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菅野拓 ·大阪公立大学大学院文学研究科人間行動学専攻准教授

参議院災害対策特別委員会(2025-05-09)での発言

第217回国会 ·第第5号号 ·7,456字
○参考人(菅野拓君) ありがとうございます。  このような貴重な機会にお呼びいただき、ありがとうございます。  少し自己紹介からさせていただきたいというふうに思います。私も、最初に意見を言われた加藤先生とよく似ていまして、大学の学者ではあるんですけれども、研究室にはほぼいないという生活をしております。ほとんど研究室は物置状態で、本当に一週間に何回入るかな、一回入るか、二回入るかと。大学まで行って入らないことも多いんですけれども、そうやって現場にばかり行っています。余り使う言葉ではないですが、臨床の社会科学者と自分のことを思っていまして、臨床って、お医者さんなんかは臨床医という言葉がありますが、要は何かいろんな問題のところに行って、現場でずうっと過ごして、何でこうなっているのかなと考えながら学問をしていくと。だから、現場で一緒に汗をかくこともしています。  例えば今回の能登半島地震では、石川県の知事特命アドバイザーという形で実は一緒に政策対応をしていて、どんな政策が今要るんだ、こういうことを国に伝えてくれ、若しくはこういう情報が地域から上がっているからここを改良しなきゃいけない、そういったことを一緒に考えるということも積極的にやっておりました。まさに、何か、そういった災害対応の現場を見ていますと、やっぱり何でこんなふうになるんだと、非常にひどい状態が続いていると。まあ、はっきり言いますと、避難所の水準は関東大震災の頃から余り変わっていないなというのが日本の状況でございまして、ここを何とかしないと、本当に災害関連死という言葉が、すごく不名誉な言葉だと思いますけれども、社会に敷衍してしまっている、こういう状況をやはり変えにゃいかぬと。これをしないと、やっぱりちょっと、私も中学生と小学生の息子がいますけれども、ちょっと顔向けできないなと、そういうふうに考えてこの数年はずっとこの被災者支援の問題で研究をしたり現場で汗をかいたり、皆さんと一緒に政策をつくっていくと、こういう動きをしてまいりました。  今日は、三点申し伝えたいことがあると思っております。  一つが、まず法案自体への評価という部分で、その後、それをなぜそういうふうに評価するのかという考え方の部分ですね、最後にプラスアルファの意見といいますか、ここを更に進めていただきたいんだと、この三点を今日はお伝えしたいというふうに思っております。  まず、法案自体です。やはり、鍵屋先生もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、私、災害救助法への福祉サービスの提供というのが付くというのは一つの目玉ではないかと思っております。約七十年ぶりのメニュー追加というふうに伺っておりますが、やっぱり、逆に言うと今まで何でそのメニューがなかったのと、これだけ少子高齢化しているのになぜそこが対応できなかったのと、これこそがどちらかというと問題でして、これはすごくいいことだろうというふうに思っております。  で、もう一つ、被災者援護協力団体の登録制度と。要は、民間がどうやって被災者支援をやっていくのかと。これを考えたりとか実行していく本当に大事な法だという、法規定だというふうに思っております。災害対応のマルチセクター化と申しておりますが、やっぱりなかなか政府だけ、自治体だけで全部やるというのは、加藤先生もおっしゃっていましたが、厳しい状況にあるわけですね。使えるリソースを最大化していくという意味で非常に大事な規定になると思いますが、ただし、ボランティア登録制度なんという報道がいっぱい入っていますが、そこだけで考えてしまうと厳しいなというのが実際のところでございます。やはり、地方自治体の皆さんからここにお願いねと言って災害対応していただける相手をつくっていくという意味では非常にいい制度ですが、ボランティアの方々、NPOの方々が見える化する、それのみにとどまってしまうと余り意味がないのではないかなというふうに考えているところでもあります。  三番目です。広域一時滞在、いわゆる広域避難の規定というのが増えております。やはり、これは本当に今から、場所から人への支援ということですごく大事なものです。