○参考人(武本俊彦君) お手元に私のコメントの要旨が行っているかと思います。これに沿って、十五分間という時間でございますので、簡潔に説明していきたいと思います。
二ページ目は、食料システムについてのこれは私の考え方を述べたところでございますので、ちょっと時間があれば触れたいと思います。
三ページ目に入っていただきたいと思いますが、今回の食糧法改正案に対するコメント、主なコメントとしては三点あります。三ページ目は、生産調整関係規定の削除に関する部分であります。四ページ目が、一つは民間備蓄の関係、三番目が目的規定などにおける需給及び価格の安定の改正について、この三点に絞って考え方を申し述べたいと思います。
生産調整関係規定の削除なんですけれども、現行法では、お手元に食糧法の新旧対照表がある方はそれを見ていただくと分かりやすいんですけれども、現行規定というのは、第一章総則、第二章米穀の需給及び価格の安定を図るための措置を置いています。
つまり、需給及び価格の安定を図ることを目的とした法律をどうやって達成するかということについて、主として政府はこういうことをやっていきますよという組立ての法律になっています。だから、第二章に措置という規定を置いて、第一節は基本指針なんですが、第二節以降、的確かつ円滑な流通の確保に関する措置として、第一款に生産調整の規定を置くという形になっているわけです。
事の是非はまずおいて、需給調整あるいは生産調整というのが需給調整にとって非常に強力な措置だということを前提にしてこの法律が組み立てられていることは否めないし、そのとおりなんですね。
この規定を、この構造の法律を改正案はどうするかというと、第二章のうち、適正かつ円滑な流通の確保に関する措置というのを、じゃ、第三節にずらして、第二節を空けて、そこに生産者による需要に応じた生産という第五条を新設、入れます。このやり方は当然あり得るんですが、位置付けが、全体の構造からすると、生産者の需要に応じた生産というのが物すごく強くなって働くということになります。
つまり、需給調整としての生産調整の規定を外して、生産者の需要に応じた生産をするんだということをあえて規定するという趣旨は、法案のその構造からすると、かなり重い規定になってこざるを得ないということを留意する必要があると思います。
そういったようなことを前提に、私の説明ペーパーの方に入っていただきますと、三ページ目です。二の改正案に対する主なコメントの(一)生産調整関係規定の削除についてですが、最初の丸は、米穀の生産調整方針に関する規定を廃止する、これが改正前の第五条から第七条関係であります。これを外すということは、削除するということは、食糧法上は生産調整をやめるということを意味します。もちろん、補助金を使って実態上需給調整をやっているわけでありますから、それは別に法律補助金ではありませんので、政府の政策としては続けるということは許されていることになります。
で、第五条に新設として、生産者の需要に応じた米の生産に努めるものとするというのを一項に置いて、二項、三項というのは、二項は生産者団体の助言だとか指導という形になるし、三項は、地方公共団体のアドバイスを、情報提供という規定を置き、第四項に、ここで政府の役割を規定するという形になります。
冒頭申し上げたように、食糧法の立て付けは、政府が基本的に需給及び価格の安定を図るための措置をどうするんだということを書いていくわけですから、その生産者が需要に応じた生産をするということは、当然書くことは、書き方の問題はあるんだけど、おかしくはないんだけど、それを生産者の責任だけだという形に構成すると、なかなか大変なことが起こるんじゃないか。だから、政府はそのことに対してどういう措置を講ずるんだということを四項に規定する必要があるという構図になってくるわけです。
以上のことを考えると、私はこういうふうに考えざるを得ないんじゃないかと思います。下の方に、ゴシックになりますが、①で生産調整関係規定を廃止することには異存はない、むしろいいことだろうと思います。ただし、気を付けなきゃいけないのは、補助金等によって実態上の生産調整が継続するというようなことは避けるべきではないかと私は思います。
その上で、米穀の生産者は、米穀の生産を行うに当たって、主体的に第二条第一項に規定する見通しその他の情報を踏まえ、需要に応じた生産を行うよう努めるものとするという努力義務規定をここで置くわけですが、この規定の仕方というのは十分に注意する必要があるだろうなと思います。
