○公述人(高田克樹君) ありがとうございます。
それでは、意見を述べさせていただきます。
まず、一昨年末策定されたいわゆる戦略三文書において、防衛力の抜本的強化がうたわれ、現在、それが着実にその整備が進められていると思っております。特に、国家防衛戦略で選定された重視七項目の中の機動展開能力、国民保護についても、統合部隊としての海上輸送部隊の創設や南西地域へのプレゼンス強化、航空自衛隊のC1からC2への機種変更による航空輸送能力の向上、政府による三十八空港、港湾施設の機能拡充の検討並びにシェルターの整備、国民保護を専門に扱う部局の創設を検討する等、まさに目に見える形で着実に成果が出ており、高く評価できるものと考えております。
一方で、自衛隊、特に陸上自衛隊の機動展開等においては、いまだに多くの法制上の制約が存在するとともに、新たな戦い方に対応する法整備はいまだ途上であると考えられることから、その一例や解決の方向性について意見を述べたいと思います。
まず、陸上防衛力というのは、海上、航空の防衛力に比べ、明らかに鈍重で遅いと自分でも思っております。例えば、東京からF15で福岡へ行きますと、大体十五分から二十分ぐらいで行けます。我々陸上自衛隊の部隊がそれと同等のことをしようと思いますと、やっぱり四、五日の日にちを見る必要があります。さらには、自衛隊の行動、特に陸上自衛隊の行動は、駐屯地の正門を出ると、もうそこは日本の法律の場でありまして、もちろん駐屯地の中でもそうですが、あらゆる道路交通法とか道路法とかいろんな法律が絡まって部隊の行動を律しているということ。
遅いという弱点はあるにせよ、この陸上防衛力が動くということは、国家の意思そのものを相手国に見せることにつながりますし、相当な抑止態勢を腹決めをして、政治の判断によって陸上防衛力を動かすということの意義は、これは非常に大きなものになってくるというふうに思います。
その上で、自衛隊の機動展開等において、関係省庁所轄の多数の法律、これ、私、自分で数えたところ三十六個ぐらい法律があると思いますが、その適用除外が期待されているところですが、その適用除外されるタイミングは、事態対処法に示す武力攻撃予測事態認定あるいは武力攻撃事態認定以降に初めてその適用除外が適用されると。それまでは国内法に、まあ言葉は悪いですけど、がんじがらめになっているというところであります。
事態認定以前の機動展開においては、部隊から関係省庁の出先機関や自治体に対し、例えば火薬類の取締法であるとか道路交通法、道路法、電波法、土地収用法、都市計画法等々の法律に基づきその都度申請し、その承認を得る必要があります。
ここで注意していただきたいのは、機動展開というのは、陸上自衛隊の部隊がA地点からB地点に移動することを機動展開と言っているのではありません。機動展開というのは、移動した後に陣地を構築すると、そのいわゆる抑止の態勢を整えるというところまでを機動展開と申しております。
今回、ウクライナ・ザポリージャ州でウクライナが昨年の六月から大きな反転攻勢いたしましたが、ロシアがそれを僅か十七キロの突進で食い止めた、これはロシア側の六か月間にわたる防御準備のたまものということであります。
そういったことで、早期の作戦準備による抑止態勢の確立が、この予測事態認定の遅れが大きな支障を来すおそれがあるということであります。
さらに、武力攻撃予測事態認定を含める事態認定行為は、全て閣議決定を経て公示行為を伴うということで官報に記載されるということですので、その事態認定自体が、我が国が先に戦争準備を始めてエスカレーションラダーを上げたじゃないかということを、相手国にその口実を与えかねないという背反的な、準備を早くやらなきゃいけないんだけど、早くやればやるほどそれが国際的にも国内的にも自らがエスカレーションラダーを上げたのではないかという口実を相手側に与えるという背反的な性質を持っているということです。
ただ、私、ここで強く申し上げたいのは、事態認定には、早期かつ円滑な機動展開等による抑止態勢の確立とエスカレーションラダーを我が国が先に上げたという背反的な性質が、これは確かにあるんですが、優先されるべきは戦争の抑止であり、国民の生命と財産の保護であることは、これは間違いないというふうに思うんですね。したがって、是非、政治家の皆さんは、ちゅうちょせずに予測事態の認定というものを議論し、決断をしていただきたいということであります。
次に、国民保護について申し上げます。
国家安全保障戦略に、武力攻撃より十分に先立って避難を実現するという書きぶりがあります。ここは、私はもう非常に驚いたところです。この国家の意思というものが、戦場に国民を巻き込まないんだと、しっかりと武力攻撃に先立って避難を実現するんだということが書かれていることは本当に高く評価したいと思います。
したがって、これは事態対処法の仕組みですけれども、予測事態認定あるいは緊急対処事態認定でこの国民保護のスイッチが入ります。もう一つ、特定公共施設等利用法という法律のスイッチも入ります。さらには、自衛隊法の百六条を始めとした関係省庁の法律の適用除外のスイッチも入ります。
