○参考人(室谷悠子君) 貴重な機会をいただいて、ありがとうございます。
全国再エネ問題連絡会は、自然破壊、生活環境破壊につながる再生可能エネルギー開発の問題に取り組む住民団体が連携し、規制を求める声を関係各所に届けることを目的に、二〇二一年七月に結成されました。北海道から九州まで七十を超える住民団体、個人が加盟し、専門家のアドバイスを受けながら活動をしています。
私は、熊をシンボルに水源の森を守る自然保護団体である一般財団法人日本熊森協会の代表をしており、熊など多様な生物が生息し、水源地でもある豊かな森を次々とメガソーラー、風力発電施設が計画されることからこの問題に取り組み、熊森協会は全国再エネ問題連絡会の事務局を務め、共同代表もさせていただいています。
また、私は、日弁連公害対策・環境保全委員会内に設置されたメガソーラー等問題プロジェクトチームの副座長をしており、日弁連のメガソーラー、再生可能エネルギー問題に関する意見をまとめる役割の一端を担っています。
日弁連では、令和四年十一月に、再生可能エネルギーの一層の推進を図るためにも、乱開発に対する法規制等を求める意見書を出し、今国会の環境影響評価法改正案に対しても、令和七年五月二十三日付けで会長声明を発出しています。
本日は、全国の住民に対し法的観点からアドバイスをしている全国再エネ問題連絡会の共同代表、また弁護士として、環境影響評価法の改正に意見を述べさせていただきます。適宜、資料も付けさせていただいたので、御参照をください。
まず、現在進行中の環境アセスのうちほとんどが再生可能エネルギー開発についてで、その多くが風力発電についてです。改正案に対する意見の前提として、再エネ開発が今どのように地域で問題になっているかを少し述べさせていただきます。
山間部の再生可能エネルギー開発は、地域住民にとって貴重な自然、水源地、景観を破壊し、土砂災害等の危険を高め、また、騒音、低周波音による健康影響も危惧されるとして、生活に大きな影響を及ぼします。沿岸部、洋上でも同様の問題があります。
特に、とりわけ豊かな自然環境が残る北海道と東北では、これまで開発が及んでこなかった場所に大規模な森林伐採を伴う開発が計画をされています。北海道では、稼働中の陸上風力発電が四百六十、計画中のものが千八百七十基もあり、特に北部の宗谷地区、自然豊かな地域ですけれども、二百三十基余りの風車が稼働し、五百八十一基の環境アセスが進められています。宮城県加美町では、田園地帯を取り囲む奥羽山脈の尾根筋に百五十基の風車計画があり、計画地には宮城県の水源保全条例の保全地区や国有林の緑の回廊も含まれています。
奥山を重要な生息地にするイヌワシ、クマタカ、近年、人里の出没が問題となっている熊類などの生息地にも多数計画があります。岩手県では、イヌワシの重要生息地に風車計画が乱立したため、普通は絶対公開されないイヌワシの生息地エリアを岩手県は公開をしました。秋田県では、二〇二三年に熊が大量出没が起こり、推定生息数の半数を超える二千三百頭超の熊を捕殺しました。秋田県では、今、人里とその周辺の熊は捕獲し、熊はコア生息地とされる奥山に生息させるという政策を進めていますが、その一方で、秋田県鹿角市では、熊本来の生息地で大規模な風力発電計画が進んでいます。熊の絶滅のおそれのある地域個体群に指定されている四国や和歌山でも、熊の生息地や近接地で風力発電計画があります。
今国会で、人の生活圏に出没した熊、イノシシを危険鳥獣として緊急銃猟の対象とする鳥獣保護管理法改正がなされましたが、本来の生息地を破壊して、人の日常生活圏に出てきた熊は危険鳥獣として射殺の対象になるのはとても理不尽です。
また、森林は斜面での開発に当たるので、土砂災害を誘発します。
大型風車が人の生活圏で建設される場合は、騒音、低周波音による健康影響が問題になります。環境省の通知では、風力発電施設から発生する騒音が人の健康に直接的影響を及ぼす可能性は低いと考えられると記載されたことが独り歩きしており、十分な検討も調査も実施されないまま、日本海側沿岸部では、離岸距離二キロのところに一基十メガワットを超える大規模な風車が多数建設される計画が進んでいます。
令和七年五月二日、秋田市において稼働中の風車の羽根が破損して落下する事故がありまして、亡くなられた方が出ました。風車については規制緩和により建築基準法の適用を除外するとされていますが、人家の近く、人の利用する場所から近距離の風力発電施設も多数ある中で、安全に対する不安が広がっています。
貴重な自然や地域住民の生活の安全が犠牲にされる背景には、再エネ賦課金を背景に、利益優先で進められる再エネ事業の構造があります。グローバルな資本も多く流れ込んで、地域の反対が強く当初の事業者が断念した事業が転売され、ファンドや外資により継続する事例も見られます。
