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柴田明夫 ·株式会社資源・食糧問題研究所代表取締役

参議院農林水産委員会(2024-06-06)での発言

第213回国会 ·第第15号号 ·4,122字
○参考人(柴田明夫君) 今日は、この意見発表の場、いただきまして、大変ありがとうございます。  私は、このお手元の資料に沿って意見を述べさせていただきます。  本日申し上げたい点でありますけれども、現在起こっているこの食料価格の上昇というのは一過性の話ではなくて、価格体系全体が上方にシフトしてきていると、こういうふうに考えております。右側にシカゴの穀物相場の五十年の推移がありますけれども、左半分と右半分では価格体系が全然違ってきて、大きく上昇してきているということです。したがって、価格を一時的に抑えるということは余り根本解決にはならないというふうに見ています。なぜならば、背景には、足下は供給ショック、様々な供給コストの上昇があるからと見ております。  この過去二十年間のグレートモデレーションというか、低金利、低インフレの心地よい時代というのは、やはりロシア・ウクライナ戦争を契機に変わってしまったと。世界がもう分断される中で、あるいはコロナパンデミックによるサプライチェーンの寸断とか、こういうものもありまして、世界は今や価格大調整の時代に入ったと認識しております。このあらゆる資源、食料を含めた資源、それからサービス、人件費、コストが掛かる時代に入っております。高インフレ、高金利の時代かなと思っております。  二番目の点で、食料安全保障の定義として、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され云々とありますけれども、この確保が難しくなっていると見ております。食料というのは極めて地域限定的な資源であって、地産地消、これが基本であります。有事を考える前に、まずはこの平時の対応というところを見ていただきたいと思います。  ウクライナ・ロシア戦争ですけれども、これは、この食料危機の問題から、ロシアとかあるいは中国含めますと、あらゆる資源を保有していると、大きな出し手でもありまして、化学肥料を含めましてこういうものの供給が滞ってくる、あるいは友好国に優先されて供給されるということになりますと、単に食料危機ではなくて、農業生産危機、農業危機に至る可能性もあると。  中国は、こういう面でいち早く将来の食料不足に備えて、転ばぬ先のつえを五年先、十年先についていると。日本はどうも転ばぬ先のつえを後ろについているなという気がしてならないんですね。  グローバリゼーション下で経済合理的な考えを持てばいいということで、極限まで農業の外部化を進めてきた。すなわち、食料の輸入依存度、逆に言えば自給率でありますけれども、三七、八%まで落ちている。外部依存度は、これ、逆に言えば六割以上を外部に依存するという、こういう構図は非常に危ういということで、まさにその転換を図るべきだと。食料生産の増大、そして在庫、安心できるレベルへの在庫の引上げ、こういうところに向けて予算も技術も人も制度も集中させていただきたいと思います。  今申し上げた、次のページがその五十年間のグラフですが、相場つきが全然変わってしまったと。二〇〇七年、八年の頃はアグフレーションと言われまして、価格が、農産物インフレは長期化するというふうな見方がなされました。背景には、中国などの途上国の経済発展に伴う不可逆的な食生活の変化、すなわち肉の消費が増えていくと。肉が増えれば、これ乗数、七倍の乗数を掛けて穀物の需要の拡大につながるわけですね。そういう需要ショックが起きたと見ております。  価格が上がれば供給も増えて、需給が若干緩んで価格は落ち着くんですけれども、現状は、その後も、下がったとはいえ、昔の高値が安値に変わったという変わり方であります。ここにコロナパンデミックとかウクライナ戦争が起こったというわけであります。今回は、供給サイドのボトルネックがいろいろな分野で起こって上がっているというところで、たちが悪いなと思います。  次のページですね。  世界の食料生産、足下、二十八億トンを超えて過去最高なんですね。最高にもかかわらず、不安な要因がたくさんあるんです。生産以上に消費も増えてきている。で、在庫がじわりじわりと取り崩されてきている。過去、年間消費量に対して在庫が二か月を切る、一五%ぐらいまでなると、大きな世界的な食料危機が起こりました。七三年、私、学生時代の頃ですね。それから、二〇〇七年、八年、食料サミットの行われた、世界的な食料危機のところです。現在は二七%あって、十分じゃないかと思われますけれども、この半分以上は中国での在庫です。これを取り除くと非常に危ういことになります。  それから、消費が増えている背景は何かというと、肉の消費が増えている。半分ぐらいは家畜の餌として使われている。例えばトウモロコシの場合、十三億トン近い生産量ありますけれども、そのうちの六割、七億トン、七億六千万トンとかですね、これが餌に使われてきているということであります。  