○中北参考人 中央大学法学部の中北でございます。よろしくお願いいたします。
少々緊張しておりますので、お手柔らかにお願いいたします。
本年三月十七日に本委員会にて意見を述べさせていただきましたが、その際、三月末までに企業・団体献金について結論を得るという与野党間の合意があったわけですけれども、ただ、私は、安易に結論を出さず、第三者機関的な場所で議論を深めていただきたいと主張いたしました。政治資金制度は民主主義の根幹に関わる制度でございますので、拙速な議論は禁物であります。
しかし、あと二日でこの臨時国会も閉会という予定になっております。本年中の法改正は極めて厳しい状況でございます。自民党が公開を徹底する法案を出し、立憲民主党も国民民主、公明の制限強化案まで歩み寄り、合意形成に向かっていることは高く評価いたしますけれども、しかしながら、さすがに審議のスピードが遅過ぎると言わざるを得ません。こうした状況は国民の政治不信を高めかねません。この点について、まず苦言を呈させていただきたいと思います。
さて、これまで繰り返し述べてきましたように、私が考える日本の政治資金制度の最大の問題は、税金丸抱えの国営政党化でございます。政治学では、市民社会の中から生まれてきた政党が、国家から、資金援助など、こういったものに依存するようになっていることを指して、カルテル政党化という言葉が使われます。実際、既存政党が党員を減らすなど、市民社会との結びつきを希薄化させていることなどを背景として、世界各国で反エリート主義的なポピュリズムが台頭しております。
お配りした図表を見ていただきたいのですが、企業・団体献金の総額は、平成の政治改革で制限が強化されたことを受けて、一九九四年の五百七十七億円から、二〇二三年には八十五億円に、七分の一に減少しております。個人献金が増えているのかというと、そうではなくて、四百四億円から二百八十四億円に落ち込んでいます。結局、一九九四年の政治改革で導入された年間三百十五億円の政党交付金が、受取を拒否している日本共産党を除いて、各政党の財政を大きく支えております。主要政党の本部は、七から八割の収入を政党交付金に依存しています。
現状のまま安易に企業・団体献金を禁止したり制限を強化したりすれば、国営政党化がますます進み、政党の有権者からの遊離、ポピュリズムの台頭に拍車がかかってしまいます。したがって、平成の政治改革から令和の政治改革にギアチェンジすべきときであると考えます。
そもそも、昨年に大きな問題になった事案は、自民党の派閥による政治資金収支報告書への不記載です。これを捉えて、企業・団体献金の禁止や制限強化を行うというのは、立法事実に乏しいと言わざるを得ません。東京地裁が解散命令を行った旧統一教会がボランティアを通じて政治家に影響力を及ぼした事実を踏まえれば、むしろ、宗教団体や労働組合のボランティアを禁止、制限強化することの方が考えられるべきだと考えます。しかし、そうした議論はなされておりません。
政党には、それぞれ独自の支持基盤、支持者がおります。企業・団体献金だけを狙い撃ちをするというのは、政党間の競争の公平上、適切とは言えません。
とはいえ、企業・団体献金に課題があることは否定できず、だからこそ議論が行われています。議論に際しては、政治資金規正法の基本理念に定める、第二条でございますけれども、ここに立ち返ることが大切です。そこには、「政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨とし、これに対する判断は国民にゆだね、」と書かれています。したがって、企業・団体献金についても、極力透明化を図り、その上で判断は有権者に任せるべきです。安易な禁止や制限強化は、かえって政治資金の実態を国民に見えにくくします。
透明化という観点から見て課題が多いのは、政党の地方組織や地方の政治家です。十一月十二日、参議院の予算委員会で立憲民主党の蓮舫議員が、自民党県連の幹事長が代表を務める政党支部について、企業・団体献金を受けながら具体的な使途が不明であると批判しました。確かに、国会議員関係政治団体に比べて、地方議員が代表を務める政党支部、政治団体の支出の公開度は低く、指摘自体は正しいと思います。
しかし、これは自民党の責任というよりも、政治資金規正法の不備、つまり、国会で十分な議論がなされてこなかったことに起因する問題であります。自民、維新が第三者機関で政党などの政治資金に関して議論を行う法案を提出していますけれども、そこで政党の地方組織や地方政治家の資金の在り方、特に収入のみならず支出についても当事者を参考人として呼びながら議論するのであれば、私も賛成でございます。
また、透明化という観点から見ると、自民党が、本年三月三十一日の公明党、国民民主党との実務者合意に従って、企業・団体献金を受け入れる支部をあらかじめ指定し、収支報告書のオンライン提出を義務づけるとともに、総務大臣が公表する企業・団体献金の対象にも加え、さらに、その公表の基準額を年間合計一千万円超から五万円超に引き下げるといった内容の法案を提出したことは高く評価できます。これによって、企業・団体献金については、可能な範囲での最大限の透明化が図られます。実務者合意を行った公明、国民民主両党も、私は賛成すべきだと考えております。
