衆議院経済産業委員会(2026-10-21)での発言
第222回国会
·第第1号号
·5,667字
○赤澤国務大臣 おはようございます。
第二百二十二回国会における経済産業委員会の御審議に先立ち、経済産業行政を取り巻く諸課題及び取組につきまして、経済産業大臣、原子力経済被害担当大臣、GX実行推進担当大臣、AX社会実装担当大臣、産業競争力担当大臣、原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当の内閣府特命担当大臣として申し上げます。
日本は災害大国であり、私のライフワークは防災でございます。今年は、七月に熊本地震、八月から九月の豪雨など、大規模な災害が連続して発生をしました。
被災地は今なお復旧復興の途上にあります。経済産業省として、福島、能登、熊本を始め被災地の復興に心血を注いでまいります。
令和八年熊本地震については、私自身、現地を訪問し、被災者の方々の生の声や木村知事の御要望も踏まえ、経済産業省として、被災事業者の施設設備復旧支援や金融支援、インフラ復旧支援を柱とする百四十六億円の被災者への支援策を八月に取りまとめました。来月二日には、災害の発生から復旧復興まで一貫した災害対応の司令塔となる防災庁が発足します。関係省庁と緊密に連携しながら、被災地の着実な復旧復興に全力で取り組んでまいります。
同時に、実際に現地を視察して、中小企業の大規模地震への備えは不十分であり、改善の余地も大きいと感じたのも事実であります。中小企業の事前防災や事業継続力強化の取組を後押しをしてまいります。
福島については、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から十五年と七か月を迎えるとともに、第三期復興・創生期間が始まりました。この五年間が福島復興の正念場であり、これまでの延長ではなく、創造的復興を実現しなければなりません。
福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なしとの思いは変わりません。
福島の復興と東京電力福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉は、経済産業省の最重要課題です。私自身が先頭に立って、現場主義を徹底し、福島の復興に最後まで責任を持って取り組んでいく決意を改めて胸に刻みました。
引き続き、安全かつ着実な廃炉とALPS処理水の海洋放出や避難指示解除に向けた取組、事業、なりわいの再建、福島イノベーション・コースト構想の推進など産業競争力強化に全力で取り組んでまいります。
今般の中東情勢に対しては、我が国のエネルギー安全保障の確保に万全を期し、国民の皆様の生活と経済活動を守るために、引き続き全力で対応をしてまいります。
政府として、これまで、備蓄の放出や代替調達により、原油や石油関連製品等の安定供給確保に尽力してまいりました。その結果、日本全体として必要となる量を確保することができています。また、供給の偏りや流通の目詰まりに対しては、相談窓口の設置や直販スキームの構築など、一つ一つ丁寧に対応することで、相談件数は減少してきています。これまでの供給要請をいただいた案件については、今月要請をいただいた案件を除き、解消済みであることを確認をしております。
加えて、これまで燃料油の緊急的な激変緩和措置を実施しており、今後の在り方については、中東情勢が今後の物価動向や経済に与える影響を注視しながら、柔軟に検討してまいります。
今般の中東情勢を踏まえ、化石燃料の調達安定性の抜本向上とGXの加速・強化の二つの強靱化が必要であるという観点から、エネルギー需給構造強靱化のための総合パッケージ、いわゆるパワーGXを強力に進めてまいります。
具体的には、一、原油等の輸送経路を変更することで追加的に発生する輸送費を始めとする差額を支援し、平時から調達先や輸送経路の多角化を進める、二、必要な保険機能を確保し、原油等の安定的な輸送を支援する、三、パイプライン等の整備を支援し、代替輸送ルートを確保するといったことを目指す三法案を通じて、原油等の化石燃料の調達多角化、リスク低減による調達安定性の抜本的な向上を図ってまいります。