右側ですね。コストが上がっているという話で見ると、世界の農業市場というのは長期的に見て成長市場で、おいしい市場なんですね。ここに多国籍アグリビジネスの市場支配が高まっているということであります。  種と農薬で見ると、種の場合は、バイエル、コルテバ、ケムチャイナ、三社で半分ぐらいのシェアを持つんですね。それから、農薬にいきますと、四社で六割近いシェアを持つということであります。それで、表の方で、化学肥料、農業機械もこの大手の市場支配が進んでいる。大体その四割ぐらいのシェアを三社で持てば、価格は下がっていかないんですね。種の値段でも化学肥料の値段でも余り下がらないということで、これがまたコストアップにつながって、食料価格の上昇につながると。  次の四番目は、生産が増えた結果、国際貿易量も五億トンのレベルに増えてきています。しかし、安心ができない。プレーヤーが限られているということですね。トウモロコシでいえばアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、ウクライナですけれども、非常に不安定化してきています。一方で、輸入国は、中国が世界最大の輸入国となってきているということで、戦略物資化してもおかしくないということであります。  それから、緊急、非常事態、食料供給困難事態に備えて海外の農産物輸出国と仲よくしたらどうかというのもありますけれども、しかし、世界の穀物に限らず、食料全体の貿易金額、一兆三千三百億ドルとありますけれども、この市場の四割はフードメジャーあるいは穀物メジャーが握っていて、中身が非常に不透明であります。彼らはやはりもうかると思えばそちらに食料の輸出を向けるわけでありまして、日本を優先して供給してくれるという保証は全くありません。  次の五番目でありますけれども、食料だけではなくて、窒素、リン酸、カリ、これも、ロシア、中国、ベラルーシ、こういったところが握っているというところであります。  中国は、次のページ、食料生産も、七億トン近い食料の生産量に増えているんだけれども、将来の不安が拭えないということで、七番目のように、二〇〇四年以降、中央一号文書、最も重要なこの報告文書を年頭に発表するわけですけれども、これが二十年連続してこの農業問題に充てられていると。農業強国の建設ということを昨年はうたって、今年はその具体化ということで千万プログラムというのを設けてきていると。輸入能力を高めるだけではなくて国内の生産も増やしていくということをうたっています。  次のページが、そういう中で世界の在庫を見ると半分が中国の在庫ということで、例えば左のトウモロコシを見ると、三億トンの在庫のうちの二億トンは中国、七割近い在庫を持っているわけであります。右の表は、中国は一体年間消費量の何か月分を持っているのかというので見ると、八か月から十一か月ぐらいの在庫を持っています。日本は米で多くて二か月ぐらいで、非常に寂しい感じでもありますけれども。  日本の、右が、食料生産の拡大に向けて基本法の見直しということを期待していたんですけれども、残念ながら何かそういうところに力こぶが入っていないなという気がします。  十番目を見ていただくと、農業をめぐる情勢変化というのなんですね。この二十年間で左のようにあらゆるものが減少したと、政府予算は増えているけれども農業予算はむしろ減っているという構図になっています。  日本が追求してきた三つの安定、あるいは享受してきた安い価格で良質の食料を、良質ですから、食料の安全、安心、フードセーフティーは得られたわけですね。それから、幾らでも輸入できたというフードセキュリティーの問題もクリアできたということであります。  しかし、それが今脅かされているというところで、十二番目で見ると、エンゲル係数が、御承知のように四十年来の高い水準まで上がっている。物資の値段、農業関連資材の値段が上がり、そして食品価格も上がった結果、実質賃金が増えないというところでエンゲル係数が上がっている。  農家の経営は、非常にこの経営が悪化しています。自分の生産物が安くて、コストが高まっているということで、いわゆるはさみ状の価格差が生じて、農家の所得というのは惨たんたるものであります。  正しい価格転嫁、十四番のところですね、が必要でありますけれども、もう安値競争というのは無理であります。この条文の方には、良質の食料を合理的な価格で供給すると言っていますが、合理的って誰の立場からの合理的なのか、消費者ですよね。いわゆる生産者から見ると、合理的というのは市場価格になってきて、なかなか価格転嫁が難しい。これはやっぱり、価格は市場で達成するにしても、生産者にとっては政策でその生産者価格というのを達成すると、所得はですね、こういうふうに見ております。  基本法の見直しというのは、どうも、何というか、循環論法じゃないかというような気がいたします。  十六番のところで、その一人一人の食料安全保障についても……

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