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結城恵 ·群馬大学大学教育・学生支援機構教授兼情報学部教授

衆議院法務委員会(2024-05-14)での発言

第213回国会 ·第第18号号 ·5,539字
○結城恵君 ありがとうございます。群馬大学の結城でございます。  お手元の資料に基づき御説明させていただきます。  まず、私どもの意見陳述の骨子から説明させていただきます。  二つの法律案がございましたが、最初の出入国在留管理及び難民認定法の一部を改正する法律案につきましては、私は賛成でございます。これは、外国人にとっても雇用主にとっても利便性、個人情報の保護が強化されているからです。  続いて、出入国管理及び難民認定法及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、基本的には高く評価しております。理由は二つございまして、一つは、外国人のキャリアアップの筋道を明確化していること、二つ目は、外国人の人権への配慮が行われていることです。  しかしながら、これらが実際に展開というふうになりますと、幾つか障壁になることが予測されます。その理由は、以下の三点が不明瞭であるという点です。まず第一に、多文化共創のカウンターパートとしての日本人の意識啓発、役割はどうなっているのか、第二に、外国人労働者にとってジャパニーズドリームは存在するのか、第三に、消滅するとも言われている自治体が集まる地方に活力を生み出す仕組みづくりはできているのか、これらが明らかではないからです。  そこで、今日の私からの意見陳述は、障壁の背後にある前提の指摘と、障壁を取り除くためのヒントを含め、意見陳述をさせていただきます。  さて、申し遅れましたが、私は群馬大学に来て二十五年になります。そして、ここに来たときにまず思ったのは、この日本地図を思い浮かべました。当時から人口減少ということが言われていましたが、群馬は、この色で見ていただくと分かるように、比較的中程度というところになります。しかし、同時に、都心に人が流れていくという特性も持っています。この地域でモデルがつくれれば、つまり、人口減少を食い止める、しかも都心に人々が流れないというモデルがつくれるならば、こんなにいいことはないだろうし、いろいろな地域にモデルとして説明ができるのではないかと考えました。そこで、私どもは、多文化共生と就職支援で地域定着という志を持って取組を進めてきました。  なお、私の取組は、最後の二ページになるのですが、参考資料としてつけております。ここにざっとまとめておりますが、これを御覧になって分かりますように、私は、外国人児童生徒、それから外国人留学生、そして定住外国人の人たちの高齢化の問題については扱ってきましたが、今回大きなテーマになっている技能実習生については余り深く関わっておりません。しかしながら、ここまでの二十五年間の積み重ねの中で恐らく共通するものがあるということを実感しておりますので、それについて説明をさせていただきます。  では、二ページ目を御覧ください。  外国人労働者のキャリアアップの筋道の明確化と人権への配慮ということで、高く評価するというふうに申しました。  私は、国家資格、キャリアカウンセラーでもございますので、この取組が表明されたときに、非常に面白い、ありがたいと思いました。なぜかといいますと、これは、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の中の図に出てきているのですが、ライフステージがずっと上がっていく長い過程の中で支援していくという方針が明確化されたところです。  ところが、見落としがちなことは、それぞれのステージの移行過程に転機が訪れるということです。この赤丸のところなんですけれども、実はここにたくさんの問題があります。ここでうまく移行しなければ、いろいろなことが悪い方向に動くということがよくございます。では、ここをどの部署が、あるいはどの省庁が担当するのかというところも曖昧になってしまいます。すなわち、省庁連携、部署連携というのが非常に重要な部分で、今後は、こういったキャリアアップというのはいいことなんだけれども、よりきめ細かくステージの移行過程、転機をどういうふうにサポートするかということを考えていかないと、いろいろな問題が起きてしまうかもしれないというふうに考えました。  