○山本参考人 山本と申します。
私は、第三十三次地方制度調査会、以下地制調というふうに申しますが、地制調の専門小委員会の委員長を務めました。第三十三次地制調は、総理からの諮問を受けまして、二〇二二年一月に発足しました。地制調の会長は、市川晃住友林業会長が務められました。以後約二年間、四回の総会と二十一回に及ぶ専門小委員会が行われ、二〇二三年十二月に総理に答申を提出いたしました。本日は、今回の法案に関連する答申の内容や地制調での議論を、取りまとめに当たりました私なりの観点から御説明をしたいと思います。
地制調の答申は、ポストコロナの経済社会に対応する地方制度について、大きく三点を取り上げています。順次御説明をさせていただきます。
第一点は、DXへの対応です。
すなわち、地方公共団体がデジタル技術を活用して住民等の参画を強化すること、また、人口減少、高齢化が急速に進む中で地域の広範な課題にきめ細かく対応することを目指す体制づくりです。答申では、具体的に、第一に、デジタル技術の活用について国と地方公共団体との間の連携協力を従来以上に緊密に行うこと、第二に、地方公共団体において情報セキュリティー対策がしっかり取られるようにすること、第三に、地方税について既に活用されているeLTAXを各地方公共団体の判断により公金の納付に幅広く活用できるようにすること等を提言いたしました。
大きな第二点ですが、地域の多様な主体との連携、協働です。
すなわち、コミュニティー組織、NPO、企業等の多様な主体が連携、協働し地域の課題に取り組むための枠組み、これをプラットフォームと言っておりますけれども、プラットフォームを市町村が支援することです。地制調の答申では、民主的で透明性の高いプラットフォームの運営が行われるということを前提に、市町村がそれぞれの判断によりプラットフォームの法的な位置づけを明確にし、その活動環境を整備できるようにするということを提言しております。
今回の法案は、以上の第一点、第二点を踏まえた内容を盛り込んでいると考えております。
第三点ですけれども、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態への対応です。この点につきましては、地制調での議論を基本的な考え方から御説明したいと思います。
まず、現実の課題として、それぞれの政策分野に関する個別法、例えば新型インフルエンザ特措法等ですが、こういった個別法の制定、改正の議論や運用の中で想定されていなかった事態が過去の災害やあるいは新型コロナの蔓延のときに発生したということが地制調の場で確認をされました。現在、社会においてリスクの要因はますます増え、各分野の専門家ですら事態の完全な予測はますます難しくなっています。現在でもこういった個別法が想定しない事態が発生する可能性は否定できません。地制調ではこうした一般的な認識を基に議論いたしました。
これに対しましては、対応すべき事態を具体的に示せないかという意見もありました。しかし、現在具体的に示すことができる事態には個別法を制定又は改正して対応するべきことになります。つまり、このように議論いたしますと問題が入れ替わってしまうという難しさがございました。
とはいえ、個別法を制定又は改正せずに重大な事態に対応することには限界があるという意見も示されました。これはそのとおりでして、したがって、地制調では個別法の制定や改正を行うまで応急的に対応するための一般的な制度を考えたということでございます。
次に、地方自治、地方分権との関係です。
地制調では、地方公共団体の自主性、自立性を尊重し地方分権を推進するという基本的な考え方は変えないということを前提に議論しました。その上で、個別法が想定しない事態への応急対応のために、現在地方自治法が定めている国の関与に関する一般的な制度に特例を加える必要があるという方向になりました。国の関与に関する一般的な制度は、元々二〇〇〇年に施行されました。しかし、その後、特に近時、規模や態様の点から、地方公共団体のみならず、国も責任を負って対応しなければ克服できないような重大な事態がしばしば発生しています。そのため特例を加えることの検討が必要になったと言えるかと思います。
現在の制度によりますと、個別法が想定しない事態に対処するための国の関与としては、地方公共団体に対する国の技術的助言、勧告までしかできません。国が助言、勧告等をしても、最終的な意思決定を行う権限と責任は全面的に地方公共団体にあります。国は地方公共団体に対し明確な権限を持たないだけでなく、あれこれ通知しても明確には国は責任を負わないということになります。そこで、地制調では、個別法が想定しない事態への応急対応のために国が地方公共団体に対し指示を行う権限を定め、その範囲で国が明確に責任を負うという制度を議論いたしました。念のために申しますと、こうした指示の制度を設けましても、国が責任を負うのはあくまで指示の範囲に限定されます。それだけで地方公共団体が住民の安全を守る基本的な事務と責任が国に移るというわけではありません。
そういたしますと、地方自治、地方分権の基本的な考え方を守るために重要なことは、指示の要件と手続をしっかりと限定するということです。この点について地制調ではかなり念入りに議論いたしました。
今回の法案は指示の要件についてこう言っております。大規模な災害、感染症の蔓延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該国民の安全に重大な影響を及ぼす事態の規模及び態様、事態に係る地域の状況その他の事態に関する状況を勘案して生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するため特に必要がある場合に、必要な限度においてと言っております。地制調での議論を酌み、要件を最大限に限定しているのではないかと受け止めています。
次に、指示を行う場合の手続です。地制調でかなり議論しましたのは、国会との関係と地方公共団体との関係です。
国会との関係につきましては、新型インフルエンザ特措法上の緊急事態宣言のように、個別法が危険性の段階を一般的に確定させる制度を定めているという場合、その危険性の確定の際に国会報告や国会承認が必要とされるという例があります。しかし、個別法が想定しない事態に応急対応するための指示について国会報告や国会承認を求めるといたしますと、個々の場合についてこういうことを求めますと指示が行われる都度にならざるを得ません。地制調では、それは若干機動性に欠けるという議論がされました。
しかしながら、応急の指示が行われた後で、個別法の制定や改正に関する国会での議論につなげる手続は重要です。地制調の答申では、指示が行われた場合に各府省において検証する必要があり、その検証が個別法に関する議論の契機となることが期待されるという基本的な考え方を示しております。具体的な手続を示さなかった理由は、こういったプロセスのタイミングや態様が事態や状況により様々になるということ、さらに、国会での審議手続に関わる点については制度化が難しいのではないかといったことがございました。
指示の手続に関するもう一つの問題は、地方公共団体との関係です。
地制調の答申は、基本的な考え方として、国と地方公共団体との間の情報共有とコミュニケーションを重視しています。それは指示の場合も同じでありまして、指示を的確に行うために必要なことでもあります。ただ、具体的にどのように情報共有とコミュニケーションの手続を取るかという点は、どの程度の時間があるかなど、事態や状況によります。そのため、地制調では、具体的に参加する主体を特定し、特定の手続を必ず取るということを求めるような制度化は難しいのではないかという議論をいたしました。今回の法案では、国は指示に先立ち地方公共団体に対する資料又は意見の提出の求めその他の適切な措置を講ずるように努めなければならないと定めております。これは、国と地方公共団体との間の情報共有、コミュニケーションについて可能な範囲で制度化をするものというふうに受け止めております。
私からは以上です。どうもありがとうございました。(拍手)
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