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会田卓司 ·クレディ・アグリコル証券会社東京支店チーフエコノミスト

参議院予算委員会公聴会(2026-03-24)での発言

第221回国会 ·第第1号号 ·4,734字
○公述人(会田卓司君) 本日はありがとうございます。  私からは、日本の財政は健全で戦略投資拡大の余地は大きいという結論でお話をいたします。一般には逆です。日本の財政状況は悪いと言われます。  では、二ページ目を御覧いただきたいと思います。  二ページ目左側には、日本の国家予算の歳出、右側には米国の国家予算の歳出があります。日本の歳出の中に占める国債費は二六%と非常に大きくなっています。米国の一四%と比較をしますと非常に大きいという現実があります。そして、国債費が大きいので、歳出は硬直化していて、財政再建が待ったなしと言われる原因になっています。  しかし、日本と米国の歳出構造を比較しますと大きな違いがあります。  まず最初は、日本の歳出の中に、国債費の中には債務償還費というのが入っています。国債六十年償還ルールに基づく債務償還費が入っています。しかし、米国を御覧いただくと債務償還費は入っていません。グローバルスタンダードでは、国債は将来の税収で返す前提ではなく永続的に借換えされていきますので、債務償還費は入っていないということになります。  そして、利払い費、日本では利払い費とありますから、払う、グロスで入っています。一方、アメリカは純利払い費とありますので、払う方と受け取る方をネットにした純利払い費で入っているということになります。そして、アメリカの歳出には、法律で支出が義務付けられる義務的歳出と予算で支出が決まる裁量的支出を分けていますが、日本の歳出には明確な区別がないという違いがあります。  では、日本は、国債の六十年償還ルールに基づいて債務償還費を計上しています。この債務償還費の計上の在り方については、自民党の防衛費増額の財源検討の特命委員会でしっかり検証されているということになります。  次の三ページ目を御覧いただきたいと思います。  そこでの結論は、国債六十年償還ルールはあくまで公債政策に関する政府の節度ある姿勢を示すために導入されたものであり、文字どおりの減債、すなわち国債発行残高の減少を目指すものではなかったことを確認しているということになります。すなわち、日本でも、国債の六十年償還ルールは見かけだけのもので、将来の税収で返すということを前提にしておらず、日本でも国債は永続的に借換えをされているということが明らかになっています。  では、グローバルなスタンダードに合わせて、日本の歳出構造を描いてみたいと思います。  四ページ目です。四ページ目左側が、通常の日本の国家予算の歳出です。右側が、グローバルスタンダードに直した日本の歳出構造ということになります。国債費を御覧いただくと、僅か六%であるということになります。左側の二六%、米国の一四%と比較をすると非常に小さいのが御覧いただけると思います。国債費が財政を圧迫しているというのは間違いでありまして、政府の戦略投資拡大の余地は大きいと考えます。  そして、義務的支出、法律で支出が義務付けられている支出には財源をひも付けるのがグローバルスタンダードです。しかし、裁量的支出には財源をひも付けなく、政府の財政余地を大きくするというのがグローバルスタンダードのやり方だということは付け加えておきます。  日本は、財政赤字を続けてきたのに、緊縮財政であったはずはないとの見方があります。しかし、緊縮財政であったかどうかというのは、民間の経済がどうだったのかどうかという比較で判断されるものだということになります。  では、五ページ目を御覧いただきたいと思います。  五ページ目の左側、黒い線で日本の政府の財政収支のGDP比があります。ずっとマイナスですので、赤字が続いてきたということになります。一方、民間の経済状態を見る上で重要な指標がこの青い企業の貯蓄率というものになります。  通常の経済であれば、企業は資金を調達、借りて投資をして事業を行います。貯蓄率では、プラスがためる、マイナスが借りるです。通常の経済であれば、企業は支出、投資をしますので、この企業貯蓄率、青い線は下の方、マイナスにいるのが正常だということになります。  しかし、日本の場合には、企業が賃金や投資などの国内支出をどんどん切り詰めて借金返済に邁進するというコストカット型になってしまったため、企業貯蓄率が上の方、プラス、この異常な貯蓄超過、投資不足という状況に陥ってしまっているということになります。  企業からは国内支出を減らすという経済規模を縮小する力が掛かってしまっているわけですから、当然政府は、支出を増やして経済規模を拡大して、家計に所得が回る経済にしていかなければいけない。その結果として、財政収支は赤字を続けているということになります。  では、企業と政府を合わせた支出をする力、経済全体で経済規模を拡大する力、どう判断するかというのは単純です。青い企業貯蓄率と黒の財政収支を合計しまして、灰色のネットの資金需要というものにします。青プラス黒が灰色で、灰色がネットの資金需要で、これが企業と政府合わせたお金を使う力、経済の規模が拡大する力、そして家計に所得が回る力だということになります。  日本の経済の問題は、二〇二〇年のコロナの前、御覧いただくと、このネットの資金需要が完全に消滅しているという状況が続いているのが御覧いただけます。ネットの資金需要が消滅しますと、企業と政府合わせたお金を使う力が全くなくなりますので、経済規模、名目GDPが拡大しなくなります。家計にも所得が回らなくなり、家計が困窮をしたということになります。  