○参考人(小原隆治君) 早稲田大学の小原でございます。
このような大変貴重な機会を与えていただきまして、光栄に存じております。
私からも紙を用意しております。申し訳ないことに、藤井先生のようにビジュアルなものではございませんで、大変無味乾燥な文字列ばかりでございますけれども、お付き合いをいただきたいと思います。
今回の意見陳述のアウトラインを二枚目に書いてございます。
最初に全般的な意見を申し上げ、その上で、主たる疑問点、とりわけ個別具体の制度設計でここはやはり問題ではないか、先取りしますと附則第七条ということでございますけれども、その問題点について述べたいと思います。その他気付いた点は、時間があれば申し上げますし、それから、質疑の時間が十分確保されておると思いますので、場合によっては、ここで申し足りないことはそこで述べさせていただくということにさせていただきたいと思います。
めくっていただきまして、三枚目でございます。
全般的な意見、大きな三つの枠の中の、項目の中の一つでございますけれども、黒ポツで書いてあるとおりでございまして、現在審議している中心の法案、メディアで書いている、メディアで伝えられているその略称を使いまして副首都法案と言わせていただきますけれども、その副首都法案ということに鑑みて、一方で首都を定めた法律というのはございません。首都の何たるかとか、それから首都はどこであるということを定めた法律は、日本法令索引で御確認いただけると思いますけれども、ございませんので、首都を定める法律がないのに副首都を定める法律があるというのは、バランスは余りよろしくはないわなということは思います。
それから、副首都法案にはいろいろな要素がございますけれども、そのいろいろな立法の趣旨と同じ趣旨又は類似の趣旨の既存の法律がございます。それは国会等の移転に関する法律、いわゆる首都機能移転法でございますとか、多極分散型国土形成促進法というものがございますけれども、そうした既存の法律との関係はどうなのか、その調整をどうしているか、検討はなされたのであろうかということに関しては疑問なしとしないということがあります。
けれども、全般的な意見といたしましては、今、藤井先生が富士山大噴火の可能性について言及されましたけれども、首都中枢機能のバックアップ機能を持った地域や、中でも副首都となる自治体を定める意義に関して大きな異論はないというのが一つでございます。
その一方です、大きな異論はないけれども、しかしその一方、この副首都法案と、これを作るんだったらこれも動かさないとうまくいかないという論理必然的な関係には私は全くないと思える大都市地域特別区設置法の改正も一体的に行うやり方、とりわけ附則第七条ということになりますけれども、与党内調整で、議案が提出されるまでにいろんな調整があり、その一体性が薄らいだことは承知しておりますけれども、なお残っている一体性に関して、私は違和感が残る。
その違和感というのは、木に竹を接いだような違和感というだけではなくて、ここに書きましたとおり、憲法があり、地方自治法があり、諸法ができているという、その理念と体系、理念というのは、一言で申して、憲法第九十二条の「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」という、その地方自治の本旨の理念に基づいて地方自治法以下の体系ができているわけでございますけれども、その理念と体系性をゆがめてしまうおそれはないであろうか。委員長が冒頭、忌憚のない意見を述べよとおっしゃっていただきましたので、委員長におっしゃっていただきましたので忌憚なく申し上げると、拙速に走らずに、ここは立ち止まって見直した方がいいのではなかろうかというのが結論的に申し上げたいことでございます。
二番目のところで、主たる疑問点で、二つ白丸をこしらえております。白丸の二つというのは五ページ目とそれから七ページ目で、最初の白丸が、都区制度は首都制度ではないと書いたところでございます。
この間、この副首都法案が提出されるに当たって、それ以前の様々な議論の中で、とりわけこの副首都法案に関して主たる役割を果たされた維新の会の先生方の議論というのをかいま見ますに、こういう前提がなかっただろうか。都区制度というのは首都の制度なので、副首都になれるのは東京都以外で都区制度を適用する道府県だけ、つまり特別区包括する道府県だけという考え方から議論してこなかったか、それは正しい理解であろうかということですが、正しい理解かと申し上げているのは、正しい理解ではないということでございます。
日本で、これから申し上げますけれども、都区制度は元々、首都の制度として始まった経緯はございますけれども、だんだんその首都の性格というのが薄れてきて、今では大都市制度の一つと言ってよろしいと。であるので、大阪府であろうと愛知県であろうとどこでも適用できるというふうにこしらえたのが大都市地域特別区設置法ということでございます。
今、大都市の制度としてあるのが都区制度と政令指定都市の制度でございますけれども、細かいことを申し上げますと、また中核市とか保健所設置市等はございますが、それはちょきんちょきんとしておいて、大きく言うと、都区制度と政令指定都市制度、そういう大都市制度の一つとして都区制度があるということだけなのですけれども、そうではなくて、都区制度は首都の制度だから、副首都になれるのはそれは都区制度を持っているところだけだという、こういう出発点から始まっていないか、それは間違っているだろうということでございます。
それが白丸の結論を先取りして申し上げたことでございまして、その以下、黒ポツでこれまでの都区制度の歴史ということを書いております。
