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竹信三恵子 ·和光大学名誉教授/ジャーナリスト

参議院国民生活・経済及び地方に関する調査会(2024-02-21)での発言

第213回国会 ·第第3号号 ·8,037字
○参考人(竹信三恵子君) それでは、ちょっと簡単に始めていきたいと思います。  今日、たったの二十分なので詳しいことはなかなか話せないと思いますけど、図表をお手元にお配りしているので、これが早くできるかなと思います。レジュメはちょっと少し詳細になっているので、図表の方が分かりやすいかな。これですね。こういうものですね。ということです。  これで見ますと、今日お話ししたいことは、基本的には二点だけです。  賃上げと言っていますが、これ、女性の賃金上がらないと賃金上がりません。そこが割と忘れられている。そのことがまず一つ大きな問題で、じゃ、どうするのかという問題になってきます。  二つ目が、いろんな手だても取られてはいるんですけれども、説明の付かない賃金格差が結構たくさんあって、ひょっとしたらこれは性差別とかそういったものをきちんと立て直さないと解決できないかもしれない、それを余り逃げないで直視した方がいいかもしれないということですね。この二点を主な論点で簡単に御説明をしたいと思います。  ということで、まず日本の賃金の状況というのは、もうお分かりの話かと思いますが、図表でいいますと図表一のように、先進国は右肩上がりに大体いろいろあっても上がっていますが、日本は低迷、調査によっては下がっているというケースもありますが、そういう状況にあるというのが図表一です。  これ、十五年ぐらい前ですかね、そのときには、二十年ですかね、グローバル化があって、国際競争激しくなって、人が増え、人件費の競争が厳しくなっているから下がるんだという、結構そういう言われ方もしていたんですね。しかし、これで見る限りほかの国々はそうはなっていないので、もっと別の要因もあるんじゃないんですかという、そういうことを一応申し上げたかったためにこれを付けました。  次に、図表二なんですけれども、そこに出てくるのが、やっぱりパートとか非正規の賃金の低さなんですよね。  それで、これ、いろいろ書いてありますので簡単に言いますと、正社員とかフルタイムも下がっているんですね、全般に。男性も実は低下傾向にあります。これは、やはり産業構造が変わっていたりとか少子高齢化で働き盛りが減っているとか、影響はあると思います。  ただ同時に、このグラフ、図表二で分かりますように、パートの数が急速に増えているということですね。これ、九三年に一四・四%だったものが二二年にはもう三割超えています。そういうところから見て、これパート労働者の割合なんですけど、それで見ていくと、その影響が非常に実は大きいということですね。パートの給与総額は、数が増えているから増える、あと最低賃金の増えている影響もプラスの効果もあるとは思いますけれども、というようなことが言えるわけなんですけど、とにかくパートとか非正規の賃金の水準が男性のフルタイムに比べて低過ぎるので、そこが増えていくとその分下がっちゃうということになるわけですよね。これ、お分かりでしょうか。ですから、女性が活躍すると言うんだけど、その女性の賃金が仕事に見合ってちゃんと増えていないと、むしろ活躍すればするほど平均が下がる可能性があるということですね。  そういうふうに言うと、じゃ、女性のスキルを良くすれば、上げればいいじゃないかというふうによく言われるんですけど、スキルが問題になっているケースもありますけど、スキルがあっても全然上がっていないというケースもたくさんあるんですね。典型的なのは介護とかそれから保育とか、そういう公定価格で押し下げられているような福祉、医療関係はスキルもかなりある人たちがやっていますし、それから、これもちょっと特殊かと思われるかもしれませんけど、非正規公務員のこれ四分の三、女性なんです。八割近く女性なんです、非正規公務員って。御存じだったでしょうか。それで、その非正規公務員は、実は、相談支援業務といってDV相談とか物すごくレベルの高い相談をしていますが賃金が安いという、そういう状況にあるわけですね。  これは、総合的にはいろんな要件はもちろんあるんですけど、基本的には、女性の賃金は安くても大丈夫なんだという根強い思い込みというのが社会に蔓延していて、私が多分こう言っても、いや、そんなことないでしょう、女の人は大丈夫ですよっておっしゃる方がいらっしゃると思われるぐらい、あちこちで聞きます。私、ジャーナリストなものですから、単に数量的な調査だけだと人々が何を陰で言っているかというのは見えてこないんですよね。陰口は調査では分からないです。  