先ほどから申し上げているように、需給調整を政府の責任でやっていくんだという規定をぼそっと落として、生産者が需要に応じて生産しなさいねという規定を置いちゃうと、ここに書きましたけど、結果的には、地域社会における、五十年間続けていましたから、生産調整は、この同調圧力の下に生産者の創意工夫に根差した取組の芽を潰すことになりかねないのではないかということが危惧されます。なので、第五条第四項の規定を引っ張るためには、米穀の生産者が生産を行うように努めるものとするという何らかの規定を置く必要はあるかと思いますけれども、私から見れば、余計な修飾を全部落として、見え消しにしたところを落とした条文に整理した方がよろしいんではないかなと思います。
その上で、第五条四項の規定の仕方は、輸出だとか需要の拡大だとか、そういうことは必要なんですけれども、多分かなり時間が掛かる話でありまして、需給調整をやめるんだということからすれば、あしたから大変なこと起こっちゃうかもしれないと、そこが多分多くの生産者が危惧しているところだろうと思うんですね。
今の生産構造からすると、気候変動だとか国際情勢の不確実性の中で暴騰、暴落が起こり始めているのではないかなと私は思いますので、そういったことからすると、厳しい情勢の中で生産者があえてリスクを取って生産にいそしむんだということを奨励していくためには、ここに書いたように、予想できない需給、価格の変動による経営への打撃を緩和するような措置を政府はやりますということを天下に公言された方がいいんではないかなと思います。
それから、(二)、四ページ目です。民間備蓄というのが、これは元々存在していないやつを改正法では第五節に節として置くわけです。実は、国家備蓄についての規定はあるんだけれども、節のレベルでは置いていないんです。そういうときに民間備蓄というものを節として置くことの意味が問われるわけです。
私は、令和の米騒動の原因はいろいろあると思いますけれども、米穀の供給が不足する事態に備えて米穀の備蓄の機動的な運営の確保、これは今の食糧法でも規定されている部分なんですね、これができなかったから起こったことだろうなと思うんです。だとすると、今問われるのは、何で機動的な運営ができなかったのかということが問われるし、今後はそういうことが起こらないようにしますよということを政府は法律に書き込む必要があるのではないかと思うわけです。そもそも、機動的な運営の在り方について、今何の規定も条文上は置いていません。だから、少なくとも、その理念はどういうものだとか基本的枠組みはどういうものでやっていくんだということは問われるだろうと思います。
少なくとも、ここのところは、詰めていくと国有財産を処分する話ですから、会計法を始めとして、政府が好き勝手に処分はできない、たががはまっています。だけど、緊急事態のときには米を放出しなければ大変なことが起こるわけですよね。そのために食糧法は備蓄をあえて規定しているわけです。ということを考えると、備蓄を機動的に運営する以上、機動的な売却ができない制約は外すということを検討しなければならなくなってきます。これが法律事項になります。この部分を立てることによって、節というレベルでの数か条が必要になってくるはずです。
それがまずあった上で、それを補完する役割として民間の備蓄というか在庫というか、私は在庫でいいと思いますが、それをどういうふうに運用するんだという規定が出てくるんだろうと。物事の順番としては、国家備蓄をどうするんだということについて政府が法律に書き込むということを言っていかなければならない。そういう趣旨がなければ、行政府に対して備蓄運営の在り方を白紙委任するということになってきますので、立法府としては、その在り方といいましょうか、存在意義を問われることになりかねないということになろうかと思います。
以上のことを考えると、備蓄制度というのは、食糧法の中では国が需給の安定のために市場への介入が認められた手段であって、食糧法の実効性を担保する、言わば伝家の宝刀になっています。令和の米騒動は何かというと、その伝家の宝刀が日常的に予行演習などをしていなかったためにさびついたということにほかならないわけですね。だから、機動的な対応ができなかったことによるものなんだから、民間備蓄の議論をする前に、ここをどうするかということをまず法律で明らかにしなければいけないのではないかと思います。
備蓄制度というのは、そういったことを考える上で、ごめんなさい、丸でいくと四番目ですね、民間在庫というのはそもそもどういうものかということについて議論をしておく必要があります。
投機的な観点から米の買入れに入ってくるような業者を対象にしているわけではないのであって、食糧法では集荷業者とか卸売業者を規定しているわけですよね。彼らは何を期待されているかというと、年間安定的に米を売却していくことによって需給と価格の安定を図る役割を担うという役割だから、法律上ちゃんと規定しているわけです。そういうことを規定しているんだったら、その人たちにちゃんと役割を果たしてくださいということを言うべきであって、何かその人たちがちゃんとしたことをやらないんじゃないかと言わんばかりに民間備蓄の規定を置くのは、甚だおかしいのではないかと。
