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樽井功 ·北海道農業協同組合中央会代表理事会長

衆議院農林水産委員会(2024-04-17)での発言

第213回国会 ·第第10号号 ·5,056字
○樽井功君 ただいま御紹介いただきましたJA北海道中央会の樽井と申します。よろしくどうぞお願いします。  まず、先生方におかれましては、本当に大変お忙しい中、札幌までお越しをいただきまして、大変ありがとうございます。JAグループ北海道の意見を反映させていただきましたことに対しまして、心から厚く感謝とお礼を申し上げたいというふうに思います。  それでは、早速ですけれども、私の方から考え方を申し上げさせていただきます。  北海道農業の歴史、概要は既に御案内のことと思いますので、私の方からは、北海道農業が直面している問題について若干申し上げ、その後、基本法改正案について数点に絞って御意見を申し上げさせていただきたいというふうに思います。  まず、北海道農業が直面する問題でありますけれども、国際紛争や急激な円安の進行による飼料、肥料を始めとした生産資材価格の高止まりのほか、水道光熱費等の上昇が農業経営に与える影響は甚大なものとなっております。  とりわけ、輸入飼料価格の高騰や副産物価格の下落による酪農経営の収支悪化への影響が大きく、酪農家の搾乳中止が顕著であり、ホクレンの受託戸数では、令和六年二月末において四千四百八十五戸と、前年比で二百十三戸減少しております。農業経営上の問題もありますけれども、農家戸数が減少すると、地域に人がいなくなる、いずれ学校が廃校になる、また子供たちが地域から出て地元に帰ってこなくなる、病院、商店がなくなる、人が住めなくなるという地域のコミュニティーの存続、改正案で言う食料安全保障の確保、環境と調和の取れた食料システムの確立、農村の振興に支障を来すことが懸念されております。  酪農に限らず、北海道における農業者の一戸当たりの経営耕地面積は、平成十二年の十八・三ヘクタールから令和四年の三十四・六ヘクタールにほぼ倍増した一方で、農業経営体数は、基本法制定時の、平成十二年の六万四千七百三十一戸が、令和四年には三万三千戸まで半減いたしました。酪農地帯だけでなく、水田地帯、畑作地帯においても地域のコミュニティーの維持が問題になっております。  これは、現行法が効率的かつ安定的な経営体の育成に大きくかじを切った当時と様相が大きく変わっております。基本法は農業の憲法でありますので、我々農業者が、後継者や就農を希望する人に、自信を持って農業をやってみたいということが言える、そういう地域社会をつくっていきたい、そういう思いでございます。  食料安全保障の確保ということです。  まずは、冒頭の御挨拶でも申し上げましたとおり、改正案に食料安全保障の確保が明記されるなど、JAグループ北海道として大筋で改正案を評価させていただいております。  その上で、初めに、改正案第二十四条の不測時における措置であります。  まず、不測時における措置が重要であることはもっともであります。しかし、問題は、平時からの食料安全保障をどう確立していくかが重要であります。平時からの食料安全保障の確立に向けては、安定して生産し、流通し、消費され、結果として農業者の所得が確保されるというサイクルが円滑に回ることが大切であります。  ついては、食料・農業・農村基本計画で定める食料自給率、自給力などの各種目標の達成が必要不可欠であることから、これまで以上に生産現場の実態、意向を的確に反映した基本政策へ再構築及び強化を図ることが重要です。  次に、改正案第十七条の基本計画の見直しについてであります。  現行法が制定されました平成十二年以降、食料自給率目標は達成しておりません。また、基本計画に定める品目の生産努力目標も、ほぼ全ての品目で未達が続いております。  そのような中、基本計画の実施期間中でありながら、生産現場に生産努力目標以下に生産抑制を強いられている状況が発生し、多くの農業者に閉塞感が蔓延、農家戸数が減少し、食料安全保障の確保に支障を来すことが懸念されます。  そこで、是非とも国は、なぜ自給率目標や生産努力目標を達成できなかったのかという基本計画の検証を行い、過去の基本計画で掲げた目標値に責任を持つとともに、食料安全保障を強化できる、実効性のある基本計画とすることが必要であります。  次に、改正案第二条の食料安全保障の確保についてであります。  食料安全保障の強化には、担い手が豊凶変動等の農業特有の事情を気にすることなく将来展望を描き、創意工夫を持って営農を継続し、生産された農畜産物が確実に消費されることが不可欠であることから、予期せぬ需給変動や生産環境の変化を緩和するための制度、仕組みづくりの確立が必要です。  具体的には、過度な輸入依存のリスクが高まる中、現行の備蓄制度の検証、見直しを行うとともに、備蓄品目の数量、用途の拡充や備蓄品目の国産への代替促進を図り、食料安全保障の強化に資する備蓄体制の確立が必要でございます。  次に、改正案第二十二条にあります農産物の輸出促進についてであります。  我が国においては、今後、更なる人口減少や高齢化に伴う国内市場規模の縮小と、世界人口の増加に伴う海外市場規模の拡大が予想されております。そのような中、国内生産基盤の維持と農業所得向上に資する農畜産物、食品の輸出の更なる促進に向けた支援が必要でございます。  次に、改正案第三十三条にある国民における農業への理解をどう深めていくかでございます。  農業の果たす役割や価値は、幼少期から学校教育の中で学ぶ必要がございます。そこで、国において、各省庁連携の下、食育基本法に基づく食農教育のより一層の推進を図るとともに、今まで以上に食料安全保障に関する国民理解醸成を図ることが必要です。  次に、改正案第二条、第二十三条にある良質な食料が合理的な価格で安定供給されることや、食料の持続的な供給に当たる費用の考慮についてであります。  合理的な価格形成には合理的な費用の視点が必要である旨が改正案に書かれております。