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佐々木一成 ·九州大学副学長・水素エネルギー国際研究センター長

衆議院経済産業委員会(2024-03-29)での発言

第213回国会 ·第第6号号 ·5,674字
○佐々木参考人 九州大学の佐々木です。  本日は、貴重な機会をいただき、私の方から、「水素社会推進法への期待」と題しまして、この資料を使いまして御説明したいと思います。  私は、三十五年間、水素エネルギーの研究、教育に携わってまいりました。さらに、総合資源エネルギー調査会の水素・アンモニア政策小委員会と脱炭素燃料政策小委員会の委員長も務めさせていただいております。九州大学では大学を挙げてこの水素エネルギーに取り組んでおり、それらの経験も踏まえて御説明申し上げたいと思います。  二ページ目を御覧ください。  これまで、石炭から石油、そして天然ガスに燃料がシフトしてまいりました。ですが、天然ガスですら炭素を含む化石資源でございますので、使ってもCO2を出さない、いわゆる脱炭素燃料を使うことが重要になってまいります。それが、水素や水素キャリアのアンモニアということになります。  ただ、その供給網、いわゆるサプライチェーンをつくるのには、十年、二十年の年月がかかります。分かりやすい例が天然ガスの輸入でございますけれども、それが始まったのが一九六九年でございましたけれども、各御家庭に都市ガスとして供給されるまでに十五年から二十年かかったということがございます。ですので、本法案では低炭素水素等と書かれておりますけれども、水素などの脱炭素燃料が社会全体に使えるようになるまでには、同程度の時間がかかると思われます。まさに、国を挙げてエネルギー転換を着実に進めていく必要がございます。  三ページ目を御覧ください。  脱炭素イノベーションに向けた方向性が二〇一八年の資料に書かれておりますけれども、表の左側に書かれておりますとおり、足し合わせますと、我が国の年間CO2の排出は約十一億トン、当時でございますけれども、その約半分弱が発電時に出る電力由来でございます。再生可能エネルギーを増やし、安全性が確認された原子力発電所を再稼働させたとしても、出力調整のために必要な火力発電は、水素発電で脱炭素することができます。  また、電力部門以外からのCO2排出も大きな課題でございます。運輸、産業、民生の各部門からのCO2排出は日本の全体の半分強でございますけれども、水素やアンモニアが脱炭素燃料や原料として使うことができます。つまり、低炭素水素等は、電力と非電力の両方のカーボンニュートラルに貢献できるということになります。  御存じのとおり、電力は送電網が国内の隅々まで行き渡っておりますけれども、この低炭素水素につきましては供給網はまだございません。本法律案は、まさにその供給網、サプライチェーンづくりを後押しするようなものでございます。  四ページ目を御覧ください。右上にページ数がついております。  技術開発におきましても、水素の位置づけや重要性は認識されてまいりました。これは二〇二〇年の革新的環境イノベーション戦略の概要をまとめた資料でございますけれども、まず、左上にありますように、国内の再エネの利用拡大、これは、多くの国民、そしてここにおられる各党の思いでもあると思います。  しかし、この再エネ電力はまさに変動が激しく、電力系統に入れられない地域や時間帯が増えてきております。私がおります九州でございますけれども、九州のみならず、北海道や東北などの地方圏でも余る再エネが出てきております。それらのエネルギーを捨てるのではなく、水の電気分解で水素にすれば電化が難しい燃料や原料に使える、これが水素の大きな価値でございます。  二つ目でございますけれども、海外で、再エネ電力が安い地域が増えてきております。中東、オーストラリア、北米、チリなどの南米でございますけれども、これらの地域から送電線で再エネ電力を日本まで運んでくるわけにはまいりません。右上にありますように、海外の再エネ電力から水素を作れれば、再エネを船で世界中から日本に運んでくることが可能になります。特に大都市圏の脱炭素化に期待されております。  つまり、水素の大きな価値というのは、国内の再エネをより使いやすくする、そして、世界中の再エネを水素の形で日本に持ってこれるということが言えると思います。  三点目でございますけれども、CO2というごみを捨てられない時代になってまいりました。