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浅岡美恵 ·特定非営利活動法人気候ネットワーク理事長/弁護士

衆議院経済産業委員会(2024-03-29)での発言

第213回国会 ·第第6号号 ·5,797字
○浅岡参考人 気候ネットワークの浅岡と申します。  本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。  私どもの気候ネットワークは、約四半世紀にわたりまして、地球温暖化問題、気候変動問題に取り組んでまいりました。とりわけここ数年は、二〇〇〇年頃からこうした水素、アンモニアを電力部門において利用するという提案がなされるようになりましてから、この問題に焦点を特に強めて議論してまいりました。  私自身は、京都で、弁護士業が本業でございまして、京都議定書以来こうして関わってまいったところでありますが、本日は、こうした気候ネットワークの取組に加えまして、法律家の観点から、弁護士という実務家の観点から意見を申し上げたいと思います。  まず、先ほど、三人の御意見を私も拝聴しておりました。米国やEUのこうした水素に関する大きな支援のお話もございましたが、一つ御説明が足りないのは、こうした国におきまして、発電部門において水素やアンモニアを活用するという方策は全くないということであります。これは大変大きな違いであることを念頭に置いていただきたいと思います。  そういう中で、日本におきましては、一枚めくっていただきまして二ページ目を御覧いただきますと、法律に従って問題を指摘させていただきたいと思います。まず、法の目的でございます。  先ほど柏木先生からも、世界は一・五度を目指すと合意をいたしまして、それに取り組んでいるというお話がございました。ところが、この法律の目的の中には、世界的規模でエネルギーの脱炭素化に向けた取組が進められる中でという言葉があるのみでありまして、気候変動に取り組むとか一・五度の目標に整合させるということはなく、単に、低炭素水素等の供給及び利用を早急に促進するということがあるのみでございます。  振り返ってみますと、二〇〇二年、京都議定書に日本が署名、批准をいたしますと、エネルギー政策基本法が策定されました。この法の目的には、二ページ目に書いてございますように、もって地域及び地球環境の保全に寄与するとともに我が国及び世界の経済社会の持続的な発展に貢献することを目的とすると明確に書いているわけでありまして、地球環境への貢献が経済とうまくかみ合っていくこと、これが将来の方向であると。SプラススリーEという言葉は、これには私は整合していないと思っております。  次のページを御覧くださいませ。  昨年十二月、ドバイでCOP28が開催されました。私もそこにも参りましたが、世界はここでも一・五度を目指すと確認をいたしました。そして、その実現のために、二〇三〇年までに、ここが大事であります、二〇三〇年までに温室効果ガスを四三%削減、三五年には六〇%削減、これはIPCCの報告によるものでありますが、これが必要である、そのために再エネを設備容量三倍、エネルギー効率は二倍に引き上げる、こういう形によって、エネルギーシステムの脱化石燃料化、トランジショニング・アウェー・フロム・フォッシル・フュエル、こういう方向に向かっていくのだ、これを合意したところであります。日本もここに参加しております。  次をおめくりくださいませ。  なぜこのように世界が動いているのかということでありますが、御案内のとおり、昨年は大変暑い、世界的にも最も暑い年となりました。一・五度を目指すというその一・五度に世界の平均気温がほぼほぼタッチしてしまったという状況になりまして、グテーレス事務総長は、地球沸騰化の時代に入ったと言ったわけであります。そして、ここで合意をしたことは二〇五〇年カーボンニュートラルだけではない、そこに至る道筋が大事だ、二〇三〇年にどこまでできているのか、これが問われている、これが国際社会の認識でございます。  次のページを御覧くださいませ。  なぜ一・五度を目指したのかということを確認いただきたいと思います。  今、世界平均では、何年かの平均でいきますと、公式には一・一度か二度ぐらいだと言われていますが、これよりも必ず厳しい気候変動に我々は見舞われるものであります。二度、三度になりますと、大変激甚化した気候災害が頻度も増し、激甚化もしてまいります。こうしたことは人々の生命、健康を脅かすものでありますし、そして、これは人々だけではなくてビジネスの活動環境にも大きな影響を与える。  