それで、陰口ベースで見ると本当にそういうことが普通に聞こえてきて、上司に、パートの人とかにしても非正規公務員にしても、来年度の契約更新どうですかね、お願いしますよというふうに言うと、何て言われていることが多いかというと、余りあからさまには最近言われなくなっていますけど、あなた、まあいろいろあっても世帯主じゃないから大丈夫だよねって本当に言われているんですね。世帯主じゃないというのは、夫がいて、首になってもあなたは困らないから、まあ契約更新なくても大丈夫でしょうと言われていたり、それから、最近では人手不足なので余り言われなくなりましたけど、数年前までは、実際、女子学生なんかに、仕事がなくて困っていると言うと、結婚すればいいから女は楽だよねって本当に言われていた時代、時期というのがそんなに大昔じゃなくてあります。それ、建前で言ったら絶対言いません。ちらちらと出てくるという、そういうことなんですね。  もう一つは、家計補助という考え方があって、女性の賃金は所詮家計補助なので、なくても誰も困らない、夫の賃金があるからって、これも言われています。  これ、実際、ある大手の外食産業のチェーンで今裁判が起きていて、コロナのときに休業手当を支給してくれなかったという裁判なんですね。その方は、一日五時間働いて大体月十万円ぐらいの収入があった方がゼロになってしまったというそういう人で、休業手当出なくて非常に困ったと。で、その十万何に使っていたかというと、保育園の保育料、旦那さんがその方は転勤していて、転勤のためのいろんな住宅費とか最近会社が出してくれないらしくて自分でやっていたんですね。だから、そういうものに夫の賃金は消えてしまうんですね、夫の生活費、住宅費、住宅ローンと。で、彼女の十万円が保育料とか子供二人と自分との食費とかそういったものに消えていく。だから、これがなくなるというのは物すごい重要なことなんですよ、大変なことなんです。  でも、裁判の中で会社が出した準備書面は、原告のような仕事というのは家計補助であると、夫もいる家計補助なのだからそんなに深刻な問題ではなくて、会社がそれに対してちゃんとした措置をとらなかったのは仕方がないというか余り問題ないのだという趣旨の準備書面が出ています。今ですよ、今、この時代に。  そういうことが実際に平気で横行していて、そうなってくると、図表三のように、これ、女性が、ちょっと細かいんですけど、女性は上がっていっているけど男性は全般に下がりぎみというのは何かというと、男性のようなフルタイム系のお仕事は賃金がやっぱり下がっていっているんですね。さっき言った産業構造とかいろんな問題があります。労働組合の組織率が下がっていて賃上げの力も下がっていますというところもあります。  女性が上がっているというのは、やっぱり最低賃金すれすれのところで張り付いている人が多いので、最賃上がると何となく上がっていくというのもありますし、それはもちろん女性活躍の中でそれなりのお仕事に就けるようになった人が増えていっているということも全くマイナスではなくてあると思います。  でも、ベースが低過ぎるんです。だから、そこがちょこっと上がっても、男性の下がっていった分をカバーして日本全体の賃金を上げるという方向まで行かないぐらいのレベルなんです。だから、ここを何とか引き上げなきゃいけない。  例えば、この右側に棒グラフがありますけど、これ二〇〇三年から二〇一三年までのグラフなんですね。これで見ると、これ男女共同参画白書のを取ったんですけど、これで見ると、全産業で見ると、この十年間で女性は百四万人就業者が増えています。男性は百九万人減っています。ということは、この期間、男性の、少子高齢化、働き盛りの減少なんかで減った分を女性が進出して補っていたんだということが見えてくるグラフだと思うんですね。  産業別に見ると、じゃ、どこが増えているのかというと、この医療、福祉ですよね。ニーズがありますから、実際、今。この賃金がすごく安いというのは皆さん御存じだと思います。とすると、例えば女性の平均賃金を見て六割ぐらいと考えた場合、この百四万人の人が増えた分が百九万人減った人の六割分ぐらいしかもらっていないという、雑駁な計算で申し訳ないんですが、イメージとしてはそういうことですよね。  ということは、そこをちゃんとしない限り、しかもそこは、今申し上げたように、スキルが低いからだけじゃない要因で高くないんですよ。とすると、これを何とかしないと日本の賃金は上がらない。女性活躍すればするほど、下手をすればですけど、下がってくる可能性があります。これ私、かなり重要なこの社会の問題点、壁だと思っているんですね。  