そこに転換していくという意味では非常に大事だなというふうに思っております。  また、国や都道府県の方々がより積極的な関与を行うことを規定していく。やっぱり、市町村が全部やってくださいというのはとてもじゃないけど難しいということなんですね。どう関与していくのか、今までよりももっと応援をしなければいけないと思っています。ここが規定されていくこともいいなと思います。  ただ、やはりすごく被災者支援に関しては大きな一歩だなとこの法案については評価をしております。ただ、それだけでなかなかこの百年間続くような混乱というのは止まりません。さらに、少子高齢化の状況で社会も変わってきているということになりますので、そこに関して、例えば災害救助法も根本的な構造問題を抱えております。被災者生活再建支援法なんかもそういう状況にあります。やはり、ここをきっちりと見直していくということは今は大きな一歩、更に進めていただきたいということになります。  で、この評価の理由ということを次に述べたいと思います。  まず、ある地域にたまにしか起きないというのが災害の社会問題として見たときの特徴だというふうに考えています。ある地域にたまにしか来ないので、そこには経験したことがない人しかいないわけですね。それの経験したことがない仕事を実際に、例えば地方自治体の方、特に市町村の方が行うということが根本的な混乱の構造だというふうに認識しております。  ただ、やっぱり混乱構造が少ない部分もあるなというふうに思っています。やはりハード整備の部分ですね。例えば、道路を直す、水道を直す、そういったことというのはある意味ふだんから行政の皆さんがやられている仕事ですから、早回しすれば何とかなる、若しくは応援も簡単にできると、これがハード整備が得意な部分だというふうに思います。  ただし、これも少し考えなければいけない部分がありまして、例えば能登半島地震、もう元々人口が減っていく地域に、ある種高度成長並みのハード整備を復旧によってしてしまうということにもなるんですね。これは、実は制度がある種自動的にそのモードに持っていってしまうと、こういうことになってしまいますので、これは、例えば南海トラフなんかを考えますと、見直しておかないと、本当にこれ、どれだけ人が住まないところにいっぱいインフラ投資しなきゃいけないのと、こういう法制度も実は日本は持ってしまっているということですので、これは継続的に考えていただきたいなというふうに思っています。  二ページに進んでいただけますでしょうか。恐らく、ここからは三ページの図一を見ながら聞いていただくと分かりやすいかなと思います。  混乱が継続している理由ですね、被災者支援の部分が。これは、はっきり言います、平時やっている人たちが被災者支援をやらないと、これに尽きるなというふうに思っています。  例えば、食べ物、食料とか、家なんかもそうですが、普通はマーケットで供給されますよね。おなかがすけばレストランに行く、スーパーマーケットに行く。家を借りようと思えば不動産会社に行く。こういう中で人々は暮らしているのに、それが全て、ある意味では自治体の皆さんやってくださいと。言葉悪いですが、配給するような構造で被災者支援をするというのが我が国の体制ということになっています。それは、ふだんやっていないんだからできないですよね。パレットって何ですかということを分からない人が物流をやるみたいな。  こういう構造で被災者支援をしているので、いつも教訓は伝わったのかというふうな報道が入りますが、同じような避難所が繰り返される。それはそうですよ、やったことないんですから。どんな避難所がいいか分からない、どうやって運営したらいいか分からない、それが我が国の被災者支援の根本的な構造になるわけです。  要は、ノウハウを持っている人たちにお任せすればいいんですね。しかも、古い法律ですので、課題一というふうに書かせていただきますが、まさに福祉の規定がなかった。今回それが追加されるということで、最初の評価につながってくるということになります。  まさに災害救助法というのは、実は元々は厚生労働省さん、特に生活保護を担当する保護課さんが所管されていた法律になります。要は生存権保障を狙った法律だったということですが、やっぱりそれがなかなか忘れられてしまった部分もあるんですね。災害特有の例えば家の壊れ具合、罹災証明書でお金を渡しましょう、こんなもの社会保障の中ではなかなかない発想なんですよね。