだろうと気持ちが揺れました。何十年もの間、裁判が終わらず不安定な状態に置かれたのはとてもつらいものでした。  でも、事件の日に血の付いた前川さんを見たと話した人が、その日に見たというテレビ番組が放送されたのは実は事件の一週間後だったという証拠がこの前の再審で初めて出てきたと聞きました。裁判所の判断がころころ変わったのは、警察が証拠をちゃんと得ていなかったからだということが分かり、私は、前川さんを犯人にでっち上げた警察も、前川さんが犯人じゃない証拠があるのに隠した検察も、本当にひどいと思いました。私たちは、今まで罪のない前川さんを恨んでいたんだと思って、とても苦しく、申し訳ない気持ちになりました。  最初から証拠が出ていれば、一番初めの福井の裁判所で前川さんは無罪になって、真犯人を捕まえることができたかもしれません。無実の前川さんを犠牲にして真犯人を捜そうとしなかった警察、検察は絶対に許せません。そして、隠していた証拠がせめて第一次の再審でちゃんと出ていれば、二〇一一年には前川さんが無罪になって、このときに真犯人を捜し出せたかもしれません。このときであれば、母もまだ認知症になる前でしたから、真実を理解することができたでしょう。  私は、もう父も亡くなり、母も認知症になって施設で暮らしているので、この事件のことを話せる人間が私だけになってしまいました。私は、前川さんが無罪になったことは本当によかったと思っています。でも、妹が殺されたことを忘れないでほしい、事件のことを忘れないでほしい。  私が望むことは、もう二度と前川さんのように無実なのに長い間犯人扱いされる人を出さないために、証拠を全部出して、裁判をやり直すと一度決まってから、検察が文句を付けないで早く真実にたどり着くことです。警察も検察も、無実の人ではなく真犯人をちゃんと捜し出して処罰してください。  再審になると、元々の裁判が終わった後も被害者のプライバシーや私生活が何度もニュースで出たりするから、私たちを守るために、再審のルールを変えるのはよくないという人がいると聞きました。私はそうは思いません。  私だって、再審のニュースで妹のことを思い出してつらくなったり、自分の住所が知られたりするのはもちろん嫌です。でも、テレビ番組の放送日が一週間後だという証拠が出ても、誰のプライバシーとも関係ないじゃないですか。ちゃんと証拠を出して真実を明らかにする方がもうずっと大事です。  冤罪の被害者と犯罪の被害者は敵同士なのではありません。前川さんと私は二人とも同じ被害者なんです。前川さんと初めて喫茶店で話したとき、お互いのことが分かり合えると思いました。前川さんは、無罪になってからもいろいろ言われて苦労しているようです。私は心から応援したいと思っています。  私は、法律の難しいことは分かりません。でも、無実の人を有罪にしたままで、真犯人も捜さずに何十年も過ぎていくことをそれでいいと思う人はいないでしょう。それは、被害者や遺族にとっても耐えられないことです。  証拠をちゃんと出して、すぐにやり直しの裁判をして、前川さんのような人はすぐに無罪にして、真犯人をちゃんと見付けて処罰をする法律を作ってください。よろしくお願いします。  今日は本当にありがとうございました。

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