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高橋洋一 ·嘉悦大学大学院教授

衆議院予算委員会公聴会(2026-03-10)での発言

第221回国会 ·第第1号号 ·7,450字
○高橋公述人 嘉悦大学の高橋でございます。  本日は、このような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。  では、ちょっと資料に沿って話をさせていただきたいと思います。そんなたくさん長い資料じゃなくて、ほとんどグラフですから、見ながらということで。  私が見ると、過去三十年間でひどかったことというのは何個かあるんですけれども、それを国際比較という観点でグラフにしております。  一つは、各国の名目GDPの推移。このグラフを見ると、ちょっと愕然としますね。ほかの国はみんな上がっているのに、全然上がっていなかったという話であります。途中にたらればとかいうのが書いてありますけれども、これは私の試算でありまして、普通の経済政策をすればこの程度は上がっていたはずだろうというのがちょっと書いてあります。  これがいわゆるデフレという話でして、ちょっとこれを分解しますと、二ページ目ですけれども、過去三十年間でひどかったこと二というので、デフレーター。物価を見るときにいろいろな見方がありますけれども、デフレーターで見ても全く同じような図になっているわけであります。  ですから、こういうところをどうやって直していったらいいのかという話で、過去三十年間できなかったのに今更できるのかというふうなことを言われるかもしれませんけれども、結構原因は私なりには分かっているつもりなので、そこを直していくかどうかということで、まさしく政治の意思が問われているんじゃないかなということがあろうと思います。  では、次の三ページ目。  それを更にいろいろと見ていきますと、これもG7の中で見ると同じようなグラフになるんですけれども、各国の公的資本形成の推移。公的資本形成というのは、いわゆる政府の公共投資であります。それがどうなっているかというのを見たやつなんですけれども、ちょっと統計分析しますと、こういうふうな公的資本形成でかなりの部分が三十年間の低成長を説明できちゃうということであります。  これはちょっと資料に書かなかったんですけれども、公的資本形成が低い国というのは、実は民間投資も結構低いです。だから、民間投資でこのグラフを描いても、似たようなグラフになるんですけれどもね。  でも、そういうのを見てみますと、幾ら何でも公的資本形成というのは政府が決められるだろうと。だから、これを怠っていたというのが、私にとっては非常に驚きであります。  ちなみに、私自身は役人をしていて、財務省だったんですけれども、今から二十年ちょっと前、二十何年か前は国交省というところに行っておりまして、そこで課長をしております。課長をしているときにいろいろな国の公共投資の話というのを調査したわけなんですけれども、そのときにいろいろな思いがあって、それが次からの話にちょっと関係しております。  二番目は、なぜ政府が過少投資だったのかということを考えたいと思います。  投資というのはちょっと面白いコンポーネントでありまして、というのは、当面はGDPの押し上げ要因になるんです。例えば、工場を造るとかいって部品を買う、これ自体がGDPの押し上げになる。その一方で、ちょっと期間を経ると、中期的という言い方なんですけれども、そうすると今度は供給力の方も上げる。だから、当面は需要を上げつつ、その後、供給力を上げるという意味で、かなり経済の中では投資というのは重要視されている分野であります。  この重要視されている分野というのを、この数字を見ると、ちょっと正直言って情けないと思いました。情けないというのは、三ページ目の日本の状況でありますね。これはどういうものなんでしょうかと思って、これで私なりにちょっとまた分析をしてみますと、二点ほど気がつきました。  それで、今のプライマリーバランスというのはどうやって計算するか。これは、私は総務省にもいて、こういうふうな細かい計算をするのは結構得意だったんですけれども、どうもプライマリーバランスの計算というのが、政府の範囲が狭かったり、地方政府を入れたり、普通の国とはちょっと違っていたということであります。  