○末冨公述人 日本大学の末冨でございます。よろしくお願いいたします。
本日は、このような場にお招きいただき、ありがとうございます。
私は、来年度予算そして再来年度予算に関わる重要テーマでございます高校無償化制度、高校修学支援制度について意見を申し述べます。お手元の資料を基に進めてまいります。
全ての高校生への高校修学支援制度拡充の意義と展望。
私自身は、子供の貧困対策を含む子供政策、そして教育政策を中心に研究を蓄積してまいりました。二〇一〇年に出版しました「教育費の政治経済学」という本以降、特に高校無償化には深く向き合ってきた研究者の一人でございます。
次のスライドに参ります。本日は、大きく分けまして二つのセクションで意見を述べさせていただきます。
次のスライドです。全ての高校生への高校修学支援制度の意義。
スライドの四ページに、その意義を四点にわたってまとめました。
意義一、所得制限、自治体、設置形態による制限がなく、全ての高校生が支援対象となるという高校修学支援制度の拡充が検討され、実現に移されようとしていることは、大変重要であると思います。
意義二、同時に、低中間所得層向けの高校生等奨学給付金も同時に拡充されるということも大変意義がございます。なぜならば、全ての高校生と同時に、より支援が必要な高校生への支援拡充が行われることは、我が国の教育政策、子供政策においても誇るべきレガシーとなると判断しているからです。
意義の三、若者が国から応援されている実感が持てる象徴政策が高校無償化であること。
意義の四、生徒自身が設置形態にかかわらず行きたい高校に挑戦、選択できる制度改善であること。生徒自身の学ぶ権利の積極的な実現という視点からも評価をしております。
以降、それぞれの意義について少し詳しく説明をさせていただきます。
スライドの五枚目。まず意義の一ですが、所得制限、自治体、設置形態による制限がなく、全ての高校生が支援対象となることは、これまでこの国の高校修学支援制度に向き合ってきた研究者たちは歓迎しております。
まず、現行の制度には、年収五百九十万円を過ぎれば支援額が一気に三十万円弱も減ってしまうという年収五百九十万円の崖、そして、年収九百十万円を過ぎれば受けられる支援がゼロ円になってしまうという年収九百十万円の崖の二つの崖がございました。それが所得制限撤廃によって改善をされるということです。
あわせまして、大阪府と東京都が先行する形での自治体間格差問題につきましては、私もこの間、都道府県の御関係者の方から大変深い懸念を伺ってまいりました。高校修学支援制度の所得制限撤廃、そして全ての設置形態を包み込む形での無償化ということは大変意義が高いというふうに判断をしております。
六ページに参ります。
私自身も従事いたしました文部科学省の平成二十九年度の検証からも、保護者調査からは、相対的な高所得層ですら、七割の方が私立高校の学費に大変負担感を感じておられる。それから、高校や都道府県教委等への調査でも、所得制限というものにつきましては、まず事務が煩雑になる、それ以上に、目の前の高校生たちの間に分断を生んでいるという点から深い懸念が寄せられていたということです。これらの課題が改善されることも大変意義深いことでございます。
七ページに進みます。
この間、論点とされてきたことが二つございます。一つが、私立高校を無償化する意義はありますか。そしてもう一つが、高所得層の子供たちを無償化する意義がありますか。
私自身は、取材等に関しても以下のようにお答えをしてまいりました。まず、全ての高校生を対象とすることは不可欠です。これは、十八歳成年の我が国では、未成年の教育を保障するという意義があると同時に、所得制限のない児童手当、幼児教育の無償化、義務教育の授業料、教科書費等の無償化が既に実現されてきており、さらに、累進課税制度、世代間の負担、受益の公平性の論点から、特に子育て当事者から強い疑問が持たれてきたということです。
もう一つ、次の論点に参ります。
公立高校に不合格で私立高校への進学を余儀なくされるケースも常態化してまいりました。日本の高校進学市場の特徴を考えますと、公立高校だけを無償化するという制度は、生徒自身への高校教育機会保障の視点から問題が大きいと判断しております。
三点目、所得制限という手法には限界があり、資産が考慮されていないということがございます。実は巨額の資産を持つ資産家が、低所得であるために、低所得世帯給付や児童扶養手当、あるいは現行の高校無償化でも手厚い支援を受けている状態であり、所得制限という仕組みが本当によいのかどうかということは、特に未成年の支援に際しては十分に考慮される必要がございます。