それでは、次に、予想される障壁、その背後にある前提、求められる方策について少し考えてみたいと思います。  まず第一点、多文化共創のカウンターパートとしての日本人の意識啓発、役割はという問いです。  日本人は冷たいという外国人の声をよく聞きます。その実態を一緒に見てまいりたいと思います。  結論から言うと、日本人(受入側・住民)の意識や行動は本法案の円滑な施行の障壁になり得ると考えています。  その理由をお見せします。三ページを御覧ください。  ここに書いてあるデータですが、実は、二〇〇六年に群馬県からの御依頼をいただいてアンケート調査の設計をさせていただきました。そのときの問いですが、日本人住民と積極的に交流したいと考える外国人住民の割合、一方、外国人住民と積極的に交流する方がよいと考える日本人住民の割合、さらに、有事のときのことを考え、近所で親しくつき合う日本人がいると答えた外国人住民の割合です。  二〇〇六年度は私が研究代表者としてこの調査をし、ありがたいことに、群馬県さんが二〇二〇年にこの質問項目をもう一度組み込んだアンケート調査をしてくださっています。すなわち、この項目について経時的な比較ができることになります。御覧になってみてください。外国人住民は、より日本人住民と交流したいと考えているということがよく分かります。一方で、逆に、日本人住民は、外国人住民と交流しようという割合は余り高くありません。一割程度です。近所で親しくつき合う日本人がいると答えた外国人の割合もそれほど伸びていません。  ここから言えることは、日本人住民は冷たいと言われてもしようがないかなというふうに思われます。  さらに、NHK、二〇一九年の第十回日本人の意識調査を見ていただくと、これはそもそも何年間かの比較をしているんですけれども、交流さえないと言っている日本人の住民が約半数いるということです。外国人との交流を半数の日本人がしていない、この実態をどう考えるかということになります。  こういったことが起こる背後には、ある前提があるように思います。  本法案は、外国人を育成就労、特定技能一号、二号として受け入れるために、外国人を対象とする育成、管理、保護の仕組みを明示するものであります。外国人は、日本語教育を受けることや、生活や就労ルールの遵守が前提となっています。では、受入れ側となる日本人には遵守するべきルールはないのでしょうか。この点については一切書かれていません。  求められる方策は、外国人と日本人が共に暮らし、働くという意識の醸成、そして、安定的な関係づくりを目指す基本方針も併せて盛り込む必要があるのではないかと考えます。  次のページを御覧ください。2、外国人労働者にとってジャパニーズドリームは存在するのか。  外国人労働者の感情を考えてみましょう。よく私たちは言います。人手不足を補う。これは非常によく繰り返しますが、外国人の方々にとっては失礼な話ではないかなと思うこともよくあります。外国人労働者が日本で働き続ける動機をキープしてもらわなくては選ばれる日本にはなりません。  ここで根拠になる、参考になる議論が幾つかあります。  ハーズバーグの二要因理論では、幾ら賃金や労働条件をよくしても、不満は減るけれども満足度は上がらないというデータを出しています。つまり、満足度を上げるには労働者の動機づけをしっかりとしないと、満足して日本にはとどまらないということが示唆されるわけです。  続いて、マズローの欲求五段階説を見ても分かります。マズローは、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求というふうに、最低限満たされるものが一つ一つ満たされていって人は上の段階に上がっていく。つまり、そこでは、自分が認められる承認欲求であったり、社会に貢献したり自己実現をしたい、さらには、日本のためになりたい、その企業のためになりたいという気持ちになるということは、そこまで支援をしていかなくてはなりません。  ところが、今まで出てきたいろいろな施策を見ても、社会的欲求のところまではフォローしていますが、その上のところまでの具体的なものはほぼ出ていないように思われます。その背景には何があるかというと、私たち日本人は、つい、何々してあげるということで欠乏欲求を満たそうとしています。これでは外国人住民も自立しません。  求められるのは、育成就労から特定二号まで、キャリアアップの筋道を明確にしているが、外国人労働者の承認欲求や自己実現欲求を満たすような基盤整備、支援システムが必要となるということです。  