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谷口将紀 ·東京大学教授

衆議院政治改革に関する特別委員会(2025-12-15)での発言

第219回国会 ·第第5号号 ·2,682字
○谷口参考人 本日は、意見陳述の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。  ただいま議題となっております法律案、中でも自民党提出の第二百十七回国会衆法第四号の修正案及び国民民主党、公明党提出の衆法第二号は、以前よりも各党各会派のお立場が確実に接近をしていることを示しておりまして、幅広い合意形成に向けた建設的な議論が継続されることを期待しております。  企業・団体献金の在り方をめぐりましては、当初、自民党においては、今般の問題は政治資金パーティーの開催に関する政治資金収支報告書の不記載にあるのであって、企業・団体献金そのものは論点ではないとの立場が示されました。これに対し、立憲民主党などは、この機会に企業・団体献金を全面的に禁止すべきであると主張して、与野党間に大きな見解の隔たりが存在していたところでございます。  それが、現在では、企業・団体献金の受皿について、自民党案においては、政治資金収支報告書をオンラインで提出し、かつ、会計監査を受ける指定政党支部に限るものとし、他方、国民民主党・公明党案においては、本部及び都道府県連に限るというところまで各党の立場が近づいてまいりました。  自民党が、国会議員候補者に係る選挙区支部のみならず、地域支部や職域支部においても、企業・団体献金を受ける以上は一定のガバナンスを確保すべきであるとの姿勢を明確にしたこと、また、立憲民主党が、企業・団体献金の全面禁止を目指す立場を維持しつつも、次善策として受皿規制にまで譲歩をしたことは、足し算として考えれば、ゼロから一、プラス一の変化に過ぎなくても、掛け算、すなわち、一がゼロの何倍であるかを考えれば、これは大きな前進であると思います。合意に向けた第一歩を踏み出すことができたのであれば、二歩目、三歩目の歩み寄りはより容易になるものと考えております。  現在、昨年の政治資金収支報告書が公開されたことに伴い、政党支部における報告書の訂正事案が相次いで報道されております。このような事案の防止という観点からも、ガバナンスが利いた支部のみに企業・団体献金の受取を認めるという両案共通の考え方は重要であります。  しからば、ガバナンスが利いているとは、どのような状態を指すのでしょうか。年に一度の会計監査を受けること、あるいは政治資金収支報告書をオンラインで公開することといった事後的な統制のみでは十分とは言えません。  仮に、特定の企業から特定の政治家の政治活動を支援したいという使途指定つきの寄附がなされた場合を想定いたしますと、当該企業と当該政治家の間に癒着はないか、当該企業がそもそも寄附を禁止されていないか、量的制限を超過していないかなどをその都度確認できる体制が不可欠であります。  そのためには、こうした点検を組織的に行う体制と責任を備えた政党単位が窓口となり、所要の確認を経た上で、当該単位の自主的かつ主体的な判断に基づき、指定された使途に適合する下部の支部に対して支部交付金として支出する仕組みが求められます。  これこそが実質的に機能するガバナンスでございまして、下部の支部において地域の声を丁寧に受け止めるという役割とも、十分に両立し得るものであると考えます。  こうした点検を組織的に行う体制と責任を備えた単位として、国民民主党・公明党案は都道府県連を想定したものと理解しております。もっとも、政党の組織構造は一様ではなく、政党によっては、都道府県よりも小さい単位であっても、同等あるいはそれ以上のガバナンスを利かせることが可能な場合もあるかもしれませんし、逆に、都道府県という単位であっても、必ずしも十分なガバナンスを確保できないケースもあり得ます。いかなるガバナンスが求められ、それを政党のどの単位において実効的に機能させることができるのかという観点から、今後の審議において議論が深められることを望みます。  本委員会における議事速報を拝見いたしますと、これまで多く取り上げられてきたもう一つの論点として、政治団体間の寄附がございます。この論点に関連して、私が想起をいたしますのは、いわゆる二度の日歯連事件であります。  まず、二〇〇四年には、日歯連からの一億円の不正な献金が問題となり、これを受けて、政治団体間の寄附について年間五千万円の個別制限が設けられました。ところが、その後、二〇一三年に、同じ日歯連が、この規制を潜脱する形で、五千万円を超える部分を別の政治団体を経由させ、最終的に同じ組織内議員の後援会に資金を流す迂回献金を行う事件が発覚いたしました。  この事案は、手法が余りにも露骨であったために、実質的には政治団体内の資金移動にすぎないと判断され、立件に至ったものと理解しております。しかしながら、今回新たに提案されている寄附の総枠制限についても、例えば、寄附の出し手が、都道府県ごとに複数の政治団体、例えば全国○○政治連盟であったものを、何々県政治連盟と四十七個別々に設立すれば、形式上は規制を回避することが可能となります。  政党及び政治資金団体以外の政治団体による寄附について、総枠制限を六千万円とするのが適当か、あるいは一億円とするのが妥当か、また、個別制限を二千万円とすることが適切かといった点は、確かに制度設計上の論点ではあります。規制が存在しないよりは存在する方が望ましく、また、規制が緩いよりは厳格である方がよいと評価をいたします。しかしながら、今申し上げたような事情を踏まえますと、この論点の重要性は、全体の制度設計の中では、相対的には必ずしも高いものではないと考えております。  衆議院政治改革に関する特別委員会で私が参考人として意見を述べさせていただくのは、今回で三度目になります。初回は自民党からの御推薦、二度目は当時与党であった公明党からの御推薦、そして今回は、野党である国民民主党からの御推薦によるものでございます。  この間、本件に関する私自身の基本的見解に特段の変更はございません。その意味で、三回にわたって与野党双方からお招きいただいたこと自体が、各党のお立場が少しずつではあっても合意に向けて前進しつつあることを示す証左ではないかと受け止めております。  委員の皆様におかれましては、引き続き、幅広い合意形成に向けて、いま一段の御努力を賜りますようお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。(拍手)

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