そういう意味で、パリ協定ができましたときには、ある意味で環境条約として受け止められたところがありますが、今日、パリ協定は人権条約である、これはブラジルの最高裁がそのように判決で書いております。そしてさらに、これは経済条約である、皆さんの世界の経済の基盤となるものだ、こういう御理解をしていただきたい。  特に、IPCCの一番最新の報告では下のこの図のようなものが示されておりまして、我々のような世代と比べまして、二〇二〇年に生まれた子供たちがどれほど深刻な状況の中で暮らさなければならないのか、その将来世代の経験する温暖化は今の対策に懸かっている、皆様方の対応に懸かっている、これも御理解いただきたいと思います。  次、ページをおめくりください。もう時間がありませんので急ぎます。  なぜこうかといいますと、これまでの累積の世界の総排出量が地球の平均気温と比例をしているということでありまして、一・五度にとどめるということは、これから世界で出せる排出量が限られている。五〇%の確率でも五千億トンしかありません。日本に割り当てられるものは、勘定しましても六十数億トンにしかならない。これをどうやって使ってトランジットするのか。この中で水素などもどう使うのかということを議論していただかなければなりません。  次のページを御覧ください。  こうした残余のカーボンバジェットと呼ばれるものを考えていきましたときに大事なのは、二〇五〇年カーボンニュートラルではありません。これは必須でありますが、十分条件ではありません。二〇三〇年までの経路、二〇三〇年にどれだけ削減するのかということであります。  ちょっと時間もありませんので、飛ばします。  次のページ、おめくりください。  そして、そのようなことができるのか。これもIPCCやIEAが既に示しております。先ほどからもお話もありましたように、太陽光や風力は大変ポテンシャルもあるし、経済合理性が何よりも何よりもある。だから世界はこれに動いているわけであります。IEAも、必要な八五%は既存のこうした技術を活用することでできるのだと。水素がなければできないということではないということであります。  次のページをおめくりください。  このように、気候変動対策の、世界の目指していることと整合する話をここで議論していただきたいということであります。  その観点から、法案の問題点の二番目でありますが、ここでは詳しく申しませんが、この法案を読みましても、例えば外国の方がこの法案を読みましても全く意味が理解できないと思います。中身は何も書かれていない。全て経産大臣が決める、あるいは省令に委任するということであります。これは国際社会に示せる法ではないと思います。  次のページを御覧ください。  二〇三〇年には二〇一九年比四三%、二〇三五年には六〇%削減する、これがドバイでの合意でありますが、IPCCはそれを全てのセクターで同じように削減してくださいと言っているわけではありません。発電部門はまず早く削減する経路、左の図は電力などエネルギーセクターの削減の経路であります。また、運輸や建物に関する部分も代替策が可能でありますので、それを次にはやっていかなきゃいけない。これらをもう少し分かりやすく見せたものが、右のIEAの削減の経路であります。世界はこういうスキームで動いている、日本はどうするのだ、これを忘れないでいただきたいと思います。  次に、十一ページを御覧ください。  法案の三番目の問題は、先ほども申しましたように、省令委任ばかりなのですけれども、何しろ対象事業すらここには書かれておりません。この法案の本則には、どうした事業にこの法案が適用されるのか、本則にはないのです。不思議な法案と言わざるを得ません。探しましたら、唯一、附則の中に、附則の二条の二項に、発電部門、ガス事業などという言葉がありますので、これはやるつもりなんだろうと思いますけれども、なぜこのようなことなのか。  発電事業などにおける水素、アンモニアの使用というものは、十一ページの下に書いておきましたように、京大の大城先生が、それは不適なものだ、効率的にもよろしくないものだ、こうしていることでありますが、右の方に置いておりますものは、二〇二一年、第六次エネルギー基本計画を定めましたときの経産省の長期エネルギー需給見通しにおいて示されていた水素、アンモニアの発電部門における使用のプログラム、これが一%の詳細になるわけでありますが、まさにこれがそのまま今回の法案の中に、数字的にも合っている説明がこれまでなされていると思います。  次のページ、十二ページを御覧ください。  このようにして、七兆円のお金をGX投資として出すということが言われておりますが、そのことによって削減できる量は十年間かかって〇・六億トン、一年にしますと六百万トン。