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橘川武郎 ·アドバイザリー・ボード会員/国際大学学長

衆議院原子力問題調査特別委員会(2025-06-03)での発言

第217回国会 ·第第4号号 ·3,747字
○橘川参考人 おはようございます。橘川です。  前回はちょっと体調不良で欠席いたしました。申し訳ありませんでした。  今日は、第七次エネルギー基本計画と原子力発電と題してお話しさせていただきます。原子力推進派でもなく反対派でもない、現実主義的な立場だと自覚しておりますので、なるべく具体的な話をしていきたいと思います。  まず、このエネルギー基本計画の策定過程の問題点としてどうしても強調しておきたいのは、これの中心的な仕事に当たります審議会である基本政策分科会の構成が偏っているのではないかと。十六人の委員の中で圧倒的多数が推進派であります。明確に原子力に批判的なことを言っている方は一人しかおらず、その方も消費者代表なので、余り、ハウの話はできるんですけれども、ホワットのところで議論がしにくいというところがあります。  例えば、基本政策分科会の前身であった審議会の委員を務められました、今日参考人で来られている大島さんだとか、法政大学の高橋さんだとかという方を入れて、ちょっと違った視点からの議論も必要だと思います。  それからもう一点、福井県知事が基本政策分科会の委員になることは賛成なんですけれども、第七次エネ基自体がまずは福島に寄り添うというところから出発していますので、福島県知事の参加も必要なのではないか、こういうふうに考えます。  やはり委員が若干偏っているために、去年の秋口は、もう既に国は再生可能エネルギー主力電源化と言っているにもかかわらず、議事録を見ますと、多くの委員が再エネの批判と原子力のことばかり言っていまして、業界で一番読まれていますエネルギーフォーラムという雑誌の去年の十一月号は、原子力主力電源化のリアリティー、そういう議論にさえなっていました。  最終的には、私、エネ庁事務局村瀬長官が鎮静化を図ったと思います。原子力も大事だけれども再エネも大事だというような言い方をして、原子力二割という線に落ち着いたんじゃないかと思っております。  それが議論の中身にも反映していまして、基本的な議論の筋はこういうことです。三段論法で、DXやAIの関係でデータセンターが増える、そうすると電力需要が増える、そうすると原子力が必要だ、こういう三段論法なんですが、一つ目の矢印、電力需要が増えるというところは、IOWNが実用化します十年後くらいまでの間はそれが正しいかと思います。問題は、二つ目の、だから原子力だと受けるところでありまして、主力電源は再エネと決めているわけですから、まずは再エネでどう手当てをすべきかということを議論して、それで十分でなければ原子力を、そういう議論だと思うんですが、原子力しか議論しない、ここのところが問題なんじゃないか。  こんな単純なことを国民は理解していないぞということで、理解促進という言葉がよく使われるんだけれども、これは裏返せば国民の理解不足を言っているわけで、非常に上から目線の議論になっているのではないかと思っております。もし原子力のことをもっと積極的に言うなら、後ほど言いますけれども、原子力の新しい価値を提示する必要があるのではないかと思います。  次に、エネ基の中身そのものですが、私は、メディアの考え方とは違いまして、大きな流れは、原子力発電の地盤沈下が更に進行したというふうに思っています。  もちろん、定性的に見ますと、明らかな原発回帰です。次世代革新炉の開発、大々的に書き込みました。原子力の最大限活用、これは再エネと併せてですけれども、複数箇所で言及されています。そして、一番大きな問題だと思いますが、私、第六次まで基本政策分科会の委員だったんですが、そのとき一生懸命盛り込みました福島事故以降の可能な限りの原子力への依存度の低下という文章が削除されました。それから、次世代革新炉の建設について、従来は廃炉を行った立地に限定されていたわけですけれども、同じ電力会社ならば別の立地でもいいと。つまり、九州電力が玄海で廃炉すれば川内で立地してもいい、こういうふうに緩和されました。明らかに定性的に見ますと原発回帰です。  ところが、ターゲットは二〇四〇年のエネ基なので定量面が重要なんですが、これを第五次、第六次、第七次と、ターゲットイヤーにおける再エネの見通しと原子力の見通しを比べてみますと、第五次エネ基、三〇年ターゲット、再エネ二二から二四%、原子力二〇から二二%、ここで初めて再エネが原子力を上回りました。