現行の基本法を制定した当時においては、農畜産物価格が徐々に低下していくことは予想されておりましたが、農業における近年に見られるような生産コスト上昇までは想定されなかったと思われます。  生産コスト増の要因には、ロシアのウクライナ侵攻や円安もありますが、世界的な食料需要の拡大が根本的に背景にあると思います。このことについては、現在、国において、生産から消費までの関係者を集めた適正な価格形成に関する協議会で議論されておりますが、食料システム全体で再生産可能な農業所得の安定確保に資する適正な価格形成が可能となる法制度の早期実現を図ることが必要です。  あわせて、改正案第三十九条には、国は、農産物の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずるとあり、さらに、第四十二条には、国は、農業資材の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講じるとあります。このことは、農畜産物の価格変動だけでなく、生産資材価格の高騰に対しても影響緩和対策を講ずるという意味と思われます。  ついては、我が国の食料安全保障の強化には、農地の総量確保と生産性向上を図り、再生産可能な農業所得を安定確保するということが必要不可欠であります。そういった観点の下、生産現場では生産コスト低減に取り組み、価格は適正な水準を実現し、それでも足らざる部分は、既存の経営安定対策の検証を行った上で、法整備を含めた恒久的な経営安定対策及びセーフティーネット対策の構築、さらには農地を適正に維持することに着目した日本型直接支払い制度の再構築が必要であります。  次に、農業の持続的発展であります。  改正案第二十七条にある専ら農業を営む者等による農業経営の展開であります。  このことについては、食料安全保障の強化に向けて専ら農業を営む者の役割を明確化した上で、高齢化等により生産基盤の維持が困難な地域が存在することから、地域農業の将来像の実現に向けて取り組む農家経営の農業者と併せて、新規就農者や雇用就業者、またJAの農作業の受託組織等といった多様な農業人材の育成、確保が図られることが食料安全保障の確保、農業の持続的発展、農村の振興に寄与するものと思います。  次に、改正案第二十八条の農地の確保及び有効利用についてであります。  我が国が輸入依存から脱却を果たし、平時からの食料安全保障の確立を実現するためには、国が中長期的な国内需要、国内生産の見通しを立てるとともに、基本計画上において、作物ごとの方向性と農地利用の方向性を一体的に生産現場へ明示することが必要です。  その上で、各地域の地域計画の策定と地域農業の振興方策の実践については、それぞれ独立に運用が図られていることが多いことから、地域計画と地域の農業振興方策等の連携を促し、地域関係者が一体となって地域課題へ対応を図れるよう、国が後押しすることが必要です。  あわせて、農地の総量を確保するためには、農地の受け手不足の状況を発生させない施策が必要であり、受皿が不足した際は、地域の実態に合わせて活用可能な施策が必要です。  改正案第十九条にある食料の円滑な入手の確保の中では、食料の輸送手段の確保の促進が明記されております。  北海道は、全国に向けて農畜産物を安定供給する役割を担っており、生産した農畜産物を府県に運んで初めて消費者の元に届きます。このことについては全ての安全保障、食料、経済、防衛上で強靱な物流、輸送体制の確立が必要不可欠であり、特に、我が国の国土の二二%を占める広域分散型地域構造である北海道においては、物流の二〇二四年問題や環境負荷低減の面からも、鉄道の維持を基本とした流通体制の構築を最優先で進めるとともに、その上で、その他の輸送手段の強化も併せた万全な物流体制の構築を行うことが必要であります。  あわせて、物流の二〇二四年問題への対応に向けては、産地にコスト負担が集中しないように、適正な価格転嫁の仕組みの構築、デジタル、DX化等の推進に加え、一貫パレチゼーション輸送等の拡大やストックポイント、農畜産物の中継輸送拠点の整備等への支援を拡充することが必要であります。  次に、環境と調和の取れた食料システムの確立であります。  最後に、需要が期待される食料、自給飼料などを安定生産すること、農業における環境負荷低減、この二つをいかに両立させるかが重要でございます。JAグループ北海道といたしましても、この両立は言うはやすく行うは難しですが、両立に向け、生産現場は行動変容に取り組んでおります。  例えば、本日午前中に子実コーンの視察を先生方もされたと思います。需要が期待される食料や自給飼料を選択し、合理的な輪作体系を構築することがあります。また、化学肥料等を低減し、家畜ふん尿の資源化、堆肥化などの更なる有効活用や、安全性を確認した上で汚泥などの未利用の資源を有効活用していくことも重要となってきます。  また、新品種の導入やスマート農業を進めるなど、農業現場の技術革新を進めることも重要です。さらに、バイオガス発電や米をプラスチックの代替とする技術であるライスレジンなどに取り組むことで、これらを両立したいと考えております。  最後に、みどりの食料システム戦略において掲げた化学肥料、化学農薬の削減、温室効果ガスの削減に向け、国は生産現場の取組を強力に後押しする必要があることから、環境負荷低減の取組にインセンティブを設けることが必要です。  あわせて、エネルギー自給率も低い我が国においては、農業から生み出される再生可能エネルギー等の有効活用について、より一層積極的に検討を進めるとともに、持続可能な循環型社会の構築に向けて取組を後押しするための予算の拡充と政策的な支援が必要です。  このような考えを是非とも考慮していただくことをお願いし、我々JAグループ北海道といたしましても、食料安全保障の強化に貢献し、持続可能な農業を確立していく所存であることを申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)

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