一般的には財政状況というのはどのように見られるかというのは、これは株式なんかと全く一緒なんですけれども、本体のバランスシートだけじゃなくて、関連会社を含めたバランスシートで大体見ておけば、大きな間違いはないと思います。もちろん、それだけに限られることはなくて、いろいろと多面的に見る必要があるんですけれども、でも、いろいろと関連会社を含めた資産、負債、共に見ていくというのが普通ということだと思います。もちろん、負債だけで見ても、それで間違いじゃないときもあります。  日本の実例としては、ちょっと私も関わったんですけれども、コロナ対策というのを百兆円やった。  これは、私のプリンストン大学の先生のバーナンキに言わせると、マネーファイナンシングだという言い方をしていたんですけれども、安倍さんに言わせると、政府、日銀の連合軍だという言い方をしております。どういうのかというと、百兆円出して、それをちょっとしたら市場から日本銀行が買った。これは、さっきの統合政府というので見ると、負債に立っているんですけれども資産にも立つ、そういうふうな話です。だから、負債に立って資産にも立つので、案外財政を悪くしない。  ただし、難点は、これを下手にやると物すごいインフレになるということです。  ですから、そのときに、インフレになるかならないかというのが結構ポイントだったので、私は、どのくらい出せるのと安倍総理から言われたときに、これが一番、全く関心がありますよね、いろいろな方は。一千兆出せるのか、それはちょっと無理ですよと。じゃ、三百兆はどうか、これは値踏みみたいな話ですけれども、それも無理ですねと。無理ですねというか、そのくらいになるとすごいリスクがありますねとお話しして。率直に言うと百五十兆から百兆円ぐらいは多分大丈夫ですよという計算をしたというところであります。  この計算というのをどういうふうにするかというと、実は、一番最初に述べた、投資のときに述べた供給力というのをきちんと計測するというところから始まります。そこで、コロナのときに需要がおっこっているわけですから、供給過多になっているので、どのくらい上回っているかというのを推計しながらやりました。それで、それをぎりぎりまでやるというと、ちょっと危ないんですね。危ないから百ぐらいにとどめ、百ぐらいで何とかなると。でも、結果的には、この予算の執行を見ていますと、八十ぐらいでたしか止まっていると思いました。  そこから出てくるのが、そういうときにはこういう手がある、ただし、今の状況はそうじゃないだろうというふうな反論が必ずあるんですけれども、いつも私は、供給力というのと需要というのを両方見ながら考えて、さらに、政府のバランスシートで、これも資産と負債を両方見ながら考えるという癖をつけております。  あともう一個、これは私が国交省にいたときの話なので、自分の恥をさらけ出すようですけれども、非常に世界の国と違っているというのが、二番目に書いてあります社会的割引率であります。  これは今は四%となっているんですけれども、四%になったというのを、私、国交省に行っていたときに聞かれたんですよね、高橋さん、財務省から来ているからこういうのに詳しいでしょうと。はっきり言ってそんなに詳しくないんですけれどもね。詳しくないんですけれども、いろいろな国のやり方は知っていたので、国債金利ですから四%ぐらいですかねと言ったら、それそのままだったんですよ。それが今も四%。この間、国債金利がすごく低くなっても四%でありました。  そうしますと、社会的割引率が四%といって、いわば市場の金利より高いままというのは、恐ろしく公共投資の抑制要因になります。社会的割引率というのをあえて言うと、社内金利に相当すると思います。だから、四%の社会的収益がなければ投資しちゃいけない、そういうことになるわけなんです。  じゃ、ほかの国はどういうふうにやっているのかというと、大体どこの国も、国債金利に合わせて、毎年とか二年とか、そういうので見直しております。だから、これを見直さないということ自体が、私にとってはほとんど無責任だと。私も安倍政権のときにこれを一生懸命是正するように頑張って、それで国交省で研究会かなんかでやったんですけれども、結果的にはやってくれなくて、今に至っているというところであります。  ですから、よく積極財政、積極財政と言われるんですけれども、私は、責任ある積極財政というのはそのとおりなんですけれども、無責任はちょっとまずいでしょう、そういう立場です。無責任じゃなくて、普通にやればまあいいでしょうと。