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中北浩爾 ·中央大学法学部教授

衆議院政治改革に関する特別委員会(2025-03-17)での発言

第217回国会 ·第第8号号 ·4,204字
○中北参考人 中央大学法学部の中北と申します。  委員長、理事、委員の皆様におかれましては、発言する機会を賜りまして、心よりお礼申し上げます。  日本政治の歴史と現状を研究してきた立場から、意見を述べさせていただきます。  私が本日、最も強調させていただきたいのは、企業・団体献金について、拙速に決めるべきではないということでございます。確かに、昨年末の臨時国会で、企業・団体献金禁止法案については令和六年度末までに結論を得るという申合せが行われました。しかし、残り二週間で、禁止か存続か、これを決めるのは適切ではないと考えます。今後、第三者的な機関で議論を深める、こういう結論を得ていただきたいと存じます。  一つ目の理由は、企業・団体献金を切り出して個別的に論じるのではなく、個人献金や政党交付金などを含めてトータルに検討すべきだということです。  二つ目の理由は、国政の議論ばかりが行われ、地方議員、政党の地方組織などについての議論が不十分ということです。一部の野党は、政党交付金を導入した見合いで企業・団体献金を禁止すべきであったと主張しています。しかし、政党交付金は国政選挙の結果を基準に政党本部に支給されますが、それとの見合いで企業・団体献金を禁止すれば、国政以外にも影響が及びます。都議会自民党の不記載問題を見ても、地方議員などを視野に入れた議論が必要であると考えます。  三つ目の理由は、誤った過去の理解に基づいて禁止が主張されていることです。一九九四年の細川護熙首相と河野洋平自民党総裁のトップ会談で企業・団体献金の全面禁止が決まったという主張が野党からなされていますが、お配りした衆議院事務局作成の表を見ても、正しい理解とは言えません。百歩譲っても、基本的な事実について与野党間に共通認識がない以上、企業・団体献金の存廃を拙速に決めるべきではありません。  以上、三つの理由から、企業・団体献金については、第三者的な機関で徹底的な議論を行うことが適切だと考えます。具体的に述べると、国民民主党と公明党の提案に基づいて、さきの臨時国会で決まった政治資金監視委員会を早期に設置し、そこに議論、提言を委ねてはいかがでしょうか。もちろん、合意できる事柄については是非早急に決めていただきたいと思います。  さて、現在の政治資金制度の最大の問題はどこにあるのかというと、税金丸抱えの国営政党化です。政治学では、本来、市民社会の中から生まれてきた政党が国家からの資金援助などに依存するようになってきたことを指して、カルテル政党化という言葉が使われます。そして、既存政党が党員を減らすなど、市民社会との結びつきを希薄化させていることなどを背景に、世界各国でポピュリズムが台頭しています。なお、ポピュリズムは、政治学では、大衆迎合主義ではなく、反エリート主義プラス反多元主義と理解されています。  お配りした図を見ていただきたいのですが、企業・団体献金の総額は、平成の政治改革で制限が強化されたことを受けて、一九九四年の五百七十七億円から二〇二三年には八十五億円と、大幅に減少しています。その分、パーティー収入は増えていますが、百四十一億円から百八十七億円へと増加するにとどまっています。個人献金が増えているのかというと、そうではなく、四百四億円から二百八十四億円に落ち込んでいます。  結局、一九九四年の政治改革で導入された年間三百十五億円の政党交付金が、受取を拒否している共産党を除いて、各政党の財政を支えています。自民党本部の例を取ると、国民政治協会を経由する企業・団体献金は、同じ時期、七十二億円から二十三億円に減少する一方、政党交付金が百五十九億円と、収入の七割を占めています。立憲民主党は八五%、日本維新の会は七八%と、更に依存度が高くなっています。  企業・団体献金を禁止すれば、国営政党化ないしカルテル政党化がますます進み、政党の有権者からの遊離、ポピュリズムの台頭に拍車をかけてしまうでしょう。なお、スウェーデンの研究所によると、百八十一か国のうち、政党向けの企業献金を禁止しているのは二七%、候補者向けを禁止しているのは二三%にとどまります。  これ以外にも、企業・団体献金を禁止せよという野党の主張については、何点か違和感を禁じ得ません。  第一に、昨年大きな問題になった事案は、あくまでも自民党の派閥による収支報告書への不記載です。この事案を捉えて、企業・団体献金の禁止や、企業、団体によるパーティー券の購入の禁止に踏み込むのは、根拠が乏しい。法改正のための立法事実が十分にあるとは言えないと考えます。国民の疑念を招くから禁止するのではなく、実際に起きた問題に対して一つずつ具体的に取り組んでいくべきです。  第二に、しばしば企業・団体献金によって政治がねじ曲げられているという批判が行われますが、独裁ではないリベラルデモクラシーでは、多様な個人、団体が政治に参加して競争し、政策決定に影響を及ぼそうとします。