それで見ていくと、そうはいっても、じゃ、女性を上げましょうって政府も頑張っているし、いろんな案が、策が出てきていますけれども、例えば、何が問題でなかなか賃金上がらないのかということが、これ厚労省のガイドラインで出ているものを借りてきましたけど、勤続年数と職階が大きいというふうになっていて、やっぱり子供できたりしたりいろんなことで辞めちゃうから、そこで昇進できないとか、勤続年数の、年齢給上がらないとかもちろんありますし、職階は昇進できないということなんだと思います。  それについて、下の図表五で見ると、これは、よく言われている、勤続年数が、じゃ、同じなら昇進できるのとか、学歴はどうだろうかということを見てグラフを作ってくださったものです。これで見ると、大卒男性と高卒男性は年を追っていくにつれて課長以上割合が増えていっているんですが、大卒女性、高卒女性はちょっと増えているけど余り上がっていないというの分かりますよね。  これ、大学の女子学生に見せるとびっくりして、えっ、大学を出ても高卒男性より低いんですねみたいな、そういうような反応になって出てきてしまうので、ちょっとすごいグラフだななんて思いますが。つまり、学歴とか勤続年数でも説明できないものが何かあるわけですよね。  次の、資料一と書いたものがあるんですけど、四ページ目ですね。じゃ、何なのか、それはということで、例えば一つ、いろんな事例がレジュメの方には書いてあります。一つが、子育てについての懲罰的な措置と言ったらいいんでしょうか。これ、二〇一一年、ちょっと古いんですけど、朝日新聞が出した、主婦派遣がはやっていて、これは大変メリットがあるという記事です。肯定的に書かれているんですけど。その中で、何で主婦派遣がいいかというと、それまでのスキルもあったり非常に役に立つと、優秀であるということが書いてあって、しかし、この人たちは子育てがあるので、働く時間や場所などの都合を聞く分、主婦の時給は割安にできると書いてあるんです。つまり、その人たちは、働く時間や場所の都合を聞いて、わがまま、かぎ付きわがままを言っているので、時給は安くしてもしようがないと働く側も思っているし会社も思っている。そういうことをアピールして、派遣会社が優秀な人を安く使えますよと言って主婦派遣を推進しているという記事です。  これ非常に肯定的で、両方のニーズが合っているからいいことなんだというふうに書いてある記事なんですけど、しかし、それで見る限りですよ、スキルとかが高くても、子育てしていると、その都合を聞いてもらえないと、かなり安くなっても構わないというふうになるので、結局、子育てに対する懲罰的な時給だというふうに言うことができるぐらいのものなんですね。  その結果、正規と非正規の格差は、下のグラフにありますように、正規は男性が圧倒的に多くて、非正規は女性が何と七割。非正規問題というと家族を養えない男性の問題だというふうにしばしば捉えられがちですが、何と非正規は七割近くが女性なのだということを忘れられがちです。  その理由としては、そのように、子供がいるから長く働けませんとかそういったこととか、安くてもしようがないのですとか、そういったようないろんなバイアスが入っているということ。それから、もう一つ大きいのは、非正規は短期契約なので、組合つくって賃金上げてくださいとか条件良くしてくださいと言うことが非常に難しく、それを言うと次の契約更新がされなくなるんじゃないかと非常に怖がっています。  これは、実際、コロナ禍で個人が請求できる休業手当を、できましたよね、皆さんのおかげで、それを使おうというふうに、使いましょうというふうに言うと、多くのパートの人が使わないんですね。何て言っているかというと、もちろんいろんな理由がたくさんあるんです。その中の一つとして非常に興味深かったのは、女性ユニオンの人が言っていたんですけど、割と多いのは、そんなもの請求したりすると会社に分かって、会社が権利意識が強いパートだから次の契約更新しないと言ったらどうしようと思っている。言うかどうか分かりません。つまり、短期契約というのは人をすごくおびえさせるので、要求ができない、で、上げられないという、そういうものがあります。ということで、非正規は安い。正社員男性を一〇〇とした場合、五六・二%ぐらいまでという試算が出てきているということになります。  さらに、働きにくい、勤続年数がという話が出ましたけれど、勤続を何とかさせるためには女性の身体、肉体的な条件をやっぱり大事にしなければいけないというのが当然あると思います。子供を育てるということについての懲罰的な賃金をやめるということも重要ですし、それから、生理休暇等々がもう少し取りやすくなっていてもおかしくないはずなんです。  均等法だと、女性がどんどん社会に進出したので、そのような女性の肉体に沿った保護が普及したのではないかと一瞬思います。しかし、このグラフを見ますと、このように、一九八五年に九・二%取得していた、これも低いんですけど、六五年には二六・二%取得していました。