これは、CO2の排出量の六%にもなるか、こういうような僅かなものであります。どれほどの経済効果を見込んでいるのか。およそ二〇三〇年目標には遠いということに加えて、経済効果が極めて乏しいと言わざるを得ないものであり、これは発電部門に使おうとするからのことであります。  次、十三ページを御覧ください。  法案の問題の四番目として指摘いたしますのは、低炭素水素という、この低炭素のレベルも法案にはございません。  これまでの審議やあるいは審議会等では三・四キログラムというものが示されておりますけれども、比較しやすいように、ここにグラフをつけておきました、水素、天然ガス、そして、ここで言われる三・四キログラムかもしれないというものと比較いたしました。電力のCO2排出係数も計算をしてみました。二〇%混焼いたしましても天然ガス火力に到底及びません。五〇%混焼いたしましても、とてもとても及びません。これをいつまで、五〇%というと、今回の目標では二〇四〇年ということです、どうやって一・五度目標に整合する日本の排出削減経路を取るのでありましょうか。これは考え直していただきたい。  問題点の五番目、経済的支援であります。  先ほどから何度も経済的支援、価格差に着目した支援とおっしゃいましたが、不思議なことに、この法案には全くその言葉がございません。どういう法案なのかと、これは本当に不思議でございます。  いろいろ書かれておりますけれども、JOGMECが助成金を出すとしか書いていません。三十五条には、国は資金確保に努めるとはあります。どんな財源でこれを賄おうとするのか、どんなスキームか、これをどうやって海外に説明するのでしょうか。いや、省令でこうなんですと言っていくのかもしれません。これは海外からは奇異な目で見られる、そういうことを御留意いただきたいと思います。  次、十五ページを御覧ください。  この法案の安全性への配慮というのは、私どもの、法律家の目から見ますと不思議に思えます。  例えば、三十六条二項は、公共の安全の維持、災害の発生の防止を図るため必要な最小限度のものしかしないと。わざわざなぜ最小限度などとして安全対策に書くのでありましょうか。  次、時間もありませんので本当に飛ばしますが、法案の問題の七番目でありますけれども、五条、六条に協力義務というものがあります。自治体に協力をさせる、また関係事業者に協力させるというのがありますが、一般事業者の協力義務、これは何を求めているのでしょうか。このような方策を取りたくないという事業者もたくさんいらっしゃる。国際競争に耐えていくためには今からこんなことに頼ってはいけないと考える人たちなどにどのような協力を求めたいという趣旨なのか、よく議論いただきたいと思います。  次、十六ページを御覧ください。  これらの法案の総括的な問題ですけれども、五年後見直し規定というものが附則の中にあります。今回の水素法とそれからCCSに関する事業法の見直し規定を比べていただきたいと思います。水素法にはわざわざ第二項がございます。これは、読んでまいりますと、電気やガス事業で水素やアンモニアの導入が進んでいなければ、それを進める方向にしか見直しはしないと読む人がいらっしゃるのではないでしょうか。大変不思議に思います。  もう時間も参りましたので、最後のまとめは、基本は省略いたしますが、水素社会推進法という略称がつけられておりますが、今国民の中に、水素社会はどのようなものかというコンセンサスがあるでしょうか。大変大きな誤解を招きかねない、ミスリーディングではないかと思います。  そしてまた、最後に一つ申し上げたいのは、二〇二五年にはパリ協定に基づくNDCを提出し直さなければなりません。そして、第六次エネルギー基本計画の改定時期も今年迎えるということになっております。  この法案は、第六次エネルギー基本計画に係る非化石エネルギーに化石由来の水素を位置づけるとか、そして、GXでこうした電力事業にも多大の金を出していくとかに加えまして、更にこうした形で電力事業にお金を出していくということについてまとめたものであります。この上で、どうやって第七次エネルギー基本計画が前向きに改定されるのでありましょうか。再生可能エネルギーの抑制になっていくこと必定ではないかと懸念をいたします。  ということで、いろいろ皆様から期待がございましたが、大変大きな懸念があることも踏まえて御審議いただきたいと思います。  以上、ありがとうございました。(拍手)

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