○吉良委員 今の総理の答弁の御認識については、私も全く共有するところであります。
ただ、私自身は、もう少しマクロ経済を考えた上で、このギャップがどこから来ているのかということについて、少し国民の皆さんにもデータを示しながら、駆け足で私の見解をまず披露したいと思います。
まず、日本経済の根本構造を見ていただきたいと思います。パネル一です。
これは、名目GDPを日本円と米国ドルベースで表したグラフです。そして、円・ドル相場と原油価格の推移も同時に表しています。
我が国は、国民生活と事業活動に必要なエネルギー資源や食料などを輸入せざるを得ないという宿命の中、過度な円安は対外購買力を低下させ、それが輸入物価の高騰を招き、国民生活を物価高で苦しめることに直結しています。それゆえ、日本経済の実力は、対外購買力を考慮した米国ドルベースで評価すべきです。
残念ながら、米国ドルベースのGDPは低迷し続けています。このグラフでいえば、赤の折れ線グラフです。二〇二四年は何と四兆ドルと、民主党政権時代の六・二兆ドルよりも二兆ドルも減少しています。海外の国々が日本の経済を評価するとき、日本のGDPは六百兆円を超えたと言っても通用しません。米国ドルベースのGDPを見て、どうしてこんなにも日本経済は低迷しているんだという印象を持っています。
為替相場と交易条件は密接に関係しており、原油価格など世界の物価が高いときに円安だと、交易条件が悪化し、国民生活は大変苦しくなってしまう、これが日本の経済構造です。
その影響がもろに表れているのが現在です。二〇二四年の原油価格平均はバレル七十ドル台半ば、現在は六十ドル前後で推移していますけれども、これに一ドル百五十円強という円安が続いているので、国民は物価高に苦しんでいるということです。
パネル二を御覧いただきたいと思います。
このグラフで確認したいのは、先ほど言いました五万円を超える株価、この株価はGDPとは連動していません。お金がどれくらい市場に流されているかを表すマネタリーベースには連動して上昇していますけれども、国の豊かさ、国民の豊かさを示すGDPは、株価ではなく個人消費に連動しています。だからこそ、個人消費を上向かせる賃上げが重要なんです。
ただ、ここ数年、日銀の方針転換もあり、マネタリーベースは横ばいになってきているのに、株価は大きく上昇しています。この一番こちら側を見てもらえれば分かります。
これはなぜなのか。ここからが一番重要な議論になります。パネル三を御覧ください。
このグラフは、日本の名目GDP、GNI、第一次所得収支の推移を表したグラフです。GNIとは、ここにいらっしゃる皆さんは承知のことですけれども、国民総所得のことで、日本人、日本企業が日本を含む世界中で稼ぎ出した所得の総和です。第一次所得収支は、海外投資から得られる配当金や金利収益です。
ちょっとこの数字について言うと、このパネルを作成した後、一昨日、GDPの算出基準の変更があって、GDPが二十六兆円上振れしていますけれども、これは同時にGNIも二十六兆円上振れしますので、第一次所得収支の額は変わらず、このグラフをそのまま使用します。
これを見ると、日本企業が日本以外で稼ぎ出す所得が二〇二四年は四十兆円強となっています。日本経済が目指す経済成長率を三%とすると、GDP六百兆円の三%、十八兆円、これが増えれば成長率三%ということになるわけですけれども、その二倍以上の四十兆円という金額を海外で稼ぎ出しているんです。
では、どうしてここまで海外の所得が増えているのか。それを端的に表しているのが次のパネル四です。
このパネルは、二〇〇〇年を一〇〇とした場合、二〇二四年までの二十四年間、対外直接投資が九五七と、ほぼ十倍に増えています。一方、国内への設備投資は一二二、微増にとどまっています。
では、稼いだ所得の内訳はどうなっているのか。それを表しているのがパネル五です。
これは、下の方にある青色部分は直接投資から得られる配当金、ピンク色は対外証券投資から得られる金利収益です。証券投資の額は変化がないのに対して、直接投資からの収益は大幅に増えています。これらの収益の合計が四十兆円になっているわけです。
このドルベースの海外収益は、円安によって、円換算では大きく膨らんでいます。パネル六を御覧ください。
先ほど見たように、対外直接投資自体が増えていますので、ドルベースの収益も拡大しています。しかし、円安により、円換算では大きく水膨れしているということが確認できます。