四点目、準義務教育というふうに高校教育は称されますが、進学率が九九%に達する我が国において、親の所得で子供自身の学ぶ権利を差別する所得制限の合理性は極めて低いと判断をしております。
スライドの八ページ目に参ります。
意義の二、低中間所得層向けの高校生等奨学金も同時に拡充されることということですが、令和七年度、令和八年度にわたって制度改善がなされた場合、全ての高校生の授業料が無償化されると同時に、低中間所得層向けの授業料以外を支える高校生等奨学給付金も拡充される方針となります。これは、平成二十二年度の高校修学支援制度創設以降初めて、全ての高校生と、より支援が必要な高校生への支援拡充が同時に実現されるという、極めて意義が高いことなのです。日本国憲法、教育基本法における教育の機会均等を、公正原理、エクイティーですね、それぞれの状況に応じた平等を実現するという意味において、我が国の憲政史上においても大変な意義があることであるというふうに考えます。
ただし、九、十ページに参りますけれども、特に低所得層向けの支援制度の拡充に当たりましては、授業料以外にも、入学時の納付金、あるいは授業料以外の、例えばですけれども、教科書費や学用品、高校のデジタル端末等の負担が年々重くなっています。特に公立高校の方が重くなっているわけです。こうした実態を踏まえて制度改善をしていただきたい。
十ページに示しましたように、低所得層の一人親の方ですら、高校入学時に三十万円程度は納付しました、払いましたという方がいらっしゃるわけです。このような実態にもアプローチをしていただきたいと存じます。
十一ページに参ります。
意義の三番目、若者が国から応援されている実感が持てる象徴政策が高校無償化であること。
私自身は、昨年度の公聴会におきまして、こども未来戦略というのは、実はこの国にとってとても大事な意味を持つんだということを申し上げました。しかしながら、大学生たちとこのこども未来戦略を学びますと、日大生は大変率直です。応援されている気がしないですと言われました。ではどうしたらいいのと聞くと、高校や大学の授業料を無償化してほしい、これもまた率直に言われました。
実際に、次のページに参ります、私たちの科研費のチームで行いました調査の結果でも、二十代、三十代の若い世代、特に若い女性の半数程度は、所得制限のない高校無償化を望んでいるというふうに答えておられます。
さらに、次の十三ページに参りますけれども、同じ傾向は、日本財団が実施されました十から十八歳の子供、若者一万人への調査でも、国や社会が子供たちのために優先して取り組むべきことは何ですかと聞いたところ、高校、大学までの教育を無料で受けられることということになっております。
子供や若者の願いをどのように実現していくか。厳しい財政状況もございますが、我が国の深刻な少子化、そして、ここからの未来を担う子供、若者への投資こそ最も重要な投資であることを考えると、私たちは、子供、若者のこのような声をどのように尊重し、実現していくかに向き合わねばならないと思います。
意義の四番目に参ります。
生徒自身が、設置形態にかかわらず、行きたい高校に挑戦、選択できる制度改善であるということが重要です。特に、所得制限のない全ての高校生への支援拡充ということは、生徒自身の学ぶ権利を積極的に実現できる仕組みの基盤となります。
下の図を左から順番に説明をいたします。
まず、所得制限なく全ての高校生を応援するということが法的には何を目的にしているかというと、現行の高校就学支援法では、経済的負担を軽減し、教育の機会均等を実現するということになっております。全ての若者の教育の機会均等を実現するという制度への改善により、一人一人の生徒たちの前向きで主体的なよりよい学校、学びの選択が実現します。
ただ無償化されるということでは、すぐに制度の意義は見失われます。したがいまして、小さい字で書いておりますが、生徒自身が自らの権利と国の応援を理解できるという仕組みが必要です。例えば、中学校三年生での公民の教科書では、国民の権利、そして社会保障の仕組み等について学びますけれども、私自身は、是非、高校修学支援制度が学ぶ権利を応援するための仕組みであり、国民の負担によって支えられているんだということを全ての中学生に学んでほしいなとも思っております。
そして、子供の学ぶ権利を保障するに値する、高校教育をよりよくしていくということも重要です。
例えば、今の高校生というのは、お手元に日経新聞の記事は配付されておりますでしょうか、一月二十七日に寄稿したものなんですけれども、これも私が昨年度実施しました中高生への調査でございます。中高生たちが今学校に何を変革してほしいかということを求めているかというと、実は、よりよく学びたい、もっと自分に合った学びをしてほしい。苦手をなくしたいですとか、あるいは、居場所がもっと増えたらいいな、そして、先生が上から目線じゃないというような、多様なニーズが浮かび上がっております。