こうなってしまうと、どんどんと社会保障の中から孤立してしまって、全てが自治体がやれ、自治体がやれと、こういう構造で被災者支援が進んでしまう。でも、自治体の皆さん、職員数おりません。しかも、平時は、例えば介護保険なんかを考えていただくと、実際のサービスはほぼ民間の事業者、社会福祉法人、NPO、株式会社、そういった方々がやられているわけですね。それを自治体の皆さんやってくださいと。財源も余りありません、準備もしていません、できるわけがない。これが今ということになります。  要は、こういったものをどう乗り越えていくのか。ヒントは、実は阪神・淡路大震災の頃にあると思っています。  実は、DMATの皆さん、災害派遣医療チームというのはすごく重要な例外だと感じておりまして、こういった方々が、要はプロがしっかりと入っていって、自ら自律的にやっていくと。こういう世界をつくれば、自治体からすると、お願いねと、こうやって言える相手ができるわけですね。  こういうものをどうつくっていくのか。それは、医療だけじゃなくて、福祉の部面、若しくは物資供給の部面、家の部面、これをしないと、ずっと慣れない自治体職員の方々が全てをやり切ると、それは無理なんですね。これを変えねばならない。私はこれを餅は餅屋の災害対応と申しておりますが、こういったものをしなければいけない。そのためには災害対応をみんな、いろんなセクターが寄ってたかってやるんだ。マルチセクター化と申します。  若しくは、当然、関連死の危機にある方というのは平時からやはり脆弱な状況の方なんですね。要は、社会保障の対象になるような方々なんかが多い。やはり、社会保障というのをちゃんと災害時のことも考えてデザインしておく、こういった発想というのが非常に大事になってくるということだと思います。これを私は社会保障のフェーズフリー化、要は、いつももいいね、もしももいいねというデザインのことをフェーズフリーと言っていますが、こういうふうに、災害時に例えばケアワーカーの方々が支援に当たるんだよねと元々規定しておけば支援に当たれると、こういう体制をつくっていくべきなんだというふうに思っています。  また、広域避難なんかも非常に急務だと思います。南海トラフ、首都直下考えるだけでも、ここどうするんだと。今首都直下が起こりますと、東京都の方が恐らく埼玉行ったり、群馬行ったり、場合によっては福島に行って、支援しなきゃいけないと、こういう世界があります。しかも、どこに行ったか分からない。これはまずいということですね。  四ページお願いできましょうか。  これで、要はこういう体制ですので、先ほどの評価、まさに社会保障のフェーズフリー化や災害対応のマルチセクター化を進めていただく。また、広域避難なんかにしっかりと一部踏み込んでいただいた、これはすごく評価していることですが、やはり、評価を前提として、もう少し考えていただきたい、若しくは運用面でしっかりとお願いしたいことというものがあります。  一つは、災害救助法への福祉サービスの提供を規定することについて、期間とか費用とか対象の範囲をできる限り広くしてほしいと。  どうしても平時の考え方だと、こっちでお金出しているんだからここは要らないでしょうとなるんですが、災害のときってそうはいかないわけですね。例えば、ああ、この人は介護保険を受けているからもうそこの一部負担部分だけでいいでしょうとか要らないでしょうとやってしまうと、それ調べるのに、元々の住民票のある自治体調べて、それどこだっけと。何か、認知症の方が例えば広域避難した場合なんか考えると、そんなことやっていられないわけですよね。だから、できるだけ対象を限定せずにいろいろな方々が受けられるようにしてほしいんだと。  若しくは、あとは、災害ケースマネジメントと言っておりますが、被災者の生活再建というのはすごく長い過程なんですね。どうしても避難所の対応、初期の対応だけが頭に行きがちなんですが、そこからだんだんとその対応を失敗する中で関連死が生まれていくわけです。しかも、生活再建できない在宅被災者や在宅避難者と言われる方が東日本大震災でも大量に生じたと、こういうことが分かっておりますので、それに対してできる限り伴走型の、例えば被災者の方、それぞれ困り事いろいろ抱えられるんですね。それを一つ一つ対応していると、なかなか、被災者って誰なんだと、これお金を渡せば全部解決するのか。