豊かな自然環境を享受していた地域に突然計画される開発が、野生動物の生息地を破壊し生物多様性を失わせるものでも、住民に重大な影響を及ぼし多くの住民が反対するものでも、現行の環境法令の規制は不十分で、開発を止めることはできません。
一般財団法人日本熊森協会は、再エネ特措法施行後間もない平成二十五年以降、再エネ事業者が転売を繰り返していた新潟県の山林約千ヘクタールを昨年取得しました。阿賀野川源流の最奥地の自然林で大規模開発行為は容易ではないですが、外資の水源地売買を規制する法律はなく、このまま転売が続くのは危険と考えてのことです。
法規制が不十分な中、自然環境と住民の生活を守るため、自治体は独自の再エネ規制条例を作って開発から地域を守っており、条例を制定する市町村は増え続け、令和六年度末では三百を超えています。法規制が不備な中で、環境影響評価制度は、住民にとって、事業の内容を知り、意見を伝えることができる貴重な機会となっています。ただし、環境影響や住民等の意見を十分に反映させ、事業の是非も含めて検討を行うという点では不十分な点もあります。
以下では、事業により大きな影響を受ける住民の立場から、改正案及び環境影響評価制度について意見を述べさせていただきます。
まず、環境影響評価法改正案について、環境影響評価図書の公開について意見させていただきます。
環境影響評価図書は、千ページを超えることもありますが、一か月だけしか縦覧されません。もう住民が相談を、私が住民から相談を受けた時点で既に公開終了して、事業について調べようにもほとんど調べられないということもあります。プリントアウトもダウンロードもできず、附箋やマーカーを付けることもできず、そういう中で、方法書の以降の過去の手続、方法書以降の手続で過去の資料との比較もできません。こういう状態で意見を言うのは本当に困難です。
環境影響評価図書は、計画段階から事業終了まで、誰もが見られ、プリントアウトもダウンロードもできる形で公開されることが必要で、日弁連も同旨の意見を公表をしており、自治体の議会や市長も町長も、首長もこういう意見を表明している例もあります。
改正案では事業者の同意を要件としていますが、現状を見ると改正が進むのか疑問です。法的手続の中で作成が求められ、意見募集のために公開が予定されているものを公開を義務付け、同意なしに公開できる制度とすることは、著作権に対する不合理な制限にはならないと考えます。全ての環境影響評価図書がダウンロードもプリントアウトもできる形で住民や市民に対して公開されることは、直ちに実施されるべきだと考えます。
次に、建て替え配慮制度の導入についてです。
建て替え配慮制度の導入については、当該事業地が重大な環境影響を及ぼし事業継続が不適当な場合、考慮できるのかということを懸念しています。
北海道幌延町で令和五年五月に稼働した風力発電施設で、一年九か月の間に、オジロワシを含む希少猛禽類十一羽のバードストライクが生じ、十羽が死亡しています。バードストライクが回避困難であれば、建て替え事業の継続は不適当となります。また、既存工作物が設置されている区域から近接する区域の範囲についても、近接する区域で大きな環境破壊が及ぶのであれば、きちんとした通常の配慮手続、配慮書の手続を行うべきだというふうに考えています。
そのほかの環境影響評価制度に対しても意見を述べさせていただきます。
まず、環境影響評価手続に期限を設けることが必要だということです。
五島列島の北端にある長崎県佐世保市宇久島は、千七百人が暮らす特定有人国境離島に指定されている小さな島で、ここに事業面積七百二十ヘクタール、島の四分の一に当たります、出力四百八十メガワットのメガソーラー事業計画があり、さらに、出力百メガワットの風力発電計画があります。
風力発電計画は、平成二十七年二月に準備書への経済産業大臣の勧告があって以来、環境影響評価手続は止まっていました。しかし、令和七年三月に、突然、事業者が六月に評価書を提出し、着工すると住民に説明をしました。準備書段階では五十基だった風車は、一基の出力規模を約二倍にして二十六基にするということです。風車の規模が二倍になると、騒音、低周波音、景観など、周囲の環境に及ぼす影響も大きく変わりますが、出力が変わらないため、再度の環境影響評価手続は不要となります。住民や自治体の意見を反映する手続は、評価書ではなく、経済産業大臣が三十日以内に変更命令出さなければ手続は終了します。
そのほか、青森県や岩手県にまたがる風力発電施設も、十年近くたった後、方法書の縦覧が始まりました。兵庫県新温泉町でも、平成三十年八月以来動きがなかった環境影響評価手続について、事業者が計画変更をして準備を始めると地域を回っています。