もっとも、この法案が成立した場合、自民党本部には、指定政党支部に対して適切な指導監督を行う責任が生じます。自民党は、現在、八千近くの支部を抱えます。これ自体は、自民党が国民政党として社会の隅々に根を張っている事実を示しておりますけれども、その一方で、自民党本部が都道府県連やその下にある支部の実態を十分に把握し、適切なコントロールを行っているかというと、心もとないのが実情です。指定政党支部が企業・団体献金を受け取りながら不適切な処理を行っていることが発覚したら、政治不信を高めかねません。くれぐれも、自民党におかれましては、ガバナンス力の向上に努めていただきたいと存じます。
次に、国民民主・公明案について、疑問点を述べさせていただきます。
第一に、企業、団体に年間二千万円という個別制限を設けたり、政治団体による献金に年間一億円の総枠制限を設けたりすることなどに必要性が見出されません。これを実現した場合、国営政党化に拍車がかかるだけです。
第二に、なぜ企業や労働組合の献金の受皿を政党本部と都道府県組織に限定するのか、なぜ市区町村支部は認められないのか、合理的な理由が示されているとは言い難いと思います。
受皿の数を制限して透明性を高めるという理由であれば、オンライン提出を義務づけ、データベース化すれば解決できるはずであります。企業・団体献金の受皿を党本部や都道府県組織に限定する結果、基礎自治体など地域に根差した政党活動を弱め、やはり国営政党化を促進しかねないと考えます。
第三に、企業や労働組合による政党本部、都道府県組織への寄附について、特定の政党支部向けの使途特定寄附が可能なのか不明確である点であります。
十二月九日、本委員会の審議で、立憲民主党の櫻井議員の質問に対して、公明党の中川議員は、ある支部に交付することを前提に企業や労働組合が都道府県連に寄附を行った場合、迂回献金とみなされて虚偽記載に当たる可能性があり、裁判所などで判断されることになると述べておられます。特定の地域の政党活動の費用に充てるなどの使途特定寄附を認めるのか否かは、きちんと法律に書き込むべきだと考えます。
私は、地域に根差した政党活動を活発にするという観点、加えて、寄附者の意思や政治活動の自由の観点から、使途特定寄附を認めるべきだと考えますが、認めた場合、自民党案との妥協点にもなり得るのではないかと考えます。是非、合意形成のために御一考ください。
第四に、政党法についてです。
政党法を制定し、それに適合的な政党のみが企業や労働組合の寄附を受けられるようにするということである以上、この政党法は、単なる理念法ではなく、政党の組織や運営について詳細に規制するものになるはずであります。
しかし、日本は、戦前、治安維持法によって共産党を禁止、弾圧し、全ての政党を解散させて、大政翼賛会を結成したという歴史を持ちます。その反省から、戦後、政治活動の自由を重視してまいりました。ナチスを再び台頭させないため、反民主主義的な政党を禁止する憲法を作り、政党法を制定したドイツとは大きく異なります。
もちろん、政党が民主的で開かれた党の組織を持ち、運営されることが大切であることは当然でありますけれども、しかし、各政党がガバナンスコードを定めるなり、自主的に行うべきであります。自民党と維新の連立政権合意書もそうですけれども、安易に政党法を語ることには慎重たるべきであって、作るとしたら理念法にとどめるべきであります。
そもそも、政党法と企業・団体献金の受取に論理的な関係があるとは思えません。ドイツの政党法は、国庫補助の制度を設ける前提として一九六七年に制定されました。政治資金について政党法と関係づけるのであれば、企業・団体献金ではなくて、国からの政党交付金の受領の方ではないでしょうか。
第五に、個人献金を促進するための税制上の措置についてです。
税額控除を三割から四割に引き上げることが盛り込まれていて、方向性としては賛成なのですが、幅広い個人による献金を増やし、政治参加を後押しするには、第二百十七回国会に出された立憲、維新、有志、参政の法案のように、少額の寄附の控除率を高くする制度設計の方がよいように思われます。その上で、国民の理解を得るためには、それに見合った政党交付金の減額を行い、各政党が税金丸抱えの国営政党から脱却すべきであると考えます。
私からは以上でございます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
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国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=中北浩爾
MCP: search_diet_speeches(speaker="中北浩爾")