それが何と二〇二〇年には〇・九%まで下がってきている。つまり、会社に出ていく女性は男性並みに働くのが当たり前であって、生理休暇などというものに請求したがるというのは根性がないというか、そういうような見方で捉えられがちなので、みんななるべく取らないようにしています。どうしても我慢できない人は辞めていきます。  実際、こっちは更年期ですけど、更年期でも、コロナ禍でコールセンターの、これは契約社員の方でしたけれども、更年期でどうしても会社に出てこれないというふうに言ったら、そういう人は次の契約はなしですねといって首になっています。それで、ユニオンに駆け込んで交渉したけど駄目でしたということが普通に起きている。  つまり、女性が進出すると言いながら、子育て、更年期障害、生理痛、こういったようなものについてきっちり対応するようなまともな保護がすっかり忘れられた社会になってしまっていて、これは均等法以降、活躍するなら男性並みにちゃんと合わせてくださいねというモラルが浸透した結果だと思います。それをきちんと見直して、要るものはちゃんと付けていかなきゃいけないですが、問題点は、そういうふうに言うと、女性は男性と差を付けられるからやっぱり嫌だなといって言いたがらないんですよ。女性保護が人気がないというのは結構そういう理由があります。  じゃ、どうすればいいのか。これは、男性の働き方を女性基準にすればいいんです。実際、ヨーロッパは、労働時間を育児と介護両方できるように男女共通の労働時間規制をきっちりとしいたおかげで、男性も家事参加ができ、女性は家事、育児をしながら働きに行けるようになっている。  だけど、日本の場合は、均等法のいいところもあったけどツケもあって、なぜかというと、それは女性保護を撤廃しちゃいましたよね。そのとき、男性は青天井で残業できる仕組みでしたよね、今は少し良くなっている部分もありますけど。なので、そこに合わせない女性は総合職になれないというふうに言われ続けてきたので、結局、そこではそのような仕組みができなくて、女性は男性に合わせるか諦めるかだったんですよ。  だから、それは共通の男女規制をしくようにして女性基準に合わせる。休暇をちゃんと取れるようにすれば、生理痛とかの休暇ももう少しましになるはずです。というような形のやり直しをしなければいけないということがはっきりしています。  それから、賃金についても、これ資料二というところなんですけど、実際、男性の、これ、どういう数字かというと、大手の電力会社の賃金差別裁判のときに証拠で出した図表です。これで見ますと、何でかというと、同期同学歴男性との昇給、昇格差別を訴えた女性が、原告と同期同学歴の事務系職員を賃金の高い順に並べていった。そうすると、このグラフのように、青いところ、男性が左側にがっと寄っていて、右側に女性ががっと寄っているという一目瞭然のグラフが出てきたわけです。これで問題だというふうに主張したんですが、判決では、昇格賃金での格差は認定したけれど、格差は人事評価の結果であり、男女が層として明確には分離していない、つまり、いい女性もいるじゃないかと、一本この赤い線が入っていますけど、そういうことで、男女差別じゃないとして敗訴です。これはやっぱり、そのような統計的な資料を使って、格差、差別、そういうのを差別として証明するという何らかの法的な措置が日本でも必要になってきているはずだということを示すものです。  ということで、例えばEUの賃金透明性指令というのが去年出されましたけれども、対象企業で男女賃金の格差が五%以上あると、当該企業は賃金格差の是正を求められると同時に罰金の懲罰を科されるということ。これは、EUもさすがにやっぱり賃金格差がなかなか是正されなかったので、これ、やるっきゃないといってやったということだと思いますが、このような会社の判断に任せている限りは、会社の判断で賃金は安くされているので直らないんですよ。その会社がいい会社なら別なんですけど、社長さんが、女の賃金安くてもいいですと思っている、例の家計補助ですと思っている人だったら上がらないんです。とすると、やっぱり公的な何らかの規制なり社会的な規制が必要であるということが私の結論です。  なので、賃金は女性のそのような底上げなしでは全体は上がらなくて、日本は賃下げ国家になり続けていくでしょうし、活躍すればするほど、それから、社会的な規制をきちんと入れて、例えば差別禁止法とか、それから人権監視機関とか、いろいろ海外から言われていますけど、そういったものもある程度整備していかないとこの事態は直らない可能性が高いということを申し上げたいと思います。  以上です。ありがとうございました。

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