それでは、具体的にどう考えるかということになります。  とにかく人の感情によく敏感になりながら、人手不足だから受け入れるという表現は、これからやめていった方がいいのではないかというふうに思います。共に一緒に築いていく動機づけを多様性を持って考えていき、地域活性化を図るということです。  最後に、3。自治体が非常に苦しくなっている地方に活力を生み出す仕組みがあるのかということですが、ここに一つの事例をお話ししたいと思います。  私どもが担当している文部科学省認定、留学生就職促進教育プログラムのグローカル・ハタラクラスぐんまプロジェクト、群馬県が行っているものです。  実は、始める前の二〇一四年度の実態をここに示しております。群馬県に残りたいと言っていた外国人留学生は一六・四%でした。東京に行くという人たちもいますが、約半数弱は国に泣く泣く帰っていました。企業はどうかというと、採用してもいいよと答えるのは一七%程度です。多くは、採用しないとはっきり言っています。  この実態はどう変わったか。二を御覧ください。  実は、二〇一五年度の調査ではこのような結果が出たのですが、私たちがGHKGという仕掛けを入れたところ、群馬県内への定着率を六倍に上げることができました。また、国が三割から五割にせよという日本での就職率は、ほぼ一〇〇%達成することができました。これは何かというと、人材育成カリキュラムを展開したことです。  今回、技能実習生も育成就労というふうに言っています。育成するということは、育てる、人材育成カリキュラムを入れ込むということです。それは効果があるはずです。きちんとやれば効果が認められます。  この一部受講というのは、日本語に特化したトレーニングだけを受けた学生です。そうすると、かなり下がってきます。今、日本語教育の論議が非常に多いですが、これだけでは十分ではないのです。それがこのデータから分かります。また、何もしなければ、二〇一五年度よりも状態は悪くなっているということが分かると思います。  さて、このプログラムは二百五十時間というかなりハードなものです。多くの学生たちが授業以外に、異なる大学、異なるキャンパスから集まってトレーニングを受けています。その学生たちが実際にやってみる。キャリア教育を受け、コミュニケーション教育を受け、いろいろな企業様の応援をいただきながら、二週間の集中的なインターンシップを二度やる中ですごいねと褒めてもらえる。自治体へ行くと、留学生、いいじゃないかと言ってもらえる。家族のように接してもらえる。そういった中で、自分はこの地域で必要とされている、感謝されているという実感を持つようになります。そして、自分がこの職場で必要とされているかもしれないというふうに、群馬で働くイメージを持ち始めます。だから定着していくわけです。  こういった心を捉えるということを技能実習生、育成就労、それから特定技能一、二にどういうふうに組み込んでいくかが課題です。これは大学だけでできることではありません。コンソーシアムを設けまして、今日いらっしゃる群馬県さん、大泉町さん、伊勢崎市さん、いろいろな方々が入っていただき、産官学金でけんけんがくがく議論をしながら、さらに、それぞれの役割分担をしながらチームになることでやっていきます。  八ページ目を御覧ください。特に今日は政治家の皆さんもいらっしゃるので、この例を最後にお話ししたいと思います。  ウィン・ウィン・ウィンで持続可能な循環できる仕組みづくりということで、非常にいい例だなと思いました。これは文部科学省と法務省が連携しているものです。  文部科学省が今申し上げた留学生就職促進教育プログラムをずっとやっていく中で、JASSOが奨学金を出します。土日もなく学生たちは一生懸命頑張りますので、アルバイトをしなくても進められるようにサポートしてくれます。そして、そういったところでトレーニングした学生を採用した企業は、法務省から在留資格変更手続における優遇措置が受けられるというふうに制度化してくれました。そうするとウィン・ウィン・ウィンになるので、このプログラムができるまではお金がかかりますが、その後はうまく循環していくということを実感しています。それほど経費はかかっていきません。こういったことを今回の法改正案の中でうまく酌み取って、そういったシステムが生まれることを心から願っております。  御清聴ありがとうございました。

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