エネルギーの安定供給と脱炭素を両立する観点から、安全性の確保と地域の御理解を大前提に、原子力などの脱炭素電源を最大限活用してまいります。安全性が確認された原子炉の再稼働や次世代革新炉の開発、設置を進めてまいります。また、核燃料サイクルや最終処分といったバックエンドの課題にも全力で取り組みます。一方で、中部電力浜岡原子力発電所に関する一連の不適切事案については、国民の信頼を大きく損なう、あってはならないものであり、まさに遺憾の極みです。報告徴収命令に対する中部電力からの回答も踏まえ、最大限厳格に対応を検討してまいります。
さらに、次世代型太陽電池や次世代型地熱、洋上風力といった再生可能エネルギーについても、エネルギーの自給率の向上に寄与する国産電源として、地域共生を前提に導入を進めてまいります。また、こうした再エネやCCS、水素を始めとするGX関連投資や国内産業基盤の構築を推進します。さらに、日本のエネルギー制約を抜本的に変え得るフュージョンエネルギーの社会実装を目指した研究開発を進めます。あわせて、GX戦略地域制度を通じて、コンビナートや地域の脱炭素電源を核とした新たな産業クラスターを形成してまいります。
我が国は、昨年の関税に関する日米間の合意の実施に強くコミットしており、戦略的投資イニシアチブを含め、合意の内容を着実に実施してまいります。
先日、本イニシアチブの下、新たに、AIデータセンターや自動車分野において不可欠な半導体の製造プロジェクトを実施することで日米両国は一致いたしました。
本プロジェクトは、AI時代における競争優位の確保に日米で協力して取り組む意義を有しております。今後も、日米で協力し、経済安全保障上重要な分野で強靱なサプライチェーンをつくり上げてまいります。
こうした取組を通じて、特別なパートナーと認め合う米国との信頼関係を更に発展させるとともに、経済安全保障の確保や経済成長の促進につなげてまいります。
これまで申し上げた災害対応、中東情勢対応、米国関税への対応はいわば有事対応でありますが、同時に、構造的な平時の対応にも全力で取り組んでまいります。
高市内閣の成長戦略の中核の一つである危機管理投資、成長投資を力強く推進し、強い経済を実現してまいります。
官民連携投資を行う戦略分野及びサプライチェーンの強化を図る重要物資に重点を置き、大胆な国内投資の促進や国際展開支援、人材育成、国際標準化等の総合支援策を講じ、官民の積極投資を引き出します。
経済産業省は、十七の戦略分野の全てに関係しており、目標、道筋、政策手段を明確にした官民投資ロードマップに沿って、多くの分野で議論をリードしてまいります。
今般、私は新たにAX社会実装担当も拝命いたしました。総理からは、AI・デジタル改革推進担当大臣を始め関係大臣と協力して、医療、介護、運輸、建設などの分野におけるAIの活用を加速させるとともに、中小企業、小規模事業者のAI普及を推進し、AXの社会実装を強力に進めるよう御指示をいただいたところです。
我が国の成長戦略を進めていくに当たり、あらゆる産業分野のAIトランスフォーメーション、AXが肝であり、AIが社会経済のメタレイヤー、すなわち基盤になることを前提とした政策立案と実行が求められています。
ビッグデータ掛けるAIの時代において、AI活用における我が国の勝ち筋は、我が国の特徴であるビッグデータを収集し、最大限活用することです。
超高齢社会であり災害大国である日本には、介護、ヘルスケアなどの貴重なデータや様々な災害に関する特徴的なデータがビッグデータとして存在しています。こうしたデータを活用して、高齢化や災害対応といった世界共通の課題解決に貢献しつつ、ピンチをチャンスに変えていくことが重要であると考えております。
さらに、我が国には、世界有数の製造現場と世界唯一の廃炉の現場があり、世界的にもユニークで価値の大きい現場のビッグデータが存在しております。こうしたユニークなデータをAIと掛け合わせるフィジカルAIの分野が日本の勝ち筋です。
特に、廃炉現場へのフィジカルAIの導入等を通じて、福島を我が国のAIトランスフォーメーションの始まりの場所としてまいります。
幅広いデータが基盤につながり、様々な分野で活用できるフィジカルAIを構築し、それぞれの現場のAXを下支えします。こうしたフィジカルAIのエコシステムを世界に先駆けて確立することを目指します。こうした動きを地方にも広げていくことで、地方発のAXの実現にもつなげてまいります。
AXの推進は、スタートアップの成長を促進し、地域に根差し、現場現業型でスピード感のある中小企業にとって、人手不足を乗り越え、大企業を一気に追い抜くリープフロッグのチャンスとなり得るものです。経済産業省として、中小企業の稼ぐ力の強化と賃上げの好循環に向け、地方の中小企業のAXを推進してまいります。