こうした高校生たちは、実は怠けたいんじゃないんです。よりよく学びたい、自分に合った学びをしたいという願いを目の当たりにしたときに、今の高校には一層の進化の余地があるとも考えられます。
例えばですけれども、職業科、普通科、特別支援学校等の課程にかかわらず、分野横断的に単位互換可能な連携協力体制を実現することにより、一つの高校に在籍しながら、高校生たちがそれぞれの希望、あるいは迷いもあると思います、いろいろ学んで考えたいというような希望にも寄り添える高校教育に進化ができるのではないでしょうか。既に、文部科学省中央教育審議会の高校ワーキングが今月に公表しました中間まとめでも、こうした方針の実現の基盤となる中間まとめが示されております。
赤枠で囲みました国、都道府県の責務の明確化等については、後半で説明をさせていただきます。
それでは、ここから後半の内容に入らせていただきます。
二、持続可能でよりよい高校修学支援制度、高校教育のためにということで、十六ページのスライドに参ります。十六ページですが、見出しが一、二、四、五となっておりますが、そのまま説明をいたします。
まず、一、持続可能な高校修学支援制度のための安定財源の確保。
私もこの国の厳しい財政状況は承知をしておりますが、子供、若者への投資こそ最優先であるはずです。この際、責任ある財源を与野党挙げて実現いただき、後戻りしない、この国は子供、若者を応援する国であり、しっかりとした財源をつくったんだということを子供、若者たちに胸を張って説明できる財源の確立をお願いいたします。現在の文部科学省予算を削って高校無償化に回すというようなことをしてしまえば、この国の公教育制度は崩壊します。そのようなことだけは絶対におやめいただきたいと思います。
二番目、税制、現物、現金のベストミックスを実現しようとする政府の姿勢こそが、少子化改善の基盤であると考えます。
これまで、この国の高校無償化や十八歳までの児童手当の延長のたびに必ず、高校生は増税されたり、あるいは増税をすべきだという議論が巻き起こってまいりました。高校生から取って別の高校生の支援につけ替える、そのようなやり方では高校生たちは全く納得しませんし、子育て当事者も全く納得しません。つけ替えではなく、まず、民法に定めた親の監護権そして子供の生存権保障の仕組みである税制、扶養控除を基盤とし、子供、若者自身への投資効果が高い現物給付をしっかりと充実させてください。
その上で、児童手当、全ての子供、若者に応援いただいておりますけれども、この部分につきましても、より厳しい困難な状況にある子供、若者を応援いただきたく存じます。
四と五につきましては、次のスライドに参ります。
四、実質的な授業料支援の重要性ということです。
実は、高校の授業料無償化は四十五・七万円ベースでと語られておりますけれども、四十五・七万円というのは現在の授業料の平均にすぎないんですね。国会議員の皆様に、授業料、私立でどうやって決めているかというと、まず、学校運営に係る経費全体があります。基金の積立て等も含めて毎年予算を組んでおりますが、そこから私学助成、そして寄附金や、あと施設貸出し等の収入を除いた部分を、今、授業料とそして施設設備費と入学金に振り分けているんですね。学校運営に要する経費は、授業料、施設設備費、入学金に振り分けています。
この振り分け方について、どうやって授業料を決めていますかということを私も学校経営者の皆様や事務局長に聞いてみました。そうすると、周辺校との兼ね合いや強豪校との兼ね合いである、つまり、高校運営サイドのちょっと職人芸的に決まっているんですよね。要するに、数字として必ずしも合理的ではないということです。
今後の私立高校の授業料無償化の設計に当たりましては、私学財政の実態を捉えた高校修学支援制度の設計が重要であるということです。あわせまして、都道府県間格差の著しい私学助成につきましても、是非とも改善をお願いいたします。
それ以上に心配なのが、公立学校財政です。公立学校の財政というものは、実は私はそっちを専門としてきた歴史の方が長いんですけれども、とても大変な状況にあります。さらに、都道府県の財務会計ルールの硬直化も改革阻害要因の一つであり、この機会に公立高校を応援し、公立高校の進化も促進するルールを是非整備ください。
五点目につきまして、賃金、物価上昇への対応とともに、授業料のいたずらな値上げをどう抑制するかという論点に参ります。
まず、私が比較研究の対象としております英国では、教育政策含め各予算費目の賃金、物価上昇対策が毎会計年度の争点となっております。公立高校の授業料無償化も、十一万八千八百円のままで公立学校は持続可能であるかと言われれば、既にここまでほかの公述人の皆様がお示しいただいたとおり、物価上昇局面に入っている中で、かなり苦しい状況ではないかと思います。