一九四三年に東京都制が、当時の官僚、内務官僚の古井喜実、それから後、東京都知事もお務めになる鈴木俊一さんが中心になってこれをつくったと言ってよろしいかと思いますけれども、東京都制、東京都官制として出発し、東京府と東京市と存する区域において、東京市を廃止して、東京府が東京市を吸収する形で東京都というのができました。東京都制というのは、これつづめておりません。法律のフルネームです、フルタイトルです。東京都官制もそうです、これは勅令でございますけれども。
帝都防衛の目的もあって極度に集権的で、まとめますと、適用地域を東京だけにしているということ、それから極度な集権性があるということにおいて首都の制度という性格が強かったものでございますが、しかし、次のページに参りますけれども、戦後は、東京を冠さない、東京という言葉を使わない一般的な制度として地方自治法の中に埋め込まれました。ほかの道府県の制度と同じように東京都制も地方自治法の中に埋め込まれて、東京を冠さない、形式上はどこでも適用できると。実際、二〇一二年の特別区設置法によって適用できるようになったということでございますが、そういう制度でございます。
もう一つ。東京限定性がそのようにして薄れていくだけではなくて、かつてあった集権的な要素というのがどんどん薄れてきて、特別区が普通の自治体になるどころか、普通の自治体よりも更に強力な自治体になってきたというのが戦後の都区制の改革の歴史でございます。
一九六四年に福祉事務所、七四年に保健所、それから、二〇一六年には児童福祉法等の改正によって、児童相談所、児相ですね、児相も、これは必置、必ず置かなければならないのではないけれど、任意設置でできるようになって、実際、手を挙げた特別区が既に半数あって、半数は児童相談所を設置しております。児童相談所は都道府県か又は政令指定都市しか置けないものだけれども、特別区はもう既に置いているという。そのようにつづめて言うと、東京限定性と集権性は解消して、ワン東京の首都をつくるための首都制度とは言えない制度になったというのが都区制度でございます。
では、もう首都制度として残っているのは何だろうかというと、私が思い付く限りでいうと、警察法に基づく警視庁の制度くらいしかない。そこだけはもう特別扱いしているというところがございますけれども、そんなものであろうと。
そこで、青い字でまとめてありますとおり、副首都だから都区制度が必要とはならないですし、ひっくり返して言いますと、特別区包括道府県だけが副首都になれるのではない。大都市の実態を持ち、大都市制度を持っているところであれば、それはどこでもなれるというふうに考えるのが自然だろうという具合に思うわけでございます。
次いで、もっと個別具体的に、附則第七条関係に参ります。
中でも、附則第七条のうちで、特別区包括副首都の名称変更の特例というところに大きな疑問を持つというところでございます。大都市地域特別区設置法の第十条に次の一条を置く。新設第十一条として、地方自治法第三条第二項の規定にかかわらず、特別区包括副首都の道府県が都への名称変更をする、それは、当該道府県の申請に基づいて国会の承認を経て、内閣がこれを定めることができるという規定でございます。
ここでも、また、私、制度の歴史を専門にしておりますので、元々どうだったかというところで見てまいります。その、にもかかわらずの、失礼いたしました、にかかわらず、何々の定めにかかわらずのその第三条第二項の都道府県名称変更の経緯でございますけれども、戦前、これは地方自治法に先行する府県制の中に埋め込まれていなくて、太政官布告や勅令で、つまり、一言で言えば、国会は手を出せない、そういうところで定められていたということですけれども、しかし、戦後はこれを地方自治法の中に入れて、まず国会制定法で定めていくということになりました。
それで、さらに、第三条第二項のこの名称変更法は憲法第九十五条の地方自治特別法に該当するものと解釈されていて、それは逐条研究でも全てそう書いてあると、これは政府の公式見解であるということでございます。
憲法第九十五条というのは、一の地方公共団体のみに適用される特別法、法律というのは、住民の過半数の同意を得なければ国会はこれを制定することができないということでございます。
つまり、これは、第九十二条で地方自治の本旨というのがありまして、その地方自治の本旨を作ったのは、日本の法制官僚で佐藤達夫さんが中心だったわけですけれども、それは、GHQガバメントセクションとのやり取りの中で、英語の表現としては、ザ・プリンシプル・オブ・ローカルオートノミーということでございます。教科書的に言うと、住民自治と団体自治ということになりますが、その説明は余り正確ではなくて、なぜかというと、それは戦前から言われていたことだからです。地方自治の本旨というのは団体自治と住民自治、これは美濃部達吉以下の行政法・憲法学者がおっしゃっていたことであって、戦後、わざわざ地方自治の本旨と定めなければならないものではございませんでした。
では、そのときの趣旨は何かというと、もう平たい言い方になりますけれども、国は自治体に対して余計なおせっかいをしてはいけない、手を出しちゃいけない。強いて従来の団体自治、住民自治の言葉を使うならば、団体自治の側面に非常にアクセントを置いた言葉であるわけです。
もし、余計なおせっかいかもしれないような法律を一つの地方公共団体、二つでも三つでもいいんですけど、要するに、全部ではない公共団体に、自治体に適用する場合には、それは住民の意見を聞いてくださいね、住民投票してくださいね、こういうつくりであるということでございます。