具体的には、中小企業AX実装ネットワークとして、AIの導入意欲のある中小企業とAIサービス提供者、支援者といったネットワークを地域ごとに構築し、今年度は五か所程度で合計百社程度、来年度は五十か所で合計千社へのAXの普及を目指します。また、この事業の横展開も含め、二百万社への周知と、三年間で官民で一万人の支援者を育成してまいります。
加えて、防衛産業への成長投資を通じて防衛と経済の好循環を実現すべく、防衛省とともに、国内生産基盤の強化、防衛イノベーションの促進、装備移転といった施策を一体的に推進する新たな法人の設置を検討してまいります。
先端ロボットを始めとする、成長が見込まれ、かつ難易度が高い技術領域における研究開発や設備投資については、予算や税制、規制改革を一体的に講じ、技術で勝ってビジネスでも勝つ新技術立国の実現に向け、官民投資を強力に進めてまいります。また、我が国の強みであるコンテンツ産業についても、国際競争が激化している状況を踏まえ、官民投資の推進に取り組んでまいります。
日本成長戦略と両輪である地域未来戦略を力強く推進し、関係省庁と連携し、大胆な投資策とインフラ整備を一体的に講じて、強い地域経済を実現してまいります。
重要なインフラである産業用地の確保を促進するとともに、地域の社会経済を支えるエッセンシャルサービスの持続可能性を図ってまいります。こうした地域経済の活性化に向けては、AIの力をかりていくことも重要です。
強い地域経済を構築するためには、中堅・中小企業、小規模事業者の皆様が主役となります。戦略分野への投資やサプライチェーンへの参入などの変化に挑戦するとともに、賃上げをしっかり行い、人材確保に取り組む、こうした成長に向けた中堅・中小企業の取組への積極的な支援を通じて、稼ぐ力の強化と賃上げの好循環を実現します。
具体的には、中小受託取引適正化法及び受託中小企業振興法の着実な執行や官公需での対策を含めた価格転嫁、取引適正化の徹底、成長投資やAX、デジタル化、省力化の支援、成長に向けたMアンドAや事業承継の推進といった施策を着実に実行してまいります。
世界を見渡せば、ルールに基づく自由貿易体制に揺らぎが生じています。その中で、我が国は、米国等への対応と併せて、CPTPPやAPEC、AZEC等の様々な枠組みを通じて、有志国と連携した自由貿易と法の支配の取組を進める、ハイブリッドな通商戦略を展開します。グローバルサウスを含む新市場の開拓も一層推進してまいります。
また、経済安全保障の観点から、レアアースや半導体等の重要な物資のサプライチェーンを特定の国に過度に依存することのないよう、供給源の多角化や調達ルートの切替え支援等を進めてまいります。
アジアのエネルギー安全保障と経済成長を後押しする取組として四月に発表したパワー・アジアの下、備蓄システム構築や与信供与等の協力を進めるとともに、産油国と消費国の連携を強化してまいります。
米国との間でも、重要鉱物のサプライチェーンを強靱化するため、具体的プロジェクトに関する協力や海洋鉱物資源開発に関する協力等に合意いたしました。
さらに、AZECの枠組みなどを活用し、脱炭素化や産業の高度化、エネルギー安全保障達成に貢献する日本の製品、サービス、インフラを国際市場に展開して、GX投資の一層の加速化、経済、エネルギーの強靱化に取り組むことも重要でございます。
また、日本の食輸出一万者支援プログラムの推進を始め、農林水産大臣とも協力した、農林水産物、食品の輸出拡大を図ります。
一九八〇年代から過去約四十年にわたり、世界的に新自由主義的な経済の発想の下、政治や行政が個別産業政策を行うべきではないというような考え方が続いてまいりましたが、足下では、産業政策の成否が国力を左右する時代が到来しております。経済産業省にはかつてのノートリアスMITIと言われた時代の産業政策を直接知る職員は現在おりませんが、時代の変革を捉え、組織全体の意識を大きく変えて、国が一歩前に出る産業政策に積極的に取り組んでいく必要があると考えております。これは、政府による過度な介入ではなく、国益を追求する上で必要な取組であるとの強い気概を持ち、経済産業行政が抱える多くの課題の解決に向け全力を尽くしてまいります。
様々な御意見に耳を傾けながら、経済産業大臣として全身全霊で職務に取り組んでまいります。
岩田委員長を始め、理事、委員各位の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)