このCO2を地中に埋めるのが、併せて御審議いただいておりますCCS、カーボン・キャプチャー・アンド・ストレージでございますけれども、CO2を地中に埋めずに、回収して炭素源として使うということもできます。例えばSAFと言われているジェット燃料などの炭化水素燃料を作るときにも、水素が必要になってまいります。  このように、水素は、脱炭素社会の電力、燃料、原料、これを賄うまさに戦略物資と言えると思います。個人的には、GXを支える戦略技術である水素は、DX、デジタルイノベーションを支える戦略技術である半導体にも相当するものだと考えております。  五ページ目を御覧ください。  カーボンニュートラルに向けて、包括的な取組が必要になってまいります。その真ん中下の図に書いておりますように、1の電力の省エネ、2の電源の脱炭素化、3の電化の促進、4の燃料の省エネ、そして5の脱炭素燃料への転換が大事な方向性と言えると思います。水素やアンモニアなどの低炭素水素等は、2の電源の脱炭素化と5の脱炭素燃料への転換、これに大きく貢献するものでございます。  六ページ目を御覧ください。  上側に描かれておりますけれども、水素、アンモニアなどを入れていくことによって、電化が難しい産業部門や運輸部門などの、まさに非電力分野の脱炭素が視野に入ってまいります。  電力では、再エネを増やしてからも必ず残る火力発電でございますけれども、これの燃料を脱炭素燃料である水素、アンモニアに転換していくことで、電力の脱炭素化が可能になります。  資料の一番下に書いておりますけれども、我が国は、二〇三〇年に電源構成の約一%、二〇五〇年には一〇%を水素やアンモニアでの発電に置き換えていくことを掲げております。二〇五〇年には水素を年間二千万トンということでございますけれども、これは、熱量換算いたしますと、ちょうど我々が今メインで使っております天然ガスの約五千万トンぐらいに相当します。昨年の天然ガスの輸入が約六千六百万トンということでございますので、二〇五〇年にはこの脱炭素、低炭素水素等が天然ガスと同じぐらい使われるという世界になるというのがこの目標でございます。  七ページ目を御覧ください。  ちょうど石油ショックが起こった約半世紀前頃から、新エネルギー技術の技術開発を日本はまさにぶれずに着実に進めてまいりました。日本が強い分野でございます。  まずは、効率が低かったエンジンやタービンを効率が高い燃料電池に変えていく研究開発が鋭意進められ、御存じのとおり、家庭用の燃料電池、エネファームや燃料電池自動車などが実用化されたものでございます。  最近は、使っても出てくるものは水だけという水素の大きな価値が高く評価されまして、水素エンジンや水素タービンの開発も着実に進められているところでございます。石炭火力へのアンモニアの混焼にとどまらず、アンモニアの専焼を可能にするタービン技術などの研究開発や実証も現在進められているところでございます。  八ページ目を御覧ください。  CO2を出さない水素循環の社会をつくれるのが、この水素の価値でございます。ただし、他方、環境に優しくても、値段が高いと皆さんに使っていただけないというのがエネルギーでございます。水素などの脱炭素燃料はやはりまだ高いという課題が正直ございます。一立方メートルの水素が大体百円ぐらいで、セダンタイプのハイブリッド車と水素燃料電池自動車の燃料代が同じぐらいになるということで、水素で走る乗用車が実用化しているということであります。  今後、二〇二〇年代には水素で走るトラックやバスなどの商用車、そして二〇三〇年には水素発電が始まる予定です。さらに、化学工業や製鉄などの脱炭素化が難しい産業分野で、まさに脱炭素燃料や原料が今後必要になってまいります。  本法律案は、脱炭素燃料、原料の本格導入を包括的に後押しする、まさに歴史に残る画期的な法律と言えると思います。  九ページ目を御覧ください。  社会実装に向けた取組も鋭意進められております。例えば、昨年開催されましたジャパンモビリティーショー、私も伺いましたけれども、水素で走るトラック、海外勢の水素燃料電池自動車、首都圏で実証されている水素列車が展示されておりました。  十ページ目を御覧ください。  字が細かい資料で大変恐縮ですけれども、我が国が水素社会構築への取組を加速するために、水素基本戦略を昨年改定したところでございます。  二〇四〇年の目標を掲げたこと、そして水素で、技術開発で勝ってビジネスでも勝つことを明言しております。作る、運ぶ、使うための技術開発を着実に進めるとともに、左下に書いておりますように、大規模サプライチェーンをきっちりつくっていくということが基本戦略に明記されております。  