これは今、普通に見直すと、二%から二・五くらいになるんですけれどもね。  そうなったら、どのくらい公共投資が増えるか。これは、確かに、どこをやってうまくいくかという難しい問題はあるんですけれども、そのためにこのような社会的割引率というのがあって、それぞれの分野で、BバイCという言い方をするんですけれども、Bはベネフィットです、それで、コストが割るC、これが一以上になったら採択するとかいう言い方をして、それでいろいろと、分かりにくいんですけれども、分かりにくいながら工夫して、民主主義プロセスをやっているという話です。このBバイCのやり方というのは、過去六十年間ぐらい行われているので、かなり枯れた技術でありまして、枯れた技術というのはそれなりに、結構信頼性は、すごくは高くないかもしれないですけれども、それなりに信頼ができるものだと思います。  ちなみに、このやり方というのは、今や地方自治体でも結構マニュアル化されていて、やっているというところも結構あるし、だから、かなり確立された技術であると思います。  だから、ここは無責任にならないで、これを普通の国並みに、毎年、国債連動する、直すだけで大分違います。大分というか、恐らく公共投資は今の水準の二倍以上になるんじゃないかなという気がしております。  次のやつですけれども、これは、財政事情を見るときに、さっき言ったように統合政府というので見るんですけれども、それは別に私の専売特許でも何でもなくて、これはちょっとIMFのデータを取ってきたわけであります。これを見ていますと、日本というのはそんなに悪い数字になっているわけじゃないです。もちろんこれは、新しくやったりするとちょっとずつ数字が違うところもあるんですけれども、すごく悪くはないですね。だから、すごく悪くないということは、余り当面心配することもないと思います。  それで、あと、その次の六ページ目ですけれども、こういうふうな、ネットワースというんですけれども、これは純資産という言い方です。これは純負債と言い直しても一緒です。純負債にするんだったら、マイナスがつくだけなんです。純負債という形にすると、負債マイナス資産という形になるわけですけれども、そこがちょっとひっくり返るというだけなんですが、これが実は、CDSといって、マーケットで計算される財政の健全度に結構関係があるというふうな資料が六ページであります。  ですから、よく格付、格付という言い方をするんですけれども、格付機関だってこれを見ているわけです。それでやっていて、格付なんて定性的なので、ほとんどマーケットではできないですから、こういう形でちょっと定量的にやっているというのをお示ししたところであります。  それとあと、しばしばよく間違う話としては、金利が上がると財政が大変になるとみんな言いますよね。私の出身の財務省もいつも言っています。これは、いわばバランスシートの、バランスシートというのは左側に資産があって右側に負債があるんですけれどもね。負債の大半は国債ですから、当然、金利が上がれば負債の利払い費は増えます。そこの一部分だけを捉まえた議論でありまして、だから私は、バランスシートで実は見るということを言うんですけれども。  実は、金利が上がって利払い費が増えるというところは事実です。さすがに財務省もうそはつかない。ただし、都合の悪いことは言わないというぐらいですけれども。金利が上がって利払い費が増えるのは事実なんです。  私が財務省の中にいたときに、今から三十年以上前ですけれども、これはやはりバランスシートで見なきゃいかぬでしょうと。それで、金利が上がったときにどのような変化があるかということを、シミュレーションのシステムはつくってあります。既に三十年以上前につくってあります。  それを見ますと、ここで広い意味での政府の資産というのが利いてくるんです。そこの広い意味での政府の資産というのは、大半が実は金融資産です。そうすると、そちらの方は金利収入は上がります。金利収入が上がって、これをほっておくとどうなるかというと、実は、それは財務省だってそこは見逃すはずがないんですね、ぱくって取って中に入れて税外収入にするんですけれども、ぱくって取って、取られる方はたまらないからというので、いろいろな会計処理をしたりして、取られないような会計操作もします。ただし、全体のバランスシートを見ているとすぐ分かります、これは。  そういうのを込み込みで見ると、金利が上がっても、利払い費が増えるのはそのとおりなんですけれども、実は税外収入の方が本来はほとんど同じだけ増えます。