政治学では多元主義と呼びます。その下でも、団体間のチェック・アンド・バランスなどが働けば、公共の利益が実現されると考えます。問題は、企業、団体が献金などを通じて影響力を行使し、政策をねじ曲げることではなく、相互にねじ曲げ合った結果、著しく公益が損なわれているか否かなんです。  もちろん、過去に著しくそうした例が発生し、その結果、企業・団体献金には総枠制限や個別制限が加えられております。それでも足りないというならば、こうした量的制限を強化することに加え、イギリスのように、企業に対して事前の株主総会の承認決議を義務づけるといった方法もあります。より有効な別の方法は、企業、団体に対するカウンターパワーを強化することです。具体的には、個人献金の促進です。いずれにせよ、一足飛びに企業・団体献金を禁止するのが適切なのか、慎重に判断すべきであります。  第三に、しばしば抜け穴が生じるという批判がなされます。これについても違和感があります。政治資金制度改革は、抜け穴を塞ごうとして新たな抜け穴を見つけるイタチごっこの歴史です。企業・団体献金を禁止しても、個人献金や政治団体の献金が抜け穴になる可能性は否定できませんし、政党の機関紙などへの企業広告の形を取るかもしれません。かえって見えにくくなるおそれがございます。したがって、抜け穴を塞ごうとするよりも、可能な限り公開性を高め、有権者が選挙で適切に判断できるようにするのがよいと考えます。  第四に、企業・団体献金だけを切り出して禁止することが、政党間の競争の公平上、適切なのか疑問です。実際、労働組合や宗教団体のボランティアに依存して選挙活動を行っている政党も存在します。旧統一教会はボランティアを通じて政治家に影響を及ぼそうとしましたが、だからといってボランティアを禁止すべきということになるのでしょうか。そうではないでしょう。同様に、企業・団体献金に問題があるとしても、だからといって全面禁止すべきということにはならない、こういうふうに考えます。  私がその上で実現をしていただきたいと考えることは、以下の三つです。  第一に、公開の徹底です。  自民党は、禁止よりも公開をと主張している以上、公開強化法案の対象をもっと広げた方がいいと考えます。ただし、この点に関しては、さきの臨時国会で、与野党合意の下、オンライン提出の義務づけも、データベースの公表対象も、政党本部、政治資金団体、国会議員関係政治団体に限ったことが原因ですので、与野党間で協議をして合意形成していただきたい、このように考えます。もちろん、対象数が多く、実態もまちまちなので、どのように実現していくかは慎重に考えなければなりません。また、データベースの検索可能な範囲を極力広げるとともに、可能であれば、研究上も有益ですので、公開期間を三年ではなく無期限にしていただくことをお願いいたします。  第二に、個人献金の促進です。  近年の投票率の低下、政治不信の広がりなどに対処するためには、政治参加を促進し、有権者が民主主義の観客ではなく主権者になるようにしなければなりません。個人献金は、そのためのきっかけになります。個人献金すれば、献金先について関心を持つでしょうし、定期的に国政報告などが送られてくることになるでしょう。立憲民主党が、小口の個人献金を中心に税額控除を拡充する案を出しています。ただ、NPOの寄附税制との均衡であるとか、税額控除の拡充による減収分だけ政党交付金の総額を減額するとか、考えるべき論点が残されているように考えます。  第三に、政党助成制度の見直しです。  その一つは、制定時の政党助成法に盛り込まれていた三分の二条項の復活です。この条項は、各政党に対する政党交付金の上限を前年度収入実績、すなわち、政党交付金を除く自主財源の三分の二以下に限定するものです。そこには、つまり、当初の政党助成法には、政党が国家財政に過度に依存すること、つまり、国営政党化を避けるべきという明確な理念があり、それが三分の二条項として存在していました。ところが、翌年、一九九五年に廃止されてしまいました。  もう一つ、政党交付金について言うと、女性議員を増やすために、政党交付金の議員数割の半分を女性議員数割で配分することであります。女性議員の割合は、現在、衆議院で一五・七%、参議院では二五・四%です。私は、法律によって候補者の三割を女性にするよう政党に義務づけるクオータ制の導入が適切であると考えますけれども、それが難しいのであれば、まずは女性議員を増やすインセンティブとして政党交付金を活用すべきだ、このように考えます。  最後になりますが、石破総理の商品券問題で、有権者の政治不信が一層高まっております。自民党におかれましては、相次ぐ政治と金の不祥事について大いに反省していただきたいと思います。ただし、この商品券問題は、企業・団体献金の在り方とは直接的には関係いたしません。委員の皆様におかれましては冷静な議論を行っていただきたい、このように考えます。  以上でございます。(拍手)

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