ここで注意が必要なのは、この収益は本社連結決算上の、帳簿上の利益であって、キャッシュフローは、ほぼ三分の二、海外で再投資され、日本国内に還流していません。円安により、海外への大量支払いで出ていってしまったお金は日本には戻ってこず、一方、海外投資で得られたお金も、海外に再投資されることで日本に舞い戻ってこない。ですから、日本経済がよくなるはずがないんです。
二昔前までは、企業の隆盛は企業城下町を潤し、それはトリクルダウンとして全国を潤すという時代がありました。しかし、今は、海外で大きく得られる収益が日本列島で暮らす生活者の生活向上に直結しない、そういう時代になってきてしまっています。
断っておきますけれども、私は企業批判をしているわけではありません。企業としては、生き残るため、必ず利益を出すため、世界のどこにでも進出していって利益を最大化する、それは当然のことであり、経営判断としては極めて合理的だと思っています。問題は、アベノミクスの継続で円安を放置し続け、国内の生活者を犠牲にしながら海外で大きな利益を上げる企業を、政府が国を挙げて支援しようとしていることです。
物価高、特に輸入物価高騰で苦しむ生活者から、海外で大きく稼ぐ企業に所得移転されている、これが日本の現状です。つまり、先ほどのパネル三でいうと、政府は、国民の豊かさ、国の豊かさを表すGDPではなく、企業が海外で稼ぐGNIの拡大を支援しているということになります。これが、私の言う、方向が違うということです。この海外で稼ぐ利益の恩恵は、国内で暮らす生活者に行き届いていないのです。
その最たる例がトランプ関税対応です。トランプ関税交渉前から、今見てきたように、これだけの対外直接投資が行われていたのに、なぜ政府が自ら音頭を取って海外投資を更に促す必要があるのか。それも五千五百億ドル、八十兆円強の対外直接投資を政府が先頭に立って進める理由が私には全く分かりません。
日本の経済構造を考えたとき、政府は、生活者を犠牲にしてまで、海外で稼ぐ企業を優先する業界優先の経済政策ではなく、あくまで生活者を優先した生活者優先の経済政策へと大転換すべきです。
そのために今まずやることは、円安の抑制、そのための金利の正常化、利上げです。金利引上げによって、二千兆円を超えると言われている国内個人金融資産に、金利収益という形で新たな可処分所得を提供することができます。また、金利引上げこそ、強い経済を実現できると思っています。
総理は、強い経済をつくると主張されています、意気込んでおられますが、低金利政策を続けたまま強い経済は実現されると本当にお思いでしょうか。私の経験を少し話した上で、高市総理の見解をお聞きしたいと思います。
私の経験の第一。商社勤めのニューヨーク駐在員時代、北中南米全域の採算責任者が集う場で、ある部門の部長が、ベネズエラで一五%のリターンがあるというプロジェクトを提案しました。正確な数字はちょっと忘れていますので、その趣旨について御理解いただきたいと思いますが、そのときの米国会社社長兼米州総支配人は次のように言いました。ベネズエラだろう、一五%のリターンのプロジェクトを推進するのに何の意味があるんだ、ベネズエラの金利を見てみろ、二〇%ぐらいあるだろう、それなら銀行に預けておけばいいだろうと。二〇%を大きく上回るリターンの案件を追求しろという話でした。
また、私が東京本社の課長時代のことですが、営業部が何かの案件で投資しようとするときに、会社の財務部門から投資資金を借りることになっていました。その投資金利は、たとえ市中金利が三%であっても、三%とかで貸してもらえません。リスクを伴う投資案件だからこそ、高い金利にも耐え得る優良案件に投資すべきという会社方針の下、会社が定めた投資金利四・五%で財務部門から借りていました。四・五%の投資金利を大きく上回る高いリターンのプロジェクト、案件を追求し、実現するしかなかったんです。
〇・五%の政策金利ということは、一%のリターンのプロジェクトが成り立つという経済なんです。一%のリターンの事業が、プロジェクトが成り立つ経済が、強くなると思われますか。生産性向上、賃上げ、これらは高い収益を追求してこそ実現できる課題です。そのことが強い企業をつくり、強い経済をつくっていくと私は思っています。
その意味で、低金利の下で強い経済を実現できると高市総理はお考えでしょうか。そして、先ほど私が申し上げた、企業の高い収益に比べて生活者が物価高で苦しんでいる、このギャップに対する私の分析、考え方に対する見解とも併せて総理の答弁を求めたいと思います。
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