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西沢和彦 ·株式会社日本総合研究所理事

衆議院予算委員会公聴会(2024-02-29)での発言

第213回国会 ·第第1号号 ·6,763字
○西沢公述人 日本総合研究所の西沢です。  本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。  これまで少子化対策、子供、子育て支援について推進されてきた皆様には大変敬意を表したいと思います。  その上で、本日の私の話は、例になっています支援金について反対の立場、理論的には正当化できず、鈴木さんが言われたように撤回すべきだという立場からお話を進めていきたいと思います。  まず、理由の一つは、保険者自治の侵害ですね。これは、お手元、参考資料の二ページ目にあります。  公的医療保険の原理原則を、先達の研究も踏まえながら私なりに整理してみますと、公的医療保険とは、一つは、保険、インシュアランスとして職域あるいは地域において保険集団を組成する、これは自発的なものです、保険集団を組成して、国や地方自治体の行政から一線を画して、民主主義的に、自治的に運営していく、これが医療保険というふうに整理できると思います。ですから、例えば我が国が財政破綻したとしても、健康保険組合は残るんですね、自治的に運営できているので。  そのように一線を画すところに子供の、子育て支援の財源を乗せるというのは、私は自治の侵害だと思う。それは、五百円だからいいという話ではありません。例えば、我が国の領土が他国から侵略されて、それは一平米ならいいのか、そんなことはないはずです。ここを私は強調したい。  先ほど、健康保険組合の雑誌、高久先生から提出されました、四ページ目にあります赤囲みの中に、健保連と健康保険組合は実務上協力すると書いてある。実務上というのは、国税庁のように徴収して国に納めるだけというニュアンスですよね。でも、実際、法案はどうでしょうか。納税義務者になっていませんか。例えば、保険者が滞納すれば、差し押さえられるのは保険者の資産じゃないですか。ですので、この実務上と書いてあるところに健康保険組合や保険者の苦渋が私は出ていると思うんですね。どうでしょうか。  教室でいじめられている子がいて、いじめられていますかと聞いて、いじめられていませんと答えますよね。いじめられている子は、いじめられていると言えないですよね。そういうことですよ。本当に保険者、健保連が望んでやっているのかということですよ。そこを更に調べるのが皆さんの役割だと私は思います。  この健康保険の主たる財源である健康保険料というのは、負担と受益がリンクするからこそ、負担に納得感が伴い、そして給付に対して厳しいチェックの目が向けられます。これが緊張関係です。自分で払っているから、それは、私、大病をしました、保険があってよかったな、だから保険料を払いましょうということですよね。保険負担料が重いから給付はちょっと我慢しようよというのが健康保険です。この緊張関係をやはり崩していってはいけないんですね。崩れてきてしまっているんですけれども、これが健康保険料。  自ら保険料率の決定に主体的に参加しているからこそ、安定した財源が得られる。安定財源というのはそういうことですよね、安定しているというのは。負担する人が決定に主体的に参加しているからこそ財源が安定するという、これが保険料ですよ。  ただし、この健康保険料というのは修正が加えられています。それは、社会保険であるためなんですね。より多くの人を包摂するには、若干所得再分配を組み込まないと、多くの人を包摂できません。そのためにサラリーマンは比例料率になっています。国民健康保険も所得割部分があります。そうすることによって、多くの人を包摂しようという。  ですので、社会保険料にとって所得再分配は第一目的ではなくて、皆保険、社会保険を成立するための役割なんですね。ですから、社会保険料の所得再分配というのは非常に限定的です。例えばサラリーマンですと、年収二千万ちょっとで上限に達するわけですよね。また、一事業所の賃金にしかかからない。副業をしていても、その副業は勘案されないんですよね。また、不動産収入や金融資産所得があっても、それは勘案されない。限定的な所得再分配です。  こうした限定的な所得再分配機能しかない社会保険料を子供、子育て対策、これは所得再分配政策ですよね、に用いると、社会保険料のこの特徴が欠点として現れることになるんですよね。ですから、本来は租税でやった方が公平だし、経済活動に対しても中立的であるということです。この点は後でまた後半お話ししたいと思います。これが一番目です。青臭い議論と言われるかもしれませんけれども、それを語るのが研究者なので。  二番目に、医療保険制度にマイナスの影響を与えるということです。  三ページ目に、私が作った、医療保険制度全体のキャッシュフローが書いてあります。御案内のとおり、非常に複雑です。一番上の協会けんぽのところを見ますと、給付が六・七兆円に対して、支援金等、これは後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、介護納付金を合計して四・七兆円ある。その一段下の組合健保については、むしろ支援金等の方が給付より多くなっている。これは、今後、高齢化率が一段と進行するに伴ってこのウェートが、支援金等の方が大きくなっていくことは確実です。  