ということはどういうことかというと、金利が上がってもほとんど関係ない、財政には関係ないという答えになってしまうわけです。これは、そのシステムはまだあるはずなんですけれどもね。絶対に財務省の方は、金利が上がって税外収入が増えるということを余り言わないんですけれども、本当は増えます。ということであります。  そうすると、ちょっとまとめると、政府の過少投資を直すためにということですと、いろいろと財政収支も現行のPBも、広義のPB、広義というのは今言ったようなバランスシートのPBですけれども、そういうのを全部見てやるということしかないと思います。  ただし、当面いろいろ考えると、次の八ページですけれども、統合政府から見れば、余り意識しなくても余り問題が出てこないと思います。ですから、それは、金利が上がって大変だとか、それとあと借金が大変だという議論は、かなり割り引いて考える必要があるんじゃないかなと思います。  それとあと、資産を考える観点から立つと、建設国債については、見合い資産があるから、こういうのはちょっと計算上いろいろ工夫した方がよろしいんじゃないかなというふうに思います。  次に、九ページ目ですけれども、社会的割引率、これは余りに高過ぎます。見直そうと思ってやったんですけれども、国交省の役人は見直してくれると言ったんですけれども、はっきり言ってうそでしたね。これはちょっとまずいですね。だから、それをちょっと普通に直すだけで、普通に直すというので、積極でも何でもないんですよ。ただ単に普通にするというレベルなんですけれども、そうすると公的資本形成が伸びて経済成長するという形になるんだと思います。  特に、今、老朽化された社会インフラというのは、年数が来たら自動的に更新するという形にした方がいいんだと思います。今、どこが悪いかを探そうなんというすごく壮大な計画を立てていますけれども、そんなのは多分やめた方がよくて、時期が来たら全部リプレースメントしていくというのが普通だと思います。  最後に、ちょっと社会保障改革だけ述べたいと思います。後ろの方のは数学の注ですから、これを見たら目が潰れますから、見ないでいただいて結構であります。  社会保障の話でいくと、いろいろな国で最近導入されていて日本にないというのは歳入庁であると思います。これは、税務と社会保険料の徴収一元化です。  かつては、所得税の源泉徴収制度、これは今は結構できているんですけれどもね。あと、社会保障と国民番号とのリンクがうまくいかないから駄目だったと言われたんですけれども、これはもうそういう時期じゃないですね。制度を見るときに、いろいろな各国の資料を見ていると、日本だけないのはかなりいびつですね、先進国で。昔の経緯があるからないのはちょっとありますけれども、でも、ちょっとこれは真剣にやった方がいいんじゃないかな、そういう気がしております。もうデジタルでいろいろなことができる時代になっております。せっかくマイナンバーを入れたわけなので。そうすると、歳入庁の条件として、これは私が言っている条件じゃなくて、有名な海外の学者が言っている条件ですけれども、そこはもう完成されて、機が熟しつつあるんじゃないかなというふうに思います。  歳入庁をやりますと、今の日本年金機構の徴収部門の人と国税庁が一緒になるわけなので、そうすると大きな行革になります。それとともに、社会保険料の増収効果がかなりあります。これは計算がいろいろあって、よく分かりにくいです。これは国会の中で出てきた資料を見ていても、ある国会議員の人が、十兆円近く増収があると。年間十兆円ですけれども、すごいですよね。  私も、財務省にいて、大蔵省にいて、税務署長をやっていて、そのときの経験で、源泉徴収するんですけれども、社会保険の徴収漏れというのはすごく多かったです。そのたびにいつも、社会保険庁の事務所長に徴収漏れしていますよと言ったんですけれども、余り取っていなかったような感じがしましたけれどもね。もちろん、今は状況が違っていると思います。でも、この増収効果がすごくあるので、これはほっておく手はないんじゃないかなと私は思っております。  ということで、私のプレゼンテーションはこれで終わりでございます。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

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