他方、国際競争は激化しております。右下に書かれておりますけれども、アメリカでは、御存じのとおり、インフレ抑制法の下で五十兆円規模の予算を用意されておるということは御存じだと思いますし、水素を含む戦略分野でその予算を確保しているところでございます。欧州も、グリーンディールとして、グリーン投資基金などを設立して兆円単位の予算を考えています。カーボンニュートラルに向けて日本が世界と伍していく非常に大事なタイミングで、この法律がまさに出されたということになります。  十一ページ目を御覧ください。  水素関連の小委員会の中では、約二年前から我が国のあるべき制度について包括的な議論を進めてまいりました。その一つが、価格差に着目した支援でございます。  真ん中の下ぐらいに書かれておりますけれども、低炭素水素等を作る際にどの程度CO2が排出されたかを意味する、いわゆるカーボンインテンシティー、炭素集約度を国際的な指標といたしまして低炭素水素等を入れていくことが明記されておるところであります。海外でも、ドイツ、イギリス、EUで同等の制度がスタートしておりますし、フランスでも検討されていると伺っております。  二つ目でございますけれども、水素やアンモニアなどの供給網を、供給側がインフラをつくっても、利用をする側が途中で使うのをやめてしまうと、国全体といたしましては無駄な投資になってしまいます。ですので、供給者と利用者が連名で一体的な事業計画を作っていただくこと、これが大事なポイントになってまいります。これによって、いわゆる鶏と卵のどっちが先かという議論を超えて、低炭素水素を着実に皆さんで力を合わせて社会に入れていけるようになると思います。  さらに、三点目のポイントといたしまして、二〇三〇年までの供給を始めていただくとともに、例えば、十五年間の国の支援の後に十年間自立して供給を続けていただくということを考えております。つまり、今年、二〇二四年に法律ができて、これから制度が始まりますと、我が国がカーボンニュートラルを達成する二〇五〇年までの脱炭素燃料の導入のレールを引く、日本のエネルギーの市場の歴史の中でも非常に重要な法律になると考えております。  十二ページ目に、本法律の大事な点を私なりにまとめてみました。  この法律は、二〇五〇年までの脱炭素燃料普及のレールをきっちり引き、事業者や地域の背中を押す法律だと言えます。値差支援で脱炭素燃料を使いやすくし、拠点整備によってコンビナート等での地域の雇用確保や産業の脱炭素転換を後押しすることができます。燃料や原料のグリーン化を進めることでカーボンニュートラルな製品を世界中に輸出しやすくなります。四番目が、国が保安を主導するところです。安全、安心を自治体任せにせず、国がきっちり汗をかくというところがポイントと考えております。  もちろん、法律制定後も不断の努力が必要です。国内の再エネをより使いやすくできれば、国産水素が増え、エネルギー自給率も上げることができます。さらに、国際競争が激化する中で、スピード感とスケール感、これを持って進めていく必要がございます。さらに、安全はもちろん、安心のための社会受容性向上を不断に進めることが、これはあらゆるエネルギー分野で重要でございますし、低炭素水素等も同じでございます。  十三ページ目に、一例といたしまして、社会受容性向上への私どもの九州大学の取組を示させていただきました。九州大学の伊都キャンパスには二〇〇五年から水素ステーションがあり、多くの方に水素自動車に乗っていただいたり、水素ステーションの外も中も全て見ていただいております。我々は水素キャンパスと呼んでおりますけれども、お時間がありましたら是非御視察いただければ幸いでございます。  最後の十四ページ目にありますように、時間は正直かかりますけれども、低炭素水素は脱炭素社会を回せる燃料になります。エネルギーや環境、経済社会の在り方も大きく変えるポテンシャルがございます。他方、低コスト化や、長期にわたる技術開発や普及戦略、そして社会受容性も重要でございます。  水素関連の小委員会、審議会では、そのような議論をオープンに行ってまいりました。詳細はユーチューブ動画で全て見られるようになっております。是非、お時間があったら御覧いただければ幸いでございます。  私からは以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

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