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河西宏一 ·公明党

衆議院憲法審査会(2024-05-09)での発言

第213回国会 ·第第5号号 ·2,222字
○河西委員 公明党の河西宏一でございます。  本日は、発言の機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。  我が国における東日本大震災や新型コロナウイルスの世界的蔓延への対応では、ほぼ全ての行政分野及び国民生活万般にわたる多くの立法措置が必要であったこと、また、さらに、議員立法、とりわけ衆法によって少なからず法律が制定されたことなどの事実を踏まえまして、いわゆる選挙困難事態に際しては、国会が両院同時活動を行い、立法府として十分な行政監視機能を担う中において、内閣が適切に行政権を行使し、国民の生命財産を守る対応に当たるべきであり、そのためには議員任期延長が可能な法整備が必要だとこれまで申し上げてまいりました。  その上で、本日は、視点を立法府から国民の意識に移して、今世紀に入って以降の憲法改正に対する賛否の推移を俯瞰しつつ、意見を申し上げたいと思います。  東京大学大学院の境家史郎教授がおっしゃるように、基本的には何らかの点で憲法改正が必要と考える有権者と憲法改正は必要ないと考える有権者の割合は、平時はほぼ同程度で拮抗してきたわけでありますけれども、本日お配りの資料のグラフに示されました朝日、読売、加えまして毎日新聞の全国紙三社の世論調査によれば、近年、その意識に変化が起きているわけでございます。その変化は、世論調査全体の内容や設問の文言によって調査値に差が出ることを差し引いたとしても、グラフから読み取れるほど明確であります。  まず、変化のきっかけの一つは、二〇一一年の東日本大震災です。発災以降、憲法改正に賛成の層が一時五〇%を超える水準を示し、一方の反対層は、これに対照的な動きを見せて、一時三〇%程度まで下落をいたしました。  もう一つのきっかけは、二〇二〇年以降の新型コロナウイルスの世界的蔓延であります。これは全国各地が有事の現場となったためと考えられますが、世論の変化は東日本大震災にも増して顕著であります。憲法改正の賛否は、パンデミックが起きるまでの数年は、四〇%から五〇%あたりで拮抗、あるいは反対が上回っていたわけでありますけれども、コロナ禍に直面した二〇二〇年以降は、おおむね憲法改正に賛成が反対を上回る水準まで上昇をしております。  その上で、立法府に身を置く者として申し上げたい点は、憲法改正に対する世論について、賛否の比較や高低のみならず、現実を目の前に、国民の皆様の意識に変化が起きていること自体が重要であるという点でございます。やはり、戦後最大の危機とも言われた大規模な緊急事態に近年直面し、数多くの重要な法整備を迫られた立法府がこの変化にどう応えていくのか、具体的な行動が問われていると考えます。  次に、選挙困難事態について、改めて概念的に整理をさせていただきたいと思います。  近時の学説においては、緊急事態の概念について、より精緻な議論が行われていると承知をしております。  早稲田大学の愛敬浩二教授は、平時の統治機構をもってしては対処できない程度の緊急事態のみを指すものを非常事態として分類し、一方で、緊急事態は、平時の法制度、法運用とは異なる対応を必要とする概念を広く含むとし、緊急事態に対処するための特別な立法や法運用が行われるとしても、平時の統治機構の下でそれが行われ、立憲的統制が十分に機能するのであれば、それは緊急事態であっても非常事態ではないと整理をされております。  また、東北大学の奥村公輔教授は、非常事態を、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない事態、一方、緊急事態を、テロの多発や感染症の蔓延など、平時の統治機構をもって対処できる事態と整理し、その際の国家緊急権を、行政権が立憲的な憲法秩序を維持しながら平時よりも強い措置を取る権限とされております。  両先生方の整理の仕方には若干の差がございますけれども、いずれも、平時の統治機構による対処が可能か否かを基準に非常事態と緊急事態を区別をされております。  この別でいえば、当審査会で議論をされてまいりました選挙困難事態は、平時の統治機構をもって対処可能であり、立憲的な憲法秩序を維持しながら対応すべき緊急事態の一つとして整理され、あくまでも十分な行政監視機能の確保を目的とする議員任期延長は、人権の保障や権力分立、すなわち立憲的な憲法秩序の維持に資するものであり、立憲民主党の皆様の方向性とも決して相反するものではないと考えております。  一方、緊急政令や緊急財政処分につきましては、この別でいえば、議員任期の延長をしてもなお国会の立法機能の維持が困難であり、権力分立による平時の統治機構ではもはや対処不可能ないわゆる非常事態を念頭に議論されるべきと考え、これまで我が党の北側幹事が申し上げてきましたように、議員任期延長とは区別して発議すべき事柄と考えております。  以上、本日は、世論の変化と、また、選挙困難事態に係る概念上の整理について申し上げましたが、これらの観点を踏まえましても、少なくとも、選挙困難事態を想定した議員任期の延長に係る憲法改正の条文案について、たたき台を基に議論すべき段階を迎えていることは明らかでございまして、今後の更なる建設的な議論を期待申し上げ、私の意見表明とさせていただきます。  以上でございます。

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