そんなことはなくて、やっぱり、例えば借金があるんだとか、健康問題があるんだとか、仕事がないんだとか、いろんな困り事を重層的に抱えられていらっしゃいますので、やっぱりその方に寄り添って、伴走型でいろんな支援をつないでいってオーダーメードで支援していく、これを災害ケースマネジメントと言っていますが、こういうやり方が非常に大事です。やっぱり、こういったものの基礎的な財源としてこれを考えていただきたいというふうに思っています。  また、実は、そういった一人一人に寄り添った支援をしていくということだけではなくて、要は、DMATさん、今トリアージみたいに災害現場の何か医療のイメージが非常に強いですが、実際にやっていらっしゃることというのは病院の機能回復がメインになっていますね。要は、平時の社会保障の体制を動かしていくというところにしっかりと取り組んでいらっしゃる。それは、災害救助法に医療というのが規定されているからできているということなんですね。今回、福祉というのを規定されるので、一人一人の支援及びその施設やサービス、それを動かすというところにもしっかりと応援ができるように、こういうことを考えて運用していただきたいというふうに思っています。  二点目です。被災者援護協力団体の登録制度。先ほど申しました、これボランティア登録制度みたいな形で報道が出ているので、これはちょっとこれだけだとまずいなというのが正直な意見でございます。  実は、ボランティアの方、NPOの方というのも、災害専門の方だけが災害対応しているわけじゃないんですね。実は、東日本のときは九割は災害専門ではないNPOです。ということは、登録していない方が九割やってくるということなんです。そことは自治体の皆さんがお付き合いしませんなんてことになったら今よりも下がってしまいます、対応能力が。だから、これはまずいということになります。なので、むしろ考え方は、しっかりとした、自治体から見たらお願いねと言える相手を少数でもいいから育てていく、こういう方向で制度を運用していただきたいということになります。  実は、ソーシャルセクターの分断を非常に懸念をしております。でも、同時にこれは、例えば法律とか、そういった相談対応できる全国組織を登録しておくとか、あとは住宅ですね、の供給ができるんだとか、物資とか流通、小売のことがしっかりまとめ役ができるんだ、こういうところを登録しておいて、自治体の皆さんからお願いねと言える相手をつくってあげれば、これは自治体の方が、慣れない素人がやられる構造というのを変える、そういうものにもなり得ると思っていますので、そういう方向で是非運用を検討いただきたいということになります。そうなると、やっぱり審査やデューデリジェンス、そういったものをきっちりとやっていく、これこそが肝だというふうに感じております。  三点目でございます。これで最後でございますが、広域避難の話を進めていただく。広域一時滞在ということで出ておりますけれども、これは非常に大事なことでございます。  もう首都直下、南海トラフを考えるだけで、もう今の体制では目も当てられないというのは火を見るよりも明らかと。ですので、でもこれ、誰がどこ行ったと、こういう話になるわけですね。当然住民票なんか移動させずに避難をされるということになりますので、やっぱりこれをちゃんと捉えて把握して、適切な支援や情報を届けられると、これをどうやって国レベルでつくっていくかと、こういう話につながってくるというふうに思います。  なので、例えば、でも、それを紙ベースで、電話で何か個人情報をやり取りしているといったら、それは当然間に合いませんので、全国レベルで被災住民情報を共有可能な被災者データベースというのを設置をして国レベルで運用していく、こういう発想が必要なのではないかなというふうに思います。  是非、ふるさとに戻りたい被災者が、住民票を移動してそこでサービスを受けて、何かどうしようって、こんな不安がないような形でしっかりと制度をつくっていただきたいなというふうに思います。  例えば東日本大震災のときは、原発避難者向けに、原発避難者特例法のような形で、避難先でもある種二重住民票のような形でサービスが受けられるなんという制度がつくられましたが、それは今は恒久化していません。例えばそういうことを今後継続的に考えていただいて、どこでも安心して避難生活が送れるんだと、こういう国にしていただきたいというふうに思っております。  少しオーバーしましたが、以上になります。ありがとうございました。

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