したがって、この予測事態認定を早めれば早めるほど抑止態勢というのは早くできるんだということを是非仕組みとして御理解いただきたいと思うんですが、国民保護の中には、緊急対処事態認定、いわゆるテロやゲリラで大きな損害が出た場合の事態認定もこの国民保護法の適用がなされる記述があります。
一方で、緊急対処事態認定を行った場合の国民保護法の適用の中で、武力攻撃予測事態認定ではできたんだけど、緊急対処事態認定ではできないことが二つだけあるんですね。それが、国民保護法の中の六十条、広域避難民の受入れのための是正措置と、七十三条、避難住民の輸送に関する是正措置は、緊急対処事態認定ではできないんです。
いわゆる県をまたいで広域に避難するときに、受入れの県知事が僕は受け入れたくありませんと言ったときに、内閣総理大臣が、何を言っているんだと、受け入れてやってくれと是正措置を出せるか出せないか。これは、緊急対処事態認定ではできず、武力攻撃予測事態認定ではできるという、この法律の立て付け、仕組みになっているわけであります。したがって、予測事態認定を早く出すということが、この国家安全保障戦略に明文化された武力攻撃より十分に先立って避難を実現することにつながっていくんだろうなというふうに思います。
もう一つ、これは、現役時代、非常に不思議に思っていた部分ですが、日米共同行動への不安です。
米軍の行動関連円滑化措置法のうちに、ほとんどの、自衛隊との作戦テンポを合わせるために、ほとんどの行動は武力攻撃予測事態認定とともに米軍の行動関連措置法も立ち上がることになっているんですが、唯一、一つだけ予測事態では米軍の行動がままならない部分があります。それが、土地の収用、陣地の構築であります。要は、自衛隊の、米軍の基地から一歩も出れない状態が続くということです。
我々は、予測事態認定を受けて、防御陣地の構築措置を命令で内閣総理大臣から受けますと、駐屯地の外に行って防御の準備ができます。一方で、米軍は、これが、武力攻撃事態認定が下令されないと外へ出れないという立て付けになっていると。この辺も、現役時代に向こうの将官とよく話していたんですが、どうやって作戦テンポを合わすかねなんて話もしていましたし、受入れ国側として日本が先に出るんだろうなというようなことをおっしゃる米軍の将官もいらっしゃいました。
まとめますと、戦争を抑止するための早期の機動展開、国民保護と、相手国に戦争準備との口実を与えかねないとの背反的な論理に迷うことなく、逡巡することなく、我が国の防衛の目的に鑑み、抑止態勢の早期確立を優先するよう、努めて早期に事態認定の政治判断を行っていただけるように提言をしてまいりたいと思います。
このためには、絶対に必要なのは訓練です。国会議員の皆様が一緒に、行政と一緒に一堂に会して訓練の場を設けること、そして、これほど事態認定というのが窮屈で難しくて、いろんなてんびんを考えないと政治の決断はできないんだということを、自ら政治家の皆さんが、お一人お一人が経験されることによって、これが解決していくんだろうなというふうに思います。
また、事態認定前の段階で可能となる適用除外の項目がもう少しあるんじゃないかなという気もいたします。その辺は、是非、立法府の場で議論していただきたいなというふうに思います。
新たな戦い方に着目した法改正ですが、三文書で強調された能動的サイバー防御、無人アセットの防衛能力、これはウクライナ戦争等の例を見るまでもなく早急に整備されるべき能力でありますし、整備が行われていると確信をしております。一方で、その法的根拠、特に能動的サイバー防御、アクティブサイバーディフェンスに必要な相手側の発信源の特定、アトリビューションでは、憲法第二十一条、通信の秘密の解釈や、その実務規則である電気通信事業法の改正が必要である。
また、相手側の攻撃プログラムを無効化するには不正アクセス禁止法の改正が必須であるものの、残念ながら、今通常国会にも提出する、された気配はありませんし、まだ検討の途上と伺っておりまして、非常にここは残念に感じております。
また、無人アセット防衛能力についても、自衛隊が運用するドローンの航空法、通信法上の位置付けは民間事業者レベルであり、いまだ有事を想定した法整備はなされていないというふうに思っております。また、平素、相手側のドローンが飛んできた場合に、それを電磁波等で、火力じゃなくてノンキネティックな電磁波等で落とすというようなことも考えて技術開発をやっておるわけですが、そのときの電磁波の法整備というものは、許容範囲というのはいまだに白紙のままであります。
こういったように、戦略三文書を実効ならしめるためにも、新たな戦い方に着目した法整備を早急に進める必要があるというふうに思います。
私からの意見は以上です。
ありがとうございました。
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