一方で、高校授業料のいたずらな値上げを抑制することも重要ではございますが、授業料キャップ制度には様々な意見があり、研究者たちからは、例えば、私学助成制度によるガバナンス改善も選択肢ではないだろうかということが指摘されています。
東京都では、授業料値上げに際し、事前に申請し確認をする、そして私学助成を減らしていくという方式でいたずらな値上げを防いでおり、このようなやり方に学びながら、よりよいいたずらな授業料値上げ抑制の仕組みをつくるべきであると考えます。
十八ページに参ります。
持続可能でよりよい高校教育のためにということで、大きく三点申し述べます。
まず一番目、国、都道府県の責務の明確化。
通学可能な地域圏内での高校教育機会の確保、地理的な機会均等の確保が、人口減少局面の中で急務となっております。実は学校教育法に明記されていません都道府県の高校教育に対する責務を明記し、例えば、国公私立を含めた高校配置計画の策定の責務や、その際に市町村の意見を聴取することなども含め、どの地域で生まれ育っても高校生たちによい教育機会が保障される戦略が必要です。
二の分かりやすい学校情報の開示、最低限の教育の質については次以降のスライドで申し述べますので、三に進みます。
三、高校入試のインクルーシブ化、高校教育の質と多様性の更なる向上。
(1)、障害を持つ生徒、日本語指導が必要な生徒、欠席日数が多い生徒等も前向きに高校進学に挑戦できる高校進学のインクルーシブ化。これは、公立高校ですらこのような生徒に対してまだまだ門戸を開いていない実態がございますのと、私立高校への手厚い支援も含めて、多様な生徒を受け入れる高校を是非応援いただきたく存じます。
あわせまして、(2)、専門高校の支援拡充、通級指導と組み合わせたインクルーシブ教育の推進校、学びの多様化高校や遠隔教育を活用した多様な学びの保障など、高校教育の進化を授業料無償化の拡充と併せて是非実現ください。
最後に、論点の二に関わりまして、十九ページと二十ページの説明をいたします。
二、分かりやすい学校情報の開示、最低限の教育の質保障ということですが、英国の学校の事例をここに示しました。
英国では、政府が補助する全ての学校に対し、例えば、学校が余り公表したくない欠席率のデータ、そして貧困層と非貧困層のテストスコア格差や、障害を持つ子供、そして国語の指導が必要な子供、ESL指導が必要な生徒数などを公表しております。そして、指導体制なども公表する義務がございます。さらに、子供たちの人権侵害を防ぐセーフガーディングルールの導入と遵守も義務づけられております。
これはなぜかと申しますと、生徒の学ぶ権利を積極的に保障する際に、最低限の質保障である生徒の生命、尊厳、人権を守るということが最低条件であり、それを守れない学校は政府の補助に値しないということになります。日本でも英国の例に倣い、校則やいじめ、性暴力、不適切指導の対応、障害を持った生徒や日本語指導が必要な生徒への対応等、情報公開することによって情報の非対称性の改善が行われ、高校とのミスマッチも防ぐこともできると思います。
あわせまして、いじめ、性暴力、不適切指導等への対応が十分でない学校には、改善命令、最悪の場合、授業料無償化を外すというような措置も可能ではないかというふうには考えております。
ただし、最後のスライドに参りますが、これは高校側にとっても、そんな大変なことを言われてもということは十分承知しております。全ての高校の最低限の教育の質保障を支える国、都道府県の体制整備、高校も守られる仕組みを整備してはどうかというのが最後の提案になります。
英国でも、学校だけではなく、基礎自治体とも連携しながら子供、若者の問題を改善していく体制が構築されております。日本でも、例えば、茨城県では私立高校も相談できる県教育委員会のいじめ相談対応部局がございますし、熊本市では、こどもの権利サポートセンターで、県立、私立高校や教員からの相談も受け付けられる、もちろん生徒、保護者からの相談も受け付け、県、高校とも連携した改善の支援ができるということがございます。
このように、高校生も高校も守られる仕組みの整備も併せて進めることで、よりよい高校教育に進んでいけると存じます。
よりよい高校修学支援制度、高校教育に向けて、国会議員の皆様の引き続きの応援をお願いしたいと思います。
以上で終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
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