子供、子育て支援金をここに更に乗っけるということは、やはり医療保険財政を圧迫することになる。医療保険財政には、一番右にその他として保健事業が入っています。これは特定健診とか予防接種の費用、大体〇・四兆円とか〇・六兆円。これに匹敵するものが子供、子育て支援金として出ていくことになります。  また、組合健保に関しては、よく大企業健保と言われるんですけれども、実際には、中小企業の集まりである総合健保というのは結構あるんですね。ですので、決して大企業健保ではなくて、料率は今はもう一〇%を超えているところもあるわけです。こうした医療保険財政の圧迫につながってきます。  次のページですけれども、昔はシンプルだったんですね、老人保健制度が導入されるまでは。老人保健制度が一九八三年に導入されて以降、退職者医療制度が翌年入り、また二〇〇〇年には介護保険が入って介護納付金が導入され、二〇〇八年には老人保健が後期高齢者医療制度に姿を変え、またそのときに前期高齢者納付金が入るということが繰り返されてきたわけであり、さらに、五ページにありますように、子ども・子育て拠出金というのも厚生年金保険料に上乗せされています。このように、保険料というところの仕組みを使ってどんどんどんどん所得再分配の原資が調達されてきたわけです。  敷衍しますと、今度導入されようとしているのが支援金で、既に入っているのが拠出金。支援金の導入理由の一つは、既存の社会保険は対象者が狭いから。でも、子ども・子育て拠出金は年金なので狭いんですよね。であれば、本来、子ども・子育て拠出金は廃止して支援金に統合されなければ理屈に合わないです。取れるものは取っておこうということなんでしょうけれども、事ほどさように、このように乗せてこられている。  その根源は、六ページ目に、これは私の言葉ではなくて、私が尊敬する研究者の方の言葉ですけれども、現在の複雑な制度構築と入り組んだ財政の姿になってしまったのは、ひとえに、国の一般会計の予算制約の下、本来の各保険集団の枠を超えた保険料財源の拠出を通じた安易な財政調整が行われた結果であると。田中先生が言われているのは二〇二一年五月の雑誌で、子供、子育て支援金が入る前ですけれども、田中先生からしてみれば、何ということだと。済みません、田中先生、何ということだと。もう少しきちんと税に向き合うべきでないかということが言えると思います、私は。  七ページ目には、もうこれまでの先生方、公述人の方々のお話にもありましたけれども、やはり社会保険料というのは現役賃金課税なんですよね、専ら。どうしてもそうなってしまう。再分配が少ないです。比例税率ですから、サラリーマンは。所得税であれば、累進課税になるし、課税最低限があるけれども、結構、社会保険料というのは、低い収入の人からかかってくる割に、年収、例えば年金だと一千万、健康保険だと二千万ちょっとで頭打ちになってしまって、やはり逆進的ですよ。年収の低い現役世代にとってみれば、やはり所得税、住民税よりも社会保険料の方が重いです。そこに更にかけていいのかという話です。  これは研究者の中ではほぼコンセンサスと言っていいと思いますけれども、こうして社会保険料に逃げてきた結果、社会保険料という名の現役賃金課税が上昇し、それが非正規雇用を増やしているのではないかというのがおおむねコンセンサスと考えていいのではないかと思います。  今日は、今から後半、国民健康保険のお話をしたいと思います。  これまでの国会の中で、衆議院予算委員会で私の名前がよく出てきてどきどきしていたんですけれども、それはあくまでサラリーマンの話が多かったんですよね。大体サラリーマンは、恐らく支援金というのは、私の計算だと〇・三一%ぐらいですよ、料率。そんな感じです。年収一千万だと三万一千円、それを労使折半するという、そんな印象で、多分そんなに大きく違わないと思う。  問題は国民健康保険です。仮に年収一千万円で、年間三万一千円払っても、払える人はいいんですよ。払って、会社も半分負担してくれる人はいい。会社も賃下げしない会社に勤めてくれる人はいいけれども、では、そうではない人はどうするかというのが国民健康保険の問題。これは、医療保険制度が抱える重要な問題の一つでもあります。  国民健康保険というのは、ちょっとページが入り繰りして恐縮ですけれども、また前に後で戻っていただきますけれども、十ページに書いてありますが、被用者という方が約五百万世帯います。八百万世帯弱が非就業ですので、年金受給者の方々ですよね。ですので、国民健康保険というのは、被用者、多分イメージすると正規雇用になっていないですよね、就業者の方々や年金受給者の方々が入っている、伝統的自営の方はもう少ない、こういう制度です。  この人たちは、今回、子供、子育て支援金が入るとどういう負担になるのかということですよ。それを考えるために、今の国民健康保険料の構造を見ていきたいと思います。  また八ページに戻っていただきますと、収入が百万から三百万まで取ってあります。この人の国民健康保険料を私の住んでいる自治体で計算してみました。青いところが定額部分、あるいは応益とも言われますが、部分ですね。黄色いところが所得比例部分。大体年収百五十万円ぐらいまでは減免が受けられますが、それを超えると減免が受けられない、私の住んでいる自治体では。年収三百万ぐらいの人は、二十数万円の国民健康保険料です。こうなっているわけですね。  