ですので、自治法第三条二項、憲法九十五条、同第九十二条は一体になっていると。地方自治の本旨を九十二条で書いて、それを裏側から実現するのが第九十五条というような関係にある。これは、第三条第二項、地方自治法ですけれども、それにつながっている、そういう一体的なものであるということでございます。それが申し上げたいこと。
ところがでございますけれども、だとすると、今回、附則第七条によって、第七条のその新設、特別区設置法第十一条を置くべしというあの規定の中のかかわらずということによって、これまでの立法の立て付けであった、まず国会が立法をして、それで民意を問う住民投票をしてという、そういう地方自治法、憲法九十二条、九十五条一体となって、じゃ、名称変更しましょうということをしていたやり方を、特別区包括首都、ごめんなさい、特別区包括副首都議会の議決、申請と国会承認と内閣決定で代えてしまうと。言ってみれば、附則第七条によって地方自治法と憲法を上書きするというようなことが立法の在り方として許されるのであろうかということを私は強く思います。
恐らく、この点に関連して、いや、この規定というのは、実は、都道府県の廃置分合、境界変更を定めた第六条に対して、第六条の二で、やはりこのように特別法による住民投票によるんじゃなくて、第六条の二で、当該都道府県の申出に基づいて、国会承認を経て内閣が決定するという、そういう規定があるではないかと、それに倣ったものだという御意見もあろうかと思いますが、それに関して私がどう考えているかは、後で時間があるときにお答えできればという具合に思っております。
その他の気付いた点に関して、もう時間がなくなりましたので、趣旨としては、できるだけ九十五条を、これまで長らく、一九五〇年前後に一度使われた歴史がございますが、その後軽視されてきた歴史がありますので、それを軽んじてはいけない。今回の立法もそれを軽んじる流れの中の一つであるから、それは見直した方がよろしいということ。
さらに、もう一つは、朝日新聞の世論調査によりますと、急いで成立する必要があるのかということに対して、成立する必要がある二六%、必要がない六〇%。それは、当該法案が主として適用対象と考えていると思われる大阪府においても、必要が四割で必要ないが五割という実態がございますので、ますます今急ぐ必要はあるのであろうかということを強く思う次第でございます。
国会の品位を汚してはいけないと思いつつ、少し駄じゃれで、附則第七条に関しては、これはこそく第七条であるということを申し上げたいということでございます。
以上でございます。ありがとうございました。
小原隆治 の他の発言
2026-07-23 · 参議院沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会
○参考人(小原隆治君) ありがとうございます。
現在の地方自治法第三条第二項を使えばいいということでございます。名称変更に関して、もし一般的にそれを認めるということであれば、府…
2026-07-23 · 参議院沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会
○参考人(小原隆治君) 私は、すぐに違憲である、憲法違反であるという表現は抑制的であるべきかなという具合に思いますけれども、しかし、これまで憲法第九十五条が軽視されてきた歴史という…
2026-07-23 · 参議院沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会
○参考人(小原隆治君) 恐らく今、大阪府市では、いわゆる大阪都を導入すべしという前提に立っていろんな準備を進めておられると思いますけれども、しかし、庁舎をどうするか、区の名前をどう…
2026-07-23 · 参議院沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会
○参考人(小原隆治君) 大都市制度は、これまで、二つのタイプがありということを申し上げました。
その理由というのは、特に戦後ということで申し上げますと、二重行政を省くべしという…
2026-07-23 · 参議院沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会
○参考人(小原隆治君) 御指摘のとおりでございます。
首都制度、都区制度は首都制度であって、副首都とするならその都区制度を使わなければならないという論理立てはやはりおかしいので…
2026-07-23 · 参議院沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会
○参考人(小原隆治君) 繰り返しになりますが、様々な防災のバックアップとしての副首都という側面もあれば、多極分散をする、東京だけではない、東京一極集中ではない国土形成をするという、…
2026-07-23 · 参議院沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会
○参考人(小原隆治君) また一般論の形で恐縮でございますけれども、私、制度の問題、制度の歴史の問題を研究していて常々思うのは、制度にいろんなことを期待し過ぎるのは誤りであると、制度…
2026-07-23 · 参議院沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会
○参考人(小原隆治君) 先ほど、附則第七条ではなくてこそく第七条と申しましたので、その言葉で御理解いただければと思います。…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=小原隆治
MCP: search_diet_speeches(speaker="小原隆治")