もし、民間にその能力を期待するならば、政府がここまでやるんだから、それ以上の話は政府はできない部分があるんだということをはっきり言って、その部分を民間にお任せしますという規定の仕方になってくるだろうと。したがって、やっぱり国家備蓄はどうあるかという条文があって、その後に国家では対応し切れない部分のここを民間にお任せしますよという構造にならざるを得ないのではないかと。
私は個人的には、これは、民間の事業者と政府は連携する意味での協定を締結すれば済む問題ではないかなと実は思っています。ここは議論していただければと思います。
三番目、目的規定における需給及び価格の安定の改正なんですけれども、これは、政府は、そこの(三)でいえば、三行目ですかね、こういう理由を言っています。政府は、価格は市場における需給事情に基づき形成されるものであるとして、需給の安定を図ることによって、結果として価格の安定が図られるから、それを明らかにするために、目的規定を含めて関係のあるところを全部変えていきますよという説明をされています。この考え方は、私からすると、ちょっと昔の考え方ではないかなと実は思っています。
今回の令和の米騒動で起こったことは、価格の先行きへの期待が例えば上がるという状態になってくると、需要面では買い急ぎが起こり始めます。早く買っておかなきゃと。供給面では、高くなるんだったら、ちょっと待とうという話になります。したがって、マーケットでは価格がどんどん上がる方向に作用することになっていきます。だから、これをどうするんだという話を政策当局は常に視野に入れて、政策運営、制度を運用していかなければならないわけです。
そう考えたときに、政府が説明するように、需要が安定すれば供給が安定して、供給が安定すれば価格が安定するという一方向的な因果関係で物事を考えるというのはどうかと思いますので、そういうことからすると、需要と供給と価格は双方向的に動き始めているということを前提に置いて政策を構築していかざるを得ない。これは非常に難しい話なんだけれども、少なくともポジションとしてはそういうことを認識した上で法律の目的をつくっていくべきである。とすると、今回の改正案よりは現行規定の需給及び価格の安定の方がはるかに妥当性があると私は思っています。
以上が本改正案に対する私からのコメントであります。ありがとうございました。
武本俊彦 の他の発言
2026-06-23 · 参議院農林水産委員会
○参考人(武本俊彦君) 御質問ありがとうございます。
結論から申し上げれば、今の先生の御主張を成り立たせるためには、備蓄の定義を、供給の不足に伴いというところを変えなければなら…
2026-06-23 · 参議院農林水産委員会
○参考人(武本俊彦君) 御質問ありがとうございます。
基本的には今の長谷川参考人と同じ考え方を私は取っておりまして、農業という産業の場合、どうもやっぱり製造業とか工業とのバラン…
2026-06-23 · 参議院農林水産委員会
○参考人(武本俊彦君) ありがとうございます。
非常に難しい話なんですけれども、何で農業に限って需給調整だとか暴落が起こったときに保護しなきゃいけないんだという議論が起こってし…
2026-06-23 · 参議院農林水産委員会
○参考人(武本俊彦君) ありがとうございます。
皆さんと、他の参考人と基本的に同じなんですけど、要するに、価格に着目するのは何かというと、やはりその経営者としての才覚を磨いてい…
2026-06-23 · 参議院農林水産委員会
○参考人(武本俊彦君) 非常に難しい話なんですけれども、基本的には、別に農業に限らず、どんなビジネス、事業であっても、事業者は需要に応じて、つまり売れる分を生産していくという発想で…
2026-06-23 · 参議院農林水産委員会
○参考人(武本俊彦君) ありがとうございます。
結論的に言えば、今おっしゃった御質問の趣旨は、やはり基本法に遡って、どうするんだという、こういう議論をしない限りは、やっぱり中長…
2026-06-23 · 参議院農林水産委員会
○参考人(武本俊彦君) 御質問ありがとうございます。
なかなか難しい問題なんですけれども、冒頭申し上げたかと思うんですけれども、食糧法という法律は、基本的には生産者が作った米を…
2026-06-23 · 参議院農林水産委員会
○参考人(武本俊彦君) 非常に難しい御質問だなと思って聞いておりましたけれども、今の先生の御指摘は、農業政策という立て付けでやっていくのがいいのか、それとも、やっぱり地域政策的な、…
API / MCP 利用
国立国会図書館 国会会議録 API を構造化
REST: /v1/diet/speeches/search?speaker=武本俊彦
MCP: search_diet_speeches(speaker="武本俊彦")