第六次エネ基、ターゲットイヤーは三〇年、再エネ三六から三八%、原子力二〇から二二%。そして、今回の第七次エネ基は、四〇年がターゲットイヤーですが、ベースシナリオでいいますと、再エネは四から五割に対して原子力は二割ということで、両者の格差が開く一方なんですね。つまり、大きな流れとしては、再エネ主力電源化が更に進み、原子力副次電源化が定着してきたというのが読めるわけで、この二の点はどうしても書かざるを得なかったと思うんですが、これがあるがために僕は一を定性面で強調したんじゃないかと思います。  つまり、エネ基は四〇年にターゲットしているんですが、メインで言っているのは次世代革新炉なんですが、次世代革新炉というのは今から間に合わないことは確実なので、それを言っているということ自体が、メディアが言うように、そこに本質があるのではないんじゃないかと私は理解しております。  そして、四〇年以降も、いいか悪いかとか、好きか嫌いかの問題とは別において、原子力というのは非常に使い勝手が悪いと思います。今、次世代革新炉で一番リアリティーが高いと言われます関電の美浜四号機、造るのに最低一兆円かかると言われています。ところが、関電は七基の既設炉を持っていまして、これは、運転延長をやるためには一基当たり数百億円で済むわけで、二桁コストが違うわけですね。そういう状況の中で、本当に電力会社は次世代革新炉を造るでしょうか。  十日ほど前に、九電が川内三号機を造るという報道がありましたが、たまたま私はそのときに別件で鹿児島にいたんですが、県知事と県議会議長とお話しする機会もありましたけれども、これは別に何も新しい動きがあるわけではなくて、具体的な動きが始まったということではないようであります。  ここまで言っていると、何か単純な反原発派のように見えるんですが、ちょっとここからは色が違うところで、大島参考人とかに怒られるところなんですけれども。  私は、カーボンニュートラルを促進する上では、水素、アンモニア、合成燃料、あるいは合成メタンという次世代燃料が非常に大事だと思いますが、これがなかなか進まないのは、基本的な原料でありますグリーン水素が非常にコストが高いというところに問題があると思っています。  では、どうすれば解決するのか。  そこで、原子力発電所の内部でカーボンフリー水素を作る、このことを提案させていただきたいというふうに思います。三つメリットがあります。  なぜグリーン水素が高いかというと、太陽光、風力で水の電気分解を行いますと、太陽光、風力の稼働率自体が低いために電解装置の稼働率が低くなってしまいます。これがコスト高の最大の原因です。  それから、日本の場合、グリーン電力が多少なりとも安いということで、あらゆる水素、アンモニア、次世代燃料の計画を、ほとんど重要なものは海外でやることになっています。そうすると、海外からそれらを運んでくるための輸送コストがかかりますし、エネルギー自給率の向上にもなりません。ところが、原子力発電所でカーボンフリー水素を作りますと、これは国産化ということになりますので、今の輸送コストも省けますし、エネルギー自給率の向上にも寄与します。  三つ目は、この原子力発電所で発生する電気を水素製造に回せば、それだけ電力市場に回す分を減らすことができる。今のままだと、かなりのところで再稼働が進むと、再エネの出力制御をどんどんやらなきゃいけないということになると思うんですが、これを抑えることができるというメリットがあると思います。  本来はカーボンフリーという点で共通の特徴を持っている再エネと原子力の共生というものが可能になる、こういうふうに考えております。こういう新しい価値の提供を国民に示すことこそ、原子力の議論を前に進める上で重要だと思っています。  今申し上げたことは、水素製造ができるという高温ガス炉、次世代革新炉の話ではありません。既存の原発ですぐにでもできるというところが重要であります。  柏崎刈羽の再稼働が進まない最大の原因は、私は、地元メリットが不明確だ、地元の県議会与党も賛成に回らないのはここの点にあると思います。なかなか柏崎刈羽の六号機の電気を新潟に回すことは難しいんですが、水素を作ればそれが新潟の産業発展にとっては大いに役に立つ、そういうメリットも出てくると思います。このような考え方はほかの日本の原発にも展開可能だというふうに思います。  以上で終わります。(拍手)

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