環境省のサイトを見ますと、四年以上環境影響評価手続が進んでいない風力発電、太陽光発電の計画が百を超えます。期限をきちんと設けて、期限を超えた場合、再度初めから手続を進める制度が必要です。
次に、虚偽記載への制裁や再調査が命ぜられる制度が必要だということです。
山形県米沢市の風力発電計画で、環境影響評価準備書に対し、報告した内容が改ざんされたと元調査員の告発があったと報道されています。そのほかにも、滋賀県、福井県にまたがる風力発電計画では、福井県知事も滋賀県知事も事業者の準備書に対し、調査は不十分、合理性に欠けると厳しい指摘をしています。
環境影響評価法は罰則や規制権限の行使の規定がありませんが、そもそも開発を行う事業者が行う調査は結果の改ざんや不十分な調査になりやすい構造ですので、環境影響評価図書の改ざんや虚偽記載には規制が必要ですし、調査が不十分であればやり直しを命じることが必要です。
もう一つ、環境影響評価の規模についてです。
私はメガソーラーの問題にも多く取り組んでいますが、森林を伐採するだけでなく、大量に切土、盛土をするメガソーラー開発というのは常に土砂災害の危険があって、林野庁では、太陽光発電施設が盛んに造られるようになってから基準を見直したり、林地開発許可の要件を〇・五ヘクタール以上の許可が必要だというふうにもしています。今国会でも、許可条件違反への罰則、命令に従わない者の公表をする森林法改正も成立をしています。
太陽光発電は、地表をパネルが覆うために降った雨がほとんど浸透せずに流出するので、施設が完成しても土壌流出と浸食が起こるので、常に土砂災害の危険性をはらみます。太陽光発電事業は令和二年四月から環境影響評価法の対象となっていますが、規模要件がすごく大きくて、危険をはらむ太陽光発電施設を全てカバーしていません。少なくとも、森林伐採を伴う又は山間部に実施される二十ヘクタール以上の太陽光発電施設は法アセスの対象とすべきです。
最後に、事業報告書についてです。
事業報告書というのは、環境影響の結果が、回避の結果がどうだったのかということを検討する上ですごく重要なものですけれども、これも、工事完了後に一回だけ公表する、しかも期間も限定されるというようなことになっています。対象事業ごとに事後調査をすべき事項や期間を定めて、第三者が関わる専門家が検討をし、報告書は市民にアクセス可能なように継続的に公表される仕組みが必要だというふうに感じています。
全国で多大な影響が起こっている再生可能エネルギー開発に関することを含む今回の環境影響評価法の改正なので、地域の住民の視点に立った改正が検討されることを望みます。
私の発言は以上です。
室谷悠子 の他の発言
2025-06-10 · 参議院環境委員会
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…
2025-06-10 · 参議院環境委員会
○参考人(室谷悠子君) 建て替え事業においては、その事後調査の結果を反映させるということが物すごく重要になってくると思います。
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○参考人(室谷悠子君) 環境影響評価手続を取るとやっぱり五年ほど期間が掛かるので、環境影響評価手続をどうしても省略したいというような、そういうことを考える事業者は中にもいて、メガソ…
2025-06-10 · 参議院環境委員会
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2025-06-10 · 参議院環境委員会
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2025-06-10 · 参議院環境委員会
○参考人(室谷悠子君) 虚偽記載については、虚偽記載とかというようなことについては、結局、中で調査をしている人が自分の書いたのと違うと言わなければならないので、それは守秘義務の関係…
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2025-06-10 · 参議院環境委員会
○参考人(室谷悠子君) エネルギー計画をどう立てていくかというのはすごく難しい問題で、私自体も専門ではないんですけれども、今の再生可能エネルギーの推進、あと立地の誘導みたいなような…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=室谷悠子
MCP: search_diet_speeches(speaker="室谷悠子")