九ページ目に、今御覧いただいた国民健康保険料を収入で割ってみました。料率換算してみました。それが九ページ目の黒い折れ線です。大体七%を超えるところで横ばいになっています。七%、これは、協会けんぽの本人負担は五%ですから、それを二%ちょっと上回っているわけです。  ですので、医療保険制度に、結局、子供、子育て支援金は健康保険料の言ってみれば写し絵になると思うんですよね。写し絵になったときに、こうした制度間格差を引き継ぐ可能性があるわけです。  十ページ目はさっき御覧いただいて、十一ページ目を御覧いただくと、今度は国民健康保険に入っているもう一つのマジョリティーである年金受給者、六十五歳以上を想定していますけれども、の保険料は、同じ自治体であればどうなるかというのを計算してみたものがこちらです。  一見してお分かりになるように、ブルーの定額部分はかなり広く減免を受けています。これは、現役世代に比べて減免基準が寛容になっているからなんですね。そして、所得比例部分についても小さくなっている。なぜならば、旧ただし書所得、これはまだ現役で用いられているんですけれども、の計算をするときに、年金収入から公的年金等控除を引く、そして四十三万円を引くという計算方式であるために、公的年金等控除が手厚いことをもって所得割分が小さく済むわけです。  そして、改めて次の十二ページにまたそれを、黒い線は、先ほど御覧いただいた、私の住んでいる区にいる現役世代の、先ほどの折れ線の再掲です。七%を少し上回っている。年金受給者に関してはブルーの線で、年金収入で保険料を割っている。どうでしょうか。子供、子育て支援金というのは、広い世代から公平にお金を集めると言っていますけれども、これが公平かということですよ。私は、とてもそうは思えませんね。  その原因というのは、例えば十四ページ。今、社会保険というのは名寄せがされていないんですよね。ですから、例えば、月収八万七千円で二か所の事業所で働いていると、この人は厚生年金や協会けんぽに入れないんですよ。こういう社会保険制度のネックがあるわけです。ですから、本来はこういうものを正していかなければいけないわけですよね、完璧に。  であれば、私は、所得税、復興税のような所得税でもいいし、消費税でもいいし、相続税を掛け合わせたタックスミックスでもいいし、そうしたことにする方がこうした世代にとって公平であり、彼らが安定雇用を得るために重要だと思うわけです。  あと三分ありますので、市町村格差について、お手元、資料はないんですけれども、お話ししておきたいと思います。資料は、そうですね、十三ページ目を御覧ください。  今の国民健康保険料の体系というのは、医療分、後期高齢者支援金分、介護分の三つで構成されています。介護分は四十歳を超えたら払うんですけれども、さっきの計算は医療分と後期高齢者支援金分の二つです。  そして、例えば医療分は、旧ただし書所得掛けるa%プラスb掛ける人数、bは定額負担ですね、人数は世帯人数、そして、cというのは、ある市町村、ない市町村がありますけれども、一世帯当たりの定額負担、こういった構成になっています。これを、医療、後期高齢者支援金分、介護分、全部計算して出す。そして今回、子供、子育て支援金がここに加わってくる。四階建てになるわけです。  それで、a、b、c、d、e、f、g、h、iは、全部市町村ごとに違いますよ。後期高齢者も都道府県ごとに違う。子供、子育て支援金は、市町村に割り振る金額は、多分、一人当たり七百円ちょっとです。そこに国庫負担を入れたり都道府県負担を入れたりして、多分もっと減るわけです。そして、減免するので、また一人当たりが減ってくるわけです。それは多分、同じ収入、年収二百万の人でも、私の住んでいる自治体、あるいはほかに住んでいる自治体で金額が変わってきますよ、これは。  二〇〇八年四月に後期高齢者医療制度が導入されたとき、皆さん、大変だったことを思い出していただきたい。それは、市町村ごとにばらばらだった保険料が都道府県で統一されて、上がった人、下がった人が出てきて、高齢者いじめだということになったわけです。  ですから、本来、今後、国会審議を進めるのであれば、市町村ごと、収入ごと、世帯ごとの料率を出さないと、二〇二六年に導入したときに、同じことになりますよね。それは別に、皆さんが混乱するのはいいんですけれども、我々の生活が困ってしまうし、国民健康保険に入っている若い人たちにとって、もしかしたら重い負担になるかもしれない。  ですから、サラリーマンで払える人は、私はいいと思うんですよ、金額が話題になっていましたけれども。そうではなくて、サラリーマンになれなくて国民健康保険にやむなく入っている人たちの負担がどうなるか。その人たちが、多分これから結婚して子供を産もうというふうに思っているわけですよね。そこまでして、なぜ健康保険料に上乗せするのかという話ですよ。  それは、取りも直さず、田中先生が言われたように、一般会計の制約の下ということですけれども、私流に翻訳すれば、それは、政治家の先生方が国民向けに負担を説かないからだと思う。手間暇を惜しんでいるからこういうことになる。だから、私は、きちんと国民向けに説明すべきだと思います。  ちょっと言い過ぎたところもありましたけれども、以上です。ありがとうございました。(拍手)

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