政府は、確かに財政赤字を続けてきましたが、ネットの資金需要が消滅してしまったということで、やはり緊縮財政であり、経済規模を持続的に拡大するという責務を果たさなかったということになります。  しかし、コロナ後、財政が拡大しました。ネットの資金需要が一気にマイナス五%というところまで膨らんだ結果として、日本経済膨らみ始めます。あれだけ膨らまなかった名目GDPが一気に膨らみを取り戻して、五百二十五兆円平均から現状は六百七十兆円まで経済が膨らんだということになります。  ただ、問題は、またネットの資金需要が現在なくなっています。日本の財政構造というのは、何もしないとネットの資金需要が消滅をするという緊縮に寄った財政構造を持ってしまっているということになります。  そうであれば、官民連携の成長投資を拡大することによってこの青と黒を下に持っていって、ネットの資金需要を回復させて経済規模を拡大し、家計に所得を回していくという財政政策の積極財政の方向性が重要になってきます。家計に所得をしっかり回す名目GDP三%台の成長に相当するネットの資金需要はおおよそマイナス五%と言われていますから、ゼロ%からマイナス五%にトレンドを回復させるには、年間三十兆円程度の官民の投資拡大が必要ということになります。  では、日本の負債残高GDP比は巨額なので、日本の財政状況は悪いというのが一般的な見方ということになります。  六ページ目を御覧いただきたいと思います。  六ページ目の左上に一般政府の総負債とあります。GDP比二一三%、米国の一三九、ユーロ圏の一〇九に比べると非常に大きいというのが御覧いただけると思います。しかし、日本の政府は巨額の金融資産を持っているということです。そして、負債からこの金融資産を引いた純負債が一般政府Aとあるところで、七五%ということになります。米国の一〇五より小さいという結果になります。  では、この純負債の動きを御覧いただくと、右側が純負債の動きということになります。かつてGDP比五〇%とかなり小さかったのが一二五%ぐらいまで拡大する中で、黒い線がS&Pの日本国債の格付ということになります。右軸でトリプルAという最高位格からシングルAプラスというところまで格下げをされてきたということになります。  しかし、現在、経済規模がぐんと拡大したことによってこの純負債残高GDP比が大きく改善して、昨年十―十二月期の段階ですと六七%というところまで拡大をしています。格付に直すと、三段階格上げされてもおかしくはないところまで改善しているということになります。戦略投資を拡大する余地は大きいということになります。  そして、日本経済の問題はこの企業Bと書いてあるところです。これが企業の純債務です。御覧いただくと、日本だけ符号が逆、マイナス一〇となっています。すなわち、日本経済には企業部門に純負債が存在しない、消滅をしてしまっているという状況になっています。  金利というのは、政府の動きだけでは決まりません。企業の動きにも左右されます。では、経済全体の負債構造というのは、この一番右側、経済の負債構造というもので、AとBを足したもの、企業と政府の合わせた純負債の大きさで見るということになります。日本は僅か六五、米国の三一九、ユーロ圏の一一八に比べると非常に小さいのが御覧いただけると思います。日本の負債構造は強靱であるということです。経済の負債構造が強靱であれば、名目GDP成長率を大きく上回るような金利の高騰は考えにくいということになります。  では、高齢化による社会保障制度の悪化を考えれば、財政再建は急務であるという見方もあります。  七ページ目を御覧いただきたいと思います。  七ページ目の左側、黒い線が厚生年金の積立度合いの動きということになります。百年後に向かって、現状五倍である積立度合いを一倍に下げていくという前提で社会保険料が計算されています。  ただ、問題は、この前提は経済成長率が永遠にマイナス成長であるということが前提に計算されているということです。マイナス成長の悲観的な前提で社会保険料を大きく引き上げ、現役世代が疲弊するという状態になっています。  では、経済成長率を一%を前提にするとどうなるかといいますと、この青い線になります。基金は膨張していくということになります。一%の成長前提では、社会保険料と消費税は引き下げられるということになります。社会保障制度の安定のために必要急務なのは、財政健全化ではなく、官民連携の投資拡大で経済成長スピードを上げることであるということが御覧いただけると思います。  では最後に、財政規律の改革で戦略投資拡大を可能にする必要があるということでお話をいたします。  これまでは、プライマリーバランス、これ八ページ目です、プライマリーバランスの黒字化を目指してきました。しかし、プライマリーバランスの黒字化というのは、将来の経済成長と所得をもたらす投資も税収の範囲内でやれという制約です。戦略投資の拡大の制約になります。そこで、歳出から、意味のない債務償還費と投資支出を除外して経常的歳出とします。財政規律として、この経常的歳出を税収、税外収入の範囲内に収め、経常的収支を長期的に均衡を目指すという形が望ましいということになります。  投資的支出は、将来の経済成長と所得の拡大につながるものですから、税収の範囲内で行う必要はなく、国債でファイナンスしても問題ありません。財政規律として、経常的収支の均衡の上、財政収支は投資的支出の分は赤字であるべきです。投資的支出は多年度で別枠管理する仕組みを具現化し、政府の